わずかなヒカリへ手を伸ばせ   作:水金地火木土天海冥

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第三章:7 デラックス準決勝 『聖なる時の運命者』対『邪悪なる奇跡の簒奪者』

 デラックス準決勝がもうすぐ始まろうとしている。対戦相手は明星エリカ。

 何よりも愛おしく、共に生きると誓った女性。しかしこの場では優勝を奪い合うライバルだ。

 油断はしない。侮りもしない。脳裏によぎるのは去年の宿命決戦での延長戦だ。

 俺に慢心があった事は否定しない。だがそれでも邪竜(ファーヴニル)のからくりである、膨大な対戦回数から成る対人メタを初めて突破された事実は覆らない。

 認めよう。彼女は今までの相手よりも気の抜けない相手なのだと。そして、その為の準備はすでに終わっている。

 言ってしまえば初見殺しだが、この大舞台では何よりも効果的だろう。

 

「お、気合入ってるね邪竜(ファーヴニル)

「カゲツさん……と、隣の方は?」

「初めまして! 石川カナミです」

 

 ルカさん以外の女性と一緒に居るのは珍しいな。名乗り返しながらそう考えていると……。

 

「彼女は俺の教え子でね。君のファイトを一緒に見させてもらうよ」

「カゲツに勝ったんだから、半端なファイトじゃ納得しないから」

「お、おう……」

 

 石川カナミ。妙に当たりが強いな。それだけカゲツさんを慕ってるという事なんだろうが。

 

「おーい、カゲツ君。邪竜(ファーヴニル)のお話は終わったかい?」

「げ、ルカ先じゃん」

 

 石川カナミの態度に首を傾げていると、ルカさんまでやってくる。あぁ、そろそろ準決勝が始まる頃か。

 彼女が現れた瞬間、石川カナミから呻くような声が聞こえた。ルカさんに苦手意識でもあるのだろうか。

 

「カナミちゃんお久ー。あれから強くなった?」

「……今から試してみる?」

「それは試合が終わってからでもいいだろ? ほらほら退散だ。……どたばたしてすまないな邪竜(ファーヴニル)。それじゃ、応援してるよ」

 

 それだけ言って三人は観客席の方へ去っていった。色々と気になる事はあるが、今は目の前のファイトに集中するべきだ。

 

 ◆

 

 ヴァンガードドームの舞台上。目の前には対戦相手のエリカが居る。もう間もなくファイトが始まるだろう。

 テーブル上にデッキを置いて、一声かける。

 

「エリカ」

「何?」

「……今日の俺は、邪竜(ファーヴニル)として君と戦わせてもらう」

 

 そう宣言すると、エリカは頭に疑問符を浮かべながら問う。

 

「意気込みの話?」

「似たようなものかな。相手の戦意、思い、熱……あらゆるものを蹂躙しながら勝利を掴む。怒りと呪いを振り撒きながら、世界の敵として君臨する邪悪な竜。デラックスの優勝という栄光を貪る為に、君の願いを踏み躙ってでも前に進む。それが邪竜(ファーヴニル)としての、俺の戦い方だ」

 

 正直に言えば迷った。邪竜(ファーヴニル)の死に場所を探すという目的をかなぐり捨ててでも、エリカとは竹松ケントとして対峙するべきなんじゃないかと。

 頭に過ぎるのは過去の輪廻での二回目の運命大戦。アキナを救う為に過去へ跳躍するというヒカリちゃんの願いを奪い続けた記憶がある。彼女の断末魔を今も忘れていない。

 だからこれは一種のトラウマなのだろう。大切な人を助けたいという思いで研ぎ続けた爪牙が、大切な人を貪る要因へと成り果てる。そして今生でも、それが起ころうとしていた。

 プロになるという彼女の思いを、打ち砕く時がきてしまったのだ。

 

「ケント、もしかして私の事舐めてる?」

「えぇ……?」

 

 今の心情を吐露した瞬間、飛んできたエリカの言葉は予想以上に火力が高かった。

 

