昼休みの教室。
ある生徒はグループを作り机に弁当を広げていく。またある生徒は購買に向かうために教室を後にする。
各々が自由に羽を伸ばし疲れを癒す時間。
毎度見慣れた光景。……欠伸をしつつ弁当を取り出す。高一から毎日朝早く作っている。テイルモンのも含めて二つね。
デジモンの食べ物? といえば畑から取れるデジ肉が最初に思い当たるだろう。間違っていないがデジモンにも料理の概念があるし料理が得意なデジモンも存在する。村の中だとババモンだけだったな。
わざわざ俺に合わせて作ってくれていたんだよ。…もしもババモンがこっちに来るようなことがあれば全力でおばあちゃん孝行を遂行する。
んでテイルモンは料理をしないが妙に舌が肥えてるんだよ。旅の途中で色んな料理を食べていたよな…食欲には勝てなくて立ち寄った町の名物料理など食べ歩いてたから、うん。
食べ過ぎて…ちょっとだけポチャッとした時期もあった。過酷なダイエットで元に戻って…今は自重しているけど。
仮にポチャってても問題ないと思う。生肉を食べる凶行に走らないだけマシだし。…その代わりに弁当作らないと怒るんすけどね。
今日の晩御飯はデミグラスハンバーグ。テイルモンが希望したフライドポテトとオニオンリングを添えて。帰りに食材買わなきゃな。ふぁ…食べよ食べよ。
蓋を開ければ美味しそうな匂いが鼻腔を刺激する。適当にごはんとおかずを口に放り込む。うん、普通の味だ。可も不可もなく家庭の味。
気休め程度の睡魔が取れた気がしなくもない。やっぱ夜に外出したのが響いているよ。終電はとっくに過ぎてたし馬鹿ほど歩いたもんな。
……すんげぇ疲れた。行きはよいよい帰りは怖いの典型的パターン。デジモンはいたよ? The幽霊の容姿を持ったデジモンの
意図的にではなく気が付いたらこっちにいたんだとか。帰る方法も分からない、住み心地が良い、勝手に人間がやってきて驚いてくれるの三拍子で住み着いていた。
闇より生まれた邪悪な存在なんて言われているが何故か驚かす事に命をかけているらしいです。…ある意味安全? なバケモンだった。
出逢うまでにテイルモンが肝試しに来ていたカップルの彼氏に一撃入れたりリアル幽霊が出てきたりとトラブルもあったが…まぁ問題ない。
…今更ながらデジモンが人間を認知している。デジタルワールドを旅していたから自然と広まっていったのは分かるんだ。
かなりの年月が流れているのもあり曲解されデジモンと人間は友好関係にあるとされているらしい。……非常に困った。
ニュースで未確認生命体として挙げられているのですよ。オカルト掲示板でも目撃情報など取り上げられているし。殆どのデジモンがフレンドリー過ぎて人間相手に無防備なのだよ。
デジモンによって脅威度はピンキリ。バケモンみたいにイタズラで済むデジモンもいりゃ…歩く災害レベルのデジモンも居るわけで。
それ以前にデジモンが現実世界にくる理由が分からない。簡単に現実世界にスポーンしてるけど…結構不味い事態だったりするのか?
テイルモンと一緒にいて気にしなかったけど現実世界でデジモンって実体化できんの? 設定が多過ぎてなんっも分からん! 眠くて頭回んねえ…。
眠くなってきた。まだ残ってるけど食べる気力は削がれている。箸持つのすらかったるくてしょうがない。
昼休みはまだあるしちょっとぐらい寝ても──
「少しいいだろうか?」
真隣から凛々しい声。
…んぁ? …ああ、そういやいたね。テイルモンの次には身近にいるデジモン。
何故か同じ高校で同学年、クラスメイトで隣の席の女子生徒…か?
