お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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27:悪魔たん

 

 

「というわけで到着したわけですが……。すごいですね。」

 

「確かに、綺麗な所よねぇ。」

 

「えぇ、お金の匂いが凄くします。」

 

「……カーチェ?」

 

 

そう言いながら、テクテク歩いて到着したのがこの教会です。

 

王都の教会というだけあってかなり大きく、その装飾も職人の手によってきめ細やかになされている建物。まるで神に仕える我らに恥じるところなど無いと言うほどに真っ白な壁に、天高く伸びる鐘の塔。まぁ確かにこの世界で生きた人間からすれば初めて見る素晴らしき建物に、秘めていた信仰心を燃やしたてるのでしょうが……。

 

私からすれば何度もゲーム内で見た教会ですし、もっと言えばこの教会の元ネタを知っています。海外の著名な奴を異世界風に作り直した奴ですからねぇ。

 

 

「いくら醜い魂胆を塗りつぶす為とはいえ、これだけ白い建材だと維持だけでもかなりの費用が掛かるでしょうに、それを維持しているとなれば大層な金持な事で。豚のように肥え太っているのが予想できますね。」

 

「め、滅多なこと言うんじゃないわよッ! まぁ確かに恰幅の良い方多いけど……。」

 

「自分で認めちゃってるじゃないですか。」

 

 

まぁ世界が違いますから、宗教も違います。聖職者が豊かであることが求められている場合もあるでしょうし、清貧を重要視していない可能性もあります。ま、部外者の私が口を挟むことではありませんし、適当に流しておくとしましょう。そもそも私、無宗教ですから。

 

 

「え、カーチェ。アンタ神様信じてないの?」

 

「存在は信じていますよ? いえ知っているといった方が正しいでしょうか。まぁ私が信仰するに値する対象ではないだけです。」

 

「バチ当たるわよ?」

 

「なるほど、それは確かに困りますね。やり返して差し上げなくては。」

 

「……やっぱり悪魔?」

 

 

ちなみにですが、この世界で一般的に信仰されている神様が、『天アバ』作中における裏ボス、邪神そのものになります。つまり今の人類は、自分たちを滅ぼそうとしている相手を信仰している形になるんですよねぇ。愚か愚か。

 

なのでまぁそんな愚かな聖職者の方々からすれば現状私は神敵になるわけですが……。黙っていればバレないことをあえて口にする必要はありません。

 

 

(宗教は敵に回すと恐ろしいですからねぇ、利用するに限ります。)

 

 

そんな私に突っ込んでいたチロさんですが、どうやら信心が薄い感じのご様子。しかし先ほどの反応から聖職者や教会、その教えに対して不信感を覚えているわけでもなさそうです。となると神様を殺すと伝えれば、パフォーマンスの低下が考えられるでしょう。だったらもう死ぬまでお伝えしない方が互いにとって幸せというもの。

 

それに、もし邪神が『お前たちの信じる神は私だったのだ―!』とか言い始めても、あらかじめ『邪神がそう言う嘘ついてくると思うので、会話中に攻撃してください』って先手を打っておけばいいだけですし。

 

 

「というかチロさん、自分の雇い主を悪魔呼びとか酷くないですか? こんなにも可愛い幼女なのに。」

 

「ほんとに可愛い女の子はそんなこと言わないでしょうが。後なんか人心掌握してるし、変な世界連れていかれるし、有用なのは分かるけど盗賊の首と体をせっせと切り離してるし……。」

 

「帰りに貴族街にある高級店のスイーツでも食べに行きませんか?」

 

「アンタは私の天使様よ。」

 

 

よろしい。では買収も完了しましたので、教会の中に入っていきましょう。

 

そんな感じで教会の中に入ってみれば、計算され尽くした“整った”雰囲気に包まれます。神の神聖さを担保するために壁を分厚くし、外界と教会を区切る。同時に光や煙、また音楽によってここが神の家だということを理解させられるような作りですね。素人目に見てもかなりの出来であることが解ります。

 

確かに、もし私が前世の記憶を持たずにここにやって来ていれば圧倒されていたでしょうが……。こんなもの屁でもありません。意図を知っていれば影響は0に等しいですし、いずれ処理する神の教会などを有難がるなど滑稽以外の何物でもありません。

 

一瞥した後、近くにいるシスターに声をかけます。

 

 

「失礼。大司教様にお目通りを願いたいのですが、お取次ぎ頂けますか。」

 

「え、こど……。失礼いたしました。何かご約束でもありましたでしょうか?」

 

「いえ。しかし“主”が寄進に関して幾つかお伺いしたいことがある、と。」

 

「……お名前を伺っても?」

 

「大変申し訳ありませんが、主から止められておりまして……。とりあえず大司教様にお伝えだけして頂けないでしょうか?」

 

 

そう伝えると、何かを察したような顔をし、軽く頭を下げた後に教会の奥に消えていくシスターさん。うんうん、これなら無事に取り次いでくれそうですね。

 

とまぁそんな後姿を眺めていると、私の方をちょんちょんと突くチロさん。身長差から内緒話をするには屈んで貰わなければならないので、その膝の裏側をつついてみればすぐにしゃがんで口を耳元に寄せてくれます。

 

 

(ねぇアンタ。誰かに仕えてたの?)

