気づいた時には遅過ぎた。
普通の世界に生まれ変わったと思っていたからだ。
前世とほぼ変わらない。強いていえば少し科学が進んでいる。
園児、小学生、中学生、高校生、大学生
どれもが一周目と変わらない。
……と思っていたりしていた。
小学五年生になって全てが変わった。
突然見知らぬ土地に飛ばされ謎のモンスターとの邂逅。名前はデジタルモンスター。略してデジモン。
……いや知ってますわ。一時期はポケットのモンスターに並び立つ程の人気を誇った
初めて出会った垂れ耳で子犬っぽさのあるデジモン
もしかして選ばれし子供達関係か? それともデジタルワールド壊滅ルート? ふざけんな! んなことは御免こうむる!!
と口に出したいが善意で教えてくれたプロットモンに八つ当たりするつもりはなかった。グッと堪え飲み込みつつ詳しく聞けば拍子抜け。
選ばれし子供達案件でもなくデジタルワールド滅亡やX事件でもない。
ただ
……それはそれでふざけんな。
それに体ごと移動してるらしいから大変な事になってんじゃねえかよ。
しかしデジモンワールドは現実世界と時間の流れが違う。
どこの精神と時の部屋ですか?
一週間滞在しても七分。数ヶ月でも数十分ぐらい。
行方不明もクソもないわ。すぐにでも戻れば今まで通り普通の生活を送れる。
この世界にデジタルワールドが存在することを知ったからといって関わるつもりは微塵もない。記憶の中に留めといて普通の生活を送るだけで充分だ。
……無理なんだなそれが。
プロットモンに戻り方を聞いたが人間がデジタルワールドに来る事自体有り得ないらしい。
そりゃそうだわ。奇跡に等しいことでしょう。
一応デジモンテイマーなる者の組織が存在する。存在するなら保護して貰ってたが残念ながらこのデジタルワールドには存在しない。
途方に暮れたところでプロットモンが自分が暮らしているデジモンの村へ案内をしてくれた。ここにずっといたら危ないからってさ。
同時に短期間でいいから村に置いて欲しいと頼み込んだ。ただの人間にデジタルワールドは死亡フラグ満載過ぎる。
当然断られたがプロットモンの必死な説得によりなんとか滞在を認めて貰えた。ガチでプロットモンには感謝しかないし足を向けて寝られない。
しかし初めは人間の俺を怖がったり警戒しマトモに会話を出来るのはプロットモンと村の長をしている
そこはお馴染みジジモンじゃないのか…と思ったが他の村の長をしているのを聞いてそんなもんかと納得した。因みにババモンも分からなかった。
この村にはババモンを除き究極体のデジモンは居らず強くて成熟期のデジモンが数体、その他は成長期や幼年期等の幼いデジモン。完全体へと至ったデジモンはいない。
それ故に村の外にいるデジモンに狙われやすかったんだ。村に滞在し一週間で
それもババモンや成熟期のデジモンが居ない時期を狙っての犯行。町を破壊していくゴブリモンと高みの見物を決め込むオーガモン、為す術なく怯える町のデジモン達。
そんな光景を見て見てみぬ振りなんてできなかった。気づいた時にはゴブリモンをぶん殴ってたもんな。
前世で喧嘩慣れしていたのもあり抵抗はなかったが如何せん身体はガキ。思う様に体を動かすことができず傷を負いながら悪戦苦闘。
そこで痺れを切らしたオーガモンが直々に参戦。あっという間にワンパンされちまいましたとさ。いや子供がゴブリモン相手になんとかなっただけ凄いと思いますけどね?
どこぞのマサルダイモンなら子供の時でもなんとかなりそうだけどさ。
プロットモンの悲痛な叫び声は今も忘れられない。たった一週間でも絆を紡いでいたんだなと。
プロットモン自体が人懐っこい性格をしていた。あとは神聖系デジモンだから善より…というかお人好し過ぎた。
個体によって違いはあるだろうがあれこれ世話を焼いてくれていたし…そういう気質なんだろう。
泣き顔のプロットモンの頬を撫でて意識飛ばそうとしたらプロットモンが光りだしてさ。
……なんか進化しました、はい。
…
気が付けばベッドの上。視界には泣き腫らしたテイルモンと安堵の息を漏らすババモン。
目を覚まして直ぐにテイルモンに抱き締められ傷口を抉られたりしたがそれは置いておいて、事の顛末を聞いたわけよ。
テイルモンがオーガモンを一方的にボコしにボコしまくったらしいです。なんならデジタマ化すら許さない程に重傷………デリート一歩手前まで爪を振るうのを止めなかったとババモンが教えてくれました。
デジコア粉砕とか洒落にならない。
ネコパンチ…じゃないですね。切り裂いてますね。……確か爪はサーベルレオモンっていう究極体のデータをコピーしてるとか言われてるよな?
