0080年4月5日
ついに戦端が開かれた。
連邦軍中国方面軍は連邦鷹派の寄合と言うこともあって、日本国内にジオンの姫君がいたことを一切考慮しておらず。戦火に巻き込まれて死んだならそれで良しと考えていた節がある。一応、ジオン外務省はノーマ・ザビ姫が退去する猶予を求めたが、東アジア共和国は曖昧な返事をしてジオン側をいらだたせた。
外交ルートでグダグダしているうちにノーマは日本のテレビ局で東アジア共和国の行動を非難したうえで、日本側に義勇軍を率いて参戦すると宣言。
なし崩し的に、参戦する形になってしまったが東アジア共和国の対応も悪かった上にジオンのみならずファウンデーション王国の宰相もいる状態での東アジア共和国の行動は他連邦系の勢力からも外交的に悪手と見えるものであり共栄圏議会連合の介入の筋道は出来ていたと言える。
共栄圏議会連合は日本暫定政府の共栄圏入りを受諾。
ギニアスについてきたノリス・パッカード大佐を軸とし、自身の親衛隊(NT含む)や随員の良家御曹司内の実力派のレオ・ブラウアー少尉率いるブラウアー隊を下に付けた義勇軍を編成した。さらに義勇軍を共栄圏議会連合の物とすることでファウンデーション王国のオルフェ・ラム・タオらブラックナイツも参戦した。ブラックナイツの機体はジン・ハイマニューバ2型であった。
戦端は東シナ海及び日本海で開かれた。
日本海側の戦いではノリス・パッカード大佐率いるフライトタイプやホバリングタイプのグフを率いる部隊が八面六臂の活躍を見せ大勝し、上陸を許さなかった。
逆に飛行可能なMSが居なかった東シナ海での戦いは東アジア共和国に軍配が上がり、壱岐や大島の砲台を制圧し九州北部に上陸を許した。
東シナ海で日本側の艦隊を排除した東アジア共和国軍艦隊は博多湾、唐津湾、伊万里湾に侵入。
ノーマ・ザビもミサイルビットユニットを1基とプロペラントタンクを増設させたサイコミュ試験ザクに搭乗して指揮をした。親衛NT部隊の隊長となっていたヤハギ・フランジバック大尉と麾下の小隊長達(クスコ・アル少尉、ルロイ・ギリアム少尉)には同ユニットを1基背負ったゲルググL(ランツィーラー)ビットミサイル搭載機が配備されていた。また、MSの操縦技術が低かったり、若年すぎてMSの操縦が難しい者たちの為に複座式の同機も配備されていた。また、ゲルググLはサブ・スラスターを内蔵した突撃力を高めのヒート・ランスと大型シールドを装備し、高い推力と運動性能を活かして広範囲に被害を出さずに迎撃対応するという同盟国への気遣いができる機体であり、この戦いでも逃げ遅れた民間人を守りながら戦うと言う美談をいくつか残している。要人護衛のロイヤルガード機である。
また、最高練度を誇るブラウアー隊にはジェネレータを強化した陸戦型ゲルググが配備された。
「ロイヤルガードは逃げ遅れた民間人を守りつつ敵を迎撃。ブラウアー隊には親衛隊を付けますので指揮下に入れて前線をかき乱してきなさい!」
「ひ、姫様?親衛隊を自分が指揮するんですか?」
「私がいいと言っているのです!あなたの下に付けるのは最高でも少尉です!あなたも中尉に昇格したんですから問題ないでしょう!聞こえているでしょう!貴方達も親衛隊とか関係なく上官であるブラウアー中尉に従うように!」
「「「はっ!」」」
この戦線には日本暫定政府陸軍の他に共栄圏義勇軍のノーマ・ザビ率いる部隊(NT部隊とブラウアー隊)とオルフェ・ラム・タオらブラックナイツが陣を構えていた。これらの部隊は戦力としては上澄みも上澄みであり最強とか精鋭と言った誉め言葉が並ぶ独立側の最高戦力であることは言うまでもない。
