深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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検問ブロック

 村を出てから二カ月ほどが経過したころ。

 

「ヴェロ、街が見えてきたよ」

「西側に街道はあるか?」

「うーん、ここからだとよく見えないね」

「見える位置まで移動しよう」

 

 街の西側が確認できる位置まで移動する。

 

「おい、ちょっと待て」

「ん? どうした?」

 

 歩いていると、タロに呼び止められた。

 

「罠が仕掛けてある」

「え、本当か? どんなやつだ?」

「多分ウサギくらいの小さいやつを捕獲するための罠だ。出来は悪いな」

 

 タロの見つけた罠を確認すると、木と紐を組み合わせた簡単な構造の罠だった。

 

「ウサギを捕まえる罠か……。もしかしたら、街の猟師が仕掛けたやつかもしれないな」

「結構山奥だと思うけど。こんなところまで来る人もいるんだね」

「不用意に遭遇したら面倒だ。タロ、この罠は設置されてどれくらいだ?」

「結構たってるぞ。一年以上ってところだ。放置されてんじゃねぇか?」

「放置されてる? たまたま獲物がかからなかっただけじゃないか? それでそのうち、罠を仕掛けたことを忘れて放置するようになったとか」

「そこまでは知らねぇよ」

「そうか……。まぁ猟師とは遭遇したくないから、一応気を付けて進もう」

「ねぇ、なんで猟師と会いたくないのよ。別にいいじゃない」

 

 リリカが疑問を挟む。

 他のやつもあんまり理解していなさそうな顔だな。

 

「俺たちはこれまで、山の中を動物を狩りながら移動してきただろ? 本当はそういうことしちゃだめなんだよ」

「え、そうだったの? どうしてよ」

「こういう山とか自然が近くにある街には大体猟師ギルドや伐採ギルドがあって、山の中を管理してるんだ。山の中に立ち入ったり、動物を狩ったり罠を仕掛けるのは、猟師ギルドの許可がいるんだよ」

「なんだよそれ。いちいち許可がいるとかどうとか、めんどくせぇな」

 

 タロが不満げな顔で文句を言う。

 まあずっと山辺で生活していたタロには納得し難い話かもしれないな。

 

「そういうもんなんだから仕方ないだろ。山の中のものは誰か一人のものじゃない。特に街が近くにあるところは山が生活と密接に関わってるんだ。そういうところだとなんの許可も貰ってない奴が勝手にウロチョロしてたら、下手したら普通に犯罪者扱いされかねない」

 

 最も、管理できる範囲はせいぜい街の周辺くらいだろう。

 山奥とかでは自由にしてても文句を言ってくる奴なんていないからな。

 だが、街が近くにあるなら話は別だ。

 街の人間に見つからないようにしないといけない。

 

「そうだったんだ。僕も知らなかったな」

「わかったら人影を注意して進むぞ」

 

 そうこう言いつつ、人の気配や痕跡に注意して移動していくと、街から西側に続く街道を発見した。

 

「こっち側に街道があるってことはもしかして……」

「ああ、ようやくついた。……この街がシルヴァ―ナだ」

 

 俺たちはようやく、ロズカルへと街道が続く唯一の街、シルヴァ―ナに到着した。

 

 

「ここからどうやってロズカルまで行くんだい?」

 

 エドの疑問に、少し考える。

 

「……これまでと同じように街道にそって山の中を移動することにしよう」

「えぇ、まだこの生活が続くの?」

「俺は別にいいぞ」

「そりゃタロはいいでしょうけど……」

 

 タロとリリカ、対照的な反応をする二人だ。

 

「ヴェロ、シルヴァ―ナから馬車みたいなものに乗ってロズカルにはいけないのかな」

「馬車? 私、馬車なんて乗ったことないわ。ちょっと乗ってみたいわね」

 

 エドの提案に、リリカは期待した様子で便乗する。

 俺も馬車には乗ったことがないので確かに興味は惹かれないでもないが……。

 

「入りたくても入れないだろ」

「何よ、入れないってどういうことよ」

「見てみろ。城門があるだろ」

 

 シルヴァ―ナを指さす。

 街を囲う城壁があり、街道の正面にある城門では検問が行われていた。

 

「ああいう城門のある城郭都市では、街に出入りするのに税を取られるんだ。通行料とか入市税とかいうやつだな」

「税って、村では作物が税として領主に収められてたけど、ここでもそういうのがあるってこと?」

「ああ、必要になるのは作物じゃなくて貨幣だけどな」

「……私たち、お金なんて持ってないわよね」

「一応俺は銅貨を持ってるが……全員分には全然足りないな」

 

 手持ちの硬貨は銅貨が17枚。

 エルヴァでも通行料は銅貨10枚くらいだったし、入れたとしても一人だけだな。

 金がなくても借金をして街に入ることことが出来る場合もあるが、一定期間労働に従事させられることになるし、早くロズカルに行きたいのでなるべくそういう状況は避けたい。

 まあ、俺たち全員身元不確かな不審者なのでまともに取り合ってくれない可能性の方が高いのだが。

 特にエドとか、明らかにファマル人の血が入っているので、下手すれば攻撃される可能性もある。

 

「じゃあ、ヴェロが一人で街の中に入ってお金を稼いできて、それから全員で街に入る。これならどうよ」

「そんなすぐ金を稼げるなら苦労はしないが……でも、燻製肉とか毛皮を売れば金になるかもしれないな」

「じゃあそうしましょうよ」

「うまくいく確証がないだろ。それに、ロズカルまで行く馬車に乗るにも金がかかる。全員分稼ぐのにどれだけかかるかわからないだろ」

「それはそうかもしれないけど……ねぇ、どうしてもだめ?」

 

 リリカが小首をかしげながら上目遣いで聞いてくる。

 あざといな。

 

「……かわいくいっても通らんからな」

「ちぇっ、かわいくないやつね」

「かわいくなくて結構だ」

 

 リリカ子供のようにむくれた顔をした。

 

「だったら、街道を通る人に同行していくのはどうかな。山道を歩くよりは早いと思うんだけど」

 

 再びのエドの提案。

 その案は俺も考えないでもないんだがな。

 

「そんなの盗賊に襲われるからダメに決まってるだろ」

「そ、そうかな……街道を通る人も警戒はしてると思うんだけど」

「仮に同行させてくれたとしてもそいつらが信用できるかはわからないだろ。盗賊に襲われたときに囮扱いされるかもしれないし、その同行させてくれたやつらが襲ってくるかもしれない」

「……ねぇ、さすがに警戒しすぎじゃないの?」

 

 リリカが怪訝な顔で言ってくる。

 正直、俺自身若干人間不信なところがあるかもしれないとは思うが、性分だからな。

 

「かもな。でも、警戒して損なことは無いだろ。山の中が一番安全だ」

「えぇ……普通はそんなことは無いと思うんだけどな……」

「はぁ、結局今の生活が続くってことね……」

 

 こうしてロズカルまで、山道を歩いて行くことになった。




ギルド
職能、職業ごとに存在する組合のようなもの。
様々な種類のギルドが存在しており、技術や利益の保護や確保、利権の独占が主な役割。
基本的にどこの国にも存在する組織だが、国によって国営か民営かの違いがある。
大きな街ではかなり権力、支配力があるが、小さな街や村での影響力は少ない。
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