ラジオデーモンinキヴォトス   作:オムライス好き

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6話

 side美船マオ

 

「くそ!! ふざけやがって!!!」

 

 俺は今、ゲヘナの暗い路地裏で絶望の淵にいる。

 

 何がいけなかったのか。一つずつ思い返していこうと思う。

 

 俺の生まれは捨て子だった。ゲヘナの孤児院に捨てられていたらしい。

 

 しかし、その孤児院は決して裕福とは言えなかった。一日に出てくるご飯の量も少なかったし、建物のあちこちにガタが来ていた。

 

 でも、そんな生活でも俺は幸せだった。

 

 それは、俺に二つ下の妹みたいな存在がいたからだ。

 

 彼女の名前はリコ。俺にとって彼女はまさしく光のような存在だった。銀色の髪は俺の血のような赤い髪とは違い、天使のように綺麗だった。

 

 孤児院にいる時は、いつも一緒にいた。少しだけ貰えるお菓子を二人で半分こしたり、冬の寒い日には二人で同じ布団に入り暖をとった。

 

 彼女と二人なら、この暮らしが一生続いてもいいとすら思っていた。

 

 しかし、無情にもその孤児院は経営難で突然潰れた。

 

 当時の俺は、リコだけは俺が守らないと思った。

 

 生きるためにはお金が必要だ。

 

 だから、彼女のためならなんだってやった。強盗に詐欺、傭兵まがいなことにまで手を出した。幸い、俺には才能があった。同年代とは比べものにならない程に俺は強くなった。

 

 戦いはそこまで好きじゃなかったが、帰ればリコの笑顔が待っていると思うと不思議と嫌にはならなかった。

 

 俺は、学校には通わなかったがリコには良い教育を受けさしてやりたいと思い、必死に学費を貯めた。

 

 リコは、私だけ学校に行くなんてとか、難色を示したが土下座する勢いで説得して高校に通ってもらった。

 

 リコは高校に通い、俺は傭兵活動で学費を稼ぐ暮らしが続いた。

 

 そんな暮らしが、またしても崩れ去った。

 

 リコが拐われてしまったのだ。犯人は俺に仕事を取られた犯罪グループの奴らだった。完全に逆恨みで襲ってきたが返り討ちにして、俺に敵わないと見ると俺のことを調べてリコのことを攫ったのだ。

 

 相手は身代金を要求してきた。払わなければ、人質の身は保証しないと言ってきた。

 

 俺は家中にあるお金をかき集め、なんとか全額集めることができた。指定された口座に金を振り込み、電話で振り込んだことを伝えた。

 

 でも、帰ってきた返事は俺を馬鹿にするものだった。

 

『金を払えば、人質を返すって本当に信じてたのか? 返すわけないだろ!! バーーーカ!! ギャハハハハハハ!!』

 

 

 そう言われたあと電話を切られた。私の目の前は真っ赤になった。

 

 心の中にあったのは、悔しさと怒りだけだった。

 

「くそ! クソ!! クソ!!!」

 

 なんの意味がないと分かりながらも、地面に拳を何度も打ち付ける。

 

 生まれてきてから数えるほどしか流さなかった、涙が溢れてくる。足に力が入らず地面に無様に蹲ったような体勢を取ってしまう。

 

 そんな時、

 

「ごきげんよう! お嬢さん!! 何かお困りの様子、私が手助けしましょうか?」

 

 路地裏に古いラジオのようなノイズ混じりの声が響き渡る。

 

「助けてくれ! 俺の妹が!!!」

 

 もう誰でも良かった、目の前にいるやつが誰であろうと関係なかった。少しの可能性があるのなら縋りたかった。でも、目の前のやつが普通のやつではないことは本能的にわかった。

 

 藁にもすがる思いで、目の前の人物に助けを求める。

 

「では、取り引きを」

 

「取り引き? お礼になんだってする!! だから!!」

 

「なんでもですか?」

 

「ああ! 俺はどうなってもいいだから・・・・妹を助けてくれ。大切なんだ」

 

 消え入りそうな声で、目の前のやつに土下座をする。

 

「では、契約を。貴方の妹を助ける代わりに、あなたの魂をいただきます」

 

 そこで、俺は顔を上げて目の前にいる奴の姿を初めて視認する。

 

