Gジェネレーションズ ギレンの野望    作:公家麻呂

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32 プロジェクト・レギオン

0081年7月

新規コロニーであるネオジャパンコロニー(日本列島の形ではない)が完成し、地上の日本本土より大規模な移民を開始。第一次移民船団をジオン、ルウム、ムーアの共栄圏議会連合護衛艦隊にコロニーまで護衛される。

 

ジオン本国ではプラントの新型MSの情報をキャッチする。

 

これらの報告が行われた定例会議では珍しくザビ家の面々がそろい踏みであった。

 

「ガンダムタイプはある種の伝説機体だからな。わからなくはない…。だが、奴らの最新の量産機がザク?ザクとは…な。」

 

ドズルは困惑の声を上げる。

 

「パクリだろ。言いたいことはわかるが…この程度のことで外交上の議題にするのは…敵対しているわけでもなし…。」

 

ギレンも不満はあるがそれ以上に困惑が大きかった。MS開発に関してはプラントも先進国であり、態々ジオンMSをパクる必要はないはず。誤認目的の工作機体なら主力MSとお披露目する意味もないはずだ。

 

「私も何も感じないと言えばうそになりますが特別問題視する必要はないと思います。」

キシリアも当たり障りない答えに終始した。

 

ギレンと同じ会場にいたデギンであるが愛息である末弟ガルマに加え3人の孫娘に囲まれる現在は公王としての形式的な公務ばかりで実権はすでにギレンとキシリアに毟り取られていた。最後まで死守していた農業食糧省への影響力もすでに手放しており若干ガルマと交友のある中立的な人物が大臣になっていた。デギン公王としては先の大戦の終戦協定を結んで糸が切れたと言っても良いくらいには政治に興味を失っていた。

 

「兄上、損壊したソーラ・レイを全地球環境改善用光増幅照射装置に転用する計画。こちらで進めてもよろしいでしょうか?」

 

一時は対地球連邦に新造された2号機ソーラ・レイであったが地球連邦の瓦解と年々増える地上の独立国によって必要性が薄れてしまった。こちらはむしろ、月面の無人機群に対しての切り札として共同計画者のルウムの方が重視し始めている。

また、ジオンの砲艦外交用の戦力として建造されていたビグザムは現在製造中の機体を以て生産終了。現存機は改修しダークグリーンに塗られ、かつ随所に式典用装飾と思しきエングレービングが施されている。性能面でも強化改造が施されており、ミノフスキー・クラフトによって重量を支えることで陸上での行動範囲を拡大させている他、ミサイルランチャーも増設されたビグザムが3機宇宙攻撃軍に配備されている。

また、ギレン(ノーマ)とキシリアはNT戦力に予算を注ぎ込んでいる。ドズルも軍の予算を喰わない程度ならとある程度の理解を示している。実際、ノーマ派のNT部隊は宇宙攻撃軍部隊との演習も行っており理解が進んでいることも挙げられる。

 

「まぁ、構わんよ。ジオンも共栄圏議会連合の盟主国として武力ばかりを誇示しているわけにも行くまい。」

 

「だが、兄貴!MSの開発競争に一歩後れを取っているのは問題だ!」

「それは理解している。だから、すでに次の主力MSコンペはすでに計画している。それに威圧としてはビグザムは大きいはずだ。」

「ビグザムの量産は兄貴が凍結しちまっただろうが!」

「その穴はNT部隊がいるだろう?」

「NTはまだ世間的にはオカルトの分類だ!上層部レベルなら恫喝に使えるが、一般レベルだと効果が薄い。テロリストに対する抑止としては弱い。」

「テロリスト風情ならそれこそ軍のしごとではないか?ドムやザクで十分だろう。」

「む、だが…兄貴。」

「安心しろ。新型の開発を止めたわけじゃない。いずれは次の次期主力MSを据える。」

 

 

