お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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42:レベリングですよー

 

 

「ボコボコにされました。」

 

「……言葉だけで人って殺せるのね。」

 

 

そんなこんなでようやくお説教が終わった次の日。村から出た私達は、馴染みの墓場までやってきています。

 

にしても昨日はすごかったですねぇ。一切肉体的ダメージを受けていないのにも関わらず、言葉だけでHPが減っていくという恐怖。瀕死状態になったせいか、王女から半狂乱に成りながら安否の連絡が飛んでくるとかいう意味不明なことまで起きてました。

 

あ、ちなみにチロさんですが、監督不行き届きという理由で一緒に詰められ、私がぶっ倒れる3時間前ぐらいに天に召されてました。あっちで天使。目玉の天使ことテーちゃんに再会していたようで『なんか生霊になった人の子おるッ!?!?!?』と驚かれたそうです。おもしろ。

 

 

「んで? どうしてこんな場所に呼び出したのカーチェ。確かに墓場とか、アンタの職業にぴったりだとは思うけど……。墓荒らしの手伝いとかだったら、逃げるわよ私。」

 

「違いますが?」

 

 

普通に別件でのお呼び出しだったのですが、普通にチロさんから勘違いを受けてしまう私。

 

まぁ今の職業、死霊術師ですからね。通常の攻略でも、この職業は初手墓荒らしから始まるのでそうおかしな話ではありませんが……。

 

 

「そもそも、私のアイテム欄。死体で一杯ですよ? チロさんが焼き殺した盗賊の焼死体からマフィアの死体、あと王都から村に帰る途中でボブバイクで吹き飛ばした盗賊も入っているのです。わざわざ墓を荒らして腐った死体を手に入れるよりも、フレッシュなものがそろっているのです。」

 

「し、死体にフレッシュって。」

 

「普通に別件ですよ別件。というわけでボブ達をお呼び出しして、持たせるのはスコップ。掘り出してもらうのは……。こちらです。」

 

 

というわけでご用意しましたのは、皆さん大好き『経験値おじさん』です。

 

私の村を襲おうとしていた盗賊の一人で、自身の職業である『村人』をカンストまで導いてくれたとても徳の高いおじさんに成ります。自分の命と精神を投げ打ってこのカーチェちゃんに経験値を齎しているわけですから、もしかしたら今この世界で一番徳ポイントが高いんじゃないですかね? 自己犠牲の塊みたいなものですし。死後は仏様に成られるかもしれません。

 

まぁそもそも、死ねないのですが。

 

 

「え、なにこれ。ひ、人が墓石に埋まってるのコレ? いやこわ……。え、呼吸してるってことはこの人生きてるの!? は!?!?!?」

 

「えぇ、生きていますよ。正確には『死ねない』ですけど。」

 

 

このおじさんは、村の外でポップする『盗賊』という敵ボブと、このマップにある『墓石』というオブジェクト。この二つの側面を持っています。つまり何をしようが死にませんし、どれだけ殺して経験値を得たとしても、常に復活してくれる素敵存在なのです。

 

 

「というわけでチロさん! この首をリズムゲームのように落してレベルをカンストさせて転職しましょう! 強くなる最短ルートですよ!」

 

「…………やっぱアンタ悪魔?」

 

「失敬な。私はしっかり人間ですよ? まぁ悪魔なんかより人間の方が恐ろしいという意見には賛同できますが。」

 

「も、もうただひたすらにアンタのことが怖いわ。……後、地味に私が慣れ始めてきてることも。」

 

 

何故か苦悩し始めたチロさんを眺めながら、再度アイテム欄からアンデッドたちを用意し、準備を始めていきます。

 

現在私が所有している職、『死霊術師』はランク的に言うと、中級職に当たります。最下級の村人、下級の魔法使いなど。その一つ上に位置する職業ですね。そのため私よりもカンストまでの必要経験値の少なそうなチロさんからレベリングしてもらおうと思っていたのですが……。本人がやりたくないのなら仕方ありません。私が先にやらせてもらうことにします。

 

 

「はい、ではボブーズ。お仕事の時間ですからね。指示通りお願いしますよ。」

 

「「「ギャ」」」

 

「良いお返事。では1番は私とチロさんの椅子と机の用意を。2番はお茶の用意……。あ、体液垂らしたらお前を『おじさん』にしますからね。んで3番と4番は武器をもって所定の位置についてください。」

