20日
宇宙要塞ルナツー
対ザフト・対ジオンの反攻作戦発動に伴い要塞内の生産工場はフル稼働しており、量は限られてはいるものの地上からも兵力が運び込まれ戦力は回復したと言える。後は地上からの本格的な増援を待つばかりとなったルナツーではあるが、宇宙軍の将校たちは地上から発せられる不穏な空気を感じ取っていた。
宇宙での反攻作戦に備えて着任していた将校たちが話し合っていた。
「レビルもゴップも死んでしまった。」
「政府も軍も理性がどこかに吹き飛んだようだ。」
「この戦争はどこで終わるんだ。」
グリーン・ワイアット大将、マクファティ・ティアンム大将、ジョン・コーウェン中将、ヴォルフガング・ワッケイン少将であった。
「地上からはウィリアム・サザーランドとブライアン・エイノー。あとバスク・オムが上がって来るそうだ。」
「あの危険思想どもか?上は何を考えているんだ?」
「上がコリニーとハイマンだ。上も下も過激派ばかりだよ。」
「あいつらは絶滅戦争でもやるつもりか。」
「馬鹿な…。そんなことを始めたら日和見していたサイドだってなりふり構わず抵抗するぞ!?」
「奴らそれも混みなのかもしれんな。」
まぁ、見てみろ。ワイアットが資料をテーブルに投げ出す。
「うっ、なんだこれは・・・。強化人間なのか?」
「今は生体CPUと言うのが主流だ。」
「の、脳みそに電極を差し込んでる…。」
新型のMAの情報を見て余りの非人道的さに彼らは慄いた。
「ペルグランデとか言うらしい。無人の浮遊砲台を複数操れるらしい。サザーランドとバスクは宇宙人どもをたくさん殺せると大喜びだそうだ。」
「いつから連邦軍は子供アニメの悪の組織になったんだ。」
「ブルーコスモスが幾らかでも首を縦に振る可能性があるジオンとは停戦したい…放っておくと連中は間違いなく暴走する。」
ドズルより緊急報告を受ける。
「兄貴!ルナツーに連邦の艦隊が集結している。敵の目的はわからんが警戒する必要はありそうだ。」
地球連邦軍は軍部を刷新してルウム戦役で失った宇宙艦隊を籠っていたルナツーや月面基地で再建し、大規模な宇宙での反攻作戦を開始しようとしていた。
ジオンでもギレン、ドズル、キシリアの三者会談が開かれる。
「連邦艦隊の規模から考えて地上同様に目標は2つほどあるだろう。我が軍のソロモンとザフトのボワズ…どちらが本命かはわからんが…。キシリア、増援は出せるな。」
「無論です兄上。できる限りの戦力を出しましょう。」
「戦いは数だよ!兄貴!ア・バオア・クーの戦力を今すぐ振り向けてくれればいい!偉そうにふんぞり返っているだけでなく。勝てる手立てを!!」
「振り向けるよ。出撃準備をさせている。後は命令書通り作戦を遂行すればいいのだよ。ドズル…。キシリアもな。」
「はい、兄上。」
キシリアの通信が切れる。
「ドズル…支えてくれればジオンは勝つよ。」
ドズルが通信を切ろうとする。
「待て、まだ話すことがある。」
「先ほど援軍の話はしたが…、参戦は様子を見たい。」
「兄貴!?どういうつもりだ!!ソロモンを見捨てるのか!!」
「…連邦軍の新型の大量破壊兵器の情報をキャッチした。ザフトのボアズか我が方のソロモンに使われる可能性が高い。」
「核兵器ならザフトから同盟の手土産にニュートロンジャマーを貰った筈だ。ソロモンにも敷設している。それに連邦とは南極条約を結んでいる。」
「連邦はジャブローで味方を巻き込み自爆した。オーブ側の対応にも問題があったとは言え中立宣言をしたオーブを滅ぼした。最近の連邦はかなり過激になっている。何をしでかすかわからん所がある。」
「…兄貴、ソロモンが墜ちると思ってるのか?」
「そうだ。」
「おそらく、この情報はキシリアも把握しているはずだ。グラナダの援軍は間に合わないよ。」
「な…。」
