宇宙世紀0076年
連邦軍艦が農業ブロックの一基を破壊する事件を引き起こす。
また、この時期連邦軍は横暴が酷く他サイドでもサイド3程ではないが艦同士の接触事故やコロニー内の交通事故や性暴力等の問題行為が発生している。
年始にはザクⅡA型が完成していたが、防御面への不安から再設計が行われ3か月後ザクⅡC型が完成した。また、C型完成の翌月には機動性の向上及び核兵器の使用が忌避されることを予想して耐核防備用三重複合装甲と放射線遮蔽液を取り除いたF型も開発されていた。その翌々月には指揮官機用のFS型・S型も完成した。以降開戦までの間F型を主体に量産が行われ、核兵器搭載型としてC型が少数と指揮官機としてS型も生産され始めた。
また、陸戦型のJ型自体も6月には開発が終わっている。12月には高機動型とマリンタイプの設計自体は出来ていた。ザクⅡA型の開発以降MS開発が加速度的に進んでいくことになる。
その裏でちょっとしたイベントがあった。
目の前には土下座で釈明するトト家の当主がいた。
あれやこれや言い訳を述べている。
特に聞くべきものはない。
連邦や他派閥にばれたわけではない。
幸い、アウラの密告によって発覚した。
かのデザインベビーはコーディネーターではなく純粋なクローン技術とコーディネーター以外の遺伝子操作を駆使したものだった。アウラの計画の対抗として企画したのだろうが、許可を得ず作った様だ。私とトト家の遺伝子を組み合わせたデザインベビーを作ったらしい。トト家の当代党首は馬鹿なのだろう。
「もういい。そいつに関してわたしは認知しない。トト家で養子にしろ。ただし、あれを次期党首にしろ。もちろん、クローン兵計画も凍結だ。それが飲めないのなら…。」
「っ…はいィ!!ただちにそのように致します!!」
私のデザインベビーだが、IQは130。比較的高いが私の半分程度か。
実の娘の方が高い数値を出している。
デザインベビーが聞いてあきれる。
「カイドゥ女史、貴女のザビ家…私への忠義。大変結構、貴女の望むような環境を用意することを約束しよう。貴女の望みは少々金も時間もかかるがそれは理解してほしい。」
「いえ、閣下には十分なご支援を受けておりますので…」
「カイドゥ女史、アーノルドのバカが作った子供が党首になるまでは、こいつは幽閉して家宰として君がトト家を差配しろ。」
「わかりました。」
プラント議会、プラント最高評議会の政権与党、黄道同盟がさらなる党勢拡大のうえ発展する形で、自由条約黄道同盟ZAFT(ザフト)が改めて結党された。
ギレンはこの時期に現在のプラント最高評議会に籍を置き、前身の黄道同盟の創設メンバーである、シーゲル・クライン、パトリック・ザラと会談を開いている。
ギレン側の同席者はダルシア・バハロであった。
この会合の目的はジオン側からの当時構想段階であった共栄圏へのお誘いであった。
シーゲル・クラインとはコーディネーターの在り方や今後について、ギレンはナチュラルでありながらパトリック・ザラに近い考えを示す。
「クライン殿は命は生まれるものであり、造り出す物ではない等と仰ったが、出生率の問題が解決すれば手を返すのではないか?しかし、貴殿の考えはブルーコスモスの穏健派に被るものがあるぞ?それはコーディネーターとしては如何なものか?確かに出生率と言う問題はあるが、コーディネーターの高い能力は人類史において評価されるべきものだろう。態々、自分から滅ぼうとするのは違うのではないか?」
パトリック・ザラに対しては、彼自身のナチュラル蔑視もあり今回の会合はシーゲル・クラインへの義理の一種であったため会話は少なかった。
「私個人の意見としては、コーディネーターはこの世界に役割があると考えている。一部の過激派が唱える絶滅戦争などはナンセンスだ。出生率の問題もあるが人類すべてをコーディネーターにするのは無理だが、今の地球情勢において、それを推奨するのは否定しない。人類は地球の、いや地球圏のキャパシティーを超えた。手っ取り早い方法もあるがコーディネーターを増やして人口増加を止めて、この時期に人類の各分野の発展を行えば、多くの問題を解決できると思う。そういう意味でも機能不全を起こしている連邦政府には強烈な一撃は必要と考えている。」
