デジモンテイマー?違います(白目)   作:モカチップ

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匿名外しました。


非日常

「楽しかったな」

 

 ……うん、そっすねえ。

 満面の笑みを浮かべたレナモンに空返事。

 

 色々と気が滅入る夏休み。

 二度目の誘いを受けた帰り道。

 

 学生ながらのカラオケやボウリングを楽しみ……久々に若さを知った。のめりこむほどではないけど楽しかったな。

 

 ただレナモンと二人きりかと思っていりゃ……。

 

「いやーあんたがいるとこの子ホントいい笑顔よねえ」

 

 両サイドに女子生徒達。

 ギャルの言葉に残りのメンバーがうんうんと頷く。

 

 コックリさん一行が勢揃いでしたと、さ。

 

 レナモンは満更でもないようで頬を紅く染めて尻尾を左右に激しく揺らす。…だからペシペシ叩くのはやめてくれ。

 

 女子の中に男子1人とかハーレムとのたまう輩がいると思うが幸せ? 楽園? そんなちゃちなもんじゃない。

 

 歩くだけで人々の視線を奪い、カラオケやボウリングじゃ店員や客から様々な感情の篭った目を向けられるんだぞ? 

 

 居心地は最悪。罰ゲームか拷問かと思うくらいに精神がすり減った。……楽しくはあったから…それでもキツいものはキツいんだよ。

 

 ……セイレーンモンが来てテイルモンは一緒にゲームしたり動画を見たりと楽しんでいるから二人の邪魔をするのも悪い。

 

 レナモンの誘いを何度も断り続けるのもまた……面倒な事になりそうだから受けた。

 

 その結果がこのザマだった。

 ……でも、この時間だけは嫌な事を思い出さずにすんだのは確かだった。

 

 ニュースを見たが怪奇殺人事件として警察が血眼になって犯人を探しているらしい。

 

 が無理だろう。犯人を見つけたとして警察にはどうしようもできない。…文字通り怪奇なのだから。

 

 目撃者の証言によると被害者はいきなり燃えたのだとか。SNSやオカルト掲示板には自然発火現象や…考察がなされている。

 

 ただ二つの証言が気掛かりだった。被害者が燃える直前…割れるような音が響いた。この音は目撃者に限らず駅内にいた殆どの人が聞いている。

 

 あと一つは…被害者の付近で見つかった謎の物体。ドロドロに溶けて地面にへばりついていたらしい。

 

 ……ニュースでは報道していない。

 オカルト掲示板でこの情報を見つけた。不干渉と抜かしながらも気になった。

 

 拾った赤い毛。……正体は分かっている。

 だとしたら何もかもが噛み合わない。

 

 今更ながらオカルト掲示板の住民はどこで情報を見つけてくるのか。

 

「てかてか! 実は付き合ってたりするわけ?」

 

 それより別のことで事件が起きそうだよ。

 他の子達はまだ控えめなのにギャルに限ってはノーガードで攻めてくる。

 

 俺は無視決め込むだけの話。だけどレナモンは違う……表情豊かに反応しちまうんです。

 

「なっ…! い、いや! 私は別に…そういう、関係じゃ…ない……」

 

 威勢のいい声が最後にゃ掠れたように小さくなる。金色が薄紅に染まり力無く項垂れる。

 

 ……うん、こうなるよねえ。

 なんでまだショックを受けているのか。

 

 円満に解決しただろと思うがレナモン自身はまだ諦めていない。…本人に自覚は無さそうだけどさ。

 

 感情豊かで人間よりも人間らしい。

 俺よりも立派に人間やってるよレナモンは。

 

「あ……この話はこれで切り上げね? もうそんな顔しないって! てか別に彼じゃなくてもいいんじゃ? 選り取りみどりっしょ?」

 

 その通りだギャル。

 少なくとも俺を除けば引く手数多。

 

 適当に告っただけで相手はほぼ100%頷く。

 ……彼女持ちだったら確変で修羅場が待ち受けていることだろう。

 

 ああ、考えたら頭が痛くなる。

 もういっその事手綱を握った方が良いのかもしれない。

 

 いんや俺がそれをする必要はない。

 うん、帰ろう。この場合は戦略的撤退が正しい。

 

 俺はこれで失礼しま……あの? 

