次の話からアニメSeason2の話に入っていきます。
また、次の話も今書いているところですので、もう少し時間をください。
更新は相変わらず不定期です。
運命大戦の最終戦が幕を開ける。アキナが生きて未来を掴み取るか、それとも零の力に飲み込まれるかの一戦。
昨日から一日中、魄山の大舞台の近くに居たが、結局あの異質な力の発生は無かった。
『──奇跡の運命者よ。君は己が破滅の道を進むとしても、願いに手を伸ばすかね?』
変装していた時にアキナと出会ってしまった際に俺が聞いた言葉だ。こんなもので止まるとは思わなかった。実際、アキナの返答は俺の予想通りのものだった。
『俺は願いの為に戦い続ける! 絶対に!』
明導アキナは諦めない。何が彼を突き動かすのか、今までの輪廻では謎だったが、今生でその理由の一端を知れた。過去の事故でヒカリちゃんを救えなかったという後悔が、彼の始まりなのだろう。
成程、それがアキナの原動力であるならば最早他人の言葉では止まらない。かつて何も出来なかったものに手が届くかも知れないと言うのなら、必ずアキナは手を伸ばし続ける。
過去の輪廻の中でも、明導アキナは戦う事を自ら辞める事は無かった。俺が対戦相手に梃入れを行って脱落させた事もあったが、運命大戦から背を向ける事は無かった。
『わずかな光でも手を伸ばした者にのみ奇跡は舞い降りる』
原初の記憶。星の一生すら届かぬ程の旅路の中で、決して色褪せない宝物の一つ。
この言葉とヒカリちゃんへの恋心こそが、俺の暗い旅路を照らして導いてくれた星明り。だからこそ俺も見守ろう。
少し離れた場所に陣取り、明導アキナと呼続スオウのファイトを見守る。アキナが負ければ全員死ぬ。
だけど勝てばヒカリちゃんの病気も治るし、全員助かる。──時間の矯正力によって消滅する未来のヒカリちゃんを除いて。
「ディヴァインスキル、発現──!」
そしてファイトはクライマックスだ。《零の運命者 ブラグドマイヤー》のディヴァインスキルによって、《奇跡の運命者 レザエル》の能力と完全ガードを封じられた。
運命の分水嶺。過去の輪廻ではここでアキナの命脈が断ち切られた。今回はどうだ? ヒカリちゃんが独りで苦しみながらも手を伸ばした先は、アキナを生かすのか。
俺の目には二人のファイトによるイメージがハッキリと見える。虚無に囚われたレザエルに対して、ブラグドマイヤーの刃が振るわれた。
奇跡は──。
「ガードッ!! 《時の運命者 リィエル=アモルタ》!」
──起きた。
「……バカな、時の運命者……だと?」
「リィエル=アモルタのスキル発動! (G)に置かれた時、手札を一枚捨て、バインドされたカード二枚をデッキの下に置く事でアタックはヒットしない!」
おそらく、ヒカリちゃんがアキナへと託したのだろう。効果はほぼ完全ガードだが、
「分水嶺を、超えた──ッ!」
俺が歩んだ輪廻では最後のピースが埋まらなかった。未来のヒカリちゃんが居なければ、アキナの命を救った《時の運命者 リィエル=アモルタ》も無かった。アキナを救う鍵は、ヒカリちゃんだった。
アキナがファイトに勝利して、奇跡の運命者の力が世界へ降り注ぐ。これでこの世界のヒカリちゃんの身体も治る。二回目の運命大戦で確認済みだ。
これで運命大戦は終わった。──終わってしまった。奇跡の残骸を抱えた、俺を残して──。
◆
「何であなたがいるの?」
「……どうして、だろうな……」
運命大戦が幕を閉じ、みんなは各々の日常を謳歌している。だが俺は胸騒ぎが止まらなかった。
結局、魄山の大舞台に混ざった異質な力に動きはない。時間が無為に過ぎ、そして俺は現実を直視する時が来た。
何気なくビルを見上げると、その屋上にヒカリちゃんの姿が映った。だから、俺は今ここにいる。
