個性【錠剤】で個性の薬をつくりながらヒーローになるアカデミア   作:黒鉄 玲

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林間合宿、またの名を地獄絵図

本来林間合宿とは、人生の思い出に一生残るものであり、楽しい記憶の一部として生涯忘れられるものではないだろう。……一般的には。

 

「はい、上がり」

『またぁ……!?薬錠くん運良すぎじゃない!?』

「お、すげぇな!これで3回目じゃねぇか!?」

 

久々にUNOをやってみると、意外に面白いものである。だがUNOなんてやる機会林間合宿くらいでしかやらないのがなんとも言えないところだ。

 

現在、林間合宿のバスの移動中で、暇な時間をカードゲームをやって過ごしていた。ちなみに今は今日持ってきたお菓子をかけてギャンブルしている。

 

また、そんなにお菓子を持ってきていない人のために駄菓子屋でうまい棒とか蒲焼さん太郎とかを大量に買って、参加する人限定で配っている。

 

「はいじゃあ全どりな」

『薬錠くん強すぎるよ!もう少し手加減してよ!』

「俺は手加減をしない。なぜならそれは相手を舐めてるってことだからな。あと俺のお菓子だし」

 

そう言って俺はココアシガレットを口にくわえる。ココアシガレットって俺の中で嘘つき!ゴクオーくんのイメージがあるんだよな。

 

『そういえばなんでみんなとショッピングモール来なかったの?』

 

そう。実は死柄木にあった日、本当はその日はショッピングモールでA組のみんなと買い物をする予定だったが、死柄木から電話が入り、ドタキャンする必要ができたため、そっちを優先した。しかし、そんな事情を葉隠に言えるはずもなく……

 

「本当にすまん。ちょっと姉が大怪我したらしくてな」

 

と、姉を犠牲に誤魔化した。まあしょっちゅう大怪我するし、別にいいだろ。

 

『そうなの!?大変だったね……』

「いや、俺の姉はよく怪我するから、いつものことだ。でも今回は少し肝が冷えた」

『でも大事にならなくてよかったよ……』

 

 

「お前らついたぞ」

 

相澤先生の合図で全員がバスから降り始める。

 

『薬錠くんいくよ!』

「わかった。少し待ってくれ」

 

皆が降りたのを確認し、バスから出る。

 

降りた先は、周囲一体が森に囲まれた場所だった。

 

「ここどこだ?パーキングエリアじゃなくね?」

 

皆周囲の光景を見て混乱している。

 

「よっ!イレイザー」

 

「ご無沙汰してます」

 

相澤先生は突如としてやってきたヒーローと思われる二人の女性に頭を下げる。

 

 

「煌めく瞳でロックオン!」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」

 

するといきなり現れた女性ヒーローが口上を言い放ち、俺らは呆然とする。その後、相澤先生にこれからお世話になるプロヒーロー達と言われ、皆でお辞儀する。

 

しかし、直後のマンダレイの言葉に対し、顔色がどんどん変化していく。

 

「ここら一帯は私達の所有地なんだけどさ、あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

 

勘の良い生徒はなんとなく察し、各々の顔が、引き攣り、青ざめていく。

 

「今は午前9.30分、早ければ……13時前後かしらぁ?14時までに辿り着けなかったキティ達はお昼抜きね?」

 

クラスメイト達はこれから何が起こるか察したらしく急いでバスに戻ろうとするが先回りしていたピクシーボブが獰猛な笑みを浮かべながら自身が有する個性である『土流』で地面ごと抉り取り土石流を生み出す。

 

生徒を次々に崖の下へと転落していく。

 

「私有地につき、個性の使用は自由だよ!!今から頑張って自分の足で施設までおいでませ!!この『魔獣の森』を抜けて!!」

 

それだけ伝えると、先生達プロヒーローはバスへと乗り、走り去っていった。

 

 

 

 

 

