お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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47:こんにちは死ね

 

 

「はい、というわけでこれが魔王の間へと続く扉ですね。」

 

「……内装もだけど、すごくそれっぽい扉ね。」

 

「でしょう?」

 

 

というわけで叫び続けるチロさんを連れて虚空旅を30分ほど、ようやくたどり着いたのがこの魔王城です。

 

……実は公式資料集によると、この魔王城の建設は今から約五年後。私や主人公が10歳のときにはじまり、物語が開始する数か月前に完成するとのことになっています。しかし何故か『本来存在しないハズ』の建物が『現実に産み落とされている』。不思議ですよねぇ。

 

まぁ早い話、無理矢理お邪魔したのですが。

 

私もバグを愛用するプレイヤーだったことから、虚空。所謂プレイエリアの外がどこに繋がり、何処に各ダンジョンのマップが格納されているかは把握しています。そのためわざわざボブバイクで虚空の中を進み、魔王城のマップの下に移動。そこから顔を出すことで、無理矢理魔王城の最奥までお邪魔したわけに成ります。

 

 

「ポップする敵が結構強いので、それをスキップするのにオススメな手法ですね。あ、ちなみにRTAなどでは即座に魔王の間へと飛び出すことですぐにイベントが始まるので、そっちを利用してください。」

 

「……誰に言ってるの?」

 

「チロさんですが?」

 

 

まぁそんな非正規の手段で侵入したため……、現在私たちが確認できているのは内装のみ。真っ黒な壁と天井に、赤い絨毯。悪魔のような燭台などが置かれたそれっぽい感じのお城です。ちなみに外装も結構素晴らしく、製作者である3Dモデラ―さんを褒め称えたい建築になっているのですが、魔王を倒した瞬間に崩壊するのでもう見ることはありません。残念ですね。

 

……そう言えば私が入り込んだことで『魔王城の存在』が確定したわけですので、傍から見たら『急に不気味な城が出現したと思えば消え去った!』みたいな感じになるんでしょうか?

 

 

「まぁいいや。んじゃさっさと宝玉を填め込んでいきましょう。」

 

「四天王とか言う魔物の胸に埋め込まれてた奴ね。」

 

「えぇ、そうです。……というかチロさん、虚空であれだけ叫んでたのにもう精神を立て直してるなんて流石ですね。」

 

「む、無理矢理立ってんのよこっちは……!」

 

 

もう反抗期の赤子かというほどに泣き喚いていたチロさん正直うるさくてボブバイクから叩き落してやろうかと思っていたほどだったのですが……。こちらを射殺さんと言うほどに睨め付けているのを見ると、普通に回復してないっぽいですね。これから戦闘だと言い聞かせていたからこそ何とか正気を保っているだけであって、終わったら疲労でぶっ倒れるコースのようです。

 

うんうん。良いですねソレ。魔王戦終わったら当分何もしなくていいですし、一緒に死ぬほどお昼寝しましょう。

 

とまぁそんなことを言っていれば、無事に埋め込みが完了する宝玉たち。樹・火・水・雷、それぞれを属性を表す光を灯しながらその力が門に行き渡って行き……。ガコンという大きな音と共に、ゆっくりとそれが開いて行きます。

 

 

「さ、急ぎますよチロさん。この瞬間に魔王が生成されたはずなので、いまめっちゃ混乱してると思います。ダッシュダッシュ。……あ、私の足の方が遅いので、抱えて行ってください。」

 

「子供……、子供だったわね。うん。仕方ないわね……。」

 

 

一瞬何かに突っ込もうとした彼女でしたが、何か達観したような目になった後。諦めて私を抱え走り出してくれます。少し言いたいことはありますが、まぁ気にしないで上げましょう。

 

彼女に体を預けながら、徐々に灯っていく松明の廊下を走り抜けていきます。

 

 

「んで? 魔王ってどんな奴なのよ。」

 

「魔物の王として邪神に生み出される存在です。ただ今この時点では製造すらされていなかった存在ですので……。」

 

 

今魔王も邪神もめっちゃ焦ってると思います。

 

なにせ魔王からすれば『え、なんか急に生まれちゃった。え、命令って何かあるの? でも我何も聞いてないんだけど。おろおろ、何したらいいの? 解らん。』って感じですし、邪神からすれば『え、我が考えてた作戦なんか既に進行してるんだけど!? まだ企画段階だったのに!? 魔王何で生まれてるの!?』って感じです。

 

無理矢理フラグを立てて生み出しましたからね。お互いかなりビビってるはずです。

 

してそんな魔王さんですが……。第一形態はテイマータイプ。第二形態は物理魔法併用タイプになっています。前者は四天王のコピーみたいなのをドカドカ生み出してくるのでヒーラーを適宜排除しながら削り取る相手、後者は単純にクソ強い存在なのでデバフ掛けるかバフ載せて殴り勝ちを狙う、って感じです。

 

 