 

「……な、何するつもり?」

 

「だからレベリングですよ? では開始。」

 

 

私がそう宣言した瞬間、3番と4番のボブが、交互に剣を振り落としていきます。

 

気分はまさに餅つき大会。美味しいおもちの代わりに、『経験値おじさん』の首を叩き落しているわけですが……。ご安心ください。落ちても落ちても元に戻りますし、アンデッドが破壊したモンスターの経験値は、全て私に入ってきます。

 

そう、これが全自動経験値マシーンというわけです。

 

 

「そ、そうよね。全く理屈は解らないし、解りたくもないけど、こんなのあれば真っ先に利用するのがアンタよね。うん……、恐怖よりも納得が先に来たわ。」

 

「便利ですよ、これ。完全放置でレベル上がるんですから。どれだけレベル差があっても、最低保証の1は経験値として入って来ますからね。チロさんも一緒に死霊術師とってやりましょうよ。」

 

「絶対イヤ。」

 

 

あら残念。

 

まぁ嫌なら嫌で仕方ありません。これ以外にもまぁ有用なレベリング方法はありますし、今この段階でも十分使用可能です。少々手間はかかりますが……。今日のお昼寝を気持ちよく決めるための労働として、ちょっとだけ動いてあげることにしましょう。

 

ま、その前にこの前の約束を果たさなければいけないのですが。

 

 

「ささ、座ってくださいな。この前話してほしいと言っていた、私の目標や背後関係についてお教えしましょう。」

 

「……生首が落ちたり生えたりしてる横で?」

 

「そうですが?」

 

 

凄く嫌そうにしながらも、しぶしぶボブの用意した椅子に座る彼女。

 

私もその対面に座り、ボブ2号が用意した茶を口の中で転がします。さてはて、何処からどこまで話しましょうか。全部暴露しちゃってもこちらとしては問題ないのですけど、多分チロさんが情報過多でぶっ倒れてしまいそうなのですよねぇ。

 

 

「まずですが、私の“中間目標”が『魔王・邪神・辺境伯を討伐する』ことは知っていますね?」

 

「……この前聞いた奴ね。そもそもそいつら何よ。なんかヤバそうなことしか知らないんだけど。」

 

「魔王が所謂魔物たちの王であり、人類の明確な敵に成ります。人の生活圏を奪い、地上を魔物だけの楽園にしてくる奴ですね。んで邪神がその魔王を作り出した奴で、現在の教会勢力が信仰している神に成ります。」

 

 

なんか設定資料集とか読んでる感じ、元々別の神がいてその神様が席を外している間に、邪神が神の椅子に収まったとかそういう奴だったと思います。普通に人類どころかこの世界ごと食い物にしようとしている奴なので、早めに倒して安寧をゲットしておきたいってやつですね。

 

 

「んで辺境伯ですが、よく解りません。存在自体が世界を破壊して来るヤバい奴、としか。あとさっき上げた三つの中で一番強いのがコイツです。」

 

「神よりも強い辺境伯ってなによ本当に……。ま、まぁいいわ。とりあえず世界にヤバい敵がいるのは理解したし、アンタがそれを倒したいことも理解できた。でも“中間目標”ってどういうこと?」

 

 

え、解りません? 私って基本お昼寝しか興味ないんですよ。

 

ゆっくりのんびりしながら、適度な刺激と穏やかに進む時間の中で人生を過ごし、眠るように人生を終えたいんですよ。つまり魔王とか邪神とか辺境伯とか全部邪魔なんです。だからさっさと消し飛ばして私は余生を満喫させて頂く、ってわけです。

 

王女蘇らせたのも、私ののんびり生活に必須な村。その村が所属する国をいい感じに統治し、戦乱などが起きないようにするためでしたからねぇ。

 

 

「……なんか最終的に求めてることは似てるのよね。私もまぁ早くアガれるのならアガりたいし。まぁそれでも死体をいじくりまわして馬よりも早い化け物にしたりはしないけど。」

 

「格の違いですね。」

 

「倫理の有無よ。……まぁ確かに、私としても今住んでるこの世界が消し飛ばされるのは困るわ。先陣切って戦えとか言われるのは正直嫌だけど……。協力ぐらいはしてあげるのもやぶさかじゃないわね。というか協力しないとアンタに何されるか解らないし。」

 

 

あらあら。酷いですねぇチロさん。何もしませんのに。えぇ、『私』は。

 

