合わせ鏡の者
潮風が、古びた商店街のシャッターをカタカタと鳴らす深夜。私、佐倉悠斗は、アルバイト帰りの見慣れた裏道を一人歩いていた。
街灯はまばらにしか灯しておらず、足元には黒い影が長く伸びている。
この街にはある都市伝説がある「南ビルの地下駐車場に設置された防犯ミラーに、日付が変わる深夜0時から午前1時の間に、自分の手鏡をミラーに向け、その合わせ鏡に映る自分に向かって、誰にも話せない秘密を打ち明けると、『合わせ鏡の者』が現れる。その者は一瞬、ミラーの奥に姿を現し、打ち明けた者の顔を徐々に歪めるらしい。しかし、引き換えに、一度でもそのミラーに映ったことのある人物の**『隠したい秘密』を、顔か名前を思い浮かべるだけで、一つだけ知ることができる**。ただし、別の人物の秘密を知りたければ、別の日に再度、同じ儀式を行わなければならない。そして、儀式を重ねるごとに、顔の歪みは一層ひどくなる。」
この噂は、この街で昔からあるらしいが、具体的な被害報告が少ないため、半信半疑で語られるマイナーな都市伝説に過ぎなかった。誰もが「まあ、そんなものがあるらしい」とは知っていても、実際に試す者はごく稀だった。
2年前、私も一度だけこの都市伝説を試したことがある。当時、私は誰にも言えない秘密を抱え悩んでいた。
酒に酔った勢いもあり軽い気持ちでビルの地下駐車場へ向かい、儀式を行った。確かに、一瞬ミラーの奥に歪んだ「者」の顔を見た気がした。そして、その引き換えに、当時思いを寄せていたバイトの先輩の、驚くべき秘密を知ることができた。しかし、その後の私の顔に目立った変化はほとんどなく、知り得た秘密も真実か聞けないので、次第に儀式の事を忘れていった。
[拡散]
しかし、その状況が一変したのは、約半年ほど前のことだ。地元出身のYouTuber、**『KUMA(クマ)』**が、自身のチャンネルでこの都市伝説を検証する動画を投稿したのだ。
KUMAは、チャンネル登録者数こそ数千人規模だったが、心霊スポットや都市伝説の検証に特化したニッチな内容で、一部のコアな層から支持を得ていた。彼はこれまでにも様々な怪奇現象に挑んできたが、その動画はいつも再生回数が伸び悩んでいた。そんな彼にとって、この「合わせ鏡の者」の都市伝説は、起爆剤になり得ると感じたのだろう。
動画の冒頭で、彼はこの「合わせ鏡の者」の都市伝説を紹介し、半信半疑ながらも検証に挑む姿勢を見せた。そして、深夜の港南ビルの地下駐車場へ向かい、防犯ミラーの前に立った。緊張した面持ちで、彼はカメラに向かって語りかけた。
「さて、僕には、今まで誰にも話したことのない、ある秘密があります。今日は、この動画を通して、それを皆さんに打ち明けたいと思います。正直、これを話すのはかなり抵抗がありますが……皆さんに真実を届けるため、やってみましょう。もし、これで本当に秘密が知れるなら、僕のチャンネルも……」
彼は、自身の高校時代の、親友の彼女を奪ってしまったという、決して表に出せないような過去の過ちを、震える声で防犯ミラーと手鏡の合わせ鏡に向かって打ち明けた。その瞬間、画面が大きくノイズで乱れ、一瞬、ミラーの奥に青白い、歪んだ「者」の顔が浮かび上がるのが映った。動画はすぐに元の映像に戻り、ミラーに「者」の姿はなかった。
KUMAは、恐怖に顔を歪ませながらも、一言つぶやいた。「見えました……確かに、見えました……」
そして、動画のハイライトはここからだった。翌日、彼は再び動画を投稿し、こう語り始めた。
