0081年9月
亡命オーブ人問題において技術者を兵器開発に登用している事に抗議すべく、当該の諸外国の訪問が始まる。
抗議使節代表はオーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハが務めた。
使節団は共栄圏議会連合盟主国であるジオン公国にも訪れた。
使節団にはデギン公王とギレン総帥が出迎えた。
デギンは老齢を理由に内々の歓迎式典のみ参加した。
翌日には公王庁舎の貴賓室にて亡命オーブ人問題が取り上げられた。
「オーブの理念については私も把握している。しかし、貴国は旧連邦によるオーブ侵攻で実質的には国土を失い政府首脳部も全員死亡し滅んだと言っても差し支えなかった。亡命オーブ人としても故郷が滅んだと思い我が国に根を張る覚悟で理念を捨てて我が国の軍事産業に従事したのだろう。貴国は人的資源と言うが、つまりは彼ら個人が決めた事であり我が国としては彼ら個人の意思を尊重したい。無論彼らが軍事産業を辞するのは止めないし民間に再就職するのも彼ら個人の権利だと思う。それと、彼らがオーブへ戻ることを望むならそれもある程度支援しよう。」
「…ですが」
「そもそも、亡命オーブ人とは言うが彼らの多くは帰化申請や難民申請を受け入れていたが難民申請は受理しない予定だ。貴国はすでにこの場で望郷の念がある者たちの受け入れを表明したのだからな。再興したオーブに難民はいないはずだ。それに彼らの就労先は彼ら自身が決めたことだ。オーブは個人の就労の自由を握っているとでも言うのか?」
ギレンはこの未熟な国家元首に対して早々に話し合いを済ませて離席した。
会談終了後ギレンは復職したセシリアに愚痴をこぼした。
「もとより、ネオジャパンへの手前オーブの肩を持つ気はなかったが、あれなら適当に外務大臣に投げればよかった。奴らの言は富める者の言だ。亡命オーブ人が態々地球から最も遠いコロニーに来た理由を考えれば。あの小娘がしゃしゃり出るような場面ではないと解るはずだ。今のオーブは前政権の主要メンバーが死んで外交感覚や時勢を読む力が無くなっている。あのままでは同じ轍を踏みかねん。外務省にはオーブとは適度な距離感を保つように伝えろ。」
「かしこまりました。」
セシリアはタブレットを確認してギレンの指示を仰ぐ。
「ギレン閣下、オーブの特使団はこの後プラントへ向かうようです。プラントでは新造艦の進水式があるそうです。」
「オーブ特使の見送りは不要だ。プラントの進水式は現地の大使を出席させればいい。」
0081年10月
10月2日、新造艦ミネルバの進水式を目前に控えたプラントの軍事工廠「アーモリーワン」に於いて、3機のセカンドステージシリーズMS(カオスガンダム、ガイアガンダム、アビスガンダム)が大西洋連邦と思しき特殊部隊によって強奪される事件が発生する。
ジオン公国は共栄圏議会連合宇宙諸国に警戒を呼び掛け、ジオン公国は諸国に先んじて航宙警備行動を発令。ジオンは人命若しくは財産の保護又は治安維持の為の対海賊の警察行動の最大権限の行使を行う。
また、ジオンはゼブラゾーンコロニーに襲撃を仕掛けてきたザラ派残党の捕虜からかつてのこの時点ではそれがユニウスセブンとは察知できていなかったもののかつてのジオンに倣って隕石落としを行う情報をキャッチしていた。
『兄上、此度のザラ派残党の動向、プラントに伝えなくて良いのですか?』
「不要だ。ジオンは高みの見物で良い。地上の同盟国には悪いが宇宙で経済圏は確立できる。仮に小惑星を落としても我らには知ったことではない。」
プラントは奪取されたMSの奪還の為に新鋭艦を差し向けた。
その間には偶然か必然かプラントの議長ギルバート・デュランダルとオーブのカガリ・ユラ・アスハ代表、そしてかつてのプラントの英雄アスラン・ザラが名を偽って乗り合わせていたのだった。
共栄圏議会、火星及び木星の移住を目指して火星・木星自治政府に援助を始める。
水星の入植団内に共栄圏議会連合に官の人材意外に民間ベンチャーのヴァナディースが参加。
ギレンはサイド3にて懇親会を開いていた。
ギレン・ザビ主催のこのパーティーにはザビ家の現状が色濃く出ていた。