あ、あー……オーガモンは…い、一応生きてる。包帯グルグル巻きで原型留めてなかったけど…テイルモンを姉さんと呼びペコペコしていたよ。
寧ろデジタマ化した方が幸せだったかもしれない。俺を兄さんと呼ぶのはやめてくれ。
ゴブリモン軍団はいきなり自傷行為を始めたとか。全員がデジタマ化しているんだって。
すぅ……キャッツ・アイだったか。
相手を操るんだっけ? 成熟期でえげつない技を覚えてらっしゃいますね。
流石に格上相手には効かないんだろうけどさ。あ、デジタマはババモンの方で管理し育てるらしい。
取り敢えず全部テイルモンが解決してくれたってこと。
めでたしめでたしってことで。
数日は安静にして改めて解決策を探しつつ村の復興作業していて変わったことが二つほどある。
一つはテイルモンとババモン以外のデジモンに受け入れられたこと。素性の分からない人間が身体を張って町を守ろうとした背中は少なくとも影響を与えていた…らしい。
幼年期と成長期のデジモン達は挨拶を交わしてくれたり遊びに誘ってくれたりと積極的に、成熟期のデジモンには謝罪をされ今度は共に戦おうって仲間として認められた。
戦力に含まれても困るんだが? ただのガキぞ? 足手まとい確定ぞ? 精々囮ぐらいにしかならない。
まぁ本当の意味で仲間になれたんだと思う。戻るまでの間だが少しでも多くの思い出を残そうと心に決めた。
……これが1つめ。2つめは────
「なにしてんのテイマー?」
テイルモンになってから俺のことをテイマーと呼ぶようになった。常に隣にいるし飛び付いたりイタズラしたりとスキンシップも激しくなった。
呼び方に関しては選ばれし子供達やデジモンテイマーのことを教えてたからだろう。
説明の中で運命の相手やパートナーって単語に反応していたのは覚えている。
親しみを込めてと言っていたしな。
見た目こそ猫だけど犬みたいにベッタベタに甘えてくる。幼年期デジモンを抱っこしたり成長期デジモンとじゃれ合ってるだけで恨めしそうな顔で見ているし、酷いと割り込みもある。
一週間で距離感が急接近…あんまり変わらないか? 体はガキだから普通に重い。
ババモンや成熟期デジモン達は微笑ましそうに見ていたが……なぁ?
最後には元の世界に帰る。
二度とデジタルワールドに行くことはないしデジモンと関わることもない。
深く考えすぎかも知れないけど長居するのはよろしくない。何故か分からないが脳が警笛を鳴らしていた。
「テイマー? 聞こえてるー?」
背中に乗っかかったテイルモンをスルーし最速で戻る方法を見つけなければ! …この村から離れることも…………。
……と思っていましたよ、ええ。
確かに戻ることはできましたよ、ええ。
五年掛かりました! 五年もね!!
なんでこうなった? 理由は度重なる不幸に見舞われたと言えばいいのか。
思い立ったが吉日。
手遅れになる前にテイルモンとババモンに話をした。ババモンは悲しそうな顔するも納得してくれたんだ。
誰かを護衛にまで付けてくれると言ってくれた。…帰ったらおばあちゃん孝行しようと思う。
だけどテイルモンは違った。
瞳孔かっぴらいてこっち見てたもんね。まぶたから溢れるほどの涙を流して懇願、グッと堪え拒否すれば子供みたいに駄々を捏ね、異変に気づいたデジモン達が大集合。
隠しきれなくなり出ていくことを伝えると応えは賛成派と否定派で分かれた。…ぶっちゃけ村の中で大乱闘寸前だった。
復興しかけた村が二度目の崩壊を迎えかけたよ。慌てて一年は残ると口に出しちまってね。
先陣切った鉄砲玉テイルモンはピタリと止まり何度も確認してきて、首を上下に振りまくりなんとか事を収めることができたんだ。
一年は村で拘束。現実世界で5.6時間ぐらいで帰る頃にはお天道様はしずんでいることでしょう。晴れて不良少年の仲間入りとなってしまったわけです。
どうしようもねえわこれ。と諦め滞在中は何も考えずに暮らしていた。
村の中でも色々あったけど。
……テイルモンが選ばれし子供達やデジモンテイマーの事を広めてくれやがりましたの。
村の中だけなら兎も角、定期的にやってくる商人や迷い込んだ放浪者にもね。
それからはテイルモンに限らずテイマーと呼ばれるようになった。……名前で呼んでくれとは言わんけどモノホンのテイマーに失礼過ぎる。デジヴァイスだって持ってないぞ。
+進化したいデジモンから良く絡まれるようになった。幼年期や成長期のデジモンはもちろん、成熟期のデジモンも、しまいには噂を聞きつけやってきたデジモンまで。
ババモンは心底驚いていたよ。……かなり辺境の地らしいしここまで賑わったのははじめてとも言っていた。
客寄せパンダかなにかだろもう……。パンダモン呼んできてくれ。
まぁそれっぽい特訓方法を教える毎日。
後が怖いなーと言い訳を考えていたら…進化するデジモンが現れた。特に幼年期のデジモン達。幼年期は幼年期I、幼年期Ⅱの二種類あるんだが幼年期Iから幼年期Ⅱに進化するのも度重なる努力が必要らしい。
下手すりゃ幼年期のまま人生を終えるデジモンもいるんだとか。デジモンの厳しさと目の前で幼年期Iのボタモンが幼年期Ⅱのコロモンに進化と二重で驚いた。
大はしゃぎするコロモンに戸惑う俺。
進化を目撃したデジモン達は俺が進化させたと疑わなかった。
テイルモンなんてしたり顔で流石にボクのパートナーなんて言ってくれるし…最後にゃ別れることになるんだぞ? おん?
