急いで書いたので短めです。
エリカへ思いを伝えた日から翌日、タイゾウさんへ改めてお礼と謝罪を伝えた。本当に彼には迷惑をかけた。
「気にするなよケント君。俺としては君が前に進めたようで安心したよ」
タイゾウさんの言葉に俺は素直にお礼を言う。本当に彼には頭が上がらない。出会ってから色々と助けられてばかりだ。
次にアキナとヒカリちゃんについては、エリカと予定を合わせて直接彼らの家に行く事となった。なのでアキナと喧嘩をした日から大体一週間くらい経っている。
本気で殴り合ったものだから、傷が目立たないようになるまでお互いに時間を置きたかったという意図もある。
「色々と悪かったなアキナ。あの日、俺から思いを伝えてエリカと付き合う事になった」
「そうか、おめでとう。今までやってた無茶はもうやめとけよ」
「分かってるって。詰め込んでいたスケジュールを空けてのんびり過ごすさ」
いつも通り晩メシをご馳走になった後、お詫びとして買ってきたプリンを渡しながら、俺はアキナ達に報告する。タイゾウさんから教えて貰ったお店のものだが結構高かった。
エリカも久しぶりにアキナの手料理を食べる事が出来て嬉しそうだった。
「へー、良かったじゃん。お幸せにね。──ん~、やっぱりこのプリン美味し~!」
「一応、お礼は言っておくわ……」
ヒカリちゃんは手土産のプリンに夢中のようだった。エリカとヒカリちゃん。辿った運命は違えど、正真正銘の自分自身だ。お互いへの扱いが雑なように見えて、この距離感が一番良いのかも知れない。
「来年から……というかもう来月か。進路はどうしようかな」
「折角強いんだし、プロファイター目指したら? デラックスに出場出来たら応援するし!」
「あー、デラックスか。まぁそうだね。もしそうなったら応援よろしくね」
ヒカリちゃんの言葉に俺は苦笑交じりに誤魔化した。そう言えばヒカリちゃんにはプロの選択肢は消していると言っていなかったか。
しかしデラックスの出場か。今生でもジンキさんから第一回、第二回のデラックスの招待状が届いていた。どちらもアキナやヒカリちゃんと過ごす事を優先する為に辞退していたが、もし第三回デラックスへの招待があれば断れないだろうな。
三回目は無いよ。そうジンキさんに釘を刺されてしまっているから。理由は分かる。
前代未聞のトロフィーコンプリートをたかだか数年で達成された上、未だに公式戦無敗の怪物が最強を決める舞台に上がってすらいない。そういった事情もあって、もし第三回のデラックスが開催されるのであれば確実に招待されるだろう。
「ケント、何か隠してる?」
「……エリカとヒカリちゃんが不快に思うかもっていう事をぼかしてる」
付き合うようになって呼び捨てとなったエリカから尋ねられて、答えられる範囲で正直に言う。
第一回デラックスの決勝戦。近導ユウユと狐芝ライカのファイトを見てヴァンガードを始めたと聞いた。故にこそデラックスという大会にも何かしら特別な思いを抱いているだろう。いつか自分の始まりとなった舞台へ立ちたいと願っていても驚かない。そんな彼女達に対して、手前勝手な理由で出場辞退した挙句に次のデラックスはほぼ内定状態だとは中々言い出せなかった。
「第二回デラックスへの出場辞退の話でしょ? それならタイゾウさんから聞いたわよ」
「……第一回デラックスも辞退してるんだよ。それで、第三回が開催されるなら強制的に出場させられる事になってる」
「「はぁっ!!?」」
辞退の話を聞いているのであれば、無理に隠さなくてもいいかな。少し悩んだが全て白状する事にした。
俺の言葉にエリカとヒカリちゃんが同時に驚く。出てくる言葉も見事にハモっている。しかしまぁ、やはりここまではエリカも聞いていなかったか。
「それはまたすごい話だな」
「いやお兄ちゃん。すごいってレベルじゃないから。次のデラックスに内定してるって何? それ言っちゃっていいの?」
「ジンキさんからは隠さなくてもいいと言われているんだよ。というより逆に広めたいんだろうさ。最強を決める大会ならどうして
さすがに自分から進んで言い触らしているわけではないが、噂としてはそこそこ広まっている状況だ。だから次のデラックスは今までの最強決定戦とは異なる様相となるだろう。場合によっては邪竜を倒す勇者を決める戦いになるかも知れない。
誰が優勝するかではなく、誰が
「俺もヴァンガードを始めてから色々調べてるけど、
「結果はどうであれ、その実績はほぼカンニング行為みたいなものだよ。経験や努力、相手のデッキに対する知識の多寡を強さの理由にするのであればね」
積み重ねと言う土俵で俺と勝負するのであれば、人の一生では足元にも及ばない。傲慢に聞こえるかも知れないが、紛れもない事実だ。
那由他の果てまで繰り返す内、どれだけの戦場を積み重ねたと思っているのか。努力の量で俺と勝負をしたいのであれば、せめてファイト回数を恒河沙の大台に乗せてからだ。そうでなければ話にならない。
「まぁまだ先の話だよ。もしかしたらジンキさんの考えも変わるかも知れないしね」
多分そうはならないだろうな。思ってもいない言葉はただ口から白々しく出てきただけだった。