ジオン側の参加者はノーマとアリシアの2人の娘、実質的な妻セシリア。ギレンの側近衆からエギーユ・デラーズ、ロバート・ギリアム、ギニアス・サハリン。故サスロ・ザビの婚約者ナツメ・ユーリシア、ドズル・ザビの代理に最側近シン・マツナガと側室マレーネ・カーンが参加しており、カーン家の側面からカーン家側近家で議会の連立与党の党首カイザス・M・バイヤーも参加していた。参加者から見たものはではここまでだが警備要員まで目を向けるとガルマ・ザビの妻の友人レミア・ラランが警備のMSに搭乗していたり薄っすらとガルマ派(ガルマの軍政からの引退に伴い解体中)とのつながりを窺える。逆にデギン派とキシリア派の参加者は0である。デギンは公王として君臨してはいるがほぼ隠棲状態にあり実権を失って久しいが、勢力としてはまだまだ力を持っているキシリア派を排除しているこの懇親会はギレンとキシリアの対立が明確化したとみて間違いないだろう。
参加者側としてはサイド5の有力者はザイデル・ラッソ総統、ノモア・ドーラットNT研究所所長、ナーダ・エル情報将校らが、サイド1・4から多くの有力者たちが参加していた。また、キシリアの息が掛かっているとされるサイド6からも参加者が来ており現政権のキプロードン派の議員がギレンに接触している当たり、キシリアがキプロードンからペルガミノに乗り換えたとされるのは事実らしい。距離的問題のある共栄圏の地上からは都合のついたアウラ・マハ・ハイバル以外は駐在大使を参加させるに留まっている。他にも官民双方から有力者やその代理が参加している。
「マツナガか。ドズルめ、いくら面倒だからと貴殿に押し付け過ぎではないか?」
「いえ、ドズル閣下の御役に立てるのならば…。非才の身とは言え粉骨砕身させていただいております。」
「おお、ギレン閣下。講和条約式典依頼ですな。」
「ん?ザイデル閣下か。えぇ、ようやく世界も落ち着きを取り戻し始めましたな。」
ギレンは会場のステージに目を向ける。
「彼女はマツナガの…。」
「はい、自分の婚約者のオーレリア・ランシア嬢です。」
オーレリアはサイド5出身のヴァイオリン奏者である。
「我が国にも彼女の様な才ある者がいるのですな。それを見抜いた貴方方の慧眼はすばらしいですな。」
ザイデルが会話に混ざり始める。
「えぇ、開戦初期には連邦の暴挙で両親を失っていましたが…ザイデル閣下の救済政策のお陰で生きながらえ。私との縁に恵まれる結果となりました。」
「その様な裏があったとは、私の拙い政治がお役に立てて良かったよ。」
「ドズル閣下も軍上がりの閣下の事は大いに関心を示しておりまして…。」
ギレンはマツナガとザイデルが話し込み始めるのを確認すると軽く挨拶をして次のゲストへ挨拶に向かう。視線を娘に向けると自派閥のグレミー・トトやレオ・ブラウアーら名家御曹司や若い頭首を連れて若年層のゲストらに応じている。
この懇親会は娘の政治的基盤を固める意味合いもありギレンも主催者として積極的に話して回っている。
「楽しんでいるかね?」
その声にサイド1最有力企業の創業者であるシャルンスト・ロナが応じる。
「はい、この度は私の様な一介の企業人まで御声をかけて頂きありがとうございます。」
「うむ、貴殿の事は聞いているぞ。ビーム・シールドのデータを始め先進的な武装の開発を請け負ってくれていると。」
「いえいえ、私のできることなど。」
「謙遜するな。しかし、貴殿ほどの才能があるのであれば私有のコロニー1つでは足りないのではないかな?男子たるもの夢は大きく持つべきではないかな?コロニー1つではなくサイド1つ持つべきではないかね?」
「その様な大それたことは…。」
「そうかね?御社はそろそろコンツェルンを名乗っても良い規模のようだが?」
ギレンの言葉に畏まるシャルンスト。
「ギレン閣下。」
そこに宣伝省のナツメ・ユーリシアが声をかけてくる。
「ん、どうした?」
「お話の途中で申し訳ございません。ファウンデーション王国のハイバル陛下が…火急の懸案があるそうです。」
「む、そうか。シャルンスト社、今日は是非楽しんでいってくれ。ジオンは貴殿にも協力を惜しまないよ。ナツメ君、シャルンスト社長とのことは頼む。賓客だぞ。」
「はい、お引き受けしました。」
