デジモンテイマー?違います(白目)   作:モカチップ

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別のストーリーが始まってしまう…!


真夜中、雨上がり、月明かり、白煙

「一連の犯人はファングモンではないのか」

 

 人形焼きを頬張り真顔のレナモン。

 あくまで可能性があるってだけ…なんだけどさ。…飲み込んでから喋ろうぜ。

 

 お土産は逃げたりしないからさ。

 

「おいしいよ! テイマー!」

 

 そ、それはよかった。

 

 膝の上が定位置になりつつあるロップモン。

 長い耳を掴み幸せそうに悦に入っていた。…初対面時の人見知りや臆病な面は消え去り俺をテイマーと呼んでいます。

 

 自己紹介してないんだけどね。

 デジモンは親しくなった人間のことをテイマーと呼ぶのようになったのかねえ? 

 

 ……今は置いておこう。親しみを込めて、の意味合いが強いと思われる。

 

 それに自己紹介もされるだけで俺がする前にお土産を食べ始めたからな。…事前に説明してくれていた、可能性はないよなぁ。

 

 レナモンが止めに入ったがお腹を空かせていたんだろう。お土産だし好きに食べてもらっていい。

 

 人形焼き以外の和菓子や洋菓子。…ロップモンが食べたがったお菓子や飲み物も買ってきた。そんな直ぐに無くなることはない…はず。

 

「美味いな! これ!」

 

 人形焼きをひょいひょいと口に放り込む赤いデジモン。幼さを残す恐竜に似た姿をし腹部に描かれた特徴的なマークはデジタルハザードと呼ばれている。

 

 このデジモンもレナモンやロップモンとこの神社に暮らしているんだ。

 

 ちょっと…驚いたかもしれない。

 …()()()()って存在していたんだね。いや、まぁ…デュークモンが存在しているしおかしくはないんだけどさ。

 

 デジタルワールドじゃ見たことがなかった。

 五年じゃ全てのデジモンに会うことは不可能だしロイヤルナイツや()()()など物理的にも会えないデジモンも存在する。

 

 ガンクゥモン達を除いてね。

 レナモンがこの神社に住み始めて最初に出会ったデジモンがギルモンだったらしい。

 

 土砂降りの雨の夜。外から気配を感じたレナモンが様子を見に行けば傷だらけのギルモンが虚空を見つめていた、と語ってくれた。

 

 どうやら()()()()らしくどうして現実世界にいるのか分からない。自分の名前すら覚えておらずレナモンが保護した形、らしい。

 

 肉体、精神共に摩耗しており初めは会話やコミュニケーションがまともに出来ず四苦八苦。

 

 時期は俺と出会う前でギルモンが回復し満足に動けるようになってから狐変虚で高校に入学したとのこと。その後に現実世界へやってきたロップモンと出会ったらしい。

 

 記憶喪失…ねえ。

 その前にレナモンからデジタルワールドから現実世界にどんな方法で来たのか聞いたら()()()()()()()を使って来たと教えてくれた。

 

 デジタルゲートは設定上はデジタルワールドと現実世界を繋ぐ通路や扉のこと。アニメじゃデジヴァイスや大掛かりの方法で開けていた。

 

 現実世界に戻る為に使ったアレもデジタルゲートだったんだろうな。

 

 ただ…俺がデジタルワールドに飛ばされるまで人間のことを知っていたデジモンはいたが見た者、出会った者はいなかったと思う。

 

 ロイヤルナイツさえも現実世界に行く術を知らなかったんだ。だから旅に同行した訳だしなぁ。

 

 …ノーブルパンプモンやセイレーンモンもデジタルゲート経由だろう。帰ったら詳しく聞いてみてもいいかもしれない。

 

 デジタルワールドから現実世界へ戻り数年。

 ……俺なんかがおとぎ話になるぐらいに時は過ぎ去っている。

 

 その長い時間、デジタルワールドに何かが起きていたとしても知りえないし…知ったところでどうしようもない。

 

 冒険はとっくに終わっているんだからさ。

 旅を再開するには……遅すぎたね。

 

 きっとギルモンは何かに巻き込まれ事故で現実世界へと迷い込んだ……ただ…。

 

 ギルモンと向かい合った時…ギルモンは肩を震わせゆっくりと近づき……俺を抱き締めた。

 