「あなたが手にかけたのは私だけど、明星エリカ(わたし)じゃないでしょ」

「そう、だな……」

「それと、あなたの中で私の負けが確定してる事について色々文句があるんだけど?」

「……それが邪竜(ファーヴニル)としてのスタンスだ。どんな相手だろうと勝つ。傲慢だろうが何だろうが俺は──邪竜(ファーヴニル)はこれで勝ち残ってきたんだ」

 

 敵に勝って当然。戦意を挫いて当然。あぁ、確かに。舐めてるのかとエリカが怒るのも当然だ。

 だが、この思考こそが邪竜(ファーヴニル)だ。邪竜(ファーヴニル)として相手をするという事は、つまりはどのように相手を貪るか。ここに考えが終始する。

 油断しないと。気の抜けない相手だと。その為に準備をしたのだと。そう考えていたのは竹松ケントであって邪竜(ファーヴニル)ではない。

 

「そ、分かったわ。ならケントに──邪竜(ファーヴニル)に勝って証明する。私が上だと!」

「いいだろう。なら俺も全力で潰させてもらうッ!」

 

 エリカの言葉に獰猛な笑みを浮かべて答える。

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

「《号笛の奏者 ビルニスタ》‎」

「《リザードランナー アンドゥー》」

 

 そしてエリカの先攻でファイトが始まる。

 

「私のターン、ドロー。《愛琴の奏者 アドルファス》‎へライド。エネルギージェネレーターをセットしてターンエンド」

「俺のターン、ドロー。エネルギージェネレーターをセットし、エネルギーチャージ(3)を行う」

 

 ライドコストに《ぐらがおん》‎を使ったか。

 こっちは……まぁグレード1から攻める必要もないか。

 

「《鎧の化身 バー》へライド。バーでアタック」

「ノーガード」

 

 これでエリカのダメージは一点だ。

 

「ターンエンド」

「私のターン、ドロー。《麗弦の奏者 エルジェニア》‎にライド」

 

 ライドコストは《断裂の騎士 セリヴァント》か。ならアドルファスのスキルでエルジェニアの一枚ドロー圏内か。

 

「アドルファスのスキル発動! ソウルブラスト(1)する事で二枚ドローし、《明刃の騎士 レリジアル》を捨てる。そして手札から《突空の騎士 パルナセトラ》、《断裂の騎士 セリヴァント》、《悠弓の騎士 アルモーヴ》をコール!」

 

 右列にパルナセトラとアルモーヴ。左前列にはセリヴァント。随分と攻めてくるな。今回はアグロ戦術で早期決着を狙うつもりなのだろうか。

 

「アルモーヴのスキルでエネルギーチャージ(1)。さぁ、いくよケント!」

「受けて立つ!」

 

 ダメージに関しては二点まで許容しようか。さて、どこでガード札を切るべきか。

 

「エルジェニアでアタック!」

「ノーガード」

「ドライブチェック──ゲット、フロントトリガー! 前列のパワー+10000!」

 

 おっと。早速引いてきたか。クリティカルじゃないだけマシか。これで俺に一点目のダメージが入る。

 

「アルモーヴのブースト! パルナセトラでアタック!」

「ノーガード」

 

 これで二点目のダメージ。ガード札は次で切るか。

 

「セリヴァントでアタック!」

「《ドラグリッター サルマー》でガード」

 

 ヒールトリガーによる15000シールドで防ぐ。

 

「ターンエンド」

「俺のターン、スタンド&ドロー。……しかしまぁ、随分と急いで攻めてくるじゃないか」

 

 俺のデッキは別にアグロを苦手としているわけでも無いのだが。そんな俺の言葉にエリカが答える。

 

「ケントのデッキは《ドラゴニック・オーバーロード》をソウルに入れないと始まらない。その為のパーツに枚数を割いているから手札のシールド値は不足しがちだし、ドラゴンエンパイア特有のユニット退却の頻度も少ない。だから序盤から攻め立てる方針をとったわ」