拡張ブラウアー隊とブラックナイツは前線の敵を大いにかき乱した。
かなり激しく抵抗された上に、さすがに大局的には重要ではなく他連邦系勢力の参戦がない現状。東アジア共和国独力で共栄圏議会連合と直接やり合う訳にもいかず軍を引き日本独立を認める決断をせざるを得なかった。
また、これらの戦力に釣り合う戦力はラサの強化人間たちだけであるが政治的にも世間的にも支持を失いかねない為、大々的には出来ない。手詰まり感が東アジア共和国首脳部に流れ、共栄圏議会連合と講和することになる。
同年5月初め遅咲きの桜がまだ残るこの時期に、日本独立戦争は日本独立派の勝利となった。日本は独立を果たし暫定政府の女性首相が独立宣言を行った。独立宣言の場で日本国のネオジャパン改称を行った。
実質的な戦勝パーティーが迎賓館赤坂離宮にて開かれた。
ノーマは暫定政府の女性首相やイシカワ大佐と社交辞令を済ませ、軽く部下たちをねぎらってから、少し離れたソファー席でオルフェ・ラム・タオと簡易的な会合の席を設けた。
「遺伝子工学の我が国、NT研究のジオン、細胞科学のネオジャパン。共栄圏議会連合に最高の技術が集いましたね。」
「えぇ…私個人としてはあれが人類の進化とは疑わしい限りですが…。」
「おや、ご自身がNTなのに否定なさるので?」
「だからこそですよ。確かに進化の一つではあるのでしょうが…人類の…ではないでしょう。であれば、今頃すべての争いは消えてなくなっていたでしょう。」
「これは辛辣な…。」
「とは言え、コーディネーターが新人類かと言えば違うのでしょう。先の戦争で自らそれを証明したと言っていい。」
「そうですね。確かに私から見ても彼らは新人類を名乗る資格はない。それに比べれば私達アコードは違う。…貴女の事は否定していませんよ?貴女は母曰く偶然と奇跡の産物だそうですから…。」
「あら、やっぱり…そう言った要素は強かったようね。では、貴方達アコードにとって私は邪魔かしら?」
「……これは難しい問いを投げかけてくる。そうですね…以前ならそうかもしれません。ですが、世界は思ったより広い。火星と木星に金星、最近は水星にも入植がはじまりました。たしか土星でも調査兼採掘がはじまったそうですね。ナチュラルやオールドタイプ主導のこの時代にここまでできたのです。我々ならば、いずれは冥王星も含んだ太陽系外縁天体全てを手中に収められる。太陽系外も夢ではない時代ですから優秀な人材は多い方がいい。同じ方向を向いているのなら猶更でしょう。」
「あら、夢がありますね。男に生まれたならば…ですか?」
「ずいぶんと古い言い回しをされる。ですが、アコードと言う選ばれし存在なれば…ですかね。……それに貴女は私の姉に近い存在でもあるのですよ?」
「アウラ・マハ・ハイバルは、確かに創造の母ではあるのでしょう。オルフェ…貴方達の様な優れた弟妹を持てて私は果報者なのでしょうね。」
「協力できることは協力しましょう。そう思いませんか?姉上。」
「ふふ…人類の行く末は一握りの優れた者たちが指し示す。それでいい。」
地球連邦崩壊。
前月の段階で各地に根回しをしていたので確実と予想されていたが、地球連邦政府は正式に連邦軍の解体(分裂)を発表する。
ザビ家内で会談の席が持たれた。この席にはデギン、ギレン、キシリア、ドズル、ガルマ、とザビ家の多くが列席していた。
ガルマは4月末で退官となり、ウォルター少将を伴って座っているだけの段階になっている。退官後は研究職に着くらしい。