「ま、初手はチロさんに消し飛ばしてもらうので、第二形態がメインの勝負に成るでしょうね。」

 

「……たしか『獄炎』を使うのよね。りょーかい。さっきみたいな失態は起こさないわ。」

 

「あ、もしかして抱えたまま戦闘する気でした? ん~、まぁいいでしょう。ではチロさんの操作技術を信頼します。」

 

 

ミスったら私、普通に溶けて死ぬのですが……。まぁいいでしょう。

 

こちらも“備え”がありますし、人間一回ぐらい死んでも300回ぐらいは生き返れるものです。ゲームシステムが生きているのならば、更に桁数が増えますからね。放置し過ぎるとトラウマになっちゃうでしょうし、彼女のやる気や信頼を維持するためには残機の一つや二つ、安いものです。

 

あ、残機は普通に言葉の綾なので、『工程』をミスれば生き返られずに死にます。注意していきましょう。

 

 

「と、あの先を抜ければ魔王の玉座です。たぶん何か言って来るでしょうが、聞く価値はありません。」

 

「初手必殺ね。そういうの単純で好きよッ!」

 

 

ですよね、チロさんどっちかというと暴力の人ですし。

 

そんな感想を飲み込み頷くことで答えていると、ようやく到着する魔王の玉座。

 

私達が辿り着いた瞬間、即座に部屋の中の松明が灯り、魔王の姿が映し出されますが……。

 

 

「え、え? な、なんで我ここにいるの? いやまず我って誰? 何? なんで我生まれたの? え、いや、どうしよ。マジで何も解らん。とにかくこの邪神様ってのに連絡お送りした方がいいのか……? いやそもそも連絡ってどうやって取るんだ? わ、解らん……。」

 

「……。」

 

「……。」

 

 

あは、めーっちゃ困惑してる。

 

え、どうしたんですかチロさん? 『あの可哀想なのを本当に攻撃するの』ですかって? そりゃしますよ。だって放置してれば邪神と連絡とって人類に侵攻かけてくるんですよ? コイツのせいで各地の魔物が大量発生し始めますし、みんな困っちゃいます。

 

……まぁ私がかなり早めに生成してしまったので、原作よりも早くそれが起きた場合。責任は私9割ぐらいですが、ここで消せば何の問題もありません。

 

さ、チロさん。やっちゃってください。今困惑しすぎて、私達のこと全く気が付いてないですし!

 

 

「……乗り気にはなれないけど、ヤレる時にヤッておくべきね。っし!」

 

 

息を吐き、軽く目をつぶる彼女。

 

それがキーとなり、彼女の体内に宿る魔力が脈動していきます。

 

抱きかかえられ密着しているからこそ分かるその動き。全身の魔力が目まぐるしいほどに駆け巡り、徐々にその利き手に集まっていきます。まだ詠唱はしていませんが……。さっき暴発させたときの動きと同様。『獄炎』の使用前の動きです。

 

死霊術師、という紛いなりにも魔力を扱う職になったからこそ、理解できる彼女の“上手さ”。元々その細やかな操作から技量の高い人だとは思っていましたが……。よりそれが強く理解できます。

 

 

(原作でも一人、才能だけで全てを圧倒する化け物みたいな魔法使いがいましたが、チロさんはその逆。物事をルーティン化させて繰り返し続けることで、基礎の技量をただひたすらに伸ばし続けるタイプの人。確かに才こそありますが、原作の彼女と比べれば下の下。けれど繰り返し努力し使い続ければ……。)

 

 

それは天才が巻き起こす事象と、一切変わりありません。

 

 

 

「『獄炎』」

 

 

 

彼女がそう唱えた瞬間、周囲に巻き起こされるはずの炎は一切起きず……。そのすべてが、彼女の手中に注ぎ込まれます。地獄の業火をまき散らすのではなく、その全てを手の中に押し込むという所業。ゲームではできなかった挙動を、たった1度の失敗から成功して見せる彼女。

 

額から流れる汗こそ見えますが、それすなわち『熱気を完全に抑え込んでいる』ことに他なりません。先程の事故では私が溶かされそうになりましたが、今度は周囲への影響のみならず熱の操作まで完成させています。

 

ふふ、ほーんといい人と知り合えましたよねぇ。

 

 

「……で、出来、た。」

 

「ッ! 何者だ貴様ら!」

 

 

彼女が生み出したのは、業火をかき集め圧縮し生成された小さな太陽のようなもの。

 

熱量は彼女の操作技術によって一切周囲に漏れ出ていませんが、その光量はかなりのものです。流石の魔王もこちらを発見し、声を上げますが……。既に手遅れ。まるで手のひらに乗った花弁を吐息で押し出すように、チロさんの手からゆっくりとソレが射出されます。

 

 

「魔王だっけ? アンタには一切恨みどころか哀れみの気持ちしかないけど……、死んでもらうわ。」

 

 

 

 

「ぬ、ぬぉぉぉおおおおお!?!?!?!?!?」

 

 

 

 

 





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