お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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66:ボブカーの雄姿

 

はい、ということで無事に最後の段階。『邪冥黒冠』に転職することが出来ました。

 

今後も寄り道として他の職業に就いたり、カンストしたがゆえにまたレベル1からやり直したりとすることはあるでしょうが、おそらくほぼ死ぬまでこの職業で過ごすことに成るでしょう。何せこの職業、主人公専用職である『天帝』と対を為す職業ですからね。

 

設定集によると『過去の世界を絶望の世へと塗り替え、天帝と3日3晩戦い続けたのちに敗北した存在』が就いていたらしい職業。天帝に劣ることは確かですが、その能力値はほぼ同等。カルマ値というマスクデータによって転職の可否が決まる職業ではあるのですが、理論上誰でも転職可能な奴です。

 

 

「ちなみにですが、かなり大昔のことなので『邪冥黒冠』どころか『天帝』の名前すらこの時代には残っていませんでした。王女にも聞きましたが、国の書庫ひっくり返しても見つからなかったため自害の許可を求められたくらいですし。」

 

 

本来ならば『邪冥黒冠』はともかく、『天帝』に関しては10年後に発見できるのでこの時点でも見つかっていてもおかしくないのですが……。まぁその情報が残っていようが、残っていまいが私の行動は変わりません。『邪冥黒冠』への悪評が残っていれば、外部での行動が難しくなるかもなぁって感じで調べさせた程度ですし。

 

あとあまりにも文献が見つからないので、王女が私への申し訳なさで発狂しかけていたので止めたっていうのもあります。資料見つからない程度で狂われたら困りますので……。

 

 

「あの王女は相変わらずね。」

 

「……王女にそんなことさせてるこの童何者じゃ?」

 

「人の子、あんまりそう言うのは良くないと思うぞ。」

 

 

止めてるんですから非難しないでください。

 

ともかく、邪悪の塊みたいな職業ですが。転職したことによるデメリットと言うのはほぼありません。しいて言えば今の服装、ヴィランメイクにどこからどう見ても邪悪な存在という真っ黒な装束がアレなことくらいです。別に戦闘に使うのは良いんですが、この姿で人前に出ると明らかに『悪の存在! 死なないように頭を垂れなきゃ!』ってやつなんですよね。黒いオーラエフェクトついてますし。

 

 

「サービスだ。頑張って作ったぞ人の子。」

 

 

……まぁゲームでも常時オーラエフェクトは出ていましたし、彼を責めるのはお門違いでしょう。

 

まぁプリセット化しているみたいですし、着替えようと思えばいつでも普段着と切り替えることが出来る様なのですが、この状態から変えようとすると、何故かテーちゃんが凄く悲しそうな視線を向けてきます。仕方ないので、出来る限りこのままでいくことにします。

 

なにせ彼は、カルマ値が吹き飛んでいる私に対しても慈愛の視線を向けてくれる得難い天使です。転職を司る彼と仲よくしておくことに越したことはありませんし、この空間は味方側の存在しか入ることが出来ない安地のようなもの。関係を壊し、入出を拒否される方が不利益を被ってしまいます。

 

……実際真っ黒で明らかに悪の存在というデザインさえ除けば、かなり肌触りがいい布ですしね。このままパジャマにもできそうです。

 

 

「うむ。初めて故な、気合を入れて作ったのだ。大切に着てくれると嬉しい。……あ、流石にご両親や友人と会う前は着替えてよいからな?」

 

「見た目が見た目ですからね。どうも。……してモミジちゃん。バグボブの修正は終わりましたか?」

 

「あ、のじゃ。何とか抑え込むことが出来たぞ。しかしこの存在、人の死体ということを除けば凄い存在じゃな。蝕虫ながら、まるで教本のような存在であった。もう少し研鑽すれば、更なる高みに登れるかもしれん。」

 

 

あら、そうなんですか? スキル的に言うと、デバッグ(初級)から(中級)に上がるとかそう言う感じでしょうか? もしそうであればもうちょっと頑張ってみます? 実は既にバグボブは2000体くらい『アイテム欄』に溜まってまして、早々に処理してもらいたいんですよ。

 

