ルナツーから艦隊がソロモンに向け出撃したとの情報が届く。
ドズルは直ちに防衛線準備の命令と近隣サイドからの有志輸送船団の退去を指示。
有志輸送船団退去後。ザクフリッパーを中心とした偵察部隊からなる哨戒部隊から連邦の先鋒部隊の襲来が伝えられる。
「ドズル閣下、ソロモン宙域に敵部隊が侵入していきました。これより、衛星ミサイルによる攻撃を開始します!」
スペースデブリとして浮遊する兵器の残骸、手頃な大きさの岩塊に推進器を誘導装置を取り付けた質量兵器である衛星ミサイルが連邦艦隊に放たれる。これらの兵器はサイド1やサイド4が製造し有志船団が大量に運び込んでいる。
誘導装置が付いているとは言え命中精度はお粗末であったが、今次大戦で戦う力こそほとんど持っていなかったサイド1が地球連邦に一矢報いんが為に精力的に製造していたこれらの兵器は所詮はジオンのズボンの裾を掴んで隠れているだけの取るに足らない存在と思っていた連邦には想定外のダメージを与える結果となり貧乏サイドの意地を見せた形であった。
「ヨルムンガンドの射程に入りました!要塞砲兵隊!射撃を開始させます!」
防衛設備に導入されていた『超大型核融合プラズマ・ガン ヨルムンガンド』はルウムでの戦果を認められ要塞砲や防衛設備として重要拠点に配備されていた。
ルウム戦役において実戦投入されたMSに戦場の主役としての活躍の場こそ奪われたが、別働艦隊の旗艦を撃ち抜く金星を獲ったこともあり、砲としての有用性を示したこともあり固定砲台としては一定の評価を得ていた。
ヨルムンガンドは要塞砲として大いに活躍した。
サイド4で多く生産され運び込まれた防衛用戦闘人工衛星も連邦の足止めに一役買っていた。
「想定よりジオンの防衛線が厚い。」
連邦艦隊では艦隊司令官ティアンム大将が乗艦「タイタン」からソーラ・システム照射の号令をかける。
「ソーラ・システムが照射可能です。ソロモン要塞に照準を合わせます。」
「ソーラ・システム照射開始!」
「閣下!連邦軍が不審な動きをしています!?小惑星帯から光が!?」
「むぅ…ついに来たか!?連邦の新兵器が!!」
小惑星帯から放たれた光がソロモン要塞を飲み込む。
光が消えてすぐにドズルは被害確認を行う。
「うろたえるな!!このタイミングで連邦が大きく仕掛けてくることは予想できたことだ!!…報ぉ告ぅ!!」
「はっ!敵の新兵器です!レーダー反応なし!エネルギー反応なし!今の攻撃で防衛部隊の約30%が消失しました!運用に支障をきたした艦や機体があると思われます!ただちに確認します!」
「早くしろぉ!戦闘が可能な部隊は防衛線の維持に注力させろ!!……兄貴はあぁ言ったが連中はこれ以外にも核を使うかもしれん。……ソロモンを抜かせるな!!」
「第一防衛ラインが突破されました。第二防衛ラインの防衛衛星が反応!第一防衛ラインの部隊は第二防衛ラインまで後退します!!」
ソーラ・システム照射によって防衛部隊の3割が消滅、それ以外も多くの被害が出た。その為、第一第二の防衛ラインが瞬く間に崩れた。
ただ、ジオン側も大規模破壊攻撃を予測していた為ある程度の兵力を要塞内に退避させていた。これはドズルにとっても賭けに近かった。ザフト側に向かったジャミトフやアズラエルと言った常軌を逸した強硬派ではなく。常識的なティアンムであったことから条約破りはしないと相手の理性に賭けたのだった。その賭けは当たり、核の乱れ撃ちはザフトだけに切られた手札であった。
「第二防衛ライン突破されました!連邦軍、第三防衛ラインへ!要塞の防衛システム射程内!防衛システムを起動します!各部隊は第三防衛ラインへ!」
前線で傷ついたに兵力と要塞から出撃した兵力の入れ替えの混乱もあり第三防衛ラインを劣勢に…。
