レナモンに告白? をした次の日。
まだ頬がヒリヒリと痛む。湿布の冷たさと相反して少し気持ち悪い。
……まさか告白されるとは思わんだ。
好き、か。……驚きというか、意外というか。
…真剣に言われたのは初めてだよね。
幼年期デジモンや成長期デジモンからはちょくちょく言われてきたしメタルグレイモンも大好きーなんていいながらトライデントアームで鷲掴みしてきたこともあった。
テイルモンには…言われ過ぎて慣れたかな。
日常化はしてないがスキンシップの一つになっている。
言葉ひとつ吐くだけで安心感や幸福感を得られることもあるんだ。…逆もしかりだけど。…しっかし本気で殴られたのは久しぶりだな。
一般人なら首が180℃回転してたかもしれないぜ? 割かしマジメに…成長期だからと侮るなかれ。
例えばだがピコデビモンのピコダーツなんて食らった日にゃ内側から腐り尽くされる。パタモンのエアショットは見た目こそ空気砲だけど骨や臓物を持っていかれるでしょう。
それよか頬を腫らした状態で帰ったからテイルモンが呆然。重い空気が数十秒続いたと思う。すんげえ嫌な予感は当然の如く当たった。
頬に優しく手を添えて…誰にやられたの? いじめ? それとも不良に絡まれたの? 教えて今すぐソイツらを…と、捲し立てられましたよ。
隠したかったが…泣きそうなテイルモンに諦めて全て話した。包み隠さず全て…ね。そしたらね。
「…うん、わかった」
流れる様に玄関から飛び出そうとしたので慌てて引き止めたよ。そもそもレナモンの居場所知らないだろうに……。
なんとか説得したら二度目はないからね? と念を押されましたとさ。…学校に行くまでずーっとくっついてたよ。
……放課後までレナモンは昨日の件もありよそよそしかった。何かを言いたげにこっちを見てくんだけど目線を合わせればそっぽを向く。
お昼休みも教室から出ていたみたいで久しぶりに弁当を完食した。
珍しくクラスメイトも静かだった。湿布を貼ってるしレナモンの様子がおかしいのもありゃ気付くわ。変な噂も立ってるみたいだしな。……下手に干渉するよか時間が解決してくれるだろう。
火に油を注ぐより人の噂も七十五日。
噂は所詮、噂……にできないかもしれない。
窓際にはレナモンを囲う女子生徒達。
ギャルから委員長タイプまで幅広い属性が集ってますねえ……交流関係どうなってんだ。女子会か?
しかもこっちが聞こえる声量で俺との関係をレナモンに根掘り葉掘り聞いてんだよなぁ。……勘弁してくれ。
レナモンはやらかす可能性が高いんだ。
うっかりで燃料をぶち込みかねない。だから教室に残っている。
……いや、さっさと帰ってキンキンに冷えたリビングでまったりしよう。
気にする必要なかったわ。レナモンが抜けてんのは今に始まった事じゃない。俺にはどうすることもできない。
唯一できることは巻き込まれる前に逃げることだ。逃げるは恥だが役に立つ!
パパっと帰り支度。早足で教室から出ていった。……と、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。
「……………」
机を挟んだ先に気まずそうなレナモン。両サイドには女子生徒。……俺はなんでここにいるんだろう。
そうだ。教室から出ようとしたところで女子生徒達に腕を絡め取られてあれよこれよと引きずられたんだったなぁ……はぁ…。
これから尋問でもされんの? と軽口叩きたいがギャルの女子生徒が一枚の紙と十円玉を取り出した。
……今からコックリさんをやります?
コックリさんって降霊術のコックリさん?
かなり昔からあるもので占いの一種であり狐の霊を呼び出す降霊術とされている。
目の前に狐さんいるんですが……。
科学的には不随意筋運動と潜在意識による現象とされているらしい。
今も遊び半分でやると呪われる、精神に異常をきたすため禁止されている学校があるとか。この学校は禁止されちゃいないが唐突過ぎないか?
