サイド3の公王庁舎ではギレンが参戦のタイミングを窺っていた。
「技術顧問のアサクラ大佐からです。」
「よし、回線を回せ。」
『ソーラ・レイは稼働体制に入りました。2時間後には臨界点に達しますが、エネルギーシステムの関係上、一度しか発射できません。』
「能力は予定通り出るのか?」
『それは間違いありません!』
ギレンはもう一つの画面に目を向ける。
「だそうですぞ。ザイデル総統?」
『まことに、結構なことですな。』
ルウム革命政府のザイデル・ラッソ総統が映っていた。
「ルウム革命政府はジオンにとって無くてはならない重要な同盟国です。ソーラ・レイの発射権限…お譲りしましょう。」
ギレンからソーラ・レイの発射権が譲られたザイデルはギレンに代わって発射命令を出す。
「おぉ、これは大命ですな。ありがたくやらせていただきます。では、ソーラ・レイ…発射せよ。」
「ソーラ・レイ!スタンバイ!」
「全システム異常なし。」「マイクロウェーブ送電良好。」
「出力8500万ギガ パーセコンド!」
「発射角度修正下方012、左0032!」
「ターゲット!L5地球内環部!ザフト、ヤキン・ドゥーエ。」
ジオン艦隊と革命軍艦隊が守る中。
ソーラ・レイは発射されようとしていた。
地球連邦との本格的な講和会議が控える中、ルウムのソーラ・レイが死札になりかけていた。
連邦との講和交渉を優位に進めるための何かが必要だった。
ザフトによる月への攻撃は講和会議の会場であるフォン・ブラウンから少し離れており、些かこじつけ感はあった。
だが、ジオンがソーラ・レイと言う大量破壊兵器を保有しておりその力を見せつける必要はあったが、継戦中ならともかく停戦している連邦軍に打ち込むわけにもいかない。
「クックッ。自ら身を差し出してくれるとは、プラントのパトリック・ザラには感謝せねばな。」
ギレンは公王庁舎のマップルームのモニターを見ながら嗤いながら呟いた。
ジオン公国及び共栄圏がザフトとの同盟を破棄。連邦側に立って参戦。
ジェネシスの持つ装甲の堅牢さから破壊は困難と判断した三隻同盟のアスラン・ザラにより、その制御を行っているヤキン・ドゥーエの制御室の制圧が提案されようとしていたが、ジオン公国及び共栄圏軍の参戦とソーラ・レイの使用の情報が入り作戦は却下される。
パトリックが暴発覚悟で地球(大西洋連邦の首都ワシントンD.C.)に照準を定めるが、地球に向けたジェネシス発射と射線上の自軍部隊、そして地球に残存する自軍部隊をも巻き添えにしようとする彼のやり方に疑問を抱いて地球への照射の中止を具申した直後に銃撃されたレイ・ユウキが、息絶える直前にパトリックを射殺する。この直後にソーラ・レイの光がヤキン・ドゥーエを飲み込んだ。
ルウムに設置されたソーラ・レイがジェネシスを砲撃、破壊し使用不能状態に追い込む。地球軍・三隻同盟は戦闘を継続。
パトリックは死の間際にジェネシスの発射に連動したヤキンの自爆システムを作動させていたが、そんなことは関係なしにヤキン・ドゥーエを飲み込んだ光はヤキン・ドゥーエの中心岩石部分以外の岩石外壁部及び表層人工構造物を焼き払ったのであった。また、外見上無事であったとしても殆どの部分は大小様々な不具合を起こしており内部の人員の大半は生きていないだろう。
さらにはその射線上にフリーダムによって機能停止に追い込まれたプロヴィデンスがおり、同機の核エンジンを誘爆させた。
ドズル・ザビを総大将に副将としてノーマ・ザビが共栄圏連合艦隊を率いて来援。後続にステファン・ヘボン少将の連邦艦隊が追従した。
『こちらは共栄圏議会及び地球連邦政府による平和維持軍艦隊のドズル・ザビ中将である!戦闘は決した!地球軍ザフト軍は直ちに武装を解除し停戦協議に応じられたし!』
ヤキンの放棄直後にクーデターを行ってザフトの実権を掌握したアイリーン・カナーバは自身を臨時議長とするプラント臨時最高評議会を結成、ヤキン・ドゥーエとジェネシス破壊直後に残存する友軍と連邦及び平和維持軍艦隊に向けて現宙域における全戦闘行為の停止と停戦協議の準備について勧告し、これを連邦及び共栄圏側が受諾したことにより戦闘は完全に終了した。
『プラント臨時最高評議会より、平和維持軍へプラントはこれより停戦に応じます。ザフト軍は武装を解除し撤退を開始してください。プラント臨時最高評議会は停戦協議に向けて準備を行っております。』
サザーランド少将は戦死し第12艦隊は壊滅、第12艦隊の後方にあった第10艦隊もジャミトフの戦死こそ無かったが艦隊の被害は甚大であった。ジャミトフはバスク・オム大佐の第7艦隊と合流していた。
「ジャミトフ閣下!!このまま、停戦など!!あり得ませんぞ!!」
「落ち着けバスク。しかし、停戦交渉は始まってしまったとは言え……事故は起きるものだ。」