「昨日の動画、見てくれましたか?僕の身に奇妙なことが起こりました。あの時、僕のチャンネルの裏方をやっているディレクターのSさんの顔を思い浮かべてみたんです。そしたら……」
KUMAは、Sさんの顔色を確認すると、小さな声で、Sさんが会社に隠しているある個人的な秘密を淡々と語り始めた。それは、Sさんしか知り得ないはずの、非常にプライベートな内容だった。Sさんの顔はみるみる青ざめ、最後にはカメラの前でうなだれてしまった。
その動画は、瞬く間にバズった。彼のチャンネルの規模からは考えられないほどの再生回数を叩き出し、一晩で数百万を超え、Xのトレンドは「#合わせ鏡の者」「#KUMAの秘密」で埋め尽くされた。しかし、肯定的な反応ばかりではなかった。「やらせだろ、どうせ仕込みだ」「演出が露骨すぎる」「Sも役者だろ」といった懐疑的なコメントも多数寄せられた。
やらせだと証明するために、多くのYouTuberやTikToker、そして好奇心旺盛な若者たちがビルの地下駐車場へと殺到した。深夜の駐車場は、連日、秘密を打ち明ける者たちでごった返した。彼らは、ミラーの前で自身の秘密を告白し、動画を撮影した。中には、友人や恋人の秘密を言い当ててみせる者も現れ、「まじで当たった!」「これ、本物だ!」という興奮の声がネット上に溢れた。こうして、「合わせ鏡の者」の都市伝説は、ローカルな噂から、全国的な現象へと変貌を遂げたのだ。人々は、「顔が歪んでいく」という曖昧なデメリットよりも、「他人の秘密を知ることができる」という具体的なメリットに強く惹きつけられた。
[侵食]
KUMAの動画を見た後、私は思い出した。あの後、友人に「最近、ちょっと顔つき変わった?」と聞かれたことを。あの頃の私は、深く考えることもなく、寝不足か疲れのせいか、ただの気のせいだと流していた。しかし、KUMAの動画が発信され現実の現象として、広まったことで、私の心に、得体の知れない不安が芽生え始めた。もしかしたら、あの時の些細な変化は、私が認識していなかっただけで、既に始まっていたのかもしれないと。
しかし、歪む顔の恐怖よりも、秘密を知れる欲が私を支配していた。私は、最初の儀式から月日が経っていたが、動画を見て以来、欲望が肥大したように感じられた。
私は、二度目の儀式を行った。今度は、大学の教授の秘密を知った。彼の表向きの顔からは想像もつかないような、裏の顔。それを知った時、内の欲求が加速したことを自覚した。それでも、私は止まらなかった。次は、後輩の、隣の家の、バイトの同僚の……次々と秘密を知りたくなった。欲望が私を突き動かし、私は何度もビルの地下駐車場へ足を運んだ。儀式を重ねるごとに、欲は加速度的に肥大した。
最早、私は儀式に対する抵抗を無くしていた。
儀式を繰り返したある日のことだった。友人の木村と電話で話しながら、スマホで過去の旅行の写真を見返していた。楽しかった思い出が詰まった写真の中に、数ヶ月前の自分の顔が映っていた。その写真の自分と、今、スマホの画面に反射して映る自分の顔を、ふと見比べてみた。その瞬間、私はぞっとした。
写真の中の私の顔は、確かに、ごく僅かに目の下にクマがあり、口元も少し引きつっているように見えた。しかし、今の私の顔は、それとは比べ物にならないほど歪んでいた。目の窪みはさらに深く、口元は耳元に迫る程引き攣り、肌は青白く透けて見える。まるで、別人、いや、人間ではない何かのようだった。
ゆっくりと進行する変化だったため、その歪みに気づかなかったというのか?ありえない、流石に気づくはずだ。
