個性【錠剤】で個性の薬をつくりながらヒーローになるアカデミア   作:黒鉄 玲

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情報提供 死柄木、そして黒霧の過去

USJでのこともあり、臨時休校の翌日。相澤先生から会議室に来いと連絡があった。どうやら(ヴィラン)連合と名乗ったあの二人の情報提供に協力しろとのことだ。わざわざ朝イチで先生達大人に囲まれるなんてまっぴらごめんだが、疑われている身だから仕方ない。行くしかないか。

 

「君が(ヴィラン)を倒したという少年だね。名前はなんと言うんだい?」

 

「薬錠 鎖です。すみませんお名前を伺ってもよろしいですか?」

警察関係者だろうか。内部の人間なら知れるだけ知っておきたい。警察などの国家機関と関わるタイミングというのは少ないからな。

 

塚内 直正(つかうち なおまさ)だ。今日はよろしく頼むよ」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 

その後、先生達や警察の関係者(おそらく)などの順々に会議室の椅子に座っていき、最後の席に俺が座る。

 

大人達があれこれ話し合いをし始める。捕まえた(ヴィラン)の身元や生徒の無事、これからの学校側の対応など色々話しあっている。大人の会話の中に俺はただただ話を聞く。あんまり関係ない内容も多いが情報は持ってて損はない。

 

そして、とうとう死柄木と黒霧の身元の話となった。早速俺が説明に入る。

 

まず警察側に自分の個性のことと、【過去視】について説明する。警察側の方々は疑問を浮かべていたが、実際に使って警察側にいた一人の朝食を当てたら信用してもらえた。

 

 

「…では俺が死柄木の過去について話します」

 

死柄木弔、本名志村転弧。その子の家では家庭内のルールで『ヒーローの話をしてはいけない』というものがあった。しかしやはり子供の彼はヒーローに憧れてしまった。

 

どんどん成長していくうちにヒーローへの憧れが強くなっていき、それと同時に父親はそれを強引に否定し続けた。ときにはそれが暴力にでるものもあった。その時、誰も助けてくれなかった。姉も、祖母も、母親さえも。

 

日が沈みきった頃に、転弧はペットの犬に感情を溢しながら泣いていた。

 

『みんな…嫌いだ…』

 

父親も、父親に逆らえない祖父母も、父親に隠れて嘘をついた姉も、取り巻く全てのものが嫌いになった。それを吐き出した瞬間、彼は幼少期に触れるもの全てを破壊する個性、【崩壊】を発現した。その手で訳も分からず、家族全員を崩壊させていった。こうして、志村転弧は一人となった。

 

一人になった志村転弧はいろんなところをゾンビのように彷徨った。そこでは誰も手を差し伸べてくれなかった。その後、手を差し伸べた者が現れた。それがAFOだった。そうして、AFOの手で次期魔王として育てられた。

 

「これが死柄木弔…、志村転弧の過去です」

 

と、この話を聞いていた大人全員は志村転弧の壮絶な過去に声帯が取れたように会議室内は静かになった。その中でオールマイトだけが、志村転弧の過去ではなく、志村という単語にだけわずかに反応していた。

 

「ヒーローに憧れることさえ否定された子供の末路。それが死柄木。これがホントならただ環境が悪くて生まれた(ヴィラン)です。ですが、これはあくまで本編(・・)実はこのお話には前日譚(・・・)がありました」

 

その言葉を聞いた大人達は頭に?を浮かばせながら俺の話を聞く。

 

「全ての始まりは転弧が【崩壊】を発現する前。実はAFOは一度、志村転弧と接触しています。」

 

「「「!?」」」

 

「そもそも転弧の個性は本当は【崩壊】ではなく、祖母と同じ【浮遊】の個性のはずでした。しかしAFOとの接触した際、AFOは転弧の【浮遊】の個性を奪い、【崩壊】の個性を渡しました」

 

オールマイトや、警察関係者の殺気が会議室内に漏れ出る。

 

「…つまり、転弧の人生を狂わした本当の原因はあのAFOということです」

 

会議室が沈黙に包まれる。そんな中塚内さんが声をかける。

 

「ありがとう。死柄木について十分すぎる証言が手に入った。次に黒霧という人物について教えて欲しい」

 

「黒霧はですね…、人ではありません」

 

「それはいったいどういうことですか…?」

 

俺はその問いに答えるように説明する。

「まず今回戦った脳無と呼ばれる怪人。あれは死体から作られており、大量の個性をAFOによって与えられています。それにより、あのような見た目になったのです。その中で、知能がそれなりにある者が生まれた。それが黒霧です。ちなみにこの死体の元の個性は【雲】なんですが

、他の個性と融合するうちに【ワープゲート】へと変化していたようです」

 

…一通り話してみるとひどい話だ。死体を生物兵器に変えたり、一人の子供の人生を狂わせた。反吐が出る。

 

周りの大人の反応は多種多様で、苦虫を噛み潰すような表情をしたり、手を力いっぱい握ったり。だが全員抱いている感情は、きっと同じ怒りだろうと予測できる。

 

「……彼らの過去を私達に教えてくれてありがとう。君はもう帰っていい。これからは大人の話だ」

 

「はい、では俺はこれで」

 

そう言って俺は会議室を出る。

そんな中、【雲】の個性の名前を出した時、ひどく悲しい顔をしていた相澤先生の顔だけが頭を離れずにいた




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