 何故腕を掴まれているのか問うてもよろしいか? 

 

 レナモンかと思ったが明らかに感触が人間の手。振り返れば不満気なギャルさん。

 

「なに帰ろうとしてんの? 何のための夏休みだと思ってんの? 夜はまだまだこれからっしょ?」

 

 お前は何を言っているんだギャル? 

 ……これ以上は付き合いきれない。

 

 自宅でテイルモンとセイレーンモンが待っている。後は女子だけで楽しくやっといて──

 

 破裂音が響いた。

 続け様に鳴る破裂音。

 

 爆竹? そんなものじゃない。

 …これは紛れもなく()()だ。

 

「……は? え?」

 

 戸惑うギャル。他の女子生徒もわけも分からず呆然としている。…レナモンは……。

 

「……」

 

 目配せをする。

 …向かうってことですかい。

 

 分かった。

 

「…ぁ…ちょっと…危な…!」

 

 ギャルの静止を振り切りレナモンと駆け出した。…向かう先はど真ん中。スクランブル交差点。

 

 ……っ! 思わず顔を顰めた。

 

 噎せ返るほどの鉄の匂い。

 誰かの悲鳴…誰の絶叫…誰かの嗚咽。

 

 見なくとも分かる。とても悲惨な光景が。

 そして…なにより……。

 

「………………」

 

 ……立っていた。()()()が…。

 血溜まりに浮かぶ…死体を見下ろしていた。

 

「あれは……()()()()()()…! アイツがやったのか…!!」

 

 レナモンが苦虫を噛み潰したよう顔をする。

 ……そうファングモン。悪や闇を代表するデジモンの一体。ま、ウィルス種じゃなくてデータ種だったりして曖昧な所はあったりするが。

 

 レナモンが戦闘態勢に入る。

 それよりも…不味いことになった。

 

 ファングモンに近づく愚か者はいないが遠目にスマホで撮影するもの…配信しているものまでいた。

 

 遠くからパトカーのサイレンも聞こえてくる。……レナモン…!? 

 

「なんでこんなことをした!」

 

 お前こそ何してんだよ!? ファングモンに駆け出すレナモンを追いかける。

 

「………! …そうか」

 

 …なんだ? 俺を、見た……? 

 レナモンの蹴りを退いて避けるファングモン。

 

 レナモンの行動で野次馬が更に騒がしくなる。…ちっ! ……警察も直ぐにそこまで来ている。

 

 血溜まりを見下ろす。…被害者は男性。

 無数の弾丸を撃ち込まれている。…額に一発……悲鳴が聞こえなかった。多分これが初弾。

 

「何故こんなことをする!」

 

 激情したレナモンは攻撃を繰り返すがファングモンは冷静に避けていく。…おかしい。

 

 ん? これは…なんだ。

 血の池に浮かぶ何か……ちっ! 

 

 掴み拾い上げた。

 ……柔らかい。血のせいで形までは見えないが…。

 

「……せいぜい狙われない事だな。…()

 

「……!」

 

 やっぱり、か。

 レナモンの正体を知っている。

 

 ……そりゃファングモンだからな。

 毛色は違うが同じく化けられる者同士。

 

 なんて言った? ()()()()()()()()…? 