これ程の変貌を認識できなかった私は、恐怖でスマホを取り落とした。私は、既に「普通の人」ではない存在へと変貌していた。鏡を見なくても、自分の顔がどうなっているか、触れば分かった。肌は冷たく、骨ばっている。
[代償]
KUMAの動画が世に出てからしばらくしてネット上では新たな異変が報告され始めた。KUMA自身も、自身のSNSで不調を訴え始め、動画の更新頻度が激減した。彼の顔は、加工を施していても分かるほどに、以前とは異質な雰囲気を纏い始めていた。コメント欄には「KUMAさんの顔、変だよ」「もしかして、あれが代償?」「どんどん顔が怖くなってる」といった声が溢れた。そして、彼を追ってミラーに挑んだ者たちの中にも、同様の奇妙な報告が増えていった。彼らの多くは、自分の顔の異変を隠そうと必死だったが、SNSに投稿される写真や、ニュース映像に映り込んだ一瞬の表情から、その歪みは徐々に明らかになっていった。
私は、人目を避けるようになった。大学にも行けなくなり、アルバイトも休んだ。部屋に閉じこもり、鏡を全て布で覆い隠した。食欲も失せ、夜もまともに眠れなくなった。夢の中でも、あの歪んだ「者」の顔が私を覗き込み、冷たい声で「知りたい?」と囁き続ける。私は、次第に現実と夢の境が曖昧になっていくのを感じた。
ある日の午後、私は久しぶりに外出することにした。食料の買い出しのためだったが、人前に出るのが恐ろしかった。マスクと帽子で顔を隠し、足早にスーパーへ向かう。しかし、ショーウィンドウに映る自分の姿を見て、私は思わず立ち止まった。
そこに映っていたのは、もはや私の顔ではなかった。
目の窪みはさらに深く、口は耳元まで裂けた様に引き攣り、肌は完全に青白く、血管が浮き上がっている。まるで、あの「合わせ鏡の者」が、そのまま現実世界に現れたかのようだった。私は、ショーウィンドウの前で立ち尽くし、自分の変わり果てた姿を呆然と見つめた。通行人が、私を避けるように通り過ぎていく。彼らの視線が、私を刺す。
私は、このままでは本当に「合わせ鏡の者」になってしまうと、本気で恐れ始めた。私は、最後の望みをかけて、木村に連絡を取った。
「木村、頼む……助けてくれ……」
私の声は、ひどく震えていた。もはや人間の声とは言えない、ひび割れたような音になっていたかもしれない。木村は私の異変に気づき、すぐに駆けつけてくれた。彼は私の変わり果てた姿を見て、一瞬言葉を失ったが、すぐに気を取り直して言った。
「悠斗、落ち着け。まだ手はあるかもしれない。都市伝説の詳細が分かればもしかしたら……」
私と木村は、オカルト系のウェブサイトや書籍を調べ始めた。彼はこの数週間、私を救うために必死に手伝ってくれた。
彼自身の顔色も、心配のあまりか、青白くなっていた。私は、彼の言葉に微かな希望を見出しながらも、心臓が常に締め付けられるような感覚に襲われていた。夜が来るのが、何よりも恐ろしかった。
私は、自分と同じようにこの怪異に苦しむ者はいないかと、必死にネットを漁り始めた。顔の歪みを隠しながら、夜な夜なパソコンに向かい、オカルト板や心霊体験談の掲示板、匿名サイトを読み漁った。そして、数日後、私はついに、この「合わせ鏡の者」について、私と同じような被害を訴えるスレッドを見つけたのだ。
ネット掲示板の書き込み
[オカルト板] 南ビルの「合わせ鏡の者」試した奴いる?顔がマジでヤバい
* 名無しさん@オカ板:
KUMAの動画見て、南ビル行った奴いる?俺、試したんだ。秘密は知れた。マジだった。でも、なんか最近、顔が変な気がする。気のせい?
