個性【錠剤】で個性の薬をつくりながらヒーローになるアカデミア 作:黒鉄 玲
「ハァ……」
「どうしたんですか?」
死柄木弔は今、それなりに不機嫌だった。理由は数日前のステインの事件が関係している。
「どうしたも何も、脳無はやられたし、先生の知り合いの義爛って奴に紹介された奴らはウザいし、ため息くらい出るだろ」
ステインが職場体験中の薬錠に倒される前、
しかし、その後の脳無が他のヒーローに倒されたことでただでさえ気分が良くないのに、その後に敵連合に入ったステインに毒されたクソ餓鬼と礼儀知らずがダメだった。
なんでみんなステインばっか……。
「ちょっと出かけてく」
「最近よく出かけますね……、わかりました」
(……そろそろ、覚悟を決めるか)
薬錠からもらったガラケーを使う。あの日から、薬錠に言われたあの日から、先生の言うことがだんだん信じられなくなってきた。だからこそ過去を知って、疑いを晴らしたいと思った。ヒーローに頼むなんて癪だが仕方ない。
『もしもし?』
「決心がついた。マックで待ってる」
『おいちょっと待て早い早
ブツッ
「さて、向かうか」
彼はマックに向かって歩き出す。全ては自身の記憶を取り戻すために。
─薬錠視点─
「お前さぁ、急に連絡して呼び出してさぁ、もし俺が来られなかったらどうしてたんだよ?」
「帰ってた」
「なんともまぁ自分本位」
「当たり前だろ
「それもそうか」
急に電話がかかってきて誰かと思ったら死柄木からだった。しかも要件伝えた後すぐガチャ切りって本当俺をなんだと思っているんだ。頼む態度じゃねぇだろ。
そして来てみればこの対応である。殴るぞこの野郎。
「んで、決心がついたんだな?まぁじゃないとここにいないか。んじゃ、場所を変えるぞ」
そう言って俺は【ワープゲート】を開いた。……死柄木と俺の立っている足元に。
「おい嘘だろ……!?」
死柄木はそう言い残して、俺と共に【ワープゲート】に吸い込まれていった。
【ワープゲート】をくぐった先には、まるで病院のような真っ白な壁があった。薬錠はそのまま螺旋階段を進み、死柄木はそれについていく。しかし、どれだけ進んでもなかなか一番下に辿り着かない。痺れを切らし、死柄木は薬錠に聞く。
「いつまでかかるんだ?」
「ほら、ついたぞ」
薬錠は扉を開ける。すると中には、得体の知れない薬品や、さまざまな動物の剥製など、まるで研究所のようである。
「ここは?」
「知り合いの研究所。まあもう廃墟だけどな。ここならどんなことしてもバレない。何せここの存在を知る人なんざ俺と元の所有者くらいしか知らないんだからな」
誰も知らない場所。そんなところまで連れられることに死柄木は疑問を覚える。
「わざわざそこまでするほどか?」
「ああ、警戒しておく分には十分だ。なにせお前の記憶には……AFOが関係しているからな」
「……先生が?」
薬錠の言葉で死柄木の頭の中でさらに謎は深まるばかりであった。
「それじゃ準備が出来たからそこに座ってくれ」
そう言われ、死柄木は指された椅子につく。
すると死柄木はその椅子に拘束される。
「は?」
「んじゃ、おやすみ」
その声を最後に死柄木の意識は遥か深くに沈んでいき、気付くととある一軒家の目の前に立っていた。
ざっと10分、いや20分ほど経ったか。死柄木は目を覚ます。その顔からは、心労が溜まり、疲弊したことが伺える。よく発狂しなかったものだ。いや、むしろ夢の中でしたのだろうか。何度も何度も、喉がひっくり返って、声が出なくなるまで
「よっ、気分はどうだ?」
「良いわけ、ねえだろ」
「だろうな」
子供のトラウマ。それは今後の人格形成に強く影響することだ。それを無理矢理思い出すのは、どんな拷問よりも嫌なものだ。
「……あの出来事は、本当なのか?」
「こればっかりはアンタの信用によるな。まあ認めたくない気持ちはわかるがな」
「さてと、そんな自分の運命を歪められた死柄木弔、もとい志村転弧に提案がある」
「?」
「アンタ、俺と手を組まないか?」
それは、ヒーローとしてはあるまじき行為だった。ヒーローが
だが、同時にヒーローとは人を助ける者である。俺のヒーロー像は、たとえどんな人にも等しく、救済の手を差し伸べるような、そんなヒーロー。それがたとえ
「……、少し考えさせてくれ」
「いつでも連絡しろよ」
俺は死柄木を先ほどまでいたマックへと帰還させた。
死柄木を帰らせた後、俺は死柄木の眠らせた部屋の扉を開け、そのさきの部屋へと向かった。
そこには仏壇が置いてあり、写真立てには俺の父親と母親の写真が置いてある。俺はその仏壇に手を合わせ、祈った後、この研究所を後にした。