宇宙世紀0073年
ギレン派閥にてサハリン家の援助が検討される。
モビルポッド計画始動。技術本部よりオリヴァー・マイ技術中尉が派遣される。
ジオニック社の人型機動作業用機器開発計画にはエリオット・レム少佐が派遣される。
その幼子はギレンの指を握って無邪気に笑顔を向ける。
そんな幼い娘の姿にどうすれば良いのかと動揺してしまう。
使用人等の他人に任せるなど、ありえない。
自分の手で…。
自身の執務机に並んでおいてある改造学習机とベビーベッドを見ている。
「うぅ…ふぇええええ!!」
ギレンは椅子から立ち上がり、娘のノーマを抱き上げる。おむつが湿ってポリマーが膨らんでいる。
「おい!誰か!オムツ!!」
「失礼します。」
ギレンの声でシッターがそそくさとオムツセットを持ち込んでせっせと取り替えている様子を見ながら、自身はコーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れる。ブラウンシュガーをスプーン一杯。コーヒーフレッシュがないことに気が付いた。
「ふぅ…まぁ、いいか。」
そう言って、粉ミルクを一杯コーヒーに混ぜる。
意外と旨い。
ギレンは視線を娘に移す。
容姿に関しては希望通りにならない可能性もあったが娘の顔が自分に似なくて良かった。
まぁ、そのように調整したのだから当然か。
公式記録上はノーマ・ザビ、出生0073年となった。
ギレンはデギンにアストライアへの手心を加える様に進言した。
「当事者の私が言うのも何ですが…父上、もういいのでは?彼女はただの哀れな未亡人でしかありません。一般人になるのなら、それでいいのでは?」
「…ずいぶんと甘いな。連れ合いを失った者同士で絆されたか?」
「まさか、あれほど手札に加えても、切り捨てても扱いづらい札はない。」
「持て余したか?」
「キシリアが勝手にしているようですがダイクンの遺児は相当な運の持ち主の様です。非科学的ですが往々に運命の女神に微笑まれた者と言うものはいるものです。」
「今後のことを考えて、保険をかけておこうかと。」
「そうか。」
「罷りなりにも我が国には議会があります。今まではアストライア夫人がいることで国内のダイクン派が馬鹿な真似をしなくなるので抑えに使えました。ですが、アストライア夫人は衰弱しており余命僅か。サイド3で死なれては我々の毒殺だ何だと言われかねない。今のうちにダイクンの遺児を預かるテアボロ・マスの元に送ります。」
「あの男はダイクン派だが人格者だ。彼女が彼の下で亡くなっても毒殺だ暗殺だなどとは騒がんだろう。だが、国内のダイクン派の反発は避けられまい。」
「ですが、テアボロ・マスや遺児たちが騒がねば国内のダイクン派は大きく動きますまい。国内のダイクン派の大半は穏健派です。」
「カーウィン家やカーン家に協力を要請するのが良かろう。」
ローゼルシア・ダイクン死去。幽閉生活で衰弱していたアストライアの最後の願いを聞き入れテキサスコロニーへの退去を許可。アストライアは共和国政府(デギン)より高質な医療体制の下、テアボロ・マス、ダイクンの遺児らの下に送り届けられた。彼らはアストライア・トア・ダイクンを看取ることとなった。
「それとは別に父上にのみ、お伝えしたいことが…お人払いを。」
「それ程の内容なのか。」
「はい。ですので…。」
デギンが使用人たちに手で追い払うしぐさをしてその場を離れさせた。
「ノーマを連れてきてくれ。」
ギレンが親衛隊員に揺り籠を持ってこさせる。
デギンがのぞき込むと乳飲み子が眠っていた。
「…ぎ、ギレン。この子は…。」
「私とトリエステの娘です。」
「だが、トリエステ嬢は4年前に…。」
「死んだ妻の体から未熟な胎児を取り出して人工子宮で生命を維持してきました。つい最近やっと人工子宮から出られるようになりましたので報告を…。」
「……。」
優性思想を持っている息子の事だからコーディネーターか何かをやっていることを確信する。
「父上、娘にザビ家の家門に迎え入れる御許可を。」
「う、うむ。ギレンよ。貴様の娘だがやはり…。」
「一応はコーディネーターです。私の娘ですから、危険は多いでしょう。トリエステの忘れ形見…サスロの様にむざむざ殺されるようなことはさせません。誰であろうとも…私の娘は不可侵です。」
デギンはこの時、息子の瞳に狂気を見たのであった。
宇宙世紀0074年~0075年