「なるほど。さすがは清蔵アンカーボルトの研究生。確かにその推察に間違いはないよ。()()()()()()

 

《ドラゴニック・オーバーロード》を如何にしてソウルに入れるか。それが俺のデッキの課題──()()()

 

「過去のアーカイブを見て、デッキも組んで回したんだろう? 君の先輩が俺の担当だったし、対策も共有されているのだろう? ──だったら悪いな。今の俺のデッキは、カゲツさんとの試合の後でハルブとペルソナ用のジエンド以外のノーマルユニット、オーダー、その全てを換装してるのさ。元のデッキの原型など、ほぼ残ってなんかいない」

「……は?」

 

 今生でこのデッキを持ってくるのはこれが初めてだ。何せ必須カードが未発売だったのだから当然だろう。そのカードも先日発売されたが、俺以外であればデッキに入れるのを躊躇うだろう。

 何せデッキの動かし方がガラッと変わるのだ。当然構築も詰めなきゃいけないし、ファイトの中で調整するのも時間的に厳しいだろう。事実、エリカも俺の言葉に絶句している。

 

「そんな自滅めいた策で! 私の思惑を外したところで! 回せなきゃ何の意味も──ッ!?」

「気付いたかエリカ。俺に限っては前提条件が違う、と」

 

 何せこのデッキは過去の輪廻でプロとして戦い抜いた、俺の半身とも呼べる構築そのものだ。回し方? 調整に時間がかかる? 何だそれは。このデッキは既に身体の一部のように馴染んでいるぞ。

 

「勇み足が過ぎたなエリカ。俺のデッキを甘く見た代償を払ってもらうぞ! 《ドラゴンナイト ネハーレン》にライド! 更にライドコストとなった《ドラグリッター ファルハート》のスキル発動! エネルギーブラスト(3)する事で一枚ドロー!」

 

 次にグレード1のサーチだが、この手札だと無難にハルブを持ってくるか。

 

「更にバーのスキルを発動! カウンターブラスト(1)を行い、山札からグレード1のカード──《ドラグリッター ハルブ》を手札へ加える」

 

 そして今から使うこのカードこそが、俺のデッキの足りなかったものを埋めてくれるキーカードだ。

 

「オーダーカード、《紅蓮に染まりし、黙示録の炎(スカーレット・フレイム)》を使用! 一枚ドローし、手札から《ベリコウスティドラゴン》を公開し(R)へコールする。そしてパルナセトラを退却させる!」

「うぐ……」

 

 右前列にベリコウスティをコールさせ、エリカの前列に居たパルナセトラを退却させる。

 

「ベリコウスティのスキル発動! エネルギーブラスト(3)と手札をソウルに入れて二枚ドロー!」

 

 さて、バトルといこうか。

 

「ネハーレンでアタック! ベリコウスティは自身のスキルでパワー+5000!」

「ノーガード!」

「ドライブチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ベリコウスティのパワー+10000、ネハーレンのクリティカル+1!」

 

 これでエリカのダメージは三点。三点か。ベリコウスティに視線を落とし、攻撃するか一瞬考える。

 邪竜(ファーヴニル)としての勘が囁く。攻撃するよりもここでダメージを止めておいた方がいいな。

 

「ターンエンドだ」

「ッ! ……私のターン、スタンド&ドロー!」

 

 ダメージを三点で止めた理由。エリカも気付いただろう。俺のヴァンガードはグレード3でもないし、リィエルのディバインスキルは使えない。

 頼みの綱のガブエリウスによるドライブチェックも、スキルを発動させる為の条件が整っていない。全力攻撃は事実上封じたと言っていいだろう。

 

「──私は負けない! ケントを倒して先に進むんだッ!! 運命の翼、未来よりここに! 《聖なる時の運命者 リィエル=ドラコニス》にライド!!」

 

