深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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快適な山暮らし

 俺たちは焼けた廃集落にしばらく滞在したのち、出発した

 タロ、モロ、スーリャの三人を加えた俺たちは相変わらず山の中を歩いていた。

 タロ達を加えてから、山の中でのサバイバル生活だというのに、俺たちの生活の質は向上していた。

 特に、衣食住の衣と食だ。

 理由はタロとモロだ。

 山に近い集落で育ったせいか二人のサバイバル適正が非常に高く、俺とエドはかなり助けられていた。

 タロは今まで手が出せなかったキノコや見逃していた山菜を見つけたり、見かけた小動物を投石で仕留めたり、今まで捨てていた臓物までも調理したりと食料調達で非常に活躍した。

 そしてモロ。こいつはほんとに何でもできる。

 食料や荷物を入れる篭を作ったり、狩猟した動物の皮をなめして、壊れた靴や服とか道具の修繕をしたり、新しく作ったりと大活躍だった。

 

「二人とも助かるよ。僕はあまりできることがないから申し訳ないな。手伝えることがあったら遠慮なくいってね」

「大丈夫だって」

「き、気にしないでください。エドには、助けられてますから」

 

 なぜかエドはタロとモロの二人になつかれている。

 ……イケメンだからだろうか。

 いや、普通にエドがいいやつだからだろう。多分。

 

 

「ほら、お湯で来たぞ」

 

 俺は魔術で作ったお湯を、仕留めた鳥の解体中のモロに差し出す。

 

「あ、ありがとうございます。ヴェロさんの魔術って、すごく便利そうですよね」

「まあそうだな。俺もそう思う」

 

 自画自賛になってしまうが、実際俺の魔術はかなり便利だ。

 水の生成もできるし、燃料がなくてもお湯や氷が作れる。

 モロは受け取ったお湯で狩猟した動物の内臓を洗っていく。

 

「内臓か……」

「ヴェ、ヴェロさんは内臓は嫌いですか?」

「いや、食えないことは無いんだが、味も触感も独特だからな。まだちょっとなれない」

 

 街にいたときも、内臓の塩漬けや酢漬けは時々見かけたもののそこまで量もなかったし、あまり食べる機会はなかった。それに、今の俺達には塩も酢もないのでそのまま焼いたりゆでたりして食べているのだが、味も触感も結構違うよう。

 

「じ、実は、スーリャは内臓が少し苦手なんです。なかなか噛み切れなくて、頑張って飲み込もうとするとはいちゃって……」

「そうなのか? まあまだ子供だしな。顎の力が弱いのかもしれないな。お前とタロは普通に食ってるけど」

「た、タロもぼくも、昔から当たり前のように食べてましたから」

「ふーん。山が近いからそういう機会も多かったのかな」

 

 もともと猟師の小屋から発展した隠れ集落だし、狩猟した動物を食べる機会も多かったのかもしれない。

 モロと話しながら、お湯で内臓を洗っていった。

 

 

 道中、俺とエドで、タロとモロに魔術を教えたりもした。

 

「なあエド、どうやったらマナを感じ取れるようになんだよ。全然わかんねぇ」

「そうだなぁ、僕の感覚だと、感触のない水、みたいな感覚だね。なんとなく体の中にたまっていたり流れていたりするんだ」

「……意味がわからん」

「最初はそんなもんだろ。ほら、いま体にマナを流し込んでるんだが、感触分かるか?」

 

 タロの背中に触れて、マナを操作して流し込む。

 こうするとマナが感知しやすくなるらしいとエドが言っていた。

 本当かどうかは知らない。俺はやったことないからな。

 モロの方もエドにマナを流してもらっていた。

 

「僕はマナ操作が得意ではないから、うまくできているか自信はないんだけど、どうかな」

「あ、温かいような、そうでもないような……」

「なぁ、普通はどれくらいで使えるようになるんだ?」

「アルドメナスでは1、2年くらいらしいぞ」

「け、結構長いですね」

「僕は1年と半年くらいだったかな?」

「そんなにかよ。先は長そうだな」

 

 魔術は非常に便利なものではあるが、使える人間はそんなにいない。おそらく最初にマナ感知する段階が障害になっているのだと思っている。

 今のように外部からマナを流して刺激を与えたり、魔法を受けたりするとマナを感じ取る感覚が育ってくるらしい。

 時間がかかるうえに最初はほとんど何も感じ取れないため、魔術を使える人が少ない原因となっているようだ。

 魔術の習得は難航しているが、こればっかりは気長に待つしかないだろうな。

 

 

「お、こんなところに洞窟があるぞ。今日はここで休もうか」

「いいですね。中に動物とかの住処になってるとちょっと困りますけど」

「そんなに広くないけど、動物はいなそうだぞ」

 

 手ごろな洞窟を見つけた。

 あまり広くはないが雨風も防げるし多少は快適そうだ。

 今日はここで宿泊することにした。

 そうして明日に備えてみんなで休んでいるときだった。

 

「ヴェロ、ちょっと、いい?」

 

 もう寝るかと思っていると、スーリャが話しかけ来た。

 

「ん、なんだ?そっちから話しかけてくるなんて珍しいな」

 

 スーリャはこれまで、あまり自己主張もしないし、自分から話しかけてくることはこれまであまりなかった。

 ずいぶんおとなしい少女だと思っていたが、自分から話しかけてくるのは珍しい。

 

「ヴェロは、奇跡が使える、よね」

「ああ、使えるが?」

「わたしに奇跡のこと、教えてほしい」

 

 スーリャはそのようなことを言ってきた。

 すでに【ライトヒール】を使えるはずだが、新しく奇跡を覚えたいということだろうか。

 でも、突然こんなことを言ってくるとは。もしかしたらタロやモロのように役に立ちたいと思っているのかもしれない。

 

「もっとたくさん奇跡を覚えたいってことか?」

「うん」

「そうか。俺も聞きかじりのことしか知らないが、できる限りは手伝おうか」

 

 わざわざ拒む理由もないため、スーリャに奇跡の習得を指導することにした。

 

「街の教会では神様に祈りを捧げていると授かるって言われてるが、それだけが絶対の条件ってわけでもないんだ。俺が奇跡を習得したときは瞑想しててな」

「めいそう?」

「そう。心とか精神を落ち着かせて、世界を感じ取るんだ。心を開いていくというか、一体になる感じでな」

「一体……」

「難しく考える必要はない。心を落ち着かせて自分と向き合うんだ。そうしていると自分がどういう風に世界にあるのか、その輪郭がだんだんわかってくるはずだ。それから、自分と世界の境界を広げていく。世界のあるがままを受け入れるようにな」

「……なんとなく、わかるような」

「お、そうか?やっぱり奇跡が使えるだけはあるな」

 

 自分と世界の境界とか、この感覚はかなり独特だが、集中していると結構感じ取れるようになってくるものだ。

 感覚をつかむまでは俺も難しかった。今でもはっきり感じ取れるわけでもないしな。

 そんな感じでしばらくスーリャと過ごした。

 

「……スーリャは十分役に立ってる。だから、あんま思い悩まなくても大丈夫だ」

「……うん」

 

 最後に、余計なお世話かと思ったがそれだけ言って、この日は就寝した。

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