お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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56:よーいスタート

 

 

 

「……という形になります。」

 

「なるほど、ねぇ。」

 

 

というわけでお抹茶を頂きながら、お婆ちゃんの説明をお聞きしましたが……、また面倒なことになってますよねぇ。私的にはこういうの全てお昼寝の邪魔なので、文字通り全て平らにして帰りたいんですけどそうもいかないのが難しい所さんです。

 

あ、チロさん。お抹茶は砂糖を入れるものではないので、その苦みを楽しんでください。だからもの欲しそうな顔しない。

 

 

「砂糖……。」

 

「だからダメですって。」

 

「あ、あの。よろしければお茶菓子を更に「ほんと!? お願い!!!」」

 

 

……まぁこの人は置いておいて、本題をまとめ直しましょう。

 

なぜ私が前衛役として目を付けていた原作キャラ、小太郎君が死にやがっているのかについてですが、どうやら現在この忍者の里とこの地域を収める領主であるホクジョウ氏は関係が悪化していることが、原因のようです。

 

自身の知る原作にはおいてはこの両者は良好な関係、持ちつ持たれつな状態だったのですが……。

 

 

(ホクジョウ家が敵対している他家の忍者との情報戦に敗れたことで、関係が悪化。ホクジョウ家が他の忍者との契約を結び始め、次第にこの里はいらない子扱いに。)

 

 

お上としても、情報は大事。これまでの実績があったとしても、実力が伴わない諜報員など使い続けたくもないでしょう。この風魔の忍者の里の価値が落ち始め、代わりに他の忍者の里が調子を上げ始めたとなれば……。切り替えるのもそうおかしい話ではありません。

 

まぁそれにしても少々急、もしかするとこの風魔の里がホクジョウ家にとって不都合な情報を握っていたなどの理由があるかもしれませんが……。とにかく彼らは、この里を切り捨てに動いたようです。

 

 

(自家の情報を持つ忍者が、他の家に流れれば堪ったものではないですからね。早々に処理するのは正しい行いです。)

 

 

ということでその第一段階として、この里の未来ともいえる優秀な子供。小太郎君を誘拐して殺害。ついでに彼の救出に動いていたらしい彼のご両親、次期里長とされていたパパたちも罠にかけて生首にして送ってきたそうです。

 

これにより里もホクジョウ家との決別を決め、それまで行っていた業務を中断。この里に所属する忍者を呼び戻しながら防衛を固め、ホクジョウ家以外の勤め先を探していたそうなのですが……。

 

 

「まぁそんなときに私が来たら、そうなりますよね。」

 

「えぇ。ホクジョウ家の手の者、ミツモノの里の方々だと思っておりました。単に朧月を欲しがり南蛮からやって来られた方とは……。にしても『風魔』の名はこの国の外まで響いていたのですね。始祖の名声に喜べばいいのか、悲しめばいいのか。」

 

「……やっぱ迷惑でした?」

 

「本音を言わせて頂ければ、ものすごく。」

 

 

ま、ですよね。

 

カーチェちゃんにも人の心は搭載されていますので、その辺りのことは普通に理解できます。しかし搭載されていたとしても、それを使うかどうかは私が決めるもの。

 

確かに里に付く前、この里やその背後関係の情報を集めていればもう少し穏便にことを済ませることが出来たでしょうが、それをすればするほど私のお昼寝時間が削られるのです。全く見ず知らずの人命や苦労と、私のお昼寝。比べるならば後者以外にあり得ないでしょう。……あ、今回は誰も殺してませんからね? ミネウチです。

 

 

「しかしほぼすべての者たちが行動不能、以前通り動けるようになるには長い時が必要になるでしょう。『里長にしろ』と仰っておりましたし。その意志があるのでしたら、ぜひご配慮いただければと考えております。」

 

「まぁお婆ちゃんとしてはそうなんでしょうねぇ。……こちらとしては『コレ』以外、もう必要ないのですが。」

 

「えぇ、ですから“お願い”申し上げている所存です。」

 

 

私が軽く『朧月』を叩いてみれば、柔らかい笑みと共にそんな言葉を返してきます。

 

まぁ全く目は笑っていませんし、後ろに控えてた人たちが急に痛みに耐える様な声を上げ始めたりと非常に連携が取れているみたいですが……。私に情へと訴えかけるのは逆効果ですよ? うるさかったり役に立たないのは総じてボブにするので。

 

 

「……どうやらそのようで。流石『風魔』様と言いましょうか、心の切り替えを体得されているのですね。」

 

「言っておきますが、こういう時間のかかるやりとりは嫌いです。本題を。」

 

「あらら、これは失礼を。」

 

 

ということでお婆ちゃんの要求を聞いてみれば……、粗方こちらの想定通りといった感じでした。

 