 彼女の決意と共に、進化したリィエルが俺の前に姿を現す。

 明星(ほし)は瞬き、北極星(みちしるべ)の傍で輝く聖竜の星座(ドラコニス)を成した。あぁ、確かにこれは素晴らしい。

 もしこの場に立っていたのが邪竜(ファーヴニル)ではなく竹松ケント(■■■■)であったならば、ファイトの流れを持っていかれていただろう。

 

「エルジェニアのスキル! ドロップから《ぐらがおん》‎、《断裂の騎士 セリヴァント》、《明刃の騎士 レリジアル》を山札へ戻して一枚ドロー! 更にレリジアルをコール!」

 

 右前列にレリジアルがコールされる。

 

「レリジアルのスキル発動! ソウルブラスト(1)する事で、山札の上七枚から《聖竜 ガブエリウス》を手札へ加える! セリヴァントを後列へ移動させ、ガブエリウスをコール!」

 

 セリヴァントが左後列に移動し、空いた左前列にガブエリウスがコールされる。

 

「リィエル゠ドラコニスのスキル発動! エネルギーブラスト(4)とドロップのパルナセトラをバインドし、ドライブ+1!」

 

 これで準備は整ったか。

 

「ガブエリウスでアタック!」

「手札のベリコウスティでガード」

 

 ブーストなしのガブエリウスであれば、5000シールドで防げる。問題はない。

 

「リィエル゠ドラコニスでアタック! リィエルのスキルでガブエリウスをバインドし、ガブエリウスをコール!」

「ノーガードだ」

「──トリプルドライブ!!」

 

 さぁ分水嶺だ。ここでどれだけのダメージを与えられるか。是非とも見せてもらおう。

 

「ファーストチェック──ゲット、クリティカルトリガー! レリジアルのパワー+10000、リィエルのクリティカル+1!」

 

 一度目。邪竜(ファーヴニル)の勘は何も反応しない。まるで何が当たろうとも問題が無いとでも言うように。

 

「セカンドチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ガブエリウスのパワー+10000、リィエルのクリティカル+1!」

 

 二度目。邪竜(ファーヴニル)の勘は何も反応しない。まるで何が当たろうとも問題が無いとでも言うように。

 

「サードチェック──よしッ!! ゲット、クリティカルトリガー!! ガブエリウスのパワー+10000、リィエルのクリティカル+1!!!」

 

 三度目。これで何も出なければ俺の負けは決まったようなものだが──邪竜(ファーヴニル)の勘は、何も反応しない。あぁ、あぁ。なるほど。

 ここに至ってようやく理解した。つまりお前は──邪竜(ジエンド)はこう言いたいわけだな。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と。いいだろう。お前とも永い付き合いだ。その傲慢に付き合ってやるともさ。

 あぁ、そうとも。()()()()()()()()()()()()()()邪竜(ファーヴニル)は、そしてジエンドはまだ終わらないのだと。

 

「ダメージチェック」

 

 一枚目、二枚目共にノートリガー。エリカの顔に希望の色が浮かぶ。だが、残念だ。その表情はすぐに曇る事になる。

 依然、邪竜(ファーヴニル)の勘は何も反応していないのだから。

 

「サードチェック──ゲット、ヒールトリガー。ネハーレンのパワー+10000、ダメージ回復」

「──グゥ……ッ!!? まだだ!! アルモーヴのブースト! レリジアルでアタック!!」

「《焔の巫女 パラマ》でガード。スキルによりシールド値+5000だ」

 

 フロントトリガーによるスキル込みの20000シールド。ヒールトリガーのパワー上昇も相まって、問題なくガード出来る。

 

「セリヴァントのブースト! ガブエリウスで──アタック!!」

「完全ガード」

「なぁ……ッ!?」

 

 持っていないと思ったか。確かに持っているならリィエルの攻撃に使っていた方が断然良かったのだろう。だが、これでいい。

 宿命決戦の延長戦での出来事、邪竜(ファーヴニル)の根幹である対人メタをすり抜けた事件は未だ風化していない。変に勝ち目を潰してしまえば、またぞろ超トリガーで戦況をひっくり返されかねない。