ジオン公国、パプワ級補給艦の退役を正式決定。順次、パゾク級補給輸送艦へ更新。ヤップ級大型輸送艦も新造予定が組まれている。

退役したパプワ級補給艦は主にサイド1ザーンとサイド8ガイアへ供与。一部をサイド4ルウム及び月面各都市の自治政府へ売却が決定されている。これに伴い、パプワ級が唯一運用できるMSであるザクⅠも供与及び売却が決定している。

主力艦艇であるムサイ級も一部は順次前期型から後期型へ改装が行われたが、多くは民間貨客船のアルカナ級へ転用される予定であり、前期型は軍から姿を消しムサイ級の総数自体は縮小されることとなった。

ムサイ級前期型の造船ラインはムサイ・ジークフリート級へ切り替えが決定している。また、この級艦はムサイとしては最後の艦種であり最終生産型とも呼ばれるようになる。

また、チベ級高速重巡洋艦はティベ型へ順次改造、以後はチベ級はティベ型が主流となる予定。純粋なチベ級は消滅する模様。ザンジバル級機動巡洋艦に関しても現行艦艇は改修を施し、以降の機動巡洋艦はザンジバルⅡ級へ造船ラインが切り替えとなる予定。グワジン級も次級の建造計画が存在するが詳細は伏せられている。

 

 

8月

ジオンのニュータイプ部隊であるがシャア・アズナブル大佐がMIAとなってシャア艦隊は解体。ララァ・スンは戦後のごたごたに紛れて失踪。行方不明になったシャアを探すために旅立ったと噂される。

旧シャア艦隊の母体であるドレンのキャメルパトロール艦隊は宇宙攻撃軍に戻されている。

残った艦やMSがシャリア部隊としてNT部隊の側面を残しながら活動している。

現状NT部隊とされる正規部隊は存在しない。

 

既存のニュータイプを市井より搔き集める基本方針は変わっていないが、キシリア派は養成スクールを開校している。そういう意味ではギレン派は出遅れていた。

 

しかし、それはNT部隊に関してであった。

ラグランジュポイント外の所謂ゼブラゾーンに置かれたコロニー。

ギレンとノーマは責任者のギニアス・サハリンに案内され各所を回る。

その後ろにはギレン側近であるエギーユ・デラーズ大佐とロバート・ギリアム大佐が続いた。

 

「アルティメット細胞を変異させることに成功しています。それに制御も出来ています。ですが、まだ、兵器に取り込めるかと言えば。条件が多くザクやビグロと言った一般的なものですと制御を破ってきますので大型のMAが必要です。」

 

「であれば、既存のアプサラスやビグザムではダメなのか?」

「不可能ではないと思いますが、より確実性を増すために…こちらを」

 

ギニアスはシャッターを上げて見せる。

 

「変異細胞を制御しやすくするためのシステムを組み込んだMAです。」

「MAN-05…」

 

そこに非常警報が鳴り響く。

『所属不明機接近!守備隊は直ちに出撃せよ!』

「ぎ、ギレン閣下!こちらへ!」

デラーズがセーフルームへの道を指し示し、ロバート・ギリアムがギレンらをエスコートしようとしたところでギレンはそれを手で制す。

そして、ギニアスの方に視線を向ける。

 

「ジンの改造機…ザフトのザラ派残党か…。新型の性能を試すのにちょうどいい。ギレン閣下新型の運用試験はご覧になりますか?」

「あぁ、そうだな。見せてもらおう。」

 

そこにノーマが、まるで愛らしい玩具をねだるかのような無邪気な笑みを浮かべて手を挙げた。

 

「お父様、ギニアス技術少将。この機体、私が乗っても?……なんだか、中の銀色の細胞たちが、私を呼んで疼いているのですわ」

「ギレン閣下、しかし姫様を危険に晒すわけには……!」

デラーズが焦燥の色を滲ませるが、ギレンは微塵も動じず、むしろ愛おしげな目を細めて頷いた。

「よいだろう。我が娘の血肉が、あの機械とどう共鳴するか見ものだ」

「はっ、すぐに搭乗口を調整させます!」

 