 時が止まる中で抱き締め返しあやす様に背中を撫でた。耳元で聞こえた……()()()()()、その言葉は霞のように飛散しても…鼓膜に張りついて消えてはくれない。

 

 …ギルモンを見る。カステラに目を輝かせてひとくち。パァと花が咲く様に笑顔をさらけ出していた。

 

 ……お土産もっと買っといた方が良かったかもしれない。今度行く時は多めに…お弁当とか買った方が良いかもしれない。

 

 しっかしギルモンとレナモンかぁ。

 ロップモンがテリアモンだったら別の物語がはじまってたなぁ。……なんて冗談を言いたくなる。

 

 この神社にはもう一人()()()()がいる。

 レナモン達がお土産に集まる中で部屋の片隅に背を預け座り込んだデジモン。

 

 隣には大きいナニカが布で全身が覆われている。かなり大きく神社に…それもこの社務所にどうやって持ち込んだのか気になる。

 

 黒いローブを身に纏い姿は愚か顔すら見えない。腕と足だけが見える。レナモンも正体は分からないらしく、ただ悪いデジモンではない…か。

 

 先週から共に暮らしている、ね。

 正体不明? 違う、見た瞬間に気づいた。

 

 …()()()()()()()。…()()()()()()()()()

 ……向こうだって気づいている。

 

 気づいた上で反応は、ない。…なら此方も余計な詮索はしない。…ん、ロップモン? …ああ……。

 

 膝から降りたロップモンがローブのデジモンにトコトコと向かう。

 

「…お、おいしいよ……?」

 

 人形焼きを両手で渡す。

 

「…………」

 

 人形焼きを受け取りロップモンを撫でた。

 くしゃりと頬を歪ませくすぐったそうに身を捩るロップモン。

 

「…た、たべてね…!」

 

 トコトコと足音を立てて膝の上に戻ってくる。ホッと息を吐いたロップモンを追撃と言わんばかりに撫でた。

 

「わ、わわ…えへへ……」

 

 ロップモンは優しいなぁ。

 …それからレナモンと事件の話を…することはなかったな。

 

 みんなとデジタルワールドの話になった際にポカをやらかした。偶然滞在したことがある街の話題が上がり…うっかり喋ってしまった。

 

 街の名前はもちろん名所や名物など一人を除き人間では知りえない情報を、ね。

 

 ……デジタルワールドで旅をしていたテイマーとバレてしまったんだよね。

 

 …気づくよな。ロップモンの名前を知っていたこと。…デジモンに対して恐怖も抱かずに普通に接していれば勘づくだろうさ。

 

 レナモンもレナモンで気に入ったからと素性を知らない俺にデジタルワールドやテイマーの話を吹っかけてきてたしなぁ。

 

 俺が当然の様に受け入れているからレナモンはとっくに気付いていると思ってた。……気付いてなかったよ。嘘だろ…お前さぁ……。

 

 しかし話を聞くにデジタルワールドはかなり変化しているみたいだった。……変化の一つに突如現れたデジタルゲート。

 

 デジタルゲートによりうっかり現実世界に飛ばされてしまうデジモンが現れ始め場所によっては街や村の有力者が管理している所もある。

 

 ロイヤルナイツのことも聞いたよ。

 

 …テイマーと旅を共にしたロイヤルナイツの称号を持つ()()()()()()()()が二人の従者を連れてデジモン達とデジタルゲートが現れた原因究明に急いでいる、か。

 

 ……おめでとう。

 もし会えるなら、盛大に祝いたいな。

 

 あの時みたいに、さ。

 

 しかし…デジタルゲート。ほぼ自由にデジモンが現実世界へ行くことができる片道切符、か。

 

 怪奇殺人事件に関係ないかと言われれば…あるだろう。……頭の片隅に入れておこう。

 

 あとギルモンの様子が少し気掛かりだったりする。レナモンがロイヤルナイツの話をしたとき…考え込んでいるように見えた。

 

 何か思い当たる節でもあるだろうか。

 ……記憶喪失に関する何か、が。

 

 気付かぬ内に窓から一筋の夕焼け…と、共に屋根と地面を叩く音。

 

「雨か。…これは」

 

 ピクリと耳を鳴らすレナモン。

 言いたいことは直ぐに分かった。

 

 雨の勢いは増していき土砂降りへ。

 仕舞いには耳を劈く音が響き上がる。

 

「ひゅぃ!」

 