理由も暑いからコックリさんで涼もうとか……何を言ってんだ? レナモンも首傾げてんぞ? ……帰りたくても帰れない。
満足するまで付き合うしかない、か。
皆が十円玉に指を置き降霊の文言を唱える。
コックリさんコックリさんおいでください。
十円玉は迷いなく…はい、に進んだ。
興奮した女子生徒が立て続けに質問を繰り返していく。その様子をボーッと眺めていく。
ある先輩の好きな人、明日の天気など在り来りな質問ばかりで心の中で安心していた。
が、終盤にかけて女子生徒達の秘密や嫌いな人の死期……グレーゾーンに近い質問をしていく。……女子生徒達の目が血走っている。
「……これは」
レナモンも気付いたようだ。
俺とレナモンだけは質問をしていない。
質問をするのがトリガーなんだろう。
窓から見える夕暮れ。
これ以上は不味い。……レナモンが女子生徒達を説得する、が止められない。
できることは一つだけだ。
……自由自在に動き回る十円玉から手を離した。途端に動きが止まる。…女子生徒達が顔を俯かせ…倒れた。
レナモンも十円玉を離し安否を確認する。
表情から命に別状は無さそうだね。
しかし…これは、どっち……だ?
デジモン、か? それとも──
……
十円玉はピクリとも動かなかった…が。
チクリと頬が痛む。
…湿布を剥がし頬に触れる。
手のひらに血が付く。
気になるけど……それどころじゃない、か。
頬を拭いため息を吐いた。
このあと直ぐに見回りの教師がやってくる。
倒れている女子生徒達を見ると慌てて119番。
レナモンと共に職員室まで連行され説明会。
これ以降この学校でコックリさんは禁止されるようになった。
後日女子生徒達は無事回復したがコックリさんの事はなにひとつ覚えていなかったらしい。…質問も、答えも全て。
覚えているのは二人だけ。
俺とレナモン、だ。
帰りも遅くなり途中までレナモンと一緒に帰ることになった。…沈黙の時間が始まると思えばレナモンの謝罪からの談笑。
なるほど…レナモンはおとぎ話に登場するテイマーに憧れ自分だけのテイマーを探しに現実世界にやってきたらしい。
…おとぎ話になってるのは初耳ですが?
ロイヤルナイツと共に旅をし悪をくじき弱きを助ける白い聖獣…とテイマー、ね。
美化され過ぎにも程があるわ。
ただコックリさんの一件はレナモンにとって好印象だったらしい。
冷静に状況を見据える観察眼、守る為に己を犠牲できる覚悟に、適切で早い判断力、ね。
…ないないないない。
観察眼? ただ眺めてただけ。犠牲に覚悟? 参加さえしてなきゃ見放してたよ? 最後に判断力ねぇ……だって帰りたかったんだもん。
レナモンは思い込みも激しいのかよ。
改めて告白もといテイマーになって欲しいと頭を下げられたがお断りした。
しょんぼりしてたが友達としてなら相談に乗ると言えば嬉しそうに顔を綻ばせしっぽを左右を揺らしていましたよ。
分かれ道に差し掛かりレナモンと別れる。別れ際レナモンは気をつけてくれと念を押していた。それ言うのは俺のセリフなんよ。
変な輩に絡まれないようになー。
レナモンを見送り歩き出す。
……一人になってから何度も視線を感じた。
振り返っても誰もいない…し、なんか肩が重い気がする。
…そういえば……コックリさん……正式な方法で終わらせて無ければ紙も燃やしてなかったな。
十円玉も離しちまったし……もしかして呪われたか? …なんて……。
家に帰るとテイルモンが虚空に爪を振るった。同時に肩も軽くなり、視線も消えたけど…え?
マジで呪われてたやつ?
「……こんな夜遅くまで何してたのさ」
正直に言ったら据わった目で怒られたし切り傷も問い詰められ白状したら追加で怒られた。仏の顔も三度まで…と更に釘を刺されました。
今夜はテイルモンの好きな料理を全部作ろうと思います、はい。
今日のデジモン図鑑(仮)はありません。しかもシリアスみ。
……次回も未定です。ウィルス種にしたいですね(白目)