コロモンを皮切りに立て続けぽんぽんデジモン達が進化していくんだが?
ありがとう? …テイマーのおかげで進化できた?
違うだろ? 努力が報われただけだろう? 勘違いするなよ? これは君達が努力した結果であって俺は関係ない。
これだけはハッキリと言ってやった。
……逆効果だったよ。謙虚とか優しいとか…これっぽっちもないって!
もう頭を抱えたくなるレベルだ。……あるデジモンが来訪した時には頭がショートするかと思った。……
デジタルワールドを守護する聖騎士達。オメガモンやアルファモンが有名だろう。正確にはロイヤルナイツは称号らしいけど。
ロイヤルナイツはデジタルワールドに危機が訪れない限り姿を現すことは滅多にない。……例外はいるんだけどさ。
現地に降り立ち活動を行い、ロイヤルナイツの称号を弟子に継がせるべくデジタルワールド各地を旅しているデジモン。
「君が噂に聞くデジモンテイマーかね?」
「これが人間…?」
んんんんんんんん。
親父って言葉が似合いそうなこのデジモンは
……後方にはシスターがお二人。
ガンクゥモンに助けられハックモンのお目付け役をしているから一緒にいるこたぁおかしくない。
この村にいることがおかしい!!
嬉しいっちゃ…嬉しいけど、さ。何を言われっか予想できるわけよ?
ロイヤルナイツの存在を確認できてここがデジタルワールドだと確信を持てたのはいい事だと思う。
…一応別のデジタルワールドが存在する訳でして……
んでテイルモンがめっさガンクゥモンを警戒してんだよなぁ。ボクのパートナーになんか用? って不機嫌MAX。
貴方様が広めたせいでこんなことになっている訳ですよ? お分かり?
予想通りでデジモンを進化させた技量と実力を見込んでハックモンに特訓をして欲しいとの事だった。……無理ゲーでは?
これにはテイルモン……とハックモンが大反対。なんであんた達の特訓にテイマーが手を貸さないといけないわけ? とテイルモンが。
こんな得体の知れない奴と特訓なんてできませんしお師匠様と修行がしたいです! とハックモンが。
ここからが大変です。互いに逆鱗に触れたのか口喧嘩から喧嘩に発展。
額に手を付き呆れるガンクゥモン。あわあわと慌てるシスタモンブラン。野次を飛ばすシスタモンノワール……と、村のデジモン達。
あのさぁ……。
ロイヤルナイツが来たってだけで祭りごとみたいなものだし…仕方ないのかぁ?