巨体のMAグロムリンのコックピットに収まったノーマは、冷酷なまでに整った少女の顔立ちのまま、操縦桿を握りしめた。

「――ヴァリアブル・メガ・ランチャー、発射」

 

放たれた凄まじい光の渦が、襲撃してきた敵MSの群れを文字通り一瞬で蒸発させる。

「逃がさない、おもちゃは丁寧に扱わないと壊れちゃうもの」

 

有線ヘッドビームが狂気的な軌道を描いて残りの敵を次々と串刺しにし、宇宙空間に無数の爆炎の花を咲かせていく。機体下部から投下された銀色の球体が展開し、中から現れた金棒を携えた機械人形――かつての禁忌の象徴「デスアーミー」が、這い寄るジンの頭部を冷酷に叩き潰した。

 

「ぐ、グロムリンからMSが……! なんだあの化け物は……!」

防衛隊のザクFZが恐怖に震えながら一斉に銃口を向ける。そのただ中に、白銀色のデスアーミーを従えたグロムリンが静かに着地した。

ハッチが開き、幼い少女の姿のままノーマがふわりと降り立つ。足元には、死臭すら漂わない完全な静寂が支配していた。

 

「銃口を下げなさい。……彼らは私の言うことをよく聞く、いい子たちよ」

ノーマが冷ややかに微笑むと、屈強な男たちが乗るザクのパイロットたちは、なぜか抗うことのできない絶対的な恐怖と服従の念に突き動かされるように、一斉に銃口を地面へと下ろした。

 

「な、なんと……」「あれは、ただの人間ではない……」

周囲の技術者や軍人たちが青ざめて後ずさる中、ギレンだけは我が子を見上げるその瞳に、狂おしいまでの熱狂と歓喜を宿していた。

「……素晴らしい。我が娘こそが、暴力と理の頂点に立つ者だ。ギニアス、この成果は我が手で完全に収める。イシカワ大佐などには当分伏せておけ」

「はっ……!」

 

同時期、ジオン・ファウンデーションの共同開発では、条約に違反しない非自律型AIを搭載した無人MSの開発が進められていた。

先駆け機としてジオンのモノアイが廃止されたザクを素体とした機体が開発された。

 

「これがザクの無人機ですか。」

ファウンデーション王国から派遣された国務秘書官のイングリット・トラドールにジオンの技術士官が説明する。

 

「遠隔無人操作式の無人MSです。有人の指揮機にマニピュレータに備わっているレーザー通信装置から約10機ほどの無人機が10種類の基本動作の指示を受けて行動します。ただ、有人機のような高度な機動は不可能です。」

 

「名称は?」

「正式名称ではありませんが我々はザクゾンビと呼んでいます。」

「プログラムの更新によって行動パターンを増やすことは可能ですか?」

 

「可能かと思います。ただし現行のOSではこれが限界です。ただし、運用数ですが指揮をMSで行せず艦艇に直結し艦載を考えなければ軽巡洋艦で30は操縦可能です。」

 

共栄圏議会連合の有力国間では意欲的な開発が進んでいた。

 

グロムリン実戦試験から数日後。

ギレンは人材問題に対するもう一つのアプローチとして、通称『E計画』の視察へと赴いていた。

もとはガルマの思い付きによる私費研究であり、ギレン自身も当初はDG研究のカムフラージュ程度の認識でしかなかったが、この日を境にその認識は根底から覆されることとなる。

 

「お父様、今日はどのような場所に行かれるのですか?」

「なに、少し息抜き兼ねて、珍しい生き物を見に行くだけだ」

 

そう言って案内されたサイド3の猿園兼研究施設。

檻に近づいた瞬間、施設内の空気が凍りついた。

 

「ウホッ……キィィィッ……!? アッ、アッ……!」

そこにいた数十匹の類人猿たちが、人間が発するそれとは違う、本能の底からの恐怖に狂ったように怯え、一斉に檻の隅へと身を縮こまらせて震え上がったのだ。

動物が持つ生存本能が、ノーマの肉体に宿るアルティメット細胞の異様な気配、その圧倒的な「捕食者の頂点」の因子を敏感に察知したからにほかならない。

 