こう言った発言もあって、後にパトリック・ザラが議長になった際も貴様らは殺すのは最後にしてやる的な不戦状態が続くことになった。
宇宙世紀0077年
農業ブロック破壊事件への反発が拡大、サイド3全体で反連邦デモが活発に…。
そして、ジオン自治共和国で一部の士官学校の学生達が引き起こした一大事件が勃発する。
ガーディアン・バンチに駐屯する地球連邦軍の一個連隊が、学生隊の蜂起によって奇襲され武装解除されたのである。
翌朝に予定されていたズム・シティへの治安出動を未然に粉砕したといわれるこの事件は、熱狂的な歓喜をもって共和国の市民達に迎えられた。
英雄的快挙を成し遂げ、指揮官として名を馳せたのはガルマ・ザビ。
ザビ家の末弟で、共和国議長デギン・ソド・ザビの寵愛を一身に受けていた御曹司であり、ジオン自治共和国国防軍士官学校の3回生だった。
事実は多少、歪曲されて喧伝されるものである。それが故意か、はたまた偶然にせよ。
指揮官として学生隊に指示を出したのはガルマだったが、実際にはそのガルマを煽動した者がいた。
シャア・アズナブル。
結局戻ってきたな。キシリアはずいぶんとご執心の様だが…。
もう、放っておけば良いのだ。
ノーマ・ザビ4歳。高い知能指数からギフテッド教育を行い家庭教師による講義以外にもギレン自身も帝王学や人心掌握術の講義を行うこともあった。側近のエギーユ・デラーズやギニアス・サハリンを招いて工学や軍事などの講義をさせたこともあった。IQも200を超え同世代の友人とはなじめない様子だった。学校には通わせず自身の下に着けた。ギレン自身のノーマに対して並々ならぬ溺愛ぶりと言えばその通りであった。
「…」
「ノーマお嬢様、何か異常はありませんか?」
「いえ、大丈夫です。」
「……ギレン閣下、数日は様子を見たい。入院で良いでしょうか?」
「うむ、致し方あるまい。許可しよう。」
「ギレン閣下は御息女に様々な英才教育を施している様子。入院中は私が科学分野の講義をしても?」
「よろしく頼むぞ。」
「お任せを。」
アウラはノーマの安定ぶりを見て自身でも驚愕する。
「まさか、ここまでうまくいくとは…しかし…これでは、彼女自身の本来生まれ持ったものによって成功したようなものではないか。数を揃えるには妥協も必要か。極めて優秀な素体が手に入るまで、しばらくは凍結するしかないか。」
何せ、同じ条件で再度同様の存在を作ろうとすると良くて死亡、最悪化け物が誕生してしまうのだから。
アウラは、そう言って打ち込んでいたパソコンを閉じた。
彼女が打ち込んでいた内容の表題には『プロジェクト・レギオン』と書かれていた。
それはひとまずとして、ガーディアン・バンチの一件で有名になったガルマには少々政治プロパガンダに付き合ってもらうことにする。往々にして近代以降の英雄はそう言った扱いになるのが常だ。
「兄さん?僕に、あ、いや私に御用とはいったい?」
「そんなに堅苦しくなるな。まずは、座るといい。」
「は、はい。」
ギレンは左右に秘書官のセシリアと宣伝相のナツメ・ユーリシアを控えさせてガルマに対面のソファーに座るように促した。
「ガーディアン・バンチの話は私も聞いている。大活躍だったみたいだな。英雄と呼ぶに相応しい。」
「そんなことは、自分なんて大したことありませんよ。周りに持ち上げられただけです。」
「仮にそうだとしても神輿として旗を振り切ったんだ。お前は立派だよ。」
ギレンは一拍置いて、話し出す。
「…でだ。私としてはもうしばらく担がれてほしいんだ。」
「ギレン兄さん?それはどういう?」
「近々宣伝省でな。このガーディアン・バンチ事件の詳細をテレビやサブスクリプションで流したいんだ。協力してくれないか?」
「え?あぁ?僕は構いませんが…。」
ガルマは暫く逡巡したが了承した。
代名詞が自分や私から僕に戻っている。
相当予想外の内容だった様だ。
「ナツメ君、詳細を。」
