Gジェネレーションズ ギレンの野望    作:公家麻呂

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07 南極交渉終戦ならず 0079

 

ジオンや親ジオンのサイドはすでに戦勝気分であった。

緒戦における圧倒的な勝利を後ろ盾に、ジオン公国政府は地球連邦政府に休戦条約の南極条約を持ちかけた。すでに準備交渉が始まっておりジオン公国軍は一年戦争の緒戦である一週間戦争からルウム戦役において、連邦軍本部であるジャブローの壊滅こそ失敗したものの、ジャブローの密林地帯を穴ぼこだらけにしており、大規模基地のある各地に定期的に質量攻撃を続けていた。さらに、地球連邦宇宙軍随一の名将レビル将軍を捕虜にするなどの大戦果をあげた。これをふまえたジオン軍の主張は事実上の降伏勧告であり、地球連邦軍にはこれ以上の抗戦を行う戦力が残っておらず、条約を呑む以外に道はないと思われた。

 

それはギレン達も同様であった。

自派閥の者たちを集めて自邸でパーティーをするくらいには…。

 

「連邦は実質的な降伏文書に調印するだけだ。今後はジオンを中心にスペースノイドによる統治の時代が到来するだろう。ルウム、ザーン、ムーア又はリーアの順に多少優遇してやる必要もありそうだが地球の時代は終わる。今後は火星や木星と言った外側に目を向けねばならん。」

 

酒の席で饒舌になっていたこともあったが、ギレンは自派閥の者たちにそう語っていた。

 

「連邦も時間をかけて再建するだろうが、その頃にはジオンも火星や木星に生存権を広げて国力も回復した連邦と対をなせるだけの力を付けられるはずだ。」

 

さらに、デラーズやギニアスと言った特に近しい側近衆には将来のことを見据えた内容も語った。

 

「娘のノーマも私以上に多才で多くの才覚に恵まれている。娘にジオンを任せる時が来るのも、想像以上に早いかもしれんな。」

 

そう言って、子供ながらに大人たちと言葉を交わす娘に目を細めていた。

 

しかし、捕虜の身にあったレビル将軍が連邦軍の特殊部隊により救出され、条約締結のための会合が開かれていた正にその時に全地球規模で行われた演説が状況を一変させた。

 

『ヨハン・イブラヒム・レビルです。統合軍大将として友軍ルウム救援作戦を指揮しました。結果は大敗でありました。司令官であった私の作戦と戦闘指揮が原因であります。私は負傷しジオン本国で捕虜となりました。今こうして友軍基地からお話ができるのは、勇敢なる我が軍将兵により救出されたからであります。数十万の将兵と多数の艦艇を失いました。責任は全てこの私にあります。私がその栄光と誇りを失わしめた友軍によって救出されたのは神の御加護があったからです。敗北による喪失と屈辱の汚名をそそぐべしという神のおぼしめしがあったからです!もしも再びその任を命ぜられることがあるならば、私は全身全霊を以て雪辱を期すでありましょう。現在、南極に於て休戦条約の交渉が行われていることは知っております。しかしっ、現時点での休戦はなりません!それは休戦ではありません! 降伏であります!永き歴史と文化・文明を有するこの地球市民が専制と独裁に屈するということであります!!隕石落としというような蛮行を彼らが敢えて行ったのは何故か!?彼らも苦しいのです!このような行為は既にして彼らのあがきなのです!ジオンの力を過大に評価するべきではないっ!人的・物的資源がもとより限られているコロニー国家ジオンは、長く困難な戦いを戦い得ない!それ故にジオンは早期講和を望んでいる! その思惑に乗るべきではない!戦い続けるべきである!ジオンに兵無し!我々は必ず勝利する!!』

 

ジオン軍の内情を暴露しあくまでジオンに対する徹底抗戦を主張した。

この演説で事態は一変し、ジオン公国は停戦協定をあきらめ、戦時条約の締結に変更された。0079年1月31日に締結された南極条約は、大質量投下戦術の禁止やNBC兵器の使用禁止、中立地帯の制定、捕虜の取り扱いなどを定めた内容となった。

 

「……なんだ。これは…レビルを逃がしたのか。」

 

ギレンは唖然として画面に映るレビルの姿を凝視した。

 

「条約の交渉は!?」

 

そしてすぐに停戦条約の進捗をセシリアに確認させる。

 

「無能か?あいつ等、何であんなクソみたいな条件で条約を結んだんだ!?」

 

セシリアから進捗を確認したギレンは南極条約のあまりの内容に、反射的に外務省とキシリア派の同行武官を罵倒した。降伏しないなら地球に無差別質量攻撃や核攻撃で黙らせれば良かったのだ。

