27 第一次D.O.M.E.制圧戦、モビルビットの脅威
宇宙世紀0080年2月
2月1日。連邦とプラント、そしてジオン。互いの存亡をかけて戦った「第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦」「ソロモン攻防戦」の終結。プラントと連邦、双方の実質的戦争指導者が死亡した結果。1年以上かけて行われた戦争が終結した。
プラント、連邦に再建を目指す新たな政権が誕生。オーブも独立国として再建の目途が立っていた。さらにジオンもギレン・ザビが比較的穏健な政治に転換して平和が訪れるかに思われた。
そして、現在最大の火種とされるのが遡る事1月10日。停戦会議の場でAI自律MAハシュマルが暴走して各国軍に甚大なダメージを与えた事件と近い時期に起きていた事件だ。
それはルウム・ジオンの共同管理であったソーラ・レイであり、ジェネシス同様地上攻撃可能であると言う事実が判明していたことから、連邦軍鷹派・ブルーコスモス派と思われる者が特殊部隊を派遣しソーラ・レイの破壊を試みた事件だ。
ソーラ・レイの破壊工作が行われる事はあらかじめ予想されてはいたが、問題は投入されたMSであった四枚羽ガンダムの超高出力ビームキャノンを使用したことである。
このガンダムは連邦軍での呼称はガンダムXであり、パイロットはジャミル・ニート大尉であり、10機のXタイプのビットMSが付随し、援護にはレオパルドタイプとエアマスタータイプのガンダムが軽キャノンやドートレスを率いて加わっている。30機近いMSの大部隊がソーラ・レイを攻撃した。
防衛側には革命軍の大部隊と7隻編成のジオン軍中規模艦隊が就いていた。
防衛部隊の奮闘によりコロニーレーザー本体への直撃は回避できたが集光用ミラーの半数が破壊された。
連邦の策略であったことは間違いなかったが、講和へ向けたこのタイミングで水を差す気はなかったジオン、ルウム両政府は沈黙していた。ジオン案の使い捨て案を使用していた為、ソーラ・レイそのものにはほとんど価値が無かったと言うのがその理由でもあった。
来たる2月11日。ジオン公国及びルウム革命政府は先のMSのエネルギー供給施設が月面にある事を察知し、占領の為の軍の派遣を決定した。
月面のエネルギー供給施設占領の根拠として、フォン・ブラウン講和会議において月面の領有権はプトレマイオスを除く既存の連邦軍基地は連合各勢力の管理下に置かれているがそれ以外の領有は認めなかった。ローレンツクレーターのザフト軍は退去。プトレマイオス及びローレンツクレーターは共栄圏議会連合の共有管理となっており、中立を保っていたフォン・ブラウンを除く月面はジオンの領地となっている。つまり、講和会議では話題に上がらなかった月面の謎のエネルギー供給施設は本来存在しないものと言うわけで外交的に誰も口出しできないものなのだ。
コロニーレーザーを破壊しようとした四枚羽のガンダムの恐ろしさを理解しているジオン、ルウムの両国は艦隊を秘密裏に派遣した。
派遣された戦力は海兵隊のシーマ艦隊及び親衛隊のキリング中佐率いる小艦隊(特殊部隊サイクロプス隊含む)と宇宙革命軍の中規模艦隊であった。内訳は以下の通りである。
ザンジバルⅡ級機動巡洋艦1隻、ザンジバル級機動巡洋艦1隻、ムサイ・ジークフリート級軽巡洋艦2隻、ムサイ後期型軽巡洋艦5隻、アストラーザ級宇宙巡洋艦5隻、キグナス級小型偵察艦1隻、ジッコ型突撃艇1隻。MSは85機、MAはビグロを中心に5機と言う大兵力であった。さらには付随するビグロは戦後改修改良機であり、標準タイプの最新型で機首のメガ粒子砲は拡散メガ粒子砲に切り替え可能。機体胴体部に上空防御用ガトリング砲、前部にサブアームとガトリング砲が配されている。遠距離支援タイプの機体もありビグロマイヤーと呼称されている。スリム化した上で、装甲を強化、ジェネレーター出力を増加させ、さらにスラスター付きの「脚部」を追加することでさらなる機動性向上を果たしている。