深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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好奇心

 仕事終わりに、俺とエドはリリカとともに帰った。

 

「ただいま」

「お邪魔しまーす!」

 

 リリカは元気よく家に入ってきた。

 ずいぶんご機嫌だな。

 

「誰だ?そいつ」

 

 タロはいぶかし気に俺とリリカを見ている。

 ……女連れ込んでると思われてそうだ。

 

「こいつはリリカだ。村の外に興味があるらしくて、よそから来た俺たちの話を聞きたいそうだ。話をする代わりに食料とか薪とかいろいろ融通してもらうことになった」

「今日からしばらく一緒に寝ることになるわ。よろしくね」

「……まあ別にいいけど」

「おう、悪いな」

 

 タロはそっけない態度で応じた。

 人見知りなんだろうか。まぁあまり人付き合いが得意な性格には見えないしな。

 ……もっとも、俺もあまり人のことは言えないけどな。

 俺自身人付き合いは得意ではない。

 その点リリカはすごいな。

 今日知り合ったばかりの俺とエドとあっという間に打ち解けたし、おまけに家まで押しかけてくる行動力と押しの強さがある。

 対人能力はかなり高そうだ。

 

「モロとスーリャも、問題ないか?」

「は、はい。ぼくは大丈夫です」

「わたしも平気」

「そうか、助かる」

「ありがとう、あんまり邪魔にならないようにするわね」

 

 モロとスーリャも特に文句を言ってはこなかった。

 ひとまずは受け入れられたようだな。

 

「それで、村の外の話が聞きたいんだったか。何が聞きたいとかあるか?」

「うーん、そういわれてもね。私はこの村のことしか知らないから、村の外のことなんて全然わからないし。みんなはどこから来たの?」

 

 どこからこの村に来たのか、か。

 

「山かな」

「え?山に住んでたの?」

「ちょっとヴェロ、多分聞きたいことはそういうことじゃないと思うよ」

「冗談だって。そうだな、出身の話からしようか」

 

 俺の生まれ育った街や知っていることについて、リリカに語って聞かせた。

 こうしてこの日はリリカと話しながら眠りについた。

 ……狭い寝床のせいでリリカと距離が近くてあまり寝付けなかったのは内緒だ。

 

 

 リリカは翌日からも家に泊まりに来た。

 

「また来たわよ」

「またかよ……まさか、毎日来るつもりか?」

「そのつもりだけど」

 

 そのつもりらしい。

 

「……なぁ、聞いてもいいか?」

「なによ」

「なんでそんなに村の外のことを知りたがるんだ? 昨日はなんだかんだで流されたが、普通ここまでして聞きに来ないだろう」

 

 俺の問いに、リリカは真剣な表情で答えた。

 

「好奇心よ」

「……それだけ?」

「そうだけど」

「……マジ?」

「マジよ」

「マジかぁ」

 

 じゃあ、しょうがないね……。

 

「何よその反応。なんか文句あるわけ?」

「いえ、ないっす」

 

 リリカは宣言通り、毎晩俺たちのもとで寝泊まりするようになった。

 そして夜な夜ないろいろな話を聞かせてほしいとねだって来た。

 最初は俺やエドの住んでいた街の様子とかを話していたが、次第に身の上話や戦争の話、魔法のことなど多種多様な話をするようになった。

 リリカはそのすべてをとても楽しそうに聞いていた。

 そして俺は少し寝不足になった。

 

 

 あるとき、俺の使う魔法の話が話題に上がったときがあった。

 

「ヴェロは5つも魔法が使えるんだよ」

「え、そうなの? すごいじゃない!」

「そうだろうすごいだろう」

 

 あんまりほめるなって。おだてても干し肉ぐらいしか出んぞ?

 

「何が使えるの?」

「水を出す魔術と火を起こす魔術、解毒と止血の奇跡、それと動物を眠らせる呪術だ」

「へぇ、水を出したり火を起こせるのは便利そうね」

「解毒の奇跡は虫刺されにも効果があるぞ」

「な、なによそれ!? ずるい、私も欲しい!」

 

 おお、これまでで一番いい反応だな。

 やはり虫刺されを治せるのは大きいようだ。

 これにはエドやタロたちも驚いていた。

 こればっかりは【ライトヒール】でも治せないからな。

 

「毎日神様にお祈りすればそのうち覚えるさ」

「本当? 私や村の人たちも時々お祈りとかしているのに奇跡を使える人なんて全然いないわよ?」

「へー、そんなにいないもんなのか。街では結構いたんだけどな」

 

 地域によって差でもあるのだろうか。

 謎だ。

 

「この村だと、確か村長の奥さんが火を起こす奇跡を使えるぐらいね」

「火を起こす奇跡? 聞いたことないな。 そんなのもあるのか」

「私も聞いただけで、見たことは無いんだけどね」

 

 俺の魔術の【イグニッション】みたいな奇跡なのだろうか。

 

「まあ、どんな魔法にしても覚えようと思ってすぐに覚えられるものでもないさ」

「そうかしら。一応私も魔法が使えるんだけど、なんか急に使えるようになったのよね」

「ふーん……え? お前魔法使えるのかよ」

 

 でも奇跡は使えないみたいだし、まさか魔術か?

 

「どんな魔法なんだ?」

「それがわからないのよ。使った後倒れちゃうし、しばらく体調も悪くなるから全く使う機会がないの」

「使った後倒れるって、それ、呪術なんじゃないか?」

 

 魔術も奇跡も、使った後は多少の疲労はあるが倒れることは滅多にない。

 だが、呪術は俺も倒れた経験がある。

 

「そうなの? 私には違いがわからないんだけど」

 

 どうやら自分でもどういった呪術なのかわかっていないらしい。

 というか、呪術ってマナの感知とかできなくても使えるのか。初めて知った。

 俺が使えるようになったのは魔術や奇跡が使えるようになった後だったからな。

 奇跡もマナを消費しているはずなのにマナ感知できなくても使えるし、不思議じゃないのかもしれない。

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