 

(うん? あぁ“主”のことですね。早い話、主=私です。)

 

(……嘘ってこと!?)

 

(いーえ? あのシスター様が勝手に勘違いしただけですよ?)

 

 

まぁ思いっきり嘘なのでシスターさんに全責任を押し付けるのは可哀想ですが、何の伝手もない私が教会のトップとお話しするにはこの方法しかありません。

 

私の教会訪問の目的の一つ、『転職に必要な天使像』の入手は、教会上層部の認可が必要になってきます。何せ教会の人間からすれば大事な商売道具、彼らの神聖さを実益の面から担保する大事な存在です。得体のしれない幼女が『それくれ!』と言っても無視されるだけで終わるでしょう。

 

なので誰も知らない架空の主、しかもなんか高貴で名前を言っちゃいけない奴を仕立て上げる必要があったんですねぇ。

 

 

(常人であれば、私のような幼女を交渉役に置くようなことはしません。しかしながら私には年に見合わぬこのお口があります。)

 

(まぁそうね。普通の5歳児はそんな悪だくみの話しないわ。)

 

(だからこそ賢い人はこう考えるわけです。『なるほど良いカモフラージュだ』と。)

 

 

幼女がそこらを歩き回っていても、子供が遊んでいるな、で終わります。何だから偉い人に近づいたとしても、関係者のお子さんかな? で済むわけです。しかし実際に私と交渉する人からすれば、違います。周囲が私を普通の子供だと見てくれるからこそ、私が誰と話していても警戒を抱かれにくくなるのですが……。その隙に滅茶苦茶大事なお話をしてしまうのです。

 

奇しくも、今この王国では『王女がいとこに当たる公爵に殺されて』います。

 

王家の力が弱まり、貴族が領土拡大のため動き出してもおかしくない事態。それこそ私が真っ先に殺すリストに書き入れた『ジュポン公爵』の配下が真に王権を奪取しようとしていてもおかしくないでしょう。口止め料も含めて大金を払うことで『天使像』を受け取り『配下をどんどん転職させて、上級職だけの強い軍団を作ろう!』としていても……、なにもおかしくありません。

 

 

(よくできてると思いません?)

 

(……やっぱアンタ悪魔よ。)

 

(ではスイーツは無(天使様)よろしい、というわけでいつも通り口を開かないようにお願いしますね。)

 

 

と、そんなことを話していると……。恰幅が良くかなり身分のいい服を着た高齢の男性と、先ほど話しかけたシスターさんが歩いてくるのが見えます。その服装と装飾からして、あのお爺ちゃんが大司教で間違いないでしょう。実際耳を澄ませてみれば『大司教様、あの方なのですがご存じですか?』みたいな声が聞こえますし。

 

では面倒ですが早速……。

 

普段の緩み切った顔を整え直し、快活な幼女な顔に。全身から蕁麻疹がでそうなほどに明るく楽しそうな声で、大司教に向かって走り出します。

 

 

「おじいちゃーん! お久しぶりです、“ガルシア”です! 覚えてますか!!!」

 

「おぉ。……ほっほっほ。勿論覚えておるぞガルシアちゃん。」

 

 

“偽名”を名乗りながら豚のように肥えた脂肪に向かって抱き着き、ぎゅーっとしてからそう問いかけます。するとまぁ何か察したようで、欠片だけ見えた『無』から好々爺な顔に変わります。……ふむ、やっぱりかなりの狸なようですね。色々と注意せねばならないかもしれません。

 

 

「しかしガルシアちゃん、急に来られてもびっくりしちゃうじゃろう? 偶々何もない日じゃったから良かったが……。」

 

「ごめんなさいおじいちゃん……。でもお会いしたかったんです!」

 

「ほほ、しかたないのぉ。では菓子でも食べるかの? 実はちょっと前から溜め込んでいた物があっての? ……あ、秘密じゃぞ?」

 

「もちろんです! やったー!!!」

 

 

ちなみに今のは、『アポなしで来るとか何者だテメェ』『急な訪問でわりぃが話させろやテメェ』『聞いてやるが下手なもんだと承知しねぇぞテメェ』『んなもん解ってるんぞテメェ』という内容を和気あいあいとお話した感じになります。

 

なお大司教の隣にいるシスターさんが『あぁなんだ、さっきの物々しい話し方はこの子の遊びだったのね。微笑ましいですねぇ』みたいな視線を送ってきていますが、私の後ろにいるチロさんはよりバケモノを見る様な視線を投げかけてきています。……この人ほんと感情が顔に出ますよね。

 

ま、変に口を出してこない限り何も問題ありません。さーって。この狸との会話。頑張らないとですねぇ。

 

 





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なお狸と悪魔の化かし合いによって発生した邪気によってチロ姐が気絶したため、会談内容の録画に失敗しました。
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