 クソ…分からない。

 

「動くな!」

 

 警察のご登場。

 拳銃をファングモンに構えている。

 

「…………」

 

 そんな警告をファングモンが聞くはずもなく建物に飛び移り去っていった。……終わったか。

 

 最悪なことになった。

 俺もレナモンも配信デビュー。

 

 R指定待ったなしの物々しい動画にだ。

 ……警察に二人揃って連行。

 

 バチバチに怒られた。

 化け物相手に戦いを繰り広げたんだ。

 

 俺は何してないけどな。

 別件で血溜まりに触れたことも怒られた。

 

 当然の事。

 俺だって躊躇った。けど…事は深刻を極めている。…ずっと前から……。

 

 軽い調書を受け解放される。

 

 拾った何かの正体が分かった。

 洗面所で手を洗い、ずっと握っていた何か。

 

 水で洗い流され姿を現した。

 形は崩れて分からないが()()、か? …血に混じり甘い匂いがする。

 

 流石に食べようだなんて思わない。

 

「大丈夫か?」

 

 心配そうなレナモンが背後から呼びかける。

 大丈夫だが…お前は大丈夫じゃないぞ? 

 

 だって…ここ男子トイレだからな?

 なーに当たり前のように入ってんだおい。

 

 まあいい…。

 …レナモンは怪奇事件の犯人はファングモンだと思っているようだ。

 

 当事者として見ればそうなる。

 ネットや警察も犯人はファングモンだと決めつけている。

 

 なにより未確認生命体。

 人間は理解できないものを否定したがる。

 

 ファングモンも野犬として片付けるみたいだ。…無理だと思うけどさ。

 

 俺は違う。

 デジタルモンスターを知っているからこそ違うと確信を持っていえる。…仮にファングモンならば死体は残ってないし燃やしたり銃殺はしない。

 

 ああ、ギャルと女子生徒達はもう帰っている。

 あんな事件がありゃ大人しく帰る他ない。

 

 ……前のコックリさんみたいにレナモンと帰ることになった。…あの時みたいに穏やかとはいかないが。

 

 レナモンはデジタルワールドでファングモンと面識があるらしい。別個体だがとても狡猾でずる賢く迷惑していたと話してくれた。

 

 ……ファングモンは数々の童話に登場する悪しき狼のデータがデジモン化したといわれている。生息地も木々繁る森の奥。

 

 あのファングモンも現実世界に迷い込んできたのだろうか。…獲物を迷い込ませ屠る狼がね。

 

 なにより不可解なことが多過ぎる。

 警戒するに越したことはない。…お互いに何かあれば連絡することにし別れる。

 

 何時もの帰り道なのに…なんか違って見える。……あ? …向かいに少女……? 

 

 こんな時間に? 親らしき人はいない。

 話を…かけるのは…やめとこう。

 

 世の中には少女の見た目でも成人している人もいる。見た目で判断しちゃいけない…。

 

 ……が変わった服装をしている。

 赤いずきんを被っているなんて……! 

 

 すれ違いざま…背筋が凍った。

 ……()()()()()()()()()()

 

 振り返る…が少女はいなかった。

 それでも残り香が……家に帰った。

 

 玄関を開けるとテイルモンとセイレーンモンが突撃をかましてきた。

 

 …事件のことを知って、いても立っていられなかったらしくもう少し遅けりゃ探しに向かっていたと。

 

 大丈夫だよ。やらかしたのはレナモンだから。俺は止めようとしただけだからね。

 

 今回は不干渉ではいかなくなった。

 レナモンが事件を解決すると啖呵を切っていたからだ。…手を貸すくらいはいいだろう。

 

 ……ファングモンの事も気になる。

 犯人じゃないなら何故彼処にいたのか。

 

 駅内にもいた事もわかっている。

 情報を整理しよう。その前に……。

 

 セイレーンモンが作ってくれた晩御飯を頂いてからね。……いただきます。

 




今日のデジモン図鑑(仮)

名前/ファングモン
レベル/成熟期
タイプ/魔獣型
属性/データ

赤い狼さん。狡猾でずる賢い悪役狼さんとはまた違うかもしれない。
レナモンと同じく化けることができる。多分熟練度はファングモンの方が上。
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