個性【錠剤】で個性の薬をつくりながらヒーローになるアカデミア 作:黒鉄 玲
体育祭最後の一戦、その相手は推薦枠の轟。ラストの相手としては申し分ない。気合いは十分。不調はなし。
「……よし、行くか」
鏡で見る自分の顔にはいつものような怠そうな目はなく、確かな闘志を燃やした眼がそこにあった。
『待たせたなぁエブリバリィ!いよいよフィナーレのバトルだぁ!雄英一年の頂点がここで決まるぜ!!決勝戦!轟VS薬錠!』
開始と同時、やはり轟は初っ端から氷をぶっ放す。それは俺はワザとその場から動かず、ただそこに立ち止まった。
周りから困惑と心配の声が聞こえる。【透視】で氷の中から見える轟の表情は、あっけに取られた顔をしていていたが、すぐに構えを取る。さすが、判断が早い。何せ
「まだ悩んでるのか?自分の個性のこと」
俺は氷の中から何事もなかったかのように氷の塊から姿を現し、轟に質問する。
「……流石にこの十数年の思いはそう簡単に片付けられねぇ。今も悩んでいる最中だ」
轟は俺の異様な登場の仕方に少し驚きつつ、質問に答える。
「まあそうだよなぁ」
確かに、と納得する。轟の父親への憎しみがそう簡単に散りゆくはずもない…か。
そして再度戦闘が始まり、氷塊で俺へと攻撃してくる。それを【剛拳】で殴る。しかし、一撃では割れず、ニ撃目を入れてやっと壊せた。その間にも大量の氷塊が襲ってくる。
慌てず俺は【複製腕】を薬を飲み、腕を増やすことで手数を増やし、オラオララッシュで切り抜ける。手数が足りないなら、腕を生やせば良いじゃない、ってマリーアントワネットが言ってた気がする。
するとしばらくして、轟の氷塊をつくる手が止まる。おおよそ体温が下がってきたか…?まぁなんにせよ攻めるなら今だな。
4本の腕を【ガトリング】に変形させ、弾を撃つ。
轟は氷の壁を作って防ぐ。しかし、弾は氷を貫通する。轟はこれを見て危険と判断したのか壁を作りながら逃げ回る。これが【ガトリング】じゃなく、ライフルのような一発ずつ撃つタイプの銃なら良い判断だと思う。だがしかし今回はガトリングだ。要は質より量なのである。しかもただでさえ一つでも厄介なのにガトリングは四つ。つまりは轟を蜂の巣にする気満々ってわけだ。まぁさすがに轟が死ぬのはOUTなので轟に当たっても死なないギリギリの硬さにしているが。
「グゥ…!」
轟に当たったのはだいたい400〜500発。逆によくそんなで済んだなと、少し感心する。【ガトリング】の制限時間が1分しか無いため、ガトリングが解除されてしまうが、逆に言うとたった1分でこれだけのダメージ、しかも弾の威力を抑えてコレ。……ちょっとヤバいな。あんまりコレ使わないようにしよう。
「……あー、大丈夫か?轟」
「敵の心配をするなんて、えらい余裕だな」
「いやそんなつもりはないんだけどさ。ところで、炎は使わないのか?使ったら体の冷え、少しはマシになるだろ」
「すまねぇ。緑谷との戦いで、自分がどうするべきか、……わかんなくなっちまってんだ」
「……そうか。じゃあ一旦、自分の出せる最大の火力を俺にぶつけてみろ」
「え?」
轟はキョトンとした表情でこちらを見る。
「結構スッキリするぞ。代わりに俺も轟の一撃に負けないくらいの一撃をぶつける。どうだ?やるか?」
俺の問いに轟は少し考えてから答えた。
「……ああ、やってやる」
お互いの合意が決まったところで、一旦距離を取り合い、大技を撃つ準備にかかる。
自分の手のひらに炎をつくり出し、その炎に向かって力を込める。炎は小さくなるのと大きくなるのを繰り返していく。その炎は綺麗な橙から蒼炎となり、さらに濃く、より黒くなり炎は濃紺と化す。
その一連の動作を間近で見た轟は、その炎に心を奪われていた。
「準備は出来たか?」
ふとかけられた問いに、轟は少し遅れて言葉を返す。
「…!あ、ああ」
そしてその炎を見た轟は、緑谷との戦いでしか使わなかった炎を、無意識で使っていた。
「全力で、いくぞ」
その言葉を待っていたとばかりに、俺は笑う。
「ああ、全力を出し切れ」
そして俺は、炎の極地の一つと言える技を繰り出した。
「ギガフレア」
その炎は轟の炎を飲み込んで、消えて無くなったかにみえた。しかしその直後、緑谷の時と比にならない爆風が辺りを吹き飛ばし、遅れて爆発と音が響き渡り、ステージ上の全てのものを焼き切った。かろうじて轟は爆風に吹き飛ばされ、ステージ外に出たから良かったものの、その威力は人に向けて撃つそれではなかった。
しかし、その美しい濃紺の炎は、轟の心に残り、復讐の炎を吹き飛ばしていった。
俺は【ゴースト】で爆風をすり抜け、依然としてその場に立っていた。
「轟君、場外!よって優勝は薬錠鎖!」
その宣言が始まるや否や、たくさんの拍手に包まれる。とりあえず轟のところに向かい、手を差し伸べる。
「轟の炎の個性、強かったぞ。俺はオマエの炎の個性のおかげで、あの技が撃てた。ありがとう」
その言葉を聞き、轟は目を見開く。自分の個性が、あんなにも美しい炎へと変わるのだと。それに届くまで、どれだけの高みへと行けば良いのかはわからない。だけど、それは自分の個性に変わりはない。ならきっと出来るはずだ。
轟は薬錠の手を取り、感謝の言葉を伝えた。
「薬錠、……ありがとな」
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