「お兄ちゃんもそうだけど、ケントさんとも会わないつもりだったんだけどな」
ビルの屋上で見下ろす先に、アキナ達の姿がある。コックミリオンで食事をした帰りだろう。そこからストレイキャットにでも寄って、カードファイトを楽しむのだろう。
奇跡の後の日常。俺が追い求めた未来そのもの──だと言うのに。
「あなたもこの光景を望んでいたんでしょ? どうしてそんなに悲しそうなの?」
「──お、れ……は」
視界が滲む。涙が止まらない。時の運命者の力が消えて、今ヒカリちゃんが時間の矯正力に攫われ、消滅しようとしている。
「俺は、救いたかったんだ。アキナを、ヒカリちゃんを──君をッ!」
「私にはこの世界で居場所なんて無いのに?」
「……それでも、俺は君にも生きてほしかったんだッ!! 俺が居場所になるなんて自惚れた事は言えない! けど、だけどっ! 断言出来る事が一つあるッ!! 君が、居場所を見つけられるまで、俺は絶対に手を伸ばす! 伸ばし続ける!!」
「っ、意味、分かんない。あなたもお兄ちゃんみたいに責任感じてる? あなたの過去に何があったか知らないけど、そこに
既にヒカリちゃんの身体は消える直前だ。咄嗟に手を伸ばしても、もう空を切るばかり。
「関係ない! 関係ないんだよ!! 何度輪廻を繰り返そうと、俺の真実は一つだけだ!!」
「今更何を言っても──ッ!!」
「俺はッ!! 君に──明導ヒカリに、恋をしたんだッ!!」
「……え?」
涙ながらに叫ぶ俺の言葉に、ヒカリちゃんはただ呆然とする。ヒカリちゃんにとって思ってもみなかった言葉の筈だ。俺はずっと心に秘めていた事を、洗いざらいぶちまける。
「君の笑顔が! 強さが! 優しさが! ずっと好きだった! アキナのような理由なんかじゃ断じてない!! 俺は君が好きだから! だから、助けたかったんだよッ!! 愛する女の子に、生きていてほしいと願うのは、そんなに駄目な事なのか──!!?」
「そ、れは──ッ」
「必ずだ! 約束するッ!! 必ず君を見つけ出して、今度こそ救って見せるッ!! 那由他で足りないなら、不可思議、無量大数、その果てにいくら桁を重ねても!! 俺は必ず君と出会う!! だから、だからッ! 君も、生きる事を……諦めないでくれ……ッ!」
呼吸が続かない。もう自分が何を叫んでいるのか分からない。悲しみと絶望で足元がふらつく。だけど、だけど俺は──。
「約束」
「……えっ?」
ポツリと、ヒカリちゃんが呟く。一筋の涙を流しながら。
「約束、だから。ケントさんが諦めないなら……私も待ってる。だから……っ」
「──ッ! あぁ、約束だ! 絶対に、絶対に見つけ出す! そして、今度は必ず救う!! 救って見せる!!」
俺の言葉にヒカリちゃんは微笑んで、そしてそのまま消えた。まるで最初から誰も居なかったように、世界から消え失せたのだ。
「……ぅ、ぁぁ……ぁぁぁああああ……っ」
俺は、諦めない。俺の旅路はまだ終わっていない! 立ち止まってなんかいられるか!! ヒカリちゃんが待っているんだ!!
けれど、自分にそう言い聞かせても涙は止まってくれない。俺は、俺は、歩き続けなけれ、ば──。
「うあああぁぁああ、ああぁぁあああ──ッ!! クソ、クソ、クソォ!! 気合入れろよ竹松ケント!! お前が、お前が言い出したんだろうがッ!! 助けるんだろ、ヒカリ、ちゃんを……ッ!! こんな、ところで……泣いてる場合じゃ、ねぇ、だろうがッ!! クソッ! クソッ! クソがああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今は、まだ歩けない。ごめん、ごめんよヒカリちゃん。俺は君を失ってばかりだ。
ヒカリちゃんはアキナを未来へ連れて行った。なら、次は俺の番だ! 待っててくれヒカリちゃん。今度こそ、必ず君を──未来に連れて行くッ!!