モビルポッド計画、先行量産型オッゴ及びボールが完成する。
スペースアミューズメントよりオンラインバトルアクションゲーム戦場の絆がリリース。
ジオニック社にて作業用モビルスーツZI-XA3クラブマンが完成。クラブマンは秘密としながらも、工業地区で人型機動作業機器として、開発された。ダークコロニーのMSの為のカムフラージュの意味合いがある。また、ジオニック社の人型機動作業用機器開発はひとまず完了とされ、ダークコロニーの計画に完全に統合される。
人型機動兵器開発計画、MS-04ブグ完成。
ギレンが秘密裏に研究させていた弱化アスタロスの開発は完了。研究自体は0068年以前から始まっており元来は植物成長の促進だった為、開発は当時からダイクン派ザビ派他派ともに全会一致で賛成でしたので内ゲバには巻き込まれなかった。副産物としての生物兵器アスタロスは封印されたことになっており、元来のアスタロス研究の陰でアスタロスの弱化が研究され続けていた。弱化アスタロスは他の植物を枯死させる因子を弱体化させ、地球全土を飲み込むとされた従来の生物兵器アスタロスを一地域程度で収束させるように自己崩壊を行うように遺伝子操作が為された。さっそく農業コロニーを稼働させて、農業コロニーを新規建造するか中古買取を行う。これによって強すぎるアスタロスは廃棄し、弱化アスタロスに置き換えられた。従来の酸素供給源や作物成長促進のそれとしての研究は継続。
サイド3のゲーム会社コロニアルゲームズより家庭機版戦場の絆が発売。
「閣下、オンラインバトルアクションゲーム戦場の絆が爆発的な売り上げを記録しています。そのことでナツメ第2秘書官から提案があるそうです。」
「他のコロニー、特にサイド1ザーンとサイド4ムーア、サイド6リーア、黄道同盟からも引き合いが殺到しているのです。また、先ほどの4つほどではありませんがサイド5ルウムからも個人単位ですがかなりの数の購入があるのです。それだけ、各コロニーを抑圧する連邦軍が嫌われているのですよ。独立の機運が高まっているという事でなのです。各コロニーに戦場の絆を輸出し各サイドの独立機運を高める扇動工作。ご検討くださいなのです。また、サイド3及び各コロニー他への宣撫工作担当部署宣伝広報部の拡張を要請しますのです。」
「やりたまえ。」
「ありがとうございます。直ちに各コロニーへの宣撫工作を開始します。」
ナツメ・ユーリシア秘書官を解任。
国民啓蒙・宣伝省を新設。大臣にナツメ・ユーリシアが就任。
新たな秘書官にセシリア・アイリーンが就任。
このオンラインゲームは多種多様な演習のデータ蓄積に繋がり軍のMS開発の大きな助けとなっていた。
連邦軍はこれらモビルポッドを急造品の兵器、動く棺桶などとこき下ろし自軍の宇宙戦闘機の的になるだけなどと喧伝していた。
また、モビルポッドへの対抗馬として突出した空間認識能力を持ったパイロット限定機体であったメビウス・ゼロがロールアウトした。同機はガンバレルと言う新機軸の兵器を搭載していた。ただし、ガンバレルを使えるパイロットは極端に少なくガンバレルを外した一般仕様の汎用宇宙重戦闘機メビウスがメビウスシリーズの主力となっていく。後にメビウスシリーズはMA扱いになるのだがMAが開発されていないため今はまだ戦闘機の一種である。
また、連邦陸海空軍もF-7Dスピアヘッド多目的制空戦闘機や61式戦車に変わるMBTリニア・ガンタンクを発表している。
キシリア・ザビがデギン及びギレンの許可を得ず、ダイクンの遺児キャスバル・レム・ダイクン(エドワウ・マス)を航宙客船の爆発事故を装って暗殺。
「ダイクンの遺児も殺ったか。」
「いけませんでしたか?」
「ジンバ・ラルもだろう。キャスバル・レム・ダイクンの使い道は考えていたのだがな。殺ってしまったのなら仕方がない。後始末に、今後の予定を考えなくてはならん。サスロが生きていてくれれば楽なのだがな。」
公的には死んでいるが、どうせ死んでない。
ギレンとしても勘のようなものだったが、キャスバル・レム・ダイクンは天運を持っているように思えた。とは言え、生きていたとしても名を変えひっそりと生きることになるだろう。脅威にはなるまい。
ジオン自治共和国国防軍士官学校にガルマ・ザビ、シャア・アズナブルが入学。
YMS-05Aザク開発完了。ジオニック社より人型機動作業用機器として公開される。