ちょっとボブの改造してる時にミスってバグっちゃったのが溜まってまして……。これアイテム欄から一気に出すと、クラッシュしちゃいそうなのでさっさと何とかしたかったんですよ。あ、ちなみに『HPが0』の状態で止まっている『使えるバグボブ』ではなく、当たり判定はあるのにテクスチャが張られてなかったり、当たり判定が2km先に存在していたり、アンデッドなのにサンドイッチの判定になってるボブです。

 

 

「活用は出来そうなんですけど、量が量ですから。」

 

「……の、のうチロ殿。な、縄持ってないかの? ちょっとおさらばしたいのじゃが。」

 

「諦めなさい、コイツの前では死も状態のひとつよ。多分バグで復活させて貴女の仕事が増えるわ。」

 

「狐の人の子、未来の天使である我が前でそんな悲しいことは言わないでくれ。あと人の子? やめよう? ね? 我話きいてあげるから……。」

 

 

そうです? 別にアイテム欄から出さない限り問題ない存在ですので、スキルアップにつながるのなら時間のある時に処理してもらおうかと思っただけなのですが……。本人が嫌がるなら仕方ありません。

 

 

「まぁともかく、モミジちゃんの仕事が終わったのなら何よりです。良い機会ですし……、新しいスキルの試射会と行きましょうか。場所を移すので、テーちゃんはここまでとなりますが……。」

 

「うむ? あぁいや気にしないでいいとも人の子よ。貴殿の輝かしい未来をここから祈らせてもらうぞ。」

 

「どうも。ではチロさんモミジちゃん。行きますよ。」

 

 

というわけでこの空間から退出せず、ボブカーを乗り込みシートベルトを締めます。

 

ついでにクラクション替わりのボブを顔を殴れば、『ブイブイ!』と小気味良い死者の声が。人の死体で作っているのでちょっと匂いとか感触とかが気持ち悪いですが、とてもクールなカーです。燃料いらずでバグ不使用、時速300km以上出ますからね。

 

 

「またこいつに乗るってことは虚空移動ね……。モミジ、さっき使ってた札頂戴。気合で耐えるのもしんどいから。」

 

「儂としては気合で耐えれてる方がおかしいというか、人に見えないのじゃが……。」

 

「……カーチェに振り回されれば出来るようになるわよ? 出来なかったら死ぬ、とも言うんだけど。」

 

「と、とっても深い言葉じゃの。」

 

「アンタもそうなるのよ。」

 

「い、いやじゃぁ……。」

 

 

泣き言を言いながらも見よう見まねでシートベルトを締め、ついでに精神防御の札を装備したことを確認した後。テーちゃんに手を振りながら発進させます。普段は天使像の能力を使用し、元居た場所に転移するのですが……。今回はこの転職の間から、虚空移動を使用します。

 

ちょっとしたショートカットを使用するので、時間にして5分ぐらいでしょうか? 正規のルートを使用すると、ゲームプレイの時点で数時間必要になりますからね。こちらの時間に合わせると数日以上。大幅な時短です。

 

 

「うわすご。全く辛くないじゃない、この札! ……もっと前から欲しかったわ、マジで。」

 

「良いものじゃろう? なんでこれ貼ってない童がノーダメージなのかは酷く疑問ではあるのじゃが、我ら巫女の技術と経験が合わさった傑作なのじゃ!」

 

「へー。ちょっと私も使ってみてもいいですか?」

 

「無論じゃ! ほれ!」

 

 

そう言いながら、後部座席から渡された札を自分にも貼ってみますが……。特に何か変化が起きることはありません。よくよく観察してみると、魔法的処理を施した札に、自身の知らない魔法式が書かれているようですが……。これ悪用出来ませんかね? ボブに組み込めばより良い存在が生み出せるかもしれません。

 

 

「ねぇモミジちゃん。」

 

「教えんぞ? 仏さまをいじくる程、落ちたつもりはないのじゃ。」

 

「あら残念です。……っと、そろそろですね。ちょっと振動が来るので、皆さん掴まってください。」

 

 

隣に座るチロさん、後ろに座るモミジちゃんが私の言葉に反応し、ちょっと躊躇しながらもボブカーにしっかりと掴まった瞬間。全力でアクセルを踏み抜きます。

 

えぇ、これは虚空移動。現在いる虚空から、元居た世界に戻ることに速度は必要ありません。

 

ではなぜ速度を出すかというと……。

 

 

「ほら、アレ見えます? 実はあそこ、邪神の間なんですよ。」

 

「な!?」

 

「ちょ、カーチェッ!?」

 

 

はい。というわけで今回は『邪冥黒冠』のスキル試し撃ちとして、邪神をたおしていきまーす!