「はいなのです。ギレン総帥。ガルマ様、こちらに資料を用意しましたのでこちらをご参照ください。……省略。」
ガルマ・ザビを中心とした軍学校の学生たちが決起した背景やどの様なことを思い連邦駐留軍基地を制圧したか等をガルマ・ザビに語らせる内容であった。
「宣伝省より提案があります。詳細をご覧になりますか。」
セシリアの隣に控えていたナツメが一歩前に出る。
「本提案は、各サイドの子供たち及び視聴者に対し反連邦を意識づける目的があるのです。子供向けアニメ特有のポップでキュートなキャラクターが悪逆非道な行いをする連邦軍と戦う内容で、連邦に対する敵意を強める効果が見込まれますなのです。また、戦場の絆とタイアップすることで各サイドのオタク層をも取り込める公算があるのです。また、予想される効果に反して費用はかなり低く抑えられるのです。ご検討くださいなのです。」
「ふん、まぁ、やってみろ。」
低年齢層向け反連邦プロパガンダアニメ、魔法の少尉ブラスター・マリ、アニメ化決定。
これが後に大きなフラグになるとはギレン自身も知る由が無かった。
『あの時の共和国では大規模なデモが発生していました。確かに暴徒化している側面はありましたが駐留軍がデモ隊に武器の使用制限を解除したと言う話が入ってきました。軍学校は基地に隣接しています。それに駐留軍の連邦兵は日頃から自分たち防衛隊を見下していました。だから、そう言った情報を平気で自分たちの前で話していました。』
『では、ついカッとなってやってしまったと?』
『あ、いや、違うと言うのは嘘になるかな。でも、軍学校の仲間の中には家族がデモに参加してたり、あの辺りに家族が住んでいる人たちもいました。同じコロニーの同胞が殺されるのを解っていて何もしないなんて出来ないじゃないですか。』
ギレンたちは放送を見ていた。
「ガルマも中々に民衆の琴線を理解しているではないか。ザビ家の御曹司と言う堅苦しさを感じない。民衆に寄り添う。中々の扇動者だな。」
「閣下、ガルマ様のそれは…恐らく素…なのです。」
ギレンの言葉に恐れながらとナツメ・ユーリシアが返答する。
セシリアは黙って運んできたコーヒーを二人の前に置いて、ギレンの横に控えた。
ギレンはコーヒーを一口飲んでからひと言。
「才はあるかもしれんが、ガルマは政治家も軍人も向いてないな。」
連邦政府からは抗議があったがギレンら共和国は突っ撥ねた。
さらに宣伝省はサブスクリプションで配信を実施。
連邦の統治に不満や不信感が募っているサイド1ザーン、サイド4ムーア、プラントではサブスクリプションにて配信され、中立の観点から上映前にジオン視点の内容であると言う注釈付きで配信されたサイド6リーアやジオン派からの要望で遅れて配信されたサイド5ルウムなどがあり、他サイドでも動画共有プラットホームにて流出している。
間違いなく、連邦に対して各サイドは大なり小なり不満を持っている。
いけ好かない連邦に一発食らわせた。
若きエリート青年将校たち。
各サイドの一般大衆たちは声に出さずともしてやったりと思っているだろう。
ジオン共和国宣伝省はガルマたちの壮挙を大々的に取り上げ触れ回った。
当の連邦もスペースノイドのガス抜きと黙認している側面もあったが、連邦は甘く見ていたと言える。
MS開発に関してはツィマッド社がゴッグを試作させ、MIP社でもズゴックが試作させていた。後に新興企業であるスウィネン社もアッガイを試作している。ズゴックは実証実験中に爪が抜けなくなると言う事故が発生しアイアンネイルとクローシールドが置き換えられた。また、MS-08TXイフリートが設計されている。イフリート自体は生産は見送られたがバリエーション機が後に特殊部隊用にいくつか存在している。
MS開発においてはJ型の後継機としてジオニック社がグフを開発したが、設計段階でフィンガーバルカンや使用に高い技量が必要なヒートロッドに視察に来ていたガルマ・ザビのダメ出しが出て左腕部への外付け兵装3連装ガトリング砲とシールドに装着されたガトリング砲、ロッドがワイヤータイプに置き換えられた。