 ロップモンが両手で耳を掴み縮こまる。

 腕に抱いて落ち着かせる。…ギルモンは驚きもせずお土産を食べていた。

 

 ははは…明日まで持つか怪しくなってきた。

 

 …うーん雷まではちょっと勘弁。

 天気予報では晴れだったんだけどなぁ。

 

 外を見る。…うわぁ…速攻で濡れ鼠だな。

 自宅から結構距離あるし電車に乗るにも満員電車…遅延する可能性もある、か。

 

 雨が落ち着くまで…とはいかない、よな。

 着信が入る。相手はもちろんテイルモン。

 

 皆に断りを入れ電話に応答。

 

 内容は雨が降ってるけど大丈夫? 

 傘を持って迎えに行くよ、とのことだった。

 

 ありがたい…けど、この土砂降りで迎えに来てもらうのは躊躇われる。…傘だけでどうにかなる気がしないんだよなぁ。

 

 テイルモンが風邪をひいてしまったら大変だしさ。デジモンも風邪になるし病気になる。

 ……現実世界にデジモンの薬はない。

 

 そもそも体の構造が人間と違う訳で、現代医療じゃどうしようもできないんだ。…一応…応急処置として飲ませたことはあれど気休め程度。

 

 自然回復を待つしかない。デジモンは基本的に身体は丈夫な方だから無理をし過ぎたりヤバいウィルスに感染するような事が起きなければ大丈夫…だろう。

 

 怪我なら止血や消毒で補うことはできるんだけどねえ。……どう応えたものか。スマホを離し考える。

 

「…泊まっていかないか」

 

 難儀しているとレナモンが口を開く。

 泊まる。泊まる、ね。一夜を此処で明かす。

 

 …その方法があったか。

 腕の中でほんとう…? とソワソワと落ち着きのないロップモンが期待の眼差しで見上げていた。

 

 ギルモンはお腹を擦りながら背後に立っていた。肩に顎を置き覗き込む形でスマホを見ている。…直ぐ隣にギルモンの顔。

 

 若干…頬が緩んでいるように見える。

 ……ロップモンとギルモンは大丈夫そう。

 

 …ローブのデジモンは興味も微塵も無いようで今も座り込んだまま。そんなものよな。

 

 人形焼きは食べてくれた、か。

 ……クスッ…丸くなったよなぁ。

 

 電話越しでテイルモンが…わーわー言っているけど落ち着いて。…理には叶っているんだ。昔ならまだしも今はセイレーンモンもいるし一人じゃないでしょう? 

 

 朝イチで帰るしお土産を買ってくるからさ。

 今日はセイレーンモンと一緒にね。

 

 数秒間うーうー唸ると…渋々納得してくれた。

 

 テイルモンとセイレーンモンにレナモン達を紹介しないとなぁ。電話越しはあれだしその時は自宅に招こう。

 

 四人…三人なら許容範囲。…さて、話は終わっ…ん? レナモンに代わって? あ、えっと…はい…あーレナモン? 代わってくれない…? 

 

「…? …あ、ああ」

 

 レナモンにスマホを渡す。離れたレナモンはスマホを耳に当て…? なんで急に顔を赤くし…お、おお? 大丈夫、か? 

 

 小声で喋ってるせいで全く聞こえん。雨の音で掻き消され辛うじて聞こえたのは…。

 

「よ…いな……し…い!!」

 

 …? ……なんて言っているんだ? 

 お、おう…話は終わったみたいだな。

 

 スマホを返してもらう。…なんかレナモンが息を荒らげてるんですけど……なにを言ったの? 

 

 …()()()()()()()()……? 

 そ、そうなのか。セイレーンモンに代わる? 

 うん自宅は任せたよ。早いけどおやすみテイルモン。

 

 はいはい、セイレーンモン? うんうん…はい、晩御飯? 明日の朝食に食べるから残しといてくれると嬉しいな。

 

 ありがとう。セイレーンモンもおやすみ。

 

 おやすみなさいです! の言葉を最後に通話は終了する。

 

 …ふぅ……なんとかなった。

 変に疲れて眠くなってきた。

 

 横になろう。流れでそのまま眠って…。

 

「…あの…テイマー」

 

 …どうしたの? …旅の話を聞きたい? 

 全然構わないけど少しだけ…ギルモンさん? 