 

でもタダぶち殺すぐらいじゃ、私のお昼寝を奪った罪は償えません。魔王のように経験値おじさんに出来ないことは業腹ですが……。最大限の痛みを味わいながら、死んでもらうことにしました。

 

というわけでボブカーに備え付けられたボタンをぽちっと。

 

その瞬間、車体前方の機構が動き出し、無限増殖させた朧月が何重にも重なった特殊ギアが出現します。そう。内側へと吸い込むように全てを切り刻む『ボブギア朧月チェーンソー』です。どうせ邪神は頑丈なのです。虚空からその足元へ飛び出し体当たりしても、死ぬことはないでしょう。だったら最大限痛みと恐怖を与えるだけ。

 

無論、今の私が本気を出せば簡単に倒せる相手ですが……。

 

やるならこっちの方が楽だし、楽しいでしょう?

 

 

「というわけで、地面から轢き飛ばします! ちぇすとぉぉぉおおおおお!!!!!」

 

「うわコレ馬の何倍も早いわね。見た目さえどうにかなれば売れるわ。」

 

「なに現実逃避しとるんじゃチロ殿!? ほんぎゃぁぁぁあああああ!!!!!」

 

 

突貫!!!!!

 

 

 

 





〇ボブカー(魔改造)

人体の理を理解してしまったカーチェによって、より強化されたボブによる車。形態としては小型で四人乗りのオープンカー、丸っこいフレームの車体なのだが、そのすべてが人体のパーツによって構成されているため恐怖でしかない。最高速は時速300kmで、加速性能も抜群。ハンドリング能力や悪路走行能力も高いため、本当に見た目以外は傑作機。自動運転機能搭載。

作ってる途中で面白くなっちゃったカーチェによって魔改造を施されており、車体前方には全てを切り刻む朧月で構成された『ボブギア朧月チェーンソー』が2対設置されており、前方の存在を切り刻みながら内側へと引き込み、その奥に設置されたボブが喰らい尽くす構造になっている。そのほかにも『ボブミサイル』、『ボブマシンガン』、『ボブウィング』なども搭載されており、特殊ガスを燃焼させることで速度を上げる『ボブジェットエンジン』を展開することで空中戦も可能。

現在2台がロールアウト済み。ボブバイク同様ボブによるライン生産が可能なため、やろうと思えば日に1台生産可能。



〇評価
・カーチェ(9/10)
性能としては申し分ありません。辺境伯相手には有効打となり得ませんが、目くらましにも使えるので十分でしょう。ただ性能を維持するため、『ボブ型馬車』や『ボブチャン』のように匂いや腐肉の感触を削除できなかったのが欠点です。それさえ何とかなれば、本当に快適な車だったのですが……。

・チロ(4/10)
ほんと見た目がね……。性能は本当にいいと思うわ。でもハンドルにアンデッドの顔が埋め込まれていて、車体も座るところも全部アンデッドの肉で構成されてるのよ? こんなの売れるわけないじゃない。確かに性能を求める奴もいるんだろうけど、見た目に限度があるのよ本当。あと流石に人道と倫理がヤバいわ。

・モミジ(0/10)
糞じゃ。仏様を何だと思っとる? 南無南無なのじゃ……。と思ってたらアンデッドが『ボブ、シアワセ、アルジ、ワルクナイ』とかこっちに話しかけてきてクソビビったのじゃ。怖いのじゃ……。

・階段から転がり落ちた連邦の技術士官T・Rさん(0/10)
倫理など様々なものを無視すれば、10点満点ではあっただろう。高い生産性に、素材入手のしやすさ。攻撃手段の多さに戦場を選ばない多機能性。継続戦闘能力も高く、兵器としての完成度は高いと思われる。だが材料が材料だ、パイロットの精神的負担などを考えると、いくら戦時とはいえ採用など出来るはずがない。この設計者は頭がおかしくなったのか?







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