ジャミトフは視線を落とす。さすがに、こちらも無傷と言うのは怪しいか。
テルアビブ分遣艦隊は贄にする。
ジャミトフは秘匿コードを打ち込む。
「ふむ、青き清浄なる世界の為に…か。儂はブルーコスモスで無いのだがな。」
「艦隊後退!!ハシュマルが暴走するぞ!!」
テルアビブ分遣艦隊。
「中佐!?ハシュマルが勝手に動いています!?停止コード受け付けません!?」
「な、まさか!?ジャミトフ閣下…!?戦争はもう終わったのに!?なぜ!?ぎゃあああ!!」
ヤキン・ドゥーエでテルアビブ分遣艦隊のコロンブス級の船体を引き裂いてMAハシュマルが姿を現す。
瞬く間にハシュマルはテルアビブ分遣艦隊を壊滅させる。
「れ、連邦軍はまだ戦うつもりか!?うわぁあああ!」
「な、なんだあれは!?ぐわぁああああ!?」
周囲のザフト軍、連邦軍は無差別に攻撃される。
三隻同盟、共栄圏軍、連邦軍、ザフト軍共同でハシュマルに対抗する。
ジャミトフ、バスクの艦隊が後退する。
『ジャミトフ閣下、ここは我が第9艦隊が殿を務めます!!お下がりを!!』
「エイノー大佐か。ありがたい。」
ジャミトフら鷹派が後退する中、置き去りにされたコーウェン中将及びステファン少将の艦隊は迎撃を開始する。
「全艦撃ちまくれ!!MS部隊も直ちに対処せよ!!」
「こ、こんな旧式しかないのに!?やれるのか!?」
ザフト軍も有力な指揮官を失った中、ジュール隊を中心に抗戦を開始。
「あれは世にはなってはならぬ力です。」
ラクスの言葉に追従して戦闘に参加する三隻同盟の面々。
共栄圏連合艦隊はジオン艦隊を中心に対応を開始。
「なんだ。この感覚は?悪寒の様な…あれは危険だ。」
キケロガのシャリア・ブルはハシュマルの危険性を肌で感じ取った。
交渉参加の為にグワリブに同乗していたノーマは過敏に反応した。
「叔父様…あれは危険です…。NT部隊や他全ての精鋭を充ててください!」
「ノーマよ!まずは落ち着け!!…高度なニュータイプだと聞いている姪がこの反応とは…。NTは使えんか?」
ドズルの言葉にラコックが応じる。
「いえ、むしろ危機感を煽られて戦意は旺盛と言った方が…。」
「ビグザムを出せ!」「叔父様!ビグザムを起点にNT部隊を回します!」
「か、閣下!?姫様!?」
「安心しろ!俺は乗らん!!」「私も前線には出ませんよ。」
二人の返事にラコックは胸を撫でおろす。
「ですが、私もビットで艦の直掩はしようかと…。」
「えぇ、それはこちらからもお願いします。」
数多のビーム兵器やミサイルに弾丸、さらにはビットが飛び交いハシュマルとハシュマルが生み出した小型サブユニットのプルーマを攻撃する。
この兵器が多少なりとも落ち着きを取り戻した今ではなく。ピースメーカー隊を投入したすぐあとや最初のジェネシス発射後に投入していれば両軍の戦線は混乱し収拾不可能であったかも知れなかった。しかし、戦場の主導権を余力のあるジオン以下共栄圏軍が握っていた為、横槍もなく即座に対処されたこともありハシュマルを押しとどめることに成功。最終的にアスランがジャスティスの核動力を暴走させて特攻(アスランは脱出)し、核爆発でハシュマルを破壊した。
ジャミトフらが安全圏まで逃げ出したことで立場を悪くした連邦軍は交渉の席にフォン・ブラウンからグリーン・ワイアット大将とデギン・ソド・ザビ公王が出張ってくる事で収拾をつけアイリーン・カナーバ臨時議長を交えて正式に「ユニウス停戦条約」を締結。これが0080年1月10日の事である。
その後15日にサイド6でジオン公国及び共栄圏国、地球連邦政府、プラント最高評議会の間で正式に講和会議が開かれる。
講和会議にも一定の目途が付き、ジオンの姫としての公務を全て終わらせたノーマはサイド3への帰路に着きグワデンのブリッジにてノーマ・ザビは息をついた。
「色々あり過ぎましたが…この戦争はジオンの勝ち…ですわ。」
「っは。ギレン閣下と姫殿下の御慧眼に、このデラーズ感服いたしました。……ですが、姫様は少々お疲れの様子。あとは爺や…ゴホン!!デラーズにお任せください。」
「(今自分の事…爺やって)……ありがとう。少し休ませてもらうわ。」
0080年2月初旬
戦後の事後処理で年明けは停戦状態が続き、サイド6にてジオンのデギン公王、プラントのアイリーン・カナーバ臨時最高評議会議長、ルウム革命政府のザイデル・ラッソ総統、サイド6のランク・キプロードン首相、地球連邦首相、他共栄圏国の代表がマスコミの前で調印にサインをしている映像が流れている。
「閣下、この後はどうなされるので?」
ギレンはサイド3の自邸にてワインを傾けていた。
セシリアの胸を見て、膨らんできた下腹部にも目をやり答える。
「我が野望は未だ叶わず…か。だが、その前に国が…世界が倒れては困るからな。しばらくは世間の為に尽くさせてもらうよ。」