ギレンはその場を離れ、他の出席者と言葉を交わしながらアウラ・マハ・ハイバルが陣取っているテーブルへ向かう。遠目から面々を確認する。ネオジャパンのウルベ・イシカワ、トト家の傀儡、我が国のギニアス・サハリン、新顔はサイド5のノモア・ドーラットか。
「待たせたな。進捗はどうだ?新顔もいるようだが?」
「すべての計画は概ね予定通りに…。NT関係の話には革命軍の彼にも1枚かんでもらうことにしたのじゃ。」
社交辞令をすっ飛ばして本題に入る。
「アルティメット細胞は人と組み合わせるのは至難の業。一先ずは保留としてネオジャパンに預ける。まずは、クローン兵士だろう。」
「そうだな。」
「クローン兵士じゃが…。」
「どうした?」
若干ギレンに苦手意識を持っているアウラが伺いを立てるような口調で話す。
「閣下の次女が高い適性を持っておってだな…。」
「あぁ、なるほど…。かまわんよ…だが、秘密裏にだ…細心の注意を払え。」
「く、クローン兵士のデータは…。」
「ドーラット博士の方にも送ろう。それは良いか?ギレン閣下?」
ドーラット、新顔の割には遠慮がないそう言った配慮は苦手なタイプの様だ。
「問題ない。方向性を見るにドーラットは無から有を求める感じだな。」
「はい、私の所の研究所ではオールドタイプをニュータイプにする方向性を進めております。」
「人工ニュータイプか?」
「口さがないものには強化人間などと言われていますが。」
「閣下、ご歓談中に失礼します。」
秘書官が急報を伝える。
「スクリーンに映せ!」
他の出席者たちにも見える様に大きな画面に映す。
出席者たちが俄かにざわめき立つ。
「間に合わんかもしれんが、我が軍含め共栄圏の付近の艦艇を直ちに向かわせザフト軍の破砕作業支援に向かわせろ。」
容易に今後の事態が想像できたギレンは国家元首や全権者級が多くいることを見越して即座に懇親会会場を臨時の共栄圏議会連合仮司令部として機能させるための指示を出した。
ザフトの廃棄穀物生産プラントであるユニウスセブンが地球落下軌道に入っている。
「閣下、ブッホ社は社の自警団である『バーナムの森』を連合軍に提供いたします。」
私兵を抱える起業家の代表格としてサイド1のシャルンストが声を上げる。
「うむ、よく言ってくれた。」
シャルンストの名乗りに続いて各企業の代表や活動家が私兵の提供を名乗り出る。
災害支援の名目であった為サイド6や同地域のベネリット・グループも協力を申し出ていた。また、ギレンは共栄圏議会連合議長国の総帥として地上加盟国に対し国家には動員状態に入るように要請を出す。
結論だけ言えば共栄圏議会連合軍はユニウスセブンを落としたテロリストが掃討された後。最後の方にぎりぎり間に合い破砕作業を行いながら地上に降下するザフトの最新鋭艦ミネルバを見送っている。
また、ユニウスセブンの破片は共栄圏議会連合のジオン地上領土北米東海岸域及びジオン地上領土欧州に破片の落下及びそれに伴う津波被害が出ている。
プラントのギルバート・デュランダル議長は被害を受けた地球に多大な支援を行うなど戦争回避に奔走する。その中の一つにジオン公国のギレン・ザビがいた。
「今回の件はプラントとしても不測の事態でありまして、一部の過激なテロリストによるものです。被害を受けた方々に真摯に向き合い誠実に対応したく思います。つきましてはジオンを中心として共栄圏議会連合にも是非とも協力していただきたく。」
「うむ、それは尤もだな。…………ジオンは地上にも領土を持っているのだがな。」
デュランダルの答弁にギレンはかなり冷めた対応をした。
デュランダルはギレンが自身の真意を見透かしているのを察して眼力を強めて本音で答えた。
「ジオンへの手見上げはあります。」「ほぅ」
ギレンは途端に愉快そうな表情を浮かべて続きを促す。
「連邦の首などは如何でしょうか?」
「くっくっく、中々に面白い事を言う。興味が湧いたな。詳しく聞こうか。」
数時間後
ギレンは公王庁の軍令部へ顔を出して側近高官らに指示を出す。
「旧連邦諸勢力とプラントの回線は避けられまい。共栄圏議会連合は彼らの私戦には付き合わん。」
「よろしいのですか?」
「地上共栄圏の復興支援を最優先に置く。今はな…。」