 

 聞きたいのは分かるんですよ。爪がね、肩に腹部にくい込んでるの。チクチクするんだ。

 

 おーう、ダメだ。…離れてくれない。

 遠慮なしちゃんだ。レナモン…は、駄目だな。

 

 さっきから独り言を呟いてはボンッと顔を赤くしては元に戻り、また赤くなる。…壊れちゃったか…? 叩けば直るかい? 

 

 …しゃーないかー。どれを話せば…最初から? …って言ったらデジタルワールドに飛ばされてからだよな。…分かったよ。

 

 子供の頃に突然デジタルワールドに飛ばされたんだ。…わけもわからず呆然としているとデジモンと出会ってね。そのデジモンが──

 

 ……う、うう…ん。…寝てたのか。

 …暗いし暑いし重い。…左右と腹部だな。

 

 見えない…スマホ、は起こしちゃうか。

 ボーッと天井を眺めていると少しずつ目が闇に慣れていく。

 

 拘束されてないだけ温情だな。

 ロップモンを抱えて起き上がる。

 

 ……いないな。

 ん、この匂いは…………へぇ…。

 

 ……ごめんね。

 ロップモンを起こさないように畳…ギルモンのお腹の上にそっと置く。

 

 確か…買ってたよな。あ、あったあった。

 立ち上がり殆ど食べられたお土産の中にある…缶コーヒーを二つ手に取った。

 

 忍び足で匂いの元へ向かう。

 襖を開けるとローブを脱いだデジモンが口に何かを咥え縁側に座っていた。

 

 深夜、雨は止み月明かりが縁側を照らしている。相変わらず反応無し、と。

 

 デジモンの吐息から白煙が舞う。

 襖を閉めて近づき……隣に座った。

 

「……………」

 

 何も言わず月を眺めていた。

 雨上がりで月が一際美しい。

 

 …煙草、かぁ。

 しかもコンビニに売ってる。…罰当たりだなぁ。

 

 デジタルワールドにも似たようものはあったけどさ。興味本位で吸おうと思ったらみんなに怒られたっけ? …懐かしい。

 

 月見とか洒落たことするんだな。

 ……だんまりか。

 

 別に感動の再会…って訳でもないしな。

 静粛に支配された真夜中で月を眺める二人だけ。

 

 …んぁ? 

 

 トンっと腕が当たる。…見れば煙草の箱。

 ……一本だけ飛び出ていた。

 

 俺未成年……。

 軽口を叩きながらも指で挟み取り出す。

 

 カチリ…と音を立て眼前に火が点る。

 煙草を口に咥えて先端に火を当て吸い込んだ。

 

 ……マッズ。

 そっと息を吐く。白煙が空に向けて飛んでいきその姿は安っぽい昇り龍。

 

 ほんの少しだけ…悲しいよ、俺は。

 持ってきた缶コーヒーを差し出す。

 

 受け取り、開けて飲み始めた。

 ……なんでもいいさ。

 

()()()()、とだけ言っておくよ。

 煙草を吸い終え部屋に戻る。

 

 缶コーヒーを飲み干し二度寝した。

 二度目の起床。別れを惜しまれつつ早朝の時間に自宅に帰る。

 

 そん時には…姿は無く部屋に置かれていた布を被った大きな何かも消えていた。…レナモンが言うには気がついたら帰ってきてるらしいから…離れるつもりはないんだろう。

 

 ……結局事件の話はできなかったな。

 それはそれでいいこと。…レナモンが事件を諦めた時は…俺も不干渉を決めるだけ。

 

 ……しかし困った。

 道中なにごともなく自宅に辿り着きました。お土産も忘れずちょっと豪華なスイーツを。

 

 ただ…ねぇ…。

 

「煙草……吸った?」

 

 テイルモンが滅茶苦茶怒ってらっしゃいます。セイレーンモンは苦笑い。…いやーあのー……はい、吸いました。…はい、はい…今すぐ歯磨きしてお風呂入ってきます。

 

 ……未成年は煙草、ダメ…ゼッタイ。




今日のデジモン図鑑(仮)

名前/ギルモン
レベル/成長期
タイプ/爬虫類型
属性/ウィルス

レナモンとロップモンと一緒に暮らしている。記憶喪失らしくレナモンに保護される前の記憶が全くないが主人公やロイヤルナイツという言葉に反応を示した。物静かな方だが無邪気な所もあり大完食。お土産の半分は食べている。その中でもカステラはお気に入り。
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