武装面でもメガ粒子砲の出力向上に加え、腕部クローに対MS用ビーム砲を追加した結果、フレキシブルな攻撃が可能となり、MAの長所である圧倒的な巡航性能および破壊力を高次元で実現している。攻撃強化タイプはビグルフと呼ばれビグロの機体下面に大型ミサイルを装備するための大型パイロンを追加、重量増加にともなう推力不足をおぎなうためのブースター2基が後部上面に増設されている。左右上側面のミサイルランチャーは4連装から16連装に変更されている。また、後方にはガデム隊(パゾグ補給輸送艦2隻、パプワ級補給艦1隻)の補給艦隊が控えていた。また、宇宙革命軍も新鋭機のセプテムや大型NT専用MAフェブラルを投入する気合の入れようであった。
先行するザク強行偵察型の持ち帰った情報を精査しながら慎重に進む艦隊。
「MSの残骸…連邦のドートレスかい?対MS警戒を厳にするべきだね。」
『ドートレスですか。最近まで動いていたかのようですね。』
シーマ・ガラハウ中佐と革命軍の指揮官が話し合う。
「シーマ中佐?そこまでやる必要が?」
「連邦のドートレスをやった奴が近くにいるかもしれないからね。」
「なるほど…。」
親衛隊のキリング中佐の質問に答えるとシーマはビグロ部隊に先行を命じる。
「トクワン大尉のビグロ隊は先行して警戒せよ。」
『了解した!』
「サイクロプス隊にもいつでも出れるようにしてもらいな!」
艦隊が施設の調査を開始する。
ジオン軍、宇宙革命軍の艦艇からMS隊が展開する。
「施設より反応あり!MSです!機体照合、データなし!!」
こちら側のジェニスやザクにゲルググと言った機体が撃墜され始める。
『機体の動きが人間業じゃない!!シーマ中佐!!撤退するべきだ!』
サイクロプス隊のハーディ・シュタイナー大尉が撤退を進言する。
「ケンプファーが配備されているあんた達もそう思うのか。」
『あぁ、挙動が人間業じゃないうえに、その機体の数が揃っている。それに偵察機からの報告だが施設内に生命反応がない。』
「くっ。ハシュマルと言い無人機は碌なのがいないねぇ!撤収するよ!」
「シーマ中佐!?撤退するのかね!?」
「あたりまえさね。受けた命令は偵察、基地の制圧は可能であればじゃないかい。どう見ても可能でないじゃないかい!?制圧するならもっと大兵力がいるさね!撤退!全機撤退しな!」
キリングはシーマに異見したが反論されて押し黙った。
21日
執務室で報告を聞くギレン・ザビ。両サイドに秘書官のセシリアと秘書官待遇の娘ノーマが控えている。さらに議場のテーブルにはデラーズを始めとするギレン派の将校と政府閣僚が席についている。
画面越しにキシリア、ドズルの姿も見える。退官間際のガルマは代理のウォルター・カーティス少将(ガルマから公認の推薦を受け少将に昇進)が出席している。当事国であるルウム革命政府のザイデル・ラッソも参加している。彼らも将校クラスの側近が議席スタイルで卓を囲んでいる。
進行役の将校が書類を読み上げつつ報告する。
「月面の不明エネルギー供給施設ですが、連邦の施設であることは間違いありません。しかし、施設に生命反応はなく。周囲には連邦の守備隊と思われる機体の残骸が確認されています。」
ドズルが声を上げる。
『自律AI案件か?』
ヤキン・ドゥーエでのハシュマル暴走は記憶に新しい。その脅威は現場に居合わせたドズルらの懸念するところであった。
ギレンが外務大臣に発言を促す。
「外務省。」
「が、外務省としましては連邦政府つまりは大西洋、ユーラシア、東アジアに問い合わせましたがすでに廃棄された施設との回答を得ています。」
『それで、納得とはいきませんでしょう?』
『こちらが把握している所では大西洋連邦が所管していた施設だったと確認しています。』
キシリアの発言にマ・クベも突撃機動軍の把握している情報を上げる。
「ふむ、大西洋連邦はブルーコスモスが幅を利かせ、連邦の鷹派も東アジアに次いで多く所属している。条約違反の兵器も多く保有していそうではあるな。」
『失礼、私達からもよろしいでしょうか?』
ルウム革命政府のザイデル総統が発言を求める。ギレンが発言を促す。
「どうぞ。」
