26日
ザビ家の兄妹たちが互いのホットラインを繋いで会合を開いていた。
「兄貴!ソロモンの防衛部隊が連邦を退けた!だが、損害が大きすぎる…。連邦軍との交渉が纏まるかはわからない。今は戦力の回復に努めてくれ!和平が成立するかはわからんからな!」
「兄上、停戦交渉の筈でした。父上の和平交渉は独断に近いようですがよろしかったので?」
「落としどころを探る頃合いではあった。成り行きを見守るのが良かろう。…とは言え、気は抜くなよ。今の連邦は鷹派が占めている。」
ザビ家の兄妹たちも和平交渉に関しては妨害も協力もしないとして成り行きを見守る姿勢を取った。
ドズル艦隊とノーマ艦隊はソロモン要塞の回収作業を行っている。
ただし、ノーマを始めとするNT部隊はサイド3への帰路に着いている。
ノーマ艦隊の指揮はデラーズ大佐が引き継いでいる。
また、オーブ国防軍残党とザフト軍クライン派・連合の離反者からなる三隻同盟も、ボアズ侵攻の際に核兵器が使用されたことを受けて、次はプラントが核攻撃される可能性と、ザフト側もニュートロンジャマーキャンセラーを用いた何らかの核兵器を用いる可能性が高いと判断、これにより勃発するであろう核戦争とジェノサイドを止めるために第三勢力として参戦している。
「……たかが3隻の軍艦で何ができると言うのだ?」
諜報部より三隻同盟の報告を聞いたギレン・ザビは一笑に付した。
専ら彼の注目はフォン・ブラウンの和平交渉にあった。
フォン・ブラウンでの会談は停戦こそ結ばれるだろうが連邦側の代表が旧主流の正道派であるグリーン・ワイアット大将と言うこともあって難航すると予想された。正道派も保守中道のやや鷹派の傾向があったからだ。
しかし、予想外の出来事が発生する。
26日
連邦のジャミトフ・ハイマン中将率いるプラント侵攻艦隊はエイノー、サザーランド、バスクの3個艦隊がザフト軍を半包囲する形でモビルスーツ・モビルアーマー部隊の衝突をもって開戦する。
「ピースメーカー隊出撃せよ。青き清浄なる世界の為に…。」
衝突後、頃合いを見計らったサザーランド少将の艦隊ピースメーカー隊を出撃させ、後期GAT-Xシリーズ3機に護衛させる。
ピースメーカー隊は核弾頭装備のMAメビウスとパブリク型突撃艇である。
ムルタ・アズラエルが乗艦しているドミニオン隊は右翼のバスク艦隊と共に戦っていた。
ドミニオンはバスク大佐の乗艦マゼラン級キリマンジャロに接近する。
「ジオン侵攻軍が勝手に和平交渉を始めたのは頂けませんね。ですが、プラント攻略はあっと言う間かも知れませんね。早い早い、核を撃たれちゃザフト自慢の要塞もさ。」
「アズラエル理事は敵軍とは言え核を撃つことに何とも思わないのですか?」
『バジルール中尉!敵は宙の化け物共だぞ!世界樹の悲劇を忘れたか!』
「ば、バスク・オム大佐!?」
「まぁまぁ、バスク大佐。彼女の様に核兵器に忌避感を持つ人たちがいるのは昔からですよ。」
『ふん、理事がそうおっしゃるなら構いませんが…。』
「ところで通信を繋げて来たんですから何か御用でも?」
『はい、そうです。特機部隊の投入をお願いします。あれはブルーコスモスと軍産複合体理事の許可が必要です。』
「あぁ…いいですよ。使っちゃってください。」
ドミニオンや他の艦艇からMS部隊が展開する。
「なんか……前よりいっぱい居そうだね。」
「ザコばっかってのも面白くねぇけどな。」
「どうでもいいよ。出ろって言われりゃ出て撃つだけさ。」
シャニ、オルガ、クロトのブーステッドマンの3人が出撃する。
「ガンダムベルフェゴールとペルグランデを出させろ!ピースメーカー隊攻撃開始!」
「っは!」
準ペガサス級グレイファントムから対NT用MSガンダムベルフェゴールを先頭にドートレスが編隊を為して出撃する。
後方のコロンブス級からドラグーン搭載巨大MAペルグランデが発進する。
「おのれ、ナチュラルどもめ!クルーゼ、ヤキン・ドゥーエへ上がるぞ!ジェネシスを使う!」
パトリック・ザラはエザリア・ジュールにプラント防衛の指揮を任せ、ラウ・ル・クルーゼを伴いヤキン・ドゥーエで軍の総指揮をする為に移動する。
ザフトのエザリア・ジュール、連邦軍のバスク・オム双方がそれぞれの将兵を鼓舞する。
