深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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辺境の村

 廃集落を出てから20日が過ぎ頃だった。

 

「ヴェロ、あそこに村が見えるよ」

「うん?……あれか。エドは目がいいな」

 

確かに、遠方の山のふもと当たりに開けた場所があり、確かに村のように見えた。

タロたちの集落を見つけたときもそうだが、まだ一日かかりそうなほど遠くだというのによく見つけるものだ。

 

「どうする?もう少し南へ進む?」

 

 確かに冬入りまではもう半月くらいは余裕がありそうだが……。

 

「いや、そろそろ滞在できる村を探そうと思ってたところだ。ちょうどいい。あの村に入ってみよう」

 

 こうして発見した村に行くことになった。

 

■

 

 山のふもとに下りると、すぐ近くに村が広がっていた。

 

「ヴェロ、僕はしばらく身を隠していた方がいいんじゃないかな」

「は?なんでだよ」

「ほら、僕はこの髪があるから」

「あー……」

 

 白髪交じりの髪はファマル人のハーフの特徴だ。

 そして、ファマル人は今絶賛戦争中のアルドメナスに多い人種。

 それのハーフだと、あまりいいい印象を持たれない可能性もあるだろう。

 だからといってエドだけ置いて行くのもな。

 

「問題ない。普通にしてりゃいいさ」

「……わかったよ」

 

 勢いに任せて押し切った。

 そのまま俺たちは村の中に進んでいく。

 村は普通の農村といった感じだ。

 だだっ広い畑が広がっており、農作業をしている人の姿が見受けられた。

 目から様子を窺うように視線を向けてきており、少し落ち着かない。

 農業のほかに牧畜も行っているようで、多くはないが家畜の姿もあった。

 畑の周囲には獣除けの柵や害獣駆除用の罠も設置されている。

 山も近いし、結構野生動物が侵入してくるのかもしれない。

 

「なあヴェロ、こっからどうすんだ?」

 

 途中、タロが疑問を挟んできた。

 

「村長のところに行く。この村の滞在の許可貰わないといけないからな」

「許可なんているのかよ」

「そりゃそうだろ。勝手に居座らせてくれるほど甘くはないさ」

 

 村に勝手に住み着くやつは盗賊と変わらない扱いをされる。

 村も村民も所有者である領主の財産という扱いなので結構しっかり管理されているのだ。

 許可がもらえないと普通に追い出されてしまう。

 俺は適当に畑で作物を収獲していた村民に話しかける。

 

「すいませーん」

「誰だいあんたら?」

「旅のものです。村長と話したいんですけど、どこにいますかね?」

「村長ならあっちの方で畑仕事してるよ。白髪頭の帽子被った爺さんだ」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 言われた方に向かうと、説明されたとおりの特徴の人物がいた。

 

「すいません、あなたが村長さんですか?」

「誰だ?おめぇら」

 

 その老人はじろじろと俺たちを見回した。

 

「俺はヴェロって言います。まぁ、旅人みたいなもんです。冬の間この村に滞在したいんですけど、いいっすかね」

「冬の間ぁ?あー……、そうだなぁ……」

 

 村長はしばらく考えてから答えを出した。

 

「まあ、今は若いもんが戦争に行って人手が足りてねぇから、畑手伝ってくれんならかまわんぞ」

「おお、ありがとうございます」

「ちょうど使ってねぇ家屋がある。あれだ、村の端っこにあるやつだ」

 

 村長さんの指さす方向には、遠くに小屋が見えた。

 結構小さく見えるのだが、距離のせいだろうか。

 

「掃除もしてねぇが勝手に使ってくれ。あと、当たり前だが盗みとか悪さしたら殺す」

「うっす、了解っす。あ、鳥の燻製あるんで、よかったらどうぞ」

「ほう、燻製か。自分で作ったのか?」

「はい」

 

 とりあえずお偉いさんには媚びるぜ俺は。

 村長は俺から燻製肉を受け取ると、その場で食い始めた。

 

「……普通だな」

「まあ、調味料とかは無いんで」

「そうか」

 

 村長さんはそのまま燻製肉をかじりながら作業に戻っていった。

 結構すぐに話が終わったな。

 特にこっちのことを聞かれることもなかったし、エドにも無反応だった。

 

「……よし、滞在許可が出たぞ」

「な、なんだかあっさりしてるね。こんなものなの?」

「知らん。村に来たのは初めてだからな。それより、寝床を見に行くぞ」

 

 拍子抜けしているエドを連れて、家屋に向かった。

 場所は山の方に近い。

 村の端っことは言われていたが、歩くと結構距離があるように感じた。

 

「ここか……狭いな……」

 

 中の広さは六畳間くらいの空間が広がっていた。

 一部屋しかないのか。

 床には虫の死骸とかが散乱していた。

 きめぇ。

 

「へぇ、街の家と違って全部木製なんだね。この桶はなんだろう?」

「それ、多分うんこ溜めるやつだぞ」

「うえー!?」

 

 エドが派手に驚いていた。

 驚きすぎじゃねぇか?

 

「お前今までうんこどうしてたんだよ。街でも似たような感じじゃなかったのか?」

「アルドメナスの街は下水がしっかり整備されてるんだよ。糞尿も家から流せるようになってたから、桶に溜めるなんてしなかったんだ」

「マジかよ。うらやましい」

 

 最高じゃねぇか。ちょっとアルドメナスに住みたくなってきたな。

 一応レルガノスの街にも下水道はあったが、アルドメナスほど整備されていなかった。

 こういうところも国力の差が出ているのだろうか。

 

「村ではうんこも畑の肥料とかに使うんじゃねぇかな。タロ、どうなんだ?」

「俺の家でもうんこ畑に撒いてたぞ」

「へー。だってよ」

「う……、ちょっと汚くない……?」

「そんなの気にしたことねぇな」

「そうなんだ……普通のことなのかな……」

「気にしても仕方ないだろ。それより、早くここを掃除しよう」

 

 排せつ物の処理はなかなか大変だ。

 街でも普通にうんこの臭いが漂ってくるときとかあるしな。

 マジで最悪だ。

 そして今日は掃除をしている間に日が沈んだのでそのまま雑魚寝で就寝した。

 ……やっぱりちょっと狭いよ、この家。

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