「さて、誰が一番早くに着くかねぇー?」

 

宿に着いたプロヒーロー達はバスから降り、一番早く着く生徒が誰かと予想していた。

 

「まあ薬錠でしょうね」

「そんなにすごい生徒なの?」

 

相澤先生が即答したことを意外に感じ、ピクシーボブは薬錠について聞く。

 

「あの生徒は他の生徒より、いや、なんならそんじょそこらのヒーローより強い。しかも良くも悪くも恐怖心がないんです」

「それはヤバいねぇ……」

 

相澤先生はUSJでの一件を思い出す。あれが初めての実践というのに、相手の個性を判明させるために自らの身体を触れさせるという荒技を披露した。一歩間違えれば死ぬというのに。恐怖心がなければ実行すら出来ない。

 

「いつかアイツは取り返しのつかないのことをしそうで……」

「先生そんなこと思ったんですね」

「ぅお……!?」

 

相澤先生の喉からなかなか聞かない驚いた声を発する。

 

まあ無理もないか、バスから降りてる姿は先生達は見てたはずだし。

 

「お、お前いつからいた……?」

「ずっとバスに乗ってましたよ、最初から」

「最初から?でもさっきまでいなかったのに……?」

「はい、最初から【透明】の個性を使って」

 

マンダレイの疑問に実際に自らの体を使って証明する。ちなみに服も一緒に透ける理由は物体の性質と性質を融合させる【合成】で【透明】になった体と衣服を合成した体ある。ちゃんとそのことも先生に説明した。しぶしぶ納得してくれた。

 

「あと、先生が見た俺の降りる時の後ろ姿は【幻映(ホログラム)】で」

「………」

「………」

 

俺の簡潔な説明を聞き、しばらく呆然をしている三人。しかし相澤先生が意識を取り戻し、気になった点を質問する。

 

「───一応聞くが、バスにずっといたのは、これから起こることがわかっていてバスにいたのか?」

「いや?パーキングエリアだと思ってたので別に用を足しにいかなくてもいいなと思って」

 

相澤先生は大きなため息を吐き、マンダレイは驚きのあまり息を呑む。ピクシーボブは開いた口が塞がらなくなっている。

 

まさか自分達の計画していた林間合宿の不意打ちをこうも見事にかわすとは、三人はおろか、なんなら本人である俺でさえ考えてなかった。本当に動くのがめんどくさかっただけなんだが、誰も信じてくれるわけないだろう。

 

その後、これまでの一連の流れをまとめて、各々の俺に対する思いを述べる。

 

「こういうところがあるからなコイツは……」

「なるほどねぇ……、確かにコレは大物になる予感がするわ」

「そう言ってもらえると少し嬉しいですね」

 

しかし、ただ一人喋らず、顔を赤くしながらずっと考えているピクシーボブ。そして、決心したかのように口を開いた。

 

「…………あの……ずっとバスに乗ってたってことは………もしかして………」

 

「はい、聞こえてましたよ。すごいお綺麗な歌声でした」

「ンニ”ャーーーー!!」

 

恥ずかしさのあまりか、我を忘れて発狂する。

実はなぜかバスで謎にカラオケが始まり、ノリで歌をマンダレイに歌わされていたのだが、まだ先生しか聞かないからと割とガチめに歌っていたところを、たまたま居合わせた俺がうっかり聞いてしまったのである。まあ人にガチカラオケ聞かれたら相当仲良くないと恥ずかしいよね。

 

「ちなみに録音してありますけどよかったら聞きます?」

「お願い。本当になんでもするから消して?」

「薬錠、流石にいじめ過ぎだ。消してやれ」

「ただでさえ彼女結婚適齢期で焦ってるから、これ以上追い打ちかけないであげてね」

「はーい」

 

ちなみに消す前に一回先生しかいない場で流してみた。みんなやっぱり綺麗な声だと感心した。ピクシーボブは発狂した。

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