その群れの中から、恐怖に耐えかねて狂乱した一匹の大型の雄が、檻を突き破る勢いでノーマへと飛びかかった。

「おや」

ノーマは怯えるどころか、あどけない微笑みを崩さぬまま、東方不敗から叩き込まれた流麗かつ残酷な体さばきでその突進を完璧に見切り、一瞬でその巨体を地面へとねじ伏せた。

 

周囲の職員や研究者たちが呼吸を忘れて硬直する中、ノーマは暴れる猿の首筋を冷ややかに踏みつけながら、ふっと力を抜いた。

「……なぁんだ、すぐ大人しくなるじゃない」

 

拘束を解かれたその雄猿は、もはや敵意の欠片もなく、恐怖に濡れた目で地面に平伏し、おずおずとノーマの足元を這いつくばるように撫で始めた。すると、他の猿たちも一斉に檻の隅から這い出し、まるで絶対的な神に祈りを捧げるかのように、次々とノーマの足元や手のひらに額を擦りつけて服従の意を示した。

 

「さ、猿たちが……姫様に、完全服従している……?」

研究者が震え声で呟いた瞬間、ギレンの背筋を電流のような戦慄が駆け抜けた。

 

(――そうだ。この子は、人間などという矮小な枠組みですらない。霊長そのものを、この掌の上の暴力と恐怖で従える真の女王だ……!)

 

ギレンは表情こそ鉄仮面のまま抑え込んでいたが、その内面では狂おしいほどの歓喜の炎が燃え盛っていた。

「お父様、この子たち、連れて帰ってもいいかしら? こっちの大きい子が『アンソニー』で、あっちが『セガール』よ」

「……なぜ、名前が分かった?」

「ふふ、ニュータイプの感応みたいなものかしら。ねぇ、そうよね?」

 

そのノーマの無邪気な言葉を聞いた瞬間、ギレンの中でそれまでの「ニュータイプ神話」が完全に崩れ去り、そして別の確信へと塗り替わった。

(……ニュータイプなどというまやかしの進化ではない。彼女こそが、この世界を統べるべき「絶対の統治者」なのだ)

 

この日を境に、E計画の主旨は「類人猿兵士の編成」から完全に外れ、「ノーマの支配下における霊長・異形の統率実験」へと変貌を遂げた。

 

外遊の帰途、ノーマを先に帰らせたギレンは自邸にも戻らず、深夜のジオン庁舎・総帥執務室へと足を踏み入れた。

冷徹な暗闇の中、彼は誰の目も届かない執務机の引き出しの奥から、古びた一冊の機密書類を取り出す。

 

頁をめくる指が、わずかに震えていた。

そこに記された文字――『プロジェクト・レギオン』。

 

ギレンは冷徹な笑みを浮かべたまま、秘書官に命じてファウンデーション王国への専用ホットラインを開かせた。

「秘書官、外せ。……アウラ女王と、二人きりで話す」

 

暗い執務室の向こうで、ファウンデーションの女王アウラの姿が画面に浮かび上がる。

「久しいな、アウラ女史……停滞していたあの計画だが、我が愛娘の手によって、ついに次の段階へ進む準備が整ったぞ」

画面の向こうのアウラは、ギレンの尋常ならざる熱気と、その背後にある得体の知れない「怪物」の気配を画面越しに感じ取り、わずかに身を引くように眉根を寄せた。

(……この男、自分の娘をいったい何にするつもりだ……?)

アウラでさえ、その異様な狂気には背筋が凍るような気味の悪さを覚えつつ、かすかに引きつった笑みを浮かべて応じる。

「そ、それは……非常に、興味深いですね……」

 

 

 

世界の王座を書き換えるための歯車が、狂気的なまでの速度で回転しはじめていた。

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