既に私達に制圧されている以上、この里としては我々に従うことに対して異を唱える者はいないそうです。私の実力もそうですが、一瞬だけ見せたチロさんの獄炎も効いているようで、そこに問題はないとのこと。しかし彼らとしてはホクジョウ家絡みの問題が差し迫っている真っ最中。

 

これをどうにかする手伝いをしなければ、従うなど夢のまた夢、というところ。

 

 

「さらに付け加えるならば、里長として我らを食べさせるだけの新たな食い扶持もご用意いただきたいものですが……。」

 

「あ、そっちはもう用意があるので大丈夫です。あとホクジョウ家の対処ですが……。えっと、アレをこうしてあぁすれば。うん、今日中に何とかなりますね。ではちょっとご足労頂きましょうか。」

 

 

そう言いながら手を叩いた瞬間、この場にいるすべての存在の背後に、ボブが出現します。

 

しかも、彼らは単なるボブではありません。この私がこれまで作ってきた試作品たち、ボブバイクやマッスルボブ、アシュラボブにボブチャン。そのすべての技術を結集してより強化されたボブ、『ボブⅡ』です。動力パイプを外部に露出させることで冷却速度を高め、より出力を向上させたのが彼らです。

 

幾らこの場にいる生者たちが忍者として訓練されていたとしても、彼らの首トンを受け止められるわけが……。

 

 

「ッ!」

 

「……カーチェ、今私お菓子食べてるんだけど。」

 

「チロさんに防がれるのは解ってましたが、お婆ちゃんにも止められるとは。まぁ別に構いません。一応注意しておきますが……、気を強く持ってくださいね?」

 

「あぁ虚空移動ね。ちょっと待って、出されたお菓子全部口に詰めるから。」

 

「な、何を……、ガハっ!?」

 

 

困惑していたお婆ちゃんを余所に、もう一度パンと手を叩いた瞬間。この場にいるすべての存在が、虚空へと落ちます。

 

即座に視界が黒へと染まり、先ほどまでこの場に集まっていた忍者が奈落へと落ち始めますが……。彼らの背後にはボブⅡがいます。彼らのおかげで、ちゃーんと目的地まで運んでくれるってわけですね。まぁお婆ちゃんは初めての虚空で普通にショック死しそうですが、死ぬ前に彼女担当のボブⅡが気絶させたので、何とかなるでしょう。

 

んで、肝心のチロさんは……。

 

 

「もっもっもっ………、あによ。」

 

「なんかもう動じなくなりましたね。」

 

「くひぃにあまいのはるからわはしはむてき。」

 

「口の中に甘いものがある限り私は無敵? まぁそれならそれでいいんですけど。」

 

 

はい、ということで虚空移動です。

 

面倒ごとを任せられた時。後回しにせずすぐに終わらせて、余った時間をお昼寝に使うのが正しい選択というのは周知の事実。確かにホクジョウ家の対処は面倒ですが、ここで遺恨を残し過ぎると後々面倒なことに成るでしょう。ということで早速虚空を経由して、ホクジョウ家の拠点に移動しよーってお話です。

 

というわけでポンポンと移動しまして、到着しましたのはホクジョウ家所有のお城。彼らの本拠地にして不落の名城として謳われた、『オダワーラ城』ですねぇ。……なんで製作陣は漢字を使わなかったのでしょう?

 

 

「まぁいいや。んじゃボブⅡ。全員叩き起こしたら整列して次の指示を待ってください。」

 

「ギャッッ」

 

 

というわけで気絶していた忍者さんたちを復活させるボブ達を眺めながら、私は私で用意を進めていきます。

 

まずこの『オダワーラ城』ですが、原作でも戦闘用マップとして出入りすることが可能でした。所謂攻城戦をゲームの中で楽しめる、ってやつですね。そのため私も何度か攻め込んだことがありますし、何処から攻めればこの城を落せるか、というのも把握しております。

 

しかし堅牢と名高いのがこのお城。いくらカーチェちゃんと言っても、たった一人で落とすには少々難しい難易度なため……。

 

 

「分身して攻略します、『多重影分身の術』。」

 

 

印を指で結び、私を増殖。いくらレベリングを繰り返している私でもMPは有限。出せる数には限界がありますが……、それを王墓産の魔力回復薬をがぶ飲みすることで、更に増殖。モノの数秒で千人のカーチェちゃんがこの世に生み出されました。

 

 

「じゃ、作業進めていきまーす。手筈通りにー。」

 

「あいあい」「りょー」「ねむい」「Wasshoi!」

 

 

はい、ではカーチェちゃんによる落城RTA。初めて行きましょうか。

 

よーいスタート。

 

 





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