勝敗はテイルモンが白星。成熟期と成長期の実力差はあると思う。ハックモンはバトル慣れしてたし良い勝負はしてたけど…。
喧嘩の後は面白い様に仲良くなって…ハックモンの特訓を手伝うことになったよね。勝手にテイルモンが決めちまった。
一緒に特訓するらしい。
嘘です村のデジモン達総出で特訓ですわよ。
村の中の一年は特訓に明け暮れていたんだよね。お陰様で村のデジモンの平均期が高まったよ。
幼年期は全て成長期に、成熟期も増え完全体へと至った子もいる。
いやぁ…あのコロモンがアグモン、グレイモン、メタルグレイモンに進化した時は感動物でしたねえ。
幼さが残ってて懐いていたのもありメタルグレイモンの状態ではしゃぎながら飛びかかられた時は死ぬかと思いましたけどね。
あと君の攻撃は核弾頭一発分に匹敵するんだよ。みてみてーと笑顔でギガデストロイヤーぶっぱなされた時は気絶するかと思った。いや気絶した。
危険を察知したガンクゥモンのおかげで事なきを得て最後にババモンから説教されていた。
メタルグレイモンが居るだけでこの村は要塞みたいなもんよ。今じゃ村のガーディアンの一人。
そんで意外だったのはテイルモン。進化する兆しはあったが進化はしなかった。基礎能力は上がったっぽいけど…。
特訓に強制参加させられていたオーガモンがデジタマモンに進化し逆襲とばかりテイルモンに襲いかかったんだけど返り討ちにされていたし…見た目は成熟期だが実力は完全体くらいにはなっているんだろう。
他にも色々とあるが……ハックモンが
少なくとも特訓した甲斐があったもの。バオハックモンに進化したその日は祝杯を上げたほどでガンクゥモンも感動していた。
ガンクゥモンも初めは半信半疑。ハックモンの育成に難航していたらしい。そんな時にデジモンを進化させることができるテイマーの噂を聞いて寄ったんだと…。
何かできることはあるか? と聞かれた際に元の世界に戻る方法を聞いたんだよね。……残念かなロイヤルナイツも分からなかったよ。
だからか一緒に旅をしないかと誘われたんだ。バオハックモンはこれに大賛成。シスタモン達も問題ないということで村の一年を終えて残りの四年は帰るためにガンクゥモン達と旅をしたんだ。
旅立ちの日まで村のデジモン達と思い出をつくりいざ旅立ちの前日にテイルモンもついてくるといった。
しがみついてでもついていく! と言うのでガンクゥモン達に相談すれば…テイルモンも一緒に行くと思ってたらしいですはい。
パートナー認定されてたんですねえ。
そんな訳で村のデジモンと別れを惜しみつつ旅の始まり。
色んな所に行き、絆を深め、出会いと別れを繰り返し終着点は……どうでもいいか。
でも最後の最後でテイルモンが……。
なんとか現実世界に帰ることができた。
五年ぶりに見る現実世界は違和感だらけで家に帰った時は両親が涙を流し抱きしめてくれた。
そりゃ一日ちょっと行方不明になってた子供が無傷で帰ってきたんだ。普通なら誘拐されてあんなことやこんなことされていると思うだろう。翌日に警察がきて事情聴取。デジタルワールドに行ってましたなんて言えるわけもなく。
普通に遊んで普通に帰ってきただけです、と必死にポーカーフェイスを作りゴリ押した。
これに警察は考え込むが直ぐに調書を終え、帰っていった。そんで数日も経たないうちに
こんな話だ。五年が一日に収まった摩訶不思議な冒険の記憶。
今じゃ遠い昔のように感じる。
それもそうで17歳にもなれば小学五年生の記憶は過去に相違ない。
デジモンにデジタルワールド。
今考えたら凄いことだ。……うん、凄い…こと……。
「テイマー? 聞こえてる?」
自宅でコーヒーをちびちびと飲んでると背中に重みを感じた。
……聞こえているよ…テイルモン。
「最近幽霊が出るって噂されてる場所があるんだけどこの幽霊デジモンかもしれない」
マジですか…? またこっちに来ちゃった感じの奴?
「どうだろ? 稀だけどこっちで生まれるケースもあるらしいよね」
うへぇ…デジモンって不思議だなぁ。コーヒー飲まないでよ…。
デジモン? デジタルワールド? 思い出話にもならず現在も生き続けているよ?
…これは後に知ったことなんだけど現実世界に帰る時……テイルモンが後を追ってきちゃったらしい。
当たり前のように俺の家を聞き出そうとして通行人に話しかけたら大騒動。…これが化け猫騒動の始まりだったりする。
マジでテイルモンを匿うのにはめっちゃ苦労した。自室で暮らしてもらい高校に入って直ぐに一人暮らしを始めたよ。
話は変わるがここ最近。…現実世界にデジモンが現れるようになった。
理由は知らないが某電脳探偵みたいなことは起きてない。お陰様で近未来世界なのにオカルトが熱い熱い。
取り敢えず今夜その場所に行ってみようか。
今日のデジモン図鑑(仮)
名前/テイルモン
レベル/成熟期
タイプ/聖獣型
属性/ワクチン
一番付き合いが長く同棲?しているボクっ娘(?)デジモン。
後を追い現実世界に行く程度にはテイマーに執着している。最近になって通販でゲーム買ったり出前頼んだり俗世に染まり満喫している。その度テイマーの懐が寒くなる。
感想欄で時間の流れについてご指摘ありました。ありがとうございます。修正致しました。