刻一刻と悪化していく戦況にドズルは立ち上がる。
「俺がビグザムで前線に出て指揮を執る!!ビグザムを用意せい!!」
「だ、ダメです!!閣下!?お待ちください!!」
ドズルの前に側近のラコック大佐が立ちふさがって制止する。
「閣下!!無茶はするなと総帥からも厳命されていたではありませんか!!閣下はソロモンの要なのです!!ここは抑えてください!!」
「どけ!戦況を変えるなら、これしかない!!」
「待ってください!!兵たちは戦っています!!ここは兵たちを信じて、ここで指揮を執ってください!」
「うぅ…すまない。少し熱くなり過ぎた。」
ラコック大佐の必死の説得により冷静さを取り戻したドズルは再び指揮を執る。
そこへ吉報が届き始める。
「グラナダの援軍艦隊のシャア大佐より伝令!我、敵新兵器に甚大な被害を与える!敵の二次攻撃の心配は不要!!」
「おぉ!!シャア!やってくれたか!!」
シャア・アズナブルは運を持っていた。グラナダの増援艦隊はソーラ・システムのある連邦艦隊の背後に回ることに成功した。シャア艦隊は戦力の一点集中を以てソーラ・システムの集光パネルや管制補助艦を破壊した。パネルの半数を破壊することに成功したシャア艦隊はソーラ・システムの無力化に成功したと判断し、連邦の後衛を斜めに打通しシャア艦隊はソロモンのドズルと合流した。
一進一退の攻防が続く。
「ドズル閣下!!ソロモン要塞内に敵戦力の一部が侵入したようです!!」
「閣下…。」
ラコック大佐がもはやこれまでと言うような視線を向ける。
「ぐぬぅ……遺憾ながら、要塞を放棄する!!これより撤退戦に移行する!!」
ソロモン司令部は撤収の準備を始める。
要員の一部が重要書類の破却や持ち出しをし始める。
「ゼナ様たちは、すでにグワリブでお待ちです。」
「すまんな。ラコック…。」
ドズルたちがグワリブに乗り込み、艦橋に立つ。ゼナがミネバを抱いて席についていた。
脱出するグワリブと入れ替わりにソドンが入港してくる。
「シャアか!おぉ、よく来てくれた!!」
「ドズル閣下ですか。すぐ隣の区画にも連邦が侵入していると聞き参上しました。グワリブ脱出まで時間を稼ぎます。」
「助かるぞ!シャア!頼んだぞ!」
「はっ」
グワリブに乗り込んだドズルは艦橋に立ちグワリブの発進を見守るシャアのガンダムに敬礼した。シャアからは自身に敬礼するドズルと深く頭を下げるゼナ。そして、ゼナに抱かれる幼いミネバの姿が見えた。
「無事を祈ります。ドズル閣下…。」
向こうからは見えていない事はわかっていたがMSの操縦桿から手を放しシャアも敬礼を返した。
グワリブがソロモンを脱出する。
シン・マツナガの白い高機動型ザクがグワリブの護衛に着く。
ドズルがソロモン離脱中の指揮はコンスコン少将が引き継いでいる。
「ど、ドズル閣下!?き、危険です!!」
臨時司令となったコンスコン少将からグワリブ離脱の支援を命じられたアナベル・ガトー大尉は敵の大将首を狙う連邦軍と戦っている機体を見て驚愕する。
ドズル中将は専用のザクでシン・マツナガの白いザクと背中合わせで戦っていたのだ。
「閣下!お下がりください!」
「おぉ!ガトーか!」
「心配するな!連邦の雑兵如きにやられる俺じゃない!」
「ガトー大尉か!助かる!第302哨戒中隊も撤退に協力してくれ!」
「りょ、了解した!」
「閣下!?ソロモンが!!」
マツナガ大尉の視線の先をドズルとガトーも見る。
「そ、ソロモンが動いている…。」
要塞内外での戦いの余波なのか。いかなる偶然かはわからない。
ソロモンをL5の前部へ移動した際に使用したエンジンが点火したのだった。
「月に向かっているのか。」