10月
「クルスト博士、これはどういうことです?」
まだ、7月に6歳になったばかりの幼い少女は木星帰りの男シャリア・ブルと親衛隊の武官たちを率いてクルスト・モーゼスら研究員たちを睨みつけていた。
その眼前には手術台に乗せられ、まさに生きたまま解剖されようとしていたマリオン・ウェルチの姿があった。
「生きた人間を機械に組み込むなど。人としての道を外しています。貴方達、こいつらを逮捕しなさい!」
「「はっ!」」
フラナガン機関で研究をしていたクルスト・モーゼス博士が逮捕される。
博士の研究は対ニュータイプ兵器の研究で、ノーマ派のNTであるマリオン・ウェルチに対して著しく人権を無視した行為を行おうとしたとされる。
「マリオンさん、大丈夫ですか?」
「はい、姫様…助かりました。あと少しで、私…。」
「清濁併せのむ必要がある事は知っている。でも、限度はあるわ。」
フラナガン機関の存続にもかかわる事件だった為、公表は避けられた。
その為、EXAMシステムはニュータイプの協力なしで研究が続けられるが閉鎖前提の日陰部署となり、コンセプトが大幅に変更された結果、マリオン・ウェルチら非戦闘向けニュータイプによるオカルト的なバフが掛かるシステムとして完成し計画は完了となった。一応ゲルググ、ギャン、イフリートのEXAM搭載機が存在する。
また、現行のEXAMシステムの運用部隊の隊長にはニムバス・シュターゼン少佐が選ばれておりEXAM援護システムの運用にマリオン・ウェルチが担当した。
ジャブローの密林地帯が急速に枯れていくという異常事態に陥り、ジャブローの侵入口がジオンに発見される可能性が出てくると連邦軍は地上における大規模反攻作戦オデッサ作戦を立案するに至った。
ガルマ・ザビ大佐、少将に昇格。この際に北米方面軍司令ウォルター・カーティス大佐に軍籍を離れたい旨を吐露している。
イセリナの事をぼやかして吐露していたが、察したカーティス大佐にご兄弟に相談されてはと提案されたとされる。
10月
2日、V作戦に続きG兵器開発計画をキャッチ。これを最初にキャッチしたのはプラントでありザフトの精鋭クルーゼ隊を派遣した。
中立国であるオーブの資源コロニーである「ヘリオポリス」で開発されていたのだが、比較的穏健なジオンなら「ヘリオポリス」を襲撃を躊躇しただろうが、プラントは一切躊躇しなかった。開発されていた5機のうちストライクを除く4機(イージス、デュエル、バスター、ブリッツ)が強奪され、さらにクルーゼ隊の攻撃やストライクの抗戦などによりヘリオポリスが崩壊したのだった。さらにはアークエンジェルが避難した宇宙要塞アルテミスがザフトの攻撃で崩壊してしまった。
V作戦の失敗もあり、最後の希望となっていたG計画は主導した地球連邦軍第8艦隊のデュエイン・ハルバートン准将のみならず、レビル将軍も期待をかけていた。アークエンジェルとストライクは何としても守らなければならない存在であり、第8艦隊に加えルナツーの残存艦隊も同宙域へ向かっていたのであった。ルナツーにはグリーン・ワイアット大将が赴任予定であったが、まだ着任していなかったため臨時措置としてヴォルフガング・ワッケイン少佐を野戦任官にて大佐に引き上げることで所属もバラバラなルナツーの艦艇を糾合させた艦隊を率いさせてハルバートン准将の第8艦隊に合流させる予定だ。なお、サイド7駐留で温存されていた第8艦隊以外の艦隊は一週間戦争やルウム戦役で壊滅し再編もしくは新規編成を待っている段階だった。この二つの艦隊は12日、後に低軌道会戦と呼ばれるG兵器を巡る戦いに挑むのであった。