『ナチュラルの野蛮な核など!もう、ただの1発とて我らの頭上に落とさせてはならない!血のバレンタインの折、核で報復しなかった我らの思いをナチュラルどもは再び裏切ったのだ!もはや、奴らを許すことは出来ない!ザフトの勇敢な兵士たちよ!今こそ、その力を示せ!奴らに思い知らせてやるのだ!この世界の担い手が誰かと言うことを!』
『…省みろ!この戦争は地球人類の破滅を思い描いたコーディネーター、紛い物の人間どもによって引き起こされた出来事であると言うことを!世界樹の悲劇も始まりに過ぎない!世界的電力不足によって地球の経済、医療と言ったインフラは破壊され多くの人々が死んでいった!我々の地球はあの砂時計に住むコーディネーターによって崩壊の危機に晒されているのだ!地球!!このシンボルを忽せにしない為にも、連邦軍は勝つのだ!!』
三隻同盟も戦場に姿を現す。
「核を…例え一つでもプラントに落としてはなりません。撃たれる謂れのなき人々の上に、その光の刃が突き刺されば。それはまた果てない涙と憎しみを呼ぶでしょう。平和を叫びながら、その手に銃を取る。それもまた悪しき選択なのかもしれません。でもどうか今、この果てない争いの連鎖を断ち切る力を!」
「ミーティアリフトオフ!」
エターナルからキラ達が出撃する。
「キラ・ヤマト!フリーダム!行きます!」
「アスラン・ザラ!ジャスティス!出る!」
アークエンジェルからもムウ達が出撃し、クサナギからM1アストレイ隊が出撃する。
ザフト側は後方に配備していたジュール隊を中心にこれを迎撃するも間に合わず、大量のMk5核弾頭ミサイルがプラントに向けて発射されるが、その場に急行した三隻同盟のジャスティスとフリーダムが、装備していたミーティアを用いた弾幕攻撃により全て迎撃したため事なきを得る。
ラクス・クラインにより連合に対して核攻撃に対する非難と停戦勧告が行われる。
『地球軍はただちに攻撃を中止してください。貴方方は何を撃とうとしているのか本当にお解りですか?もう一度言います!地球軍はただちに攻撃を中止してください!』
「なんですか?この子は?」
「アークエンジェル・・・」
「どういうつもりで来たのか。いまさら、もう手遅れですよ。まあ、何であれ邪魔をするなら敵です。あれも厄介なMSだしねぇ。丁度いい一緒に消えて貰いましょう。…プラントと共にね。」
ドミニオンでは困惑するナタルを尻目に冷めた様子でラクスの演説を聞いて尚、攻撃を支持するアズラエル。
「なんでしょうか?あれは?」
「気にするな!!とっととコーディネーターの砂時計に核を撃ちこんでしまえ!!」
バスク・オム大佐はラクスの訴えなど歯牙にもかけず攻撃続行を指示する。
連邦軍はこれを無視して核攻撃を続行、三隻同盟のエースパイロットたちとジュール隊(特にデュエル)が協力してその迎撃を行う。
「フン!小賢しい事を……。構わぬ!放っておけ!こちらの準備も完了した。」
「ジェネシスは最終段階に入る全艦射線上から退避。」
「部隊を下がらせろエザリア…。我らの真の力…見せてれるわ!」
ザフト側(パトリック・ザラ)もラクスの停戦勧告を放置しつつエザリア・ジュールが前線部隊を後退させた直後にジェネシスの発射指示を出す。
「ジェネシス照準用ミラー展開!起動電圧確保ミラージュコロイド解除!フェイズシフト展開!全システム接続オールグリーン。」
「思い知るがいいナチュラルども!この一撃が我らコーディネーターの創世の光とならんことを!……発射!」
パトリックが発射命令を出す横では狂気の含まれた隠れた笑みをチラつかせるクルーゼの姿もあった。
この一撃により、連邦軍はプラント攻略軍第12艦隊旗艦「ワシントン」を含む戦力の40%以上を撃破される大打撃を受けてデブリベルトに一時後退を余儀なくされた。
これに合わせて三隻同盟も撤退を開始する(三隻同盟はイザーク・ジュールからの発射情報リークにより被害を免れている)。連合は撤退の際にザフトの追撃に遭って更に多くの艦船とモビルスーツを失うも、この追撃に対して三隻同盟側(ジャスティスとフリーダム)も介入しており、追撃を行ったザフト軍モビルスーツの内十数機が無力化されている。
この一時撤退をもって1日目の戦闘は終了した。