宇宙世紀0069年~0070年
政権内でザビ派とダイクン派、その他で派閥闘争が収束。ザビ派が議席過半数を獲得。
ラル派を中心とした反ザビ派は完全に政界から追放されることとなった。
公国総合病院地下違法研究施設
トト家所有の病院の地下施設。
ギレンは研究員たちの説明を受けている。
胎児として形が現れていた。
問題点として多くの技術を施し経過観察する都合上、人工子宮内の成長速度が、本来の子宮に比べ遅いという欠陥はあったものの、その範囲で問題なく成長していた。子供の性別も女性であると言うことはわかった。
「すでに成功例はあり実証は成されていると…。」
「はい。ユーレン・ヒビキ博士の子供を使った実験ではスーパーコーディネーターは成功しています。そのデータを基に閣下のお子様に施術を施せば確実に…。」
「血統から来る才の類はどの程度出るものなのだ?」
「戦闘用コーディネーターの研究データでは付与された戦闘の為の遺伝子調整とは明確に異なるスペック…つまり『遺伝子調整に依らない、生まれつきの才能』を発揮する事例も比較的多いことが解っています。頭脳面では閣下の血は特に強いですのでスーパーコーディネーターを超えるそれが生まれることは確実です。」
「クク、トリエステ…私達の娘は最高の存在となる。期待しているぞ。アウラ・カイドゥ女史。」
ギレンの娘の新人類化計画通称N計画は娘の名前であったノーマから取ったものである。
宇宙世紀0071年
ギレンはドズル・ザビの主導で人型機動兵器の開発が決定。場所の選定がダーク・コロニー内でほぼ決定した。同時期にザフトでも人型機動兵器の開発が決定していたのだった。
協力企業の選定において各兵器メーカーに対して試作機開発を命じている。いくつかの試作機が提示されるが、要求性能を満たすのはジオニック社と、MIP社のみであった。総合性能においてMIPの試作機を凌いだジオニック社の試作機を軸にすることを決定する。
協力企業に選定されたのはジオニック社、エンジン回りで高い評価を得たツィマッド社、そして試作機評価で惜しくも敗れたMIP社の3社とされた。
ギレン自身がドズル同様に開発に関して熱が入っているため、資金投入量も大量でありスムーズに進むだろう。もうすでにMW-01がレイトタイプに至っており、ファイナルタイプの開発設計も始まっている。さらに、もうすぐ土木重機として流通に乗ることになるだろう。
年末には人型機動兵器開発計画、MW-01ファイナルタイプ開発完了。なお、MW-01ファイナルタイプ=MS-02であり、03の開発目途が立ったため複数生産はせず。
ダイクンの遺児に対してサイド3にてアストライアと面会することを許可するが、ジンバ・ラルらの反対を受け実現せず。その数日後、襲撃がありジンバ・ラルが殺害される。
ギレンはキシリアを自邸に招いて対してダイクンの遺児への工作について苦言を呈した。
「ジンバ・ラルを殺ったのか?」
「何か問題でも?」
「問題はない。だが、意味はあったか?ジンバなぞ、もはや都落ちした耄碌爺ではないか?」
「ジンバは連邦に接触していましたが?」
「連邦にすり寄るなど、まさに耄碌ではないか?ジオン国民も連邦に尻尾を振るものなど支持せんだろう。それに、暗殺対象にはダイクンの遺児が入っていたようだが?」
「あれらは後の遺恨となりましょう。」
「所詮は子供ではないか。女子供一族皆殺しなど古代の蛮族ではないか。」
「ですが、ダイクンです。まかり間違って戻って来ようものなら大きな障害となりましょう。」
「……ジオンを永久的に独裁国にするつもりはない。ダイクンの遺児が戻ってくる頃にはザビ家は盤石だよ。」
公国総合病院地下違法研究施設 Nプロジェクト
「アルティメット細胞の組み込み。異常見られません。」
アウラは部下研究員の報告に胸を撫でおろす。
「アルティメット細胞に取り込まれる可能はこれで0%なのか?」
「確かに0%ではありませんが、閣下の娘様はスーパーコーディネーターです。それにアルティメット細胞も試製とは言え人間仕様に弱化していますので、その可能性は限りなく低いと思われます。」
取り込みの成功を受け自身の後ろで見守っている雇い主に視線を向ける。
「確約しないところに不満があるが、それは研究者特有の物言いとして大目に見よう。肌が銀色になると言うことはないのだろうな。娘はいずれ表舞台にも立つのだ。」