『今回我々は、この施設の掌握の為に1個艦隊規模の戦力を派遣したが撤退せざるを得なかった。敵無人機は非常に高機動で連携が取れ脅威だ。現状施設内に籠っているが周辺に侵攻する可能性も否定できない。敵無人機はルウムに現れたガンダム同様に四枚羽だった。ルウムで使われた超高出力ビームを使用する可能性もある。ルウムは早急な対処が求められると考えている。』
『しかし、新たな艦隊を送るにしても今回以上の規模で用意する必要がある!だが、そこまでの余裕はないぞ?』
ドズルの発言に軍人たちが頷いて賛意を示す。
『兄上、ソーラ・レイの修復を急ぎ月の施設に向ける必要があるのでは?』
「ソーラ・レイの修復か…。ふむ、そうだな。検討する。」
『月の施設の脅威はグラナダを含む月都市群の脅威です。我々が主導で修理を行おうかと思っているのですが…。』
「わかった、任せる。」
「であれば、しばらくは監視にとどめよう。」
ギレンは周囲を見回し、異議が無いのを確認する。
また、この会議で対月の諸問題対処のためにグラナダの防衛力強化が許可された。
その翌日22日には戦後最初の共栄圏議会が開かれる。
地球の急速な治安悪化問題に対する対応。
「地上加盟国の治安維持にジオン・ルウムを中心とした理事国軍の駐屯。もしくはMS等兵器の供与で対応しよう。」
そして、崩壊しつつある連邦政府の国力をさらに抉り取ろうと独立の機運のある各地への勢力への支援体制の拡充。
「地上における天然ゴムなどの重要資源地東南アジアの独立は連邦弱体化における痛烈な一撃である。故に本議会ではマレー半島南部及び旧インドネシアの港湾労働者組合、郷土再興義勇軍に対しての援助を決定する。軍事支援としてはジオンのシンブ根拠地隊及び東南アジアパトロール基地が独立を支援するものとする。」
「連邦からの独立支援の打診がアイルランド独立軍、通称IIAからあった。彼らの独立は位置的にかなり困難であるが我々が独立支持派であるという看板を掲げている以上、彼らを支援することは既定路線であると考える。」
「南アメリカに独立の兆しがあるようだが、どこの手も借りたくない様だ。」
「アクシズを中心とした鉱山衛星を地球へ運び込み、共栄圏議会連合の資源問題を解決する。また、先の戦争で地上の領地にて生活基盤が壊れた人々に対して宇宙移民を行うことを勧めたい。それに伴いサイド8の構築を協議したい。また、これと同時に火星移民についても同様である。」
共栄圏議会の閉会後。
ギレンはドズルから詰問を受ける。
「兄貴!ビグザムの量産の白紙化なんて聞いてないぞ!」
「フッ、ビグザムは今建造中の3号機までは作るよ。今作っているのは改修と装飾を施して式典用とか親衛機とかにすれば良い。」
「じゃあ、ビグザムを量産しないでどうするつもりなんだ。」
「そのことなんだがな…。娘を介してギニアス・サハリン技術少将から提案があってな。」
「アプサラスを作った奴か。」
「そうだ。彼から預かっている開発計画書だ。」
ドズルは書類をめくり目を通す。
「NTである必要もないのか。実現できるのなら、凄いことだが…。」
「娘は出来ると判断して私に上げてきた。わたしも、実現可能だと思う。」
「自己再生ができるMSなんて、現実味がないぞ。」
ドズルはキナ臭げな表情を崩さなかった。
それに対しての返答は不敵なものであった。
「問題ない。アルティメット細胞の組み込み例はない訳じゃない。出来るから出来るのだろう。」
ドスルはギレンの答えに背筋の冷えたものを感じた。
そして、ギレンは通信が切れた後諜報部の報告書に目を通す。
「ふむ、D.O.M.E.…最初のニュータイプ。ローゼルシア・ダイクンが連邦との関係が良好だった頃に作った研究施設か。」
ローゼルシアの研究成果を連邦が奪った形になるが、当面の間は塩漬けにされ本格稼働したのは1年戦争中だったようだ。
「生体ユニットに反乱を起こされたわけですね。」
「ノーマはどうすれば良いと思う?」
「そうですね。システムのエラーにしろ自我の発露にしろ、あまり領土を広げるような攻撃性はないようです。しばらくは監視にとどめるべきかと。」
「なるほどな。」