 

つい数十秒前まで、自分の娘をジオンの女王にする計画を練っていたが、それが全て吹き飛んでしまった。

 

「クソが…。」

 

血管が切れんばかりに怒りがこみ上げたが、側近たちの目がある。表面上取り繕って平静を装ったギレンは指示を飛ばす。

 

「月のマスドライバーには、すぐに照準をルナツーに向けろ。直接照準でなくていい、慣性の法則でぶつければいい。石でも圧縮廃棄物でもなんでもぶつけてやれ。条約は大質量天体落下戦術、つまりは落下だ。ルナツーへのそれは衝突だ。問題ない。」

「サハリン技術少将。アプサラス計画に追加資金を投入する。だが、他の計画にもオブザーバーで参加することが増えると思うが頼むぞ。」

「宣伝省の方でメディアは抑えておいてくれ。」

 

側近たちにひとしきり指示を出してからデギンやドズル、キシリアが向かっているであろう公王庁へ向かうために車を回させる。

 

「父上…。」

「ノーマ、お前は何も心配しなくてよい。全て父に任せておきなさい。」

「はい、父上。」

 

 

 

 

公王庁でギレンは不快感を隠そうともしなかった。

 

「キシリア、ドズルの所ほどでないにしろ…腐っても軍人だろう。あの内容で何も感じなかったのか。軍の手足に枷を付けおって……。」

 

会話の端々にキシリアへの当て付けが含まれている。

当のキシリアも視線を鋭くして睨むだけで反論はしなかった。

ドズルはギレンに子供のことを引き合いに出されてキシリアの肩を持つことをやめた。

そもそも、政治下手のドズルですら酷い失態だとすぐわかる程だったからだ。

デギンも始めこそギレンを諫める様な言葉を口にしたが、各サイドとの交渉は自分やキシリアが主導したが、基本的に主導権を握っているのはデギンであり条約締結の責任の一端があるのを匂わせると沈黙した。

 

「地上侵攻するしかない。」

「だな。」

 

ドズルの言葉にギレンが応じる。

 

ギレンとドズルが地上侵攻について意見を交わし始める。

 

「突撃機動軍で以前、策定したものがあります。それを見て頂きたい。」

「書面にして持ってこさせろ。」

 

持って来させた計画書に一通り目を通す。

 

「まず、南・西以外のアジアはいらん。東の民族は個々の民族意識に偏りがあり、変にプライドが高い連中もいる。宗教絡みの対立案件を抱えている所もある。地形的にも良立地とはいえん。下手に地域への帰属意識を持っているから、占領統治が難しい。現地民大半が工作員とレジスタンスでは割に合わんよ。アフリカは要所だけ抑えて現地のアフリカ民族解放戦線を支援し独立させればいい。必要なのは欧州オデッサと北米だな。あと資源地としてのオセアニアか。オデッサにつなげるという意味合いでインドのマドラス辺りの要所は狙いたいがと言った所か。オデッサ‐オセアニアルートの壁役に東アジアのゲリラや独立派を使えればと言った所か。」

 

ギレンは突撃機動軍の地上侵攻作戦を鼻で笑いながら添削した。

 

「基本はこれに則ってやればいい。細かいところはドズルと詰めろ。私は一度、総帥府に戻る。あぁ、そう言えば戦勝パーティー用に新生児用のドレスを送ったんだが、9月までには周旋できそうにない。ノーマと色違いの物だったんだがな。申し訳ないが、そっちで処分してくれ。」

 

「あ、あぁ。」

 

デギンは終始、無言だった。ギレンは娘ノーマを溺愛しており、最近はゼナのお腹の子供にも気を遣うようになっている。その子供を引き合いに出すあたりギレンの内心が相当腸が煮えくり返っているなと察したドズルは歯切れの悪い相槌を打った。

キシリアは不満そうだったが、ドズルとしては兄貴をここまで怒らせて、よくその態度でいられるなと呆れを通り越して、逆に感心してしまいたくなっていた。

 

質量攻撃の項目が全域でなかっただけ、マシだ。

デブリ迎撃能力があるとは言えルナツーへの質量攻撃によるハラスメントは出来るからな。地球からの補給線を絶ってしまえば、いずれこちらの手に墜ちる。

従来の短期決戦計画が破綻した以上は多少腰を据えてやらねばならん。

長期戦を見据えていかねばならん。

 

 

 

 

 

同日、地球連邦構成国オーブ連合首長国が自治権の拡大最大解釈として中立宣言を行う。

連邦とジオン双方が戦争継続の混乱していた時期の為、両国の反応は薄かった。

 

 

 

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