「もちろんです。そのように調整します。その為の細胞の弱化です。」
ギレン・ザビはトト家が囲い込んでいたアウラ・カイドゥに最高のコーディネーターを創造するように依頼した。ギレンは最高の存在をトト家に強く求め、トト家当主アーノルドは非正規ルートから横流しされた不確定な技術であった金属マテリアル、アルティメット(U)細胞を生物に適化できる様に機能を落とした物をも取り入れたのであった。
ただし、劣化U細胞は以後他の検体にも取り込ませたが、それらは化け物になってしまった。唯一の成功例が幸運にもギレンの娘であったことが彼らの命を首の皮一枚で繋げたのだった。
「間違いなく、細胞は定着しています。最早心配はいりません。」
「そうか。それは良かった。君のような優秀な学者を失うのは人類の損失だからな。」
「………ッ!?ユーレン・ヒビキのスーパーコーディネーターを私が改良したハイパーコーディネーターの技術が完全に抑え込んだと言う証拠です。それに恐らくですが娘様はナチュラルとして生まれたとしても歴史に名を残す存在になりえたでしょう。素体としても非常に優秀でした。」
「信用していいのだな。」
「はい、もちろんです。」
「ふむ、今後は定期的に見てもらうぞ。」
宇宙世紀0072年
人型機動兵器開発計画、YMS-03ヴァッフ完成。
開戦まではいまだに時間がある。
ギレンはコロニー落としには乗り気ではなかった。
歴史に名を遺す虐殺者には好き好んでなりたくはない。
故にギレンは各コロニーと月(恐らく、ゆくゆくは火星や木星船団とも)でブロック経済を行うことで、宇宙だけで経済を回し地球を干上がらせる。サイド共栄圏政策を考えていた。
共栄圏の中だけで経済を回せば、地球の経済は崩壊するので、それを理由に連邦政府が戦争を仕掛けてくる。その頃には共栄圏勢力はジオンを中心に強く結びついているはずであり共栄圏として地球連邦と防衛戦争をすることとなるだろう。
開戦後はマスドライバーによる隕石投射作戦である水天の涙計画、生物環境兵器であるアスタロスを用いて地球連邦にとどめを刺すと言うものある。
ただ、そのままアスタロスを使うと地球そのものが滅んでしまうので、アスタロスの弱体化が必要なのだが…。
自分の後を継ぐノーマに自身が大虐殺をすることで虐殺者の娘と言う不名誉な称号を与えられ、それを娘に引き継がせるのはギレンとしても不安要素であった。それゆえに、ギレンの中で対連邦戦略は大幅に変更されていくこととなる。
対連邦戦の難所はルナツーとジャブロー攻略。
ルナツーは序戦でほとんどのラグランジュ点を確保するのでルナツーと地球の補給線を絶てば兵糧攻めで時間を掛ければ墜とせるはずだ。
デラーズら親衛隊上層部からはコロニー落としでジャブローを破壊するというものが提案されていたが、地上への影響や無関係な地上の住民たちへの被害など人道的な面を鑑み、ペーパープランではあったが軍参謀総長ら参謀陣と協議を重ねアスタロス(弱毒化に成功したものと仮定)によるジャブローの密林の砂漠化、ジャブローの入り口を丸裸にしたうえで、マスドライバーによる対空兵器の無力化。そして、HLVによる降下作戦でジャブローを制圧するというものであった。
小惑星落としやコロニー落としに比べれば小粒もいいところだったが、少なくても1都市に甚大なダメージを与えるマスドライバー攻撃。
大規模要塞とは言え隕石の落下を完全に防ぐのは難しいだろう。
「どうだ?ペーパープランだが検討の余地はあるのではないか?」
「否定はしないが、その場合は制宙権の確保が絶対だな。」
ギレンの言葉に否定も肯定もしないドズル。
「参謀本部や現場の高位指揮官の机上演習に使ってくれ。」
公務ではない会合の為、テーブルには酒類が置かれている。
「おう、貰っておく。それでだな。兄貴に会わせたい人がいてな。」
「ん?誰だ。」
「彼女の事だ。サスロ兄の…。」
「彼女がどうした?」
「入職を希望している。ただ、俺の手が出せる範囲は軍事が多くてな。」
「私の所で引き取らせたいと…。サスロの補佐をしていた経緯を見るとキシリアの方が…。」
「それが、彼女はサスロ兄の死にキシリアが関わっているのではないかと疑っている様でな。」
「それでか。いいだろう…こちらで引き受けよう。」