 エリカは逆境において輝くタイプだと言っていい。特に過去の輪廻のヒカリちゃんと比較しても、エリカのトリガー運は強い。

 オカルトめいた話ではあるが、対人メタを機能させる為には勝ち目を限定させる必要があった。──だからと言って三回連続クリティカルトリガーを普通に引いてくるあたり、さすがと言うかなんと言うか……。

 

「タ-ン、エンド」

「俺のターン。スタンド&ドロー!」

 

 では始めようか。最早後がない状況だが、邪竜(ファーヴニル)の勘は沈黙したまま。つまりは何も問題が無いという事だ。

 

「決着をつけようエリカ。このターンで俺は君に勝つ」

 

 一方的な勝利宣言にエリカは顔を歪める。悪いが付き合ってもらうぞ。今ここに立っているのは邪竜(ファーヴニル)なのだから。

 

「甦れ! 世界の果てまで蹂躙する久遠劫の黙示録! ライド──《ドラゴニック・オーバーロード》!」

 

 ライドラインはジエンドからオーバーロードへ変えている。もうわざわざほかのカードを使ってソウルを埋め込むという真似はしなくてもよくなったからだ。

 

「ライドコストの《壮鱗の大炎斧 カルガフラン》のスキル発動! ソウルブラスト(1)とカルガフランを山札に戻して一枚ドロー! 更にネハーレンは自身のスキルでソウルからコール!」

 

 左前列にネハーレンをコールする。後はジエンドと両側のブースト要員か。

 

「ドロップの《紅蓮に染まりし、黙示録の炎(スカーレット・フレイム)》の効果により、エネルギーブラスト(3)とこのカードをバインドし、山札から《ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド》をライドさせるッ!!」

 

 このカードのお陰でデッキ構成を大きく変える事が出来た。最早以前とは比較にならぬ程の安定感を手に入れた。過去の輪廻でプロとして最も愛用したデッキなのだ。

 

「終滅せよ! 運命(さだめ)(くびき)を打ち砕き、この手で奇跡を簒奪せしめん! スペリオルライド──《ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド》!」

 

 勝つための準備を着々と積み重ねていく。このターンで全てを決する為に。

 

「ネハーレンのスキル発動! ソウルブラスト(1)する事で自身とヴァンガードのパワー+5000! 手札から《忍妖 シェンリィ》を二枚コール」

 

 左右の後列にシェンリィが並ぶ。これだけでは並みのブースト要員でしか無いが、オーダーを使う事で更にパワーを上げる事が出来る。

 

「オーダーカード、《竜魂共鳴(ドラグレゾナンス)》を使用! ヴァンガードがスタンドした時、一度だけ前列のパワー+10000させる!」

 

 これで準備は整った。攻撃開始だ。

 

「ジエンドでアタック! ベリコウスティは自身のスキルでパワー+5000!」

「《天音の楽士 アルパック》でガード! スキルにより自身のシールド+5000! 更にレリジアルをインターセプト!」

「ツインドライブ!」

 

 なるほど、合計25000シールドで合計38000。ジエンドのパワーは合計23000だから、貫通させるにはトリガー二枚が必要になる、と。

 ファーストチェックはノートリガー。この時点で貫通は無くなった。

 

「セカンドチェック──ゲット、フロントトリガー! 前列のパワー+10000! バトル終了時にジエンドのスキル発動!! 手札のハルブを捨てて自身をスタンド! ハルブは手札から捨てられた時に後列の(R)へコールされる! 更に自身のパワー+5000! 《竜魂共鳴(ドラグレゾナンス)》の効果で前列のパワー+10000!」

 

 空いていた中央後列にハルブがコールされる。さぁ、次は全力で殴りに行くぞ!