ただあの王女様に『カーチェのペット』認定されてるチロさんが逃げ出したり、何もしなかった場合。どうなるかは解りませんけどね。

 

 

「……一応アンタ、アイツの主人なんでしょう? 何とかならない?」

 

「無理ではないと思いますが、変に制限した結果よりバグって敵対したり、より意味の解らないことをしだす可能性があるので嫌です。」

 

 

他のアンデッドが『ギャギャ』って言ってるのにあの子だけ普通に喋ってますし、何かデカいですし、こっちの想定以上にクソ強いので、なんか手を加えると変な挙動しそうで怖いんですよねぇ。まぁ仕事はしてくれてるので、放置してるんですが……。

 

 

「まぁいいわ。んで? そもそもさ、そういう『普通の村娘では知らない様な情報』をどうやって手に入れてるわけ? あの化け物……、じゃなくて天使まで知らないような事知ってたわけだし、そこんところどうなのよ。」

 

「あ、それは普通にこの世界をゲームとして遊んでたからですね。」

 

「……ん?」

 

 

あ、ゲームって単語解りません? ほら本の中の物語とかあるでしょう? 前世私もこの世界のことを物語として認識して見ていたので、色々知ってる感じになります。

 

 

「え、もの。ものがたり?」

 

「そうですよ?」

 

「この世界自体が、本?」

 

「ゲームですが、おおむねあってます。」

 

「…………アンタの頭がおかしいってのは?」

 

「正常ですが?」

 

「???????????????????」

 

 

あ、チロさん宇宙猫に成っちゃいましたね。

 

まぁ仕方ありません。私は彼女に嘘を言ったことはないですし、理屈を付けて考えれば幾つか思い当たる節があったのでしょう。“気が付いちゃった”みたいですね。

 

 

「まぁ別にそれで何かが影響して来るわけではないんですよね。“知ってる”だけですから。前世もし同じようなことを言われても、それで何か生活が劇的に変わるわけではないですからねぇ。」

 

「???????????????????」

 

「……まだ宇宙猫ですね。あ、そうだ。ちょうどいい機会ですし、移動しちゃいましょう。」

 

 

ということで急遽方針を変更。

 

アイテム欄から大量のアンデッドを出現させ、全員にダンスを踊らせます。早い話、世界に強烈な負荷をかけてる感じですね。後はチロさんの身体を掴み固定。方角と向きを見定めて……、地面に強烈な一撃。即座に『虚空』へと飛び込みます。

 

今から行うのは、虚空。所謂マップ外を利用した長距離移動です。『天アバ』って3Dゲームですからね。上手くやれば一瞬にして最奥ダンジョンとかに行けるんですよ。

 

 

「ま、今回行くのはその2つ前ですが。」

 

 

というわけで虚空をテクテク上がりまして、上空の地面に向かって思いっきりジャンプ。少々距離が足りなかったので、アンデッドを虚空の中で生成し、足場にしながら移動。ようやく目的地へと到着します。

 

 

「よしよし、無事到着ですね。魔王城直前のダンジョン、『魔獄の要塞』です。」

 

「オゴッグバ! げほっ! げほっ! あ、アンタ! な、何するのよ!? 連れていかないって約束だったでしょうが!!!」

 

「あ、復活した。いや宇宙猫状態だったら耐えられるかなーって。」

 

「無理よ!!!」

 

 

えー、ワガママ。

 

まぁいいです。折角終盤ダンジョンに遊びに来たんですから、楽しみましょうよ。

 

あ、ちなみにですが、ここ“王女レベル”の存在が雑魚敵としてうじゃうじゃいるので、死にたくなかったら言う事聞いてくださいね。

 

 

「はぁ!?」

 

「ここですが、ドラ〇エなどで言うメタル系。経験値を大量に差し出してくれるモンスターの最上位が出てきます。その名は『ますたーおもち』。一撃で喉に餅を詰まらせて即死させてくる強敵ながら、倒せばレベリングが各段に捗るすっごいモンスターですね。」

 

 

ささ、折角ここまで来たのです。手早く出現させる方法も知ってますので、ぱーっとやっちゃいましょー!

 

 




いつも誤字報告ありがとうございます。
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日に日にカーチェちゃんがヤバいのになって来て、もうどうしたらいいか解りません。とても困りました。何ですかこの幼女。怖い。
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