 鹿のような角に耳、俺と同じ血のように赤い髪に赤い瞳、耳まで裂けた口が目の前の存在を異常な存在だと知らしめている。物語に出てくるような悪魔がそこにいた。

 

 でも、良かった。本当に目の前にいるにが悪魔なら、魔法や何やらで妹を救ってくれるはずだ。

 

 そして、悪魔が差し出した手を私は掴んだ。

 

 その瞬間、路地裏に緑色の光が溢れ出し、壁中に何か分からない模様が浮かび上がる。

 

 少しすれば、光が収まった。

 

「これで、取り引き完了です」

 

 目の前の悪魔は、大きな口を歪ませてニタニタと笑っている。

 

 

 ◇

 

 

 リコを攫った犯罪グループのアジト。

 

「アイツの間抜けな声、最高でしたね。ボス!!」

 

「調子に乗ってるから、あんなことになるんだ」

 

 グループのボスと部下が雑談をしている。

 

「そういえば、ボス? アイツの妹はどうしたんすか?」

 

「ああ、アイツか。それなら、裏の奴らに売っちまったよ。元々、そうする予定だったしな」

 

「あはは、ボスってばひどーい」

 

 突如、アジト内にノイズまじりの声が響き渡る。

 

「ごきげんよう! お嬢さん方。突然の来訪失礼します。この度は、貴方方にお聞きしたい事がありまして参りました!」

 

 その場にいた犯罪グループは、突然の出来事に全員の思考が止まる。

 

「ハッハ! どうしたのですか? そのような間抜けな顔を晒して」

 

「全員、撃て!!!」

 

 誰よりも早く、状況を判断し目の前の存在を適当認識したリーダーが、部下たちに指示を出す。

 

 しかし、部下たちが銃を構えるより前にアラスターが操った影の触手が部下たちの銃を弾き飛ばす。

 

 そこからは、一方的だった。銃という抵抗するから力を奪われた彼女たちは一瞬の内に影の触手に首を閉められるように持ち上げられ、拘束される。

 

 唯一残された、リーダの少女はアラスターの前に転がされている。

 

「では、少し前にあなた方が攫った少女の居所を教えていただけますか?」

 

 アラスターは、サディスティックに笑っている。

 

「はっ! 誰がお前なんかに答えるかよ!!」

 

「そうですか。仕方がありません」

 

 そう言ったアラスターは影の触手を操り、部下のお腹に触手をめり込ませる。

 

「ごふっ! オエッ!!」

 

「お! おい!! やめろよ!!」

 

「では、質問に答えていただきますか?」

 

「それは・・・・・」

 

 再び、部下の少女のお腹に触手がめり込む。

 

「や、やめ! ごふっ!!」

 

「わ、わかった! 言う、言うから!! 〇〇倉庫だ。そこに居る!!」

 

「もし、嘘だったら

 

 アラスターの体や頭の角が大きくなり、瞳の中にメーターが現れる。化け物のような姿にその場にいる全員が恐怖した。

 

「ヒッ!! 本当だ!! 信じてくれ!!」

 

 アラスターはその言葉を聞くと元の姿に戻る。

 

「ハッハ! 話せて良かったです!! お喋り常に楽しい! それでは、皆さんご機嫌よう!」

 

 そう言って、アラスターは影になって消えていった。

 

 これは余談だが、この後、騒ぎを聞きつけた風紀委員会によって犯罪グループは全員捕まった。

 

 突入した風紀委員会が、その惨状に疑問を抱き犯罪グループに質問してみたが、皆口を揃えて悪魔がやったと証言をして風紀委員会を困らせた。

 

 

 ◇

side美舟マオ

 

 

 今、リコが監禁されているという場所に居る。

 

「リコ!!」

 

 手足を縛られているリコを発見した。すぐに駆け寄り手足を縛っているロープを切り救出する。

 

「お姉ちゃん?」

 

「ああ、そうだ!! 助けにきた!!」

 

 そんな事をしている、ドタドタと複数人がこっちに向かってくる音が聞こえる。

 

 あの悪魔から、ある程度事情は聞いている。ここにいる連中はリコを売ろうとした奴らだ。

 

 ぶっ殺してやる。

 

 

 数分後

 

 

 ここにいる連中はあらかた片付けた。本当は殺してやりたかったが、リコの前だからやめた。

 

「素晴らしい!」

 

 その様子を見ていた悪魔は、私に向かって拍手をしている。

 

 ああ、本当にリコが無事で良かった。

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