* 名無しさん@オカ板:
> > 1 俺も行った。あれから3日目だけど、目の下のクマがやばい。鏡見ると、口元が引きつって見える時がある。気のせいじゃないと思う。
> >
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* 名無しさん@オカ板:
うちの弟が、KUMAの動画見て行ったんだけど。最近、顔がどんどん変になっていってる。最初は「寝不足だよ」とか言ってたけど、今じゃマスクしててもわかるくらい歪んでる。あの都市伝説、マジだったんだよ…。弟、鏡見るのめっちゃ怖がってる。
* 名無しさん@オカ板:
> > 3 うちの彼女もそう。最近、変な悪夢見てるって言ってるし、顔が別人みたいになってきた。あのミラーに映った人の秘密知れるのはマジだけど、代償がデカすぎる。彼女、知りたい秘密がたくさんあるからって、もう3回も行っちゃってるんだよ。
> >
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* 名無しさん@オカ板:
俺の友達も行った。1週間くらいで顔が明らかに変わった。口が耳元まで裂けるって言うか、目が虚ろっていうか…。もう人前に出れないレベル。そいつ、上司の秘密知って、出世に利用しようとしたらしい。何度も通ってたから、もう手遅れかも。
* 名無しさん@オカ板:
やばい、KUMA本人も最近動画出てこなくなったと思ったら、顔の加工が限界だってコメント残してたな。あれ、ガチだったのかよ。あいつもバズってから、何回もやってたって噂だぞ。
* 名無しさん@オカ板:
俺も試した。誰にも言えない秘密ってのが、本当にあったから。知りたい秘密もあって。最初は顔の歪みなんて嘘だろって思ってた。でも、2週間経たないうちに、もう人間に見えない。助けてくれ。どうしたらいいんだ?この顔、戻らないのか?俺はこれで4回目。もう限界。
* 名無しさん@オカ板:
> > 7 わかる。俺も今、その状態。鏡見るの怖くて、部屋中の鏡隠した。でも、窓ガラスとか、スマホの画面とか、どこにでも自分の歪んだ顔が映るんだ。俺たち、もう終わりなのか?俺は5回。もう目も開けられないくらい歪んでる。
> >
>
* 名無しさん@オカ板:
誰か、この現象を止める方法を知ってる奴いないのか?このままじゃ、俺たちも「合わせ鏡の者」になっちまう。
* 名無しさん@オカ板:
> > 9 俺が聞いた話だと部屋にお札とか貼るといいって聞いたぞ。ビル近くの〇〇神社のお札を部屋や鏡に貼れば良いらしい。俺は試してないけど。友達が顔の進行止まったって言ってたわ。
> >
>
[淵]
その夜、木村は私の部屋に泊まり込んでくれた。彼は、先ほど私が見つけた掲示板の書き込みを見ていたのだろう。最後の希望として、私たちはその情報にすがりついた。私と木村は部屋や鏡にお札を貼っていった。
「これで、少しはマシになると思う。もし何かあったら、俺を起こしてくれ」
木村はそう言って、私の隣で横になった。
私は、木村がいることで、少しだけ安心できた。しかし、深夜一時を過ぎた頃、私に似た声が聞こえてきた。
「……知りたい?……」
私は、木村を起こそうと彼の腕を掴み激しく何度揺さぶっても、何故か一向に目を覚まさない。
「……知りたい?……戻った?……」
声は、部屋中に響き渡る。どこから聞こえてくるのか分からない。私は恐怖で身動きが取れない。部屋の隅に置かれたテレビの画面が、不自然に光りそして、画面の中にあの歪んだ「者」の顔が浮かび上がっていた。
テレビの中の「者」は、私をまっすぐに見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「……戻った?……」