「それともう一つ。彼女のMIP社長令嬢としての案件でな。」
ドズルがモニターに画像を移す。
「モビルポッド計画…か。MS関係のカムフラージュに有用だな。」
ギレンは端末を弄って次々と資料を読み進める。
ジオニック社にて人型機動作業用機器の開発許可申請が行われ、許可される。
モビルポッドは既存の作業用ポッドの改修兵器。
ドラムフレームタイプのオッゴと球体タイプのボール。
大型マニピュレーターは作業性が高く、物資の輸送といった一般作業にも対応する一方で、この腕を用いた格闘を行うことも可能という、柔軟な運用性を誇る。
「MIPは人型兵器は苦手なようだが、それに拘らなければ中々いいものを作れそうだな。」
「兄貴が興味を持つだろうと思ってな。彼女を連れてきている。」
「通せ。直接話をしたい。」
ドズルはギレンの言葉を聞いて、一呼吸おいてからドズルは彼女を招き入れる。
サスロの元妻、ナツメ・ユーリシア。
電動車椅子に乗った黒髪のロングヘアの彼女は利発そうでもある。
「直接お会いするのは、これが初めてなのですね。ナツメ・ユーリシアなのです。ギレン閣下。」
「構わん、座ってくれ。モビルポッド計画については一通り読ませてもらった。従来の作業用ポッドがグラスルーフ式で脆弱故にカメラアイを採用、これはいい。新規製造分はチタン合金を採用するのは些かやりすぎではないか?」
「総帥閣下、宇宙空間作業をこなす事の出来る有用な人材を守る為でしたら、費用が多少嵩むぐらい惜しくは無いのはずなのです。それにチタン合金の冶金技術において、我が国は遅れを取っていますのです。ノウハウの蓄積も出来ますし、人型機動兵器が採用する超硬スチールと棲み分けができますなのです。」
「なるほど…続けたまえ。」
「私は、コロニー湾口部の荷役や、コロニー補修作業用に配置されている現行の作業用ポッドを、すべてボールとオッゴに置き換えるつもりなのです。それは、常時宇宙空間の実作業で訓練されている人員を、本土防空に利用できるということなのです。つまりその分、現在開発中と噂の次期主力機動兵器を本土防空に割り振らなくても良いと言う事なのです。それにMSを作業用機に回す必要もなくなるのです。実質的に次期主力機動兵器の動員数を増やすことができますのですよ。標準規格のコンテナに収容が可能ですし、外付け用の簡易プラットフォームでの運用も可能なのです。」
「よかろう。その方向で進めてくれ。主導はMIPでと言うことか。」
「そうしていただけると嬉しいのです。」
つまり、人型機動兵器の開発に手間取り、作業用ポッドの武装化でお茶を濁していると思わせる手だ。
実に、良い手だ。
MIPの令嬢、技術者としての見識もある。
独特の話し方ではあるが…。
「この運用実績蓄積方法だが、説明してくれ。」
さて、サスロの補佐官としてはどれほどの者か。
「はいなのです。情報蓄積にはシミュレータ作成運用のノウハウを注ぎ込んで作ったゲーム。アミューズメントを利用しますのです。」
モビルポッドを使ってミッションをクリアーするという内容で、オンラインで筐体もしくは家庭用機を結び、プレイするもの。
敵は大胆にも連邦軍。
大なり小なりアースノイドへ反感を持っているスペースノイドなら喜びそうなものだ。
「パイロット養成にも役立ちますのです。射撃管制装置のソフトウェアは、次期主力機動兵器と共通なのですよ。」
「兄貴、どう思う。」
「良いではないか。人型機動兵器同様に、良い手札だ。ドズル、私も援助するがしばらくはお前が支援してやれ。」
ジオンは、見せ札と言うには非常に有用な札を手に入れたのだった。
公国総合病院地下違法研究施設 Nプロジェクト
「ナノマシンの注入も異常は見られません。娘様は素体としてもコーディネーターとしても最優な存在です。技術の取り込みにおいて余剰がまだまだあります。これは驚くべきものです。」
ギレンは研究者たちを一瞥し、少し離れたところで研究資料を確認していた。
「私はサスロの死を見て確信したよ。ザビ家の人間として生きていくには命の危機を常に伴わねばならないと…。生まれてくる我が子にはそう言ったものを跳ね除けるくらいの強靭さと優秀さが必要だと。……カイドゥ局長。」
「えぇ、もちろんです。ノーマお嬢様は非常に優秀なお方になりますのでご安心ください。」
ナツメ・ユーリシア、完全にオリキャラです。