 

「ハルブのブースト! ジエンドでアタック! ベリコウスティは自身のスキルでパワー+5000!」

「《時の運命者 リィエル=アモルタ》 でガード! 手札から一枚捨ててバインドゾーンのカード二枚をデッキに戻し、そのアタックはヒットしない!」

「ツインドライブ! ファーストチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ネハーレンのパワー+10000! クリティカル+1!」

「また、トリガーをッ!?」

 

 三連続でクリティカルトリガーを出したミラクルガールに言われてもな。それに、まだ俺のドライブチェックは終わっていない。

 

「セカンドチェック──さて、エリカ。お前の奇跡はまだ残っているか? ゲット、オーバートリガー!! 一枚ドローし、ジエンドのパワー+1億! 更にオーバートリガーである《再起の竜神王 ドラグヴェーダ》の効果により、ジエンドは再びスタンド!!」

 

 三回目のアタックだ。エリカの手札は三枚。その内の二枚は前ターンで一気に手札に引き入れたクリティカルトリガーだ。さぁ、完全ガードは残っているか?

 

「ジエンドでアタック! ベリコウスティは自身のスキルでパワー+5000!」

「──完ッ全ガードォ!!」

「ツインドライブ!」

 

 これでエリカの手札は一枚。15000シールドのクリティカルトリガーのみ。もうガードは出来ない。

 

「セカンドチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ベリコウスティのパワー+10000、クリティカル+1!」

 

 ギリリ、とエリカの歯軋りが聞こえてくる。君は確かに強かった。けれど俺は邪竜(ファーヴニル)として──運命と世界を敵に回した者として。まだ負けられないんだ。

 いずれ現れるであろう勇者(シグルド)と巡り合うまでは。

 

「俺は不滅の邪竜(ファーヴニル)! 聖なる時の運命者であろうとも、我が覇道は止められない! シェンリィのブースト、ネハーレンでアタック! シェンリィは自身のスキルでパワー+5000!」

「ノー、ガード!」

 

 これでエリカのダメージは五点だ。

 

「……これが、ケントの──いえ、邪竜(ファーヴニル)のファイトなの?」

「そうだ! これこそが世界を呪い、運命を恨み、全てを破壊すると誓った邪竜(ファーヴニル)の戦いだ! 邪悪なる奇跡の簒奪者として、わずかな光を引きずり下ろす為の力だッ!!」

 

 そうしなければ救えないと思っていたから。旅路を照らす星明りに導かれ、手を伸ばすだけでは足りないと理解したから邪竜(ファーヴニル)が完成したのだ。

 

「これが最後の攻撃だ! シェンリィのブースト! ベリコウスティでアタック!!」

「ノーガード!!」

 

 ベリコウスティのクリティカルは2。ダメージ五点のエリカでは到底耐えられないだろう。

 

「ダメージチェック、一枚目──ゲット、ヒールトリガー! ダメージを一点回復!」

 

 いや、本当にトリガー運が強い。三回目のジエンドのアタックでクリティカルトリガーを引いてなければ確実に負けていただろう。だが──。

 

「二枚目──ノー、トリガー……ッ」

 

 エリカのダメージが六点に達した。この場は俺の、邪竜(ファーヴニル)の勝ちだ。エリカには悪いが、俺が決勝に進ませてもらう。

 

「はぁ……。まさかデッキを新しく組み直してくるなんて」

「研究されている事は分かり切っていたからな。それに去年のリベンジを果たせて何よりだよ」

「じゃあこれで一勝一敗ね。──次に勝つのは私だから」

 

 エリカの清々しい宣言に、俺は笑いながら答える。

 

「いいや、次も勝ちは譲らないさ」

 

 デラックスも残すところ後二試合。次のミチルさんとアキナのファイトで、俺の相手が決まる。四炎か、それとも奇跡か。

 ──どちらでも構わない。舞台に上がれば、邪竜(ファーヴニル)の爪牙で蹂躙するだけだ。誰であろうと、負けるつもりなど無いのだから。




次話もファイト描写がある為、時間を頂きます。
少しリアルでの用事もあるので今まで以上に時間がかかるやも知れませんが、ご了承ください。
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