その声は、もはや私の声と「者」の声が混じり合ったような二重の声になっていた。テレビの画面から、「者」の顔が、まるで画面を突き破るかのように、ゆっくりとこちらに迫ってくる。
私は、悲鳴を上げようとしたが、喉が張り付いて声が出ない。全身が金縛りのように動かない。テレビの画面から、「者」の細く、長い指が、ゆっくりと伸びてきた。その指が、私の顔に触れる。
ひんやりとした、まるで死人のような冷たさだった。
その瞬間、私の意識は途絶えた。
翌朝、木村が目を覚ますと、部屋の隅に、まるで人形のように佇んでいる私を見つけた。
その顔は、完全に「合わせ鏡の者」の顔になっていた。白濁した目は大きく見開かれ、虚ろな光を宿している。口は耳元まで裂け、不気味な笑みを浮かべている。
木村は、恐怖で後ずさりした。彼は、私がもはや人間ではないことを悟ったのだろう。彼の顔は恐怖に歪んでいた。そして、彼自身もまた、この怪異に巻き込まれようとしていた。
木村の視界の端で、部屋に置かれたグラスの水面に、一瞬だけ歪んだ「者」の顔が映り込んだ気がした。
者に戻った私はゆっくりと木村に顔を向けた。私の口から、あの「合わせ鏡の者」の声が聞こえた。
「知りたい?……知りたい?」
その声は、冷たく、ひび割れた様な感情のない響きを持っていた。木村は、震える足で部屋を飛び出した。彼は、私がかつて抱えていた秘密と同じく、誰にも話せないような恐怖を抱えて、この部屋を後にしたのだ。
街には、今日も「合わせ鏡の者」の噂が囁かれている。南ビルの地下駐車場にある防犯ミラーにまつわる噂は、いつしか、佐倉悠斗という者の消滅と共に、より具体的な恐怖として語り継がれるようになった。そして、真夜中に手鏡をミラーに向けた合わせ鏡を覗き込み、誰にも話せないような秘密を打ち明けた者は、自分自身の姿が徐々に歪んでいくのを見るだろう。そして、儀式を重ねれば重ねるほど、その歪みは加速し、いつか、その者もまた、「合わせ鏡の者」の一部となるのだ。
あるビルの地下駐車場は、今も変わらず、深夜になるとひっそりとしている。そこに設置された防犯ミラーは、今日も静かに、来るべき「打ち明け話」を待っている。そして、そのミラーの奥には、新たな「合わせ鏡の者」が、静かに、しかし確実に、その時を待ち続けているのかもしれない。
佐倉悠斗の部屋は、それ以来、夜になると、その部屋の窓ガラスや鏡に時折、歪んだ「者」の顔が浮かび上がるという。そして、その「者」は、静かに、街のどこかで、新たなを秘密を待ち続けているのかもしれない。
そして、奇妙なことに、街では、最近になって、顔の歪んだ人間が目撃されるようになったという。彼らは、まるで生きている人形のように、虚ろな目をして街を彷徨い、時折、ふと立ち止まっては、ショーウィンドウや車の窓、あるいは水たまりに映る自分自身の姿を、じっと見つめているのだ。彼らの口元は、不自然に歪みまるで何かを語ろうとしているかのように見えるが、そこから発せられるのは、ただ冷たい、無意味な囁きだけだという。
KUMAもまた、最新の動画を最後に消息を絶った。彼のチャンネルは更新が止まり、彼の歪んだ顔を心配するコメントだけが残されていた。彼の最後の動画には、「僕は真実を伝えたかっただけだ」という、どこか悲痛なメッセージが添えられていた。だが、その動画のコメント欄には、奇妙なことに、こんな書き込みが増えていたのだ。「私もやってみました。秘密を本当に知ることができました」
彼らは、佐倉悠斗がそうであったように、自らの秘密を鏡に打ち明け、「秘密を知る」という欲に囚われた者たちなのだろうか。そして、彼らの歪んだ顔は、彼らが「合わせ鏡の者」と化した証なのだろうか。
今日も静かに、そして不気味に更けていく。秘められた欲望と、その代償としての歪みが、街のあちこちに、ゆっくりと、しかし確実に、広がっていく。