第8艦隊はアガメムノン級戦闘母艦1隻、ネルソン級巡洋艦18隻、ドレイク級駆逐艦10隻、マルセイユ級輸送艦2隻。急行中のルナツー艦隊はマゼラン級戦艦3隻、サラミス級巡洋艦23隻、ネルソン級巡洋艦11隻、ドレイク級駆逐艦12隻、レパント級フリゲート12隻、アンティータム級補助空母1隻、コロンブス級輸送艦4隻、超長距離砲艦サントメ・プリシンベ1隻であり、ルナツー艦隊は本来のルナツー艦隊と先の戦闘で壊滅した艦隊の残存稼働艦の寄せ集めである。
「少々数が多すぎる。周辺の友軍に支援要請を出せ。ジオンにもだ。」
「ジオンにもですか?」
「やつらもV作戦とか言うMS開発計画を潰したばっかりだ。もう一つの方も潰したいだろう。乗ってくれるさ。」
アークエンジェルの護衛に実質二個艦隊を連邦が費やしたことで、クルーゼ隊の隊長ラウ・ル・クルーゼは独力での任務達成は困難と判断し周辺の友軍に支援を要請、同宙域にはクルーゼ隊からの支援要請に応えたザフトの哨戒艦隊、ジオンのキャメルパトロール艦隊、近郊宙域で訓練中だったコンスコン機動艦隊、同じく訓練中だった宇宙革命軍の新設艦隊が集結した。
「ハルバートン達はどうあってもあれを地球に降ろす気だ。大事に奥にしまい込んで何もさせんとは…。」
「こちらは楽ですが……ストライクも出てきませんし…。」
「戦艦と戦闘機では、もはや我々に勝てんと知っている。良い将だよ。あれを作らせたのは彼だと言うしな。なら、その自説…我々が証明してあげようではないか。」
クルーゼは艦長のアデスとそのような会話をしながら不敵に笑いながら第8艦隊に視線を向けた。
『アークエンジェルは直ちに降下準備に入れ!限界点まではきっちり送ってやる。送り狼は1匹も通さんぞ。』
「閣下…。」
ハルバートンの手塩にかけた部下であるマリュー・ラミアスはハルバートンの決意に心打たれた様子であった。
『メネラオスより各艦、ハルバートンだ!本艦隊は大気圏突入限界点までのアークエンジェル援護防衛線へ移行する。厳しい戦闘になるとは思うがアークエンジェルは明日の戦局のために決して失ってはならぬ艦である。第8艦隊の意地にかけて1機たりとも我らの後ろに適を通すな!』
「ハルバートンめ!第8艦隊を盾にしても足つきを降ろすつもりか!?追い込め!降下する前に何としても仕留めるんだ!」
第8艦隊がその身を盾にしてもアークエンジェルを地球に降ろそうとしていることに気が付いたクルーゼは友軍の到着が完全でないままに攻撃を開始する。
クルーゼ隊だけでも十分に第8艦隊を押し込んでいた。
『こちら、第38哨戒艦隊。これより攻撃に加わる!』
『ジオン公国宇宙攻撃軍所属、キャメルパトロール艦隊。これより攻撃に参加する!』
「援軍が来たか。このまま押し込んで墜としてしまえ!」
ザフトの援軍やジオン軍までもが参戦してきたこともあり、アークエンジェルもストライクとメビウス・ゼロを出撃させる。
「艦長、ギリギリまで俺たちを出せ!何分ある?」
「何を馬鹿な!?」
「カタログスペックではストライクは単体でも降下は可能です。このままじゃメネラオスも危険ですよ!艦長!」
「わかった。やってみろ。ただし、3分前には戻れ。スペック上では可能でも試したことはないんだ。中がどうなるかは知らないぞ。高度とタイムには注意しろ!」
「バジルール少尉!」
「ルナツー艦隊が来れば状況は変わります!それまではなんとしても持ちこたえなくてはなりません!」
「………わかりました…許可します。でも、必ず3分前には戻ってきてください。わかりましたね!」
ローラシア級が爆散する。
「ルナツー艦隊か!?」
「しかし、まだ距離が…いえ、新型艦がいます!」