デギンは月での和平交渉を最後に形式的な場を除き多くの職務から距離を取りつつも隠居とは明確に発言せず様子を見ている状態であった。ただ、やはり公式での発言は減っており今回の席でも発言はほとんどない。
「地球は荒れるか?」
『はい、確実に。』
ギレンはキシリアの返答に少し視線を漂わせると…。
「軍人の大量解雇は避けられたな。」
『それに関しては、良かったと思っている。終生軍人を志している奴も少なくないからな。』
「だが、今後は地球圏外延部以遠にも人を出す必要がある。」
『先の戦争で難民は多く出ています。彼らを軸に送り出しては?』
「それは考えた。だが、足場作りは専門のそれがやらねばならん。技術者が先だよ。」
『じゃあ、軍人はどうして?』
「単純に反乱防止だよ。ドズル…距離の問題で愛郷心は薄れる。保険は必要だよ。先に植民した奴らは自身をマーシャンと名乗って火星人を自称している。他であれば勝手だが、ジオンの植民だ。そんなでは困るよ。」
『兄上、木星はどうするのですか?』
「保留だな。公社の表とアングラな裏が対立している。木星と言う只でさえ情報のタイムラグがある場所で情勢不安の間を縫ってとなると失敗する可能性が高い。幸い、どの勢力も公社とのやり取りは続いている。しばらくは通常の対応をして様子を見る。」
『安定で言うと火星も以前に比べて海賊が増えたそうだな。』
「だから以遠部含む地球圏外への軍人は必要だ。場合によってはアステロイドベルトから小惑星を引っ張って要塞にすることも考えている。ドズル…それにキシリアもだ。軍人の選定を始めてくれ。」
『ところでお前たち、以遠部の話ばかりで地球圏の方が疎かでは困る。足元をすくわれかねんぞ?』
ここでデギンが皆を窘める。
「もちろん、考えていますとも。急速に復興し力を付けているオーブにはネオジャパンが矢面に立つでしょう。あそこは伝統文化継承の問題で国民レベルでの対立が起こるはずです。ザフトに関しては新議長が共栄圏議会連合のファウンデーション王国の女王と個人的なパイプがありますのでそれを使わせてもらう予定です。新議長は比較的穏健です。比較的にですが。」
デギンの問いに答えるギレンの二人を品定めするような視線を向けるキシリア、軍事重点のドズルと言えど関係ない話ではないので静観し耳を傾けるドズル。ドズルの横にはシン・マツナガが控えており自身で解らない時は彼に意見を求めていたりする。
『ギレンよ。共栄圏議会連合はどうなのだ?』
「理事国は宇宙4地上3ですが鉱山衛星の運び込みが完了すれば資源の優位は宇宙に戻ります。ですが、地上と宇宙の輸出入よりは地上同士のやり取りの方が輸送費は掛かりませんので地上と宇宙で完全に住み分けられるでしょう。」
『兄上、地上が連邦とよりを戻すことは考えれらませんか?』
「連邦は分裂した上に主要な存在は過激派だ。地上の者たちとは相容れんよ。地上の共栄圏も比較的潤っている。離反を考えるとは思えん。文化伝統的なものを均一化しようとしたのが連邦だ。そういう意味でも受け入れられんよ。クリアしそうな連邦の穏健派はバラバラに分断されてバルチャーや各地の小軍閥でしかない。心配はないだろう。」
『そ、そういえば…ギレン兄さん。バルチャーの一部にニュータイプ傾倒の集団がいるのを知っていますか?』
ガルマは軍務から離れ、児童福祉や復興政策などの方面にも手を伸ばしておりその方面から得た情報だろう。
「?…報告は来ているが…それがどうした?」
『彼らは元は連邦とは言え穏健派です。協力と言いますか…妥協できる点があるのでは?』
「その可能性はない訳ではないが…時期尚早だな。連中は所詮連邦だ。我々が下手に甘い顔をする必要はない。」