「だが、見損なってくれるなよ。私とてソロモンは見捨てない。」
「兄貴。」
「ドズル、貴様は敵を引き付けつつ可能な限り多くの味方を維持しア・バオア・クーまで撤退して来い。」
「ソロモンを捨てると言うのは納得いかん!いくら敵の新兵器だろうとそう簡単にソロモンが落ちるかよ!」
「落ちないのなら、それに越したことはない。だが、その可能性は高いと考えている。趨勢が決したと判断したら即時撤退して来い。」
「だが!」
「ア・バオア・クーから差し向ける艦隊にノーマを乗せる。」
「あ、兄貴!?」
「これで私がソロモンの将兵は見捨てないと言うことは伝わったはずだ。敵の大量破壊兵器を捌き切れば五分の戦いに持ち込める。増援艦隊を加えれば逆転も可能だ。…これ以上は飲み込んでくれ…。」
「……わかった。姪っ子まで差し出されては…もう言えん。」
通信が切れる。
ギレンは今度は待たせていたセシリアたちから報告を聞く。
「ジオン・ルウム合同の開発チームからソーラ・レイ建造計画が提案されました。ソーラ・レイとは、コロニーを改造した直径6.5㎞、全長32㎞の巨大レーザー砲の事です。計画の採用をご検討ください。それと諜報部の報告書です。合わせてご検討ください。」
「ニュートロンジャマーキャンセラーか。連邦め、理性が飛んだか。こちらもソーラ・レイ計画を即時採用せねば。急ぎルウム政府と席を設ける。用意しろ。」
「はい。かしこまりました。」
セシリアに続いて今度はノーマがギレンに話しかけるがその態度はおもちゃをねだる子供の様だった。
「父上、エルメス3号機なのですが私に融通願いますか?」
「だが、あれはほとんど未完成ではなかったか?」
「機体そのものは戦闘に耐えうるものではありません、ですがビットだけなら間に合わせられます。それと、ギニアス・サハリンを呼び戻してください。宇宙の兵器開発を手伝っていただきたいのです。」
「そうだな。奴がいれば、ビグ・ザムだけでなく多くの兵器が実戦に出せるようにできる。手配する。それでいいな。」
「セシリア、父上につないでくれ。」
「かしこまりました。」
「父上、連邦との和平の進捗は如何ですか?」
「あまり芳しくない。連邦の本流が変わった様だ。今の本流は過激派だな。だが、旧本流から接触はあった。そこから繋げられればあるいは…。」
「そうですか。」
「ギレンよ…主戦派だった貴様が、ずいぶんと弱気だな。」
「父上、この戦争…すでに我々の手から離れました。」
ギレンは諜報部からの報告書のデータをデギンに送る。
「っ……戦争は化け物の様なものだからな。」
「一応手は打っていますが、落としどころを見つけないとなりません。」
「キシリアやドズルには?」
「ドズルに言っても仕方ないでしょう。キシリアは考えましたが、履き違えて謀略の道具にされては手間が増えますのでやめました。」
「そうか。そうだな。」
デギンはギレンに伺うような視線を送り、それを察したギレンは話すように促した。
「父上、何か?」
「ギレンよ。ガルマの事なのだが…。」
「父上も、ガルマを軍にやったことは後悔していたではありませんか。本人も納得しているのです。我々が口を出すべきではありません。ガルマもあれで軍での経験を糧にできているようです。」
「うむ、それはそうだがな。ガルマのその連れ合いの事なのだが…」
ギレンはかなりきつい口調でデギンに釘を刺した。
「父上、サスロの事を忘れたとは言わせませんよ。好きにさせるべきです…。諜報部の報告を介してですがイセリナ嬢は良縁の様に思いますが。」
サスロの件はデギンの中でも影を落としている内容であって、ギレンとドズルが連れ立って自身に抗議したこともあって、かなりの後ろめたさを持っていた。
「そうだな。ガルマの好きにさせよう。」
「それがよろしいかと。」