「コロンブス輸送艦の三胴艦…噂の超長距離砲艦か。」
クルーゼ隊がサントメ・プリシンベに視線を向けてすぐにサントメ・プリシンベが爆散する。
「コンスコン機動艦隊来援!」
「あの、白いザク…白狼か?それにジオンの新型もいるな。それに革命軍もいるようだ。いやはや、まだ私にも運はあるようだ。」
コンスコン機動艦隊がルナツー艦隊に寡兵ながらも喰らいついている。それもかなり深手を負わせているようだ。
この時点でクルーゼ隊、哨戒艦隊がナスカ級高速戦闘艦1隻、ローラシア級MS搭載艦8隻。ジオンのコンスコン機動艦隊とキャメルパトロール艦隊がチベ級高速重巡洋艦5隻、ムサイ級軽巡洋艦7隻、ガガウル級駆逐艦4隻。コンスコン機動艦隊の嚮導を受けていた宇宙革命軍の国産艦であるアストラーザ級巡洋艦1隻と中古購入や鹵獲艦のガガウル級駆逐艦2隻とレパント級フリゲート2隻が集結した。数だけで見れば5倍近い敵を相手取って有利に動いていた。
「前に出過ぎるな!数の上ではこっちが圧倒的に不利なんだ!敵の新型艦を落とせたのは良いがマツナガ大尉が孤立してしまう!ツェーンの隊に迎えに行かせろ!カヤハワ隊はツェーン隊の穴を埋めるんだ!革命軍にはこちらとの距離を開けないように伝えろ!隙を突かれたら一瞬だぞ!ランスロー中佐なら解っているはずだ!」
コンスコン少将はかなり緊迫した状況で冷や汗を流しながらも着実に対応している。
宇宙革命軍のランスロー・ダーウェル中佐も有能な人物であり、コンスコン機動艦隊と連携を密にし連邦軍を捌いている。
実際にはルナツーの残存糾合艦隊は規模としては圧倒的過小なコンスコン機動艦隊の妨害で足止めを受け第8艦隊の救援に至っていない状態であった。ルナツー艦隊はルウムでの敗残艦や新生からの脱出艦、それこそ一週間戦争の生き残りなどの糾合艦隊であり、指揮系統の統合すら略式でおざなりな為、連携に齟齬が生じやすく、その隙を完全に突かれた形であった。また、コンスコン機動艦隊自体もリック・ドムが配備され、宇宙革命軍との合同訓練のために機動艦隊以外のジオン艦艇も加わっており、直前まで合同訓練をしていた為、宇宙革命軍含め連携がとりやすい状態であったことが形勢に影響した。
クルーゼ隊他ザフト軍とキャメルパトロール艦隊がアークエンジェルを取り逃がしはしたが第8艦隊を壊滅させると、ルナツー艦隊の方へ矛先を向けた矢先。連邦のルナツー艦隊は撤退を開始した。
クルーゼ隊は鹵獲ガンダムの2機が降下軌道に入ってしまった為、急ぎ隊の地球降下を行うための支度の為にその場を足早に去っていった。
コンスコンは事後処理の関係もありキャメルパトロール艦隊のドレン大尉と通信を開いた。
「ふん、ザフトめ。手を貸してやったのに礼の一つも無しか。」
『コンスコン少将、実は連邦の新型なのですが実弾が効いていなかったようなのです』
「ザフトの連中はなんと?」
『いえ、機密の為、情報の開示は出来ないの一点張りで…。』
「正式な同盟を結んでいないとは言え、実際は同盟関係のようなものではないか。どちらかと言えばこちらが尻を拭いてやったようなものだ。連中は信用ならん。連携できている分宇宙革命軍の方が良いくらいだ。戦闘データは?」
『あります。ドズル中将に報告します。』
「そうか。今後の為にも、こっちにもデータを送ってくれんか?ワシからもドズル閣下に一言添えたい。」
『わかりました。すぐ送ります。』
「しかし、連邦もルナツー艦隊だけであれだけの数を、もう揃えたのですね。」
二人の会話に今回の合同訓練の拡張艦隊を率いて来たマツナガ大尉の言葉に二人は頷いて答えた。
ジオン宇宙軍は連邦の回復速度に日増しに警戒感を強めていった。