横目で見れば
金色の毛並みに狐を人型にした容姿が特徴のデジモン。
出会いはクラスの自己紹介で。綺麗に溶け込んでいて初めは気が付かなかった。
気づいた時は驚いて椅子から立ち上がったもんな。程々に関係を築き友人と呼べる間柄だろうか。それから何の因果か二年も同じクラスになりお隣さんにもなった。
レナモンは変化の術である狐変虚を扱える。
化けて学校生活を送ってるだけで害はないしバケモンよりも安全なデジモンなので特に気にすることもなかったな。
因みにクラスメイト曰く黒髪の文武両道の美少女で男女の人気者。明るく元気で社交性も高くファンクラブもあるが良く告白されては全てバッサリお断りしているんだとか。
姿以外に言葉遣いも化かすことができるのか。
化けている方のが普通に気になるわ。
あ、クラスメイトも告白した一人でバッサリいかれたらしい。あと俺に殺意を向けないで欲しい。こちとらその気は微塵もないから許して…。
どうしたの?
「……実は弁当を忘れてしまってな」
チラチラと弁当を見ている。あ、ふーん。
このレナモンはちょっと…かなり抜けているんすよねえ。…正体バレてるの気付いてないのも含めて。イレギュラーの俺がいうのもなんですけど警戒ぐらいはしていいと思うの。
そんな欲しがり顔してお腹摩らないでくれませんか? 他者からの視線がいてぇんです。嫉妬と殺意がジョグレス進化してんのよ。…なんで悪役に仕立てあげられそうになってんの? …はぁ……。
…食べかけでいいなら。
「! ……ありがとう!」
嬉しそうに弁当を受け取りホクホクの笑みを浮かべ食べ始める。…君なら他の生徒に頼めば弁当分けて貰えただろうに。考えてみろよ! 毎度弁当集られる俺の気持ちを! ……影じゃ餌係なんて言われてたりすんだぞ?
…飽きずに何故こっちにくんのか。これがわからない。
「ご馳走様でした」
腹減ってたんだろうなぁ。もう完食してらぁ。感謝と共に弁当を受け取りしまう。気が付けば昼休み終了間近。うん、寝よう。
隣でレナモンが何か言ってるがすまん。寝かせてもらう。微睡んでやばいのだ。さっきから赤べこみたいに頭が上下している。目を閉じるとめっちゃ心地よい。あ、無理ー。
「………とうか!! …? ……? …のか?」
頭を机に沈めた。
目を覚ましたら放課後だった。教室には数人の生徒が残っているだけ。殆どが帰宅したり部活に勤しんでるんだろう。
俺は帰宅部。テイルモンが待ってるしちゃちゃっと帰宅準備を始めよう…と、うん?
レナモン? まだいたんだ。珍しいね君が残っているなんて……礼をしたい?
大丈夫です間に合ってます。今度から弁当を忘れない様に気をつけてくれればいいです。もしもの備えにお金を少し持っとくとかすればカバーはできるからさ。
…この台詞何回言ったか覚えてないぞ。…もう分かっててやってるんじゃなかろうか。
んじゃ予定があるので帰りますよー。…レナモンさん? 腕を離して欲しいのですが? 帰りにスーパー寄らんといけへんから……なんでもするって?
ん? 今なんでもするっていったよね?
なら腕を離してくださいな。…なんでそんな顔するん? 周りの生徒も嘘だろ? …みたいな顔してんけど。
場の空気凍ってんよ? 昼休み…? ああ、そいやなんか言ってたよね。眠くて全然聞いてないんよ。
…????? 魅力がないのか…だって?
どうして魅力の話になるんでしょうか?
魅力以前に…レナモンなんですよ。皆のいう姿を認識できてねえの!
俺の視界に映るのは爪先からてっぺんまでレナモンなの!! …ふぅ…今度カミングアウトしよう。そうすりゃ大人しくなるだろう。
平穏のために…目をつけられそうな気がするけど……。
はい、帰ります。さようならまた明日。
明日が怖いな。……サボってもいいかもしれない。
自宅に帰り相談すればテイルモンは──
「ボクが話つけようか?」
拳鳴らしながら言われても…ヤル気満々じゃないすかぁ。明日は休むとしてカミングアウトすることに決まった。
今日のデジモン図鑑(仮)
名前/レナモン
レベル/成長期
タイプ/獣人型
属性/データ
隣の席の生徒?で友人。必殺技の狐変虚で化けているが何故かテイマーには効いてない。ガバなのかテイマーがおかしいのかは不明。常に冷静沈着でクールなイメージがありそうではあるがこの個体はかなり抜けているらしい。あと距離感がおかしい。
次回は未定です。
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