深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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10人くらいにしか閲覧されてないこの作品ですが、それでも結構モチベーションになるんですよね。
見てくれて感謝。


山中の旅路 2

 1日延びて4日後。

 準備が整った俺たちはシルヴァ―ナから一番近い宿場街、フレーベルを目指して出発した。

 

「す、すいません、準備に時間がかかって、一日延びてしまいました……」

 

モロが落ち込んだように沈んだ声で謝罪する。

 

「気にすんなよ1日ぐらい」

「ようだよモロ。時間がかかったのだって、みんなであれこれモロに作業をお願いしたのが原因なんだし」

 

 モロはこの4日間、とてもよく働いてくれた。

 天幕も一つ増えたし、新しい革鎧や革靴のサイズもばっちりだ。文句なんてない。

 

「リケリア、フレーベルまではどれぐらいかかるんだ?」

「そうですね……街道を歩いて3日の距離なんですが、この山道を歩くとなると、4日はかかるかもしれません」

 

4日か。今はシルヴァ―ナから2日歩いたくらいの距離だから、後2日くらいだろうか。

 

「結構離れてるんだね。街なんて1日歩けばつくくらいの距離に大体あるものだと思っていたんだけどな」

「あー、確かに。そういえばそうだな」

 

エドの疑問に俺もそういえばと考える。

一番近い宿場街まで3日もかかるというのはさすがに遠すぎる気がする。

 

「確か、ロズカルまで宿場街が3つしかないんだよな。少なくないか?」

「そうですね。でも、食料の流通的になかなか宿場街が増やせないみたいなんです」

「食料の供給は増やせないのか?」

「それが、盗賊の被害も多くてなかなか増えないんです。シルヴァ―ナでもよく話題にされていました。もっと交通量が増えれば、シルヴァ―ナももっと発展して大きな街になるはずなので、盗賊の討伐に力を入れたり、流通を促したりしてましたから。結果は芳しくないんですけどね」

 

 マジかよ、まったく盗賊ってのは迷惑な連中だな。

 

「そういえば、最近は盗賊が増えてるとか言ってたけど、なんでだろうな」

「戦争から逃げるために、バストール街道を通ってロズカルに向かおうとする人が増えてるんです。それで、その人たちがロズカルに行くまでに盗賊に堕ちてしまうらしいですよ」

「……お、おう……そうか……」

 

 俺たちと全く同じ境遇のやつらが盗賊になっていると聞き思わず苦い顔をしてしまう。

 全然他人事じゃなかったわ。

 明日は我が身かもしれないと思うとまったく笑えないぞ……。

 

「……なんで盗賊になっちまうんだろうな」

「おそらくですけど、宿場街では、盗賊が多いせいで怪しい人物を街に入れないようにしているんです。高い通行料を設定したり、ギルド証の提示が出来ない人を追い出したりしているみたいです」

「えぇ……そんなんだから盗賊が減らないんじゃないか?」

「そうですね……でも、街の中に入れた後で窃盗をされても困りますし、仕方ないのかもしれませんね」

「うーん……ままならないもんなんだな……」

 

 

「キノコ採ってきた」

 

 タロが黒っぽいキノコを片手に戻って来た。

 こいつは道中食えそうなものをよく拾ってくるので地味に助かっている。

 もしかしたら特性がもの拾いなのかもしれない。

 

「あ、それ、高級キノコじゃないですか?」

 

リケリアがタロの手にしているキノコを見て驚いたような声を上げた。

 

「高級キノコ?」

「はい、人工的に栽培できないので、あまり市場に出回らないんです。スープの具材にすると飯田市が取れておいしいと聞いたことがあります」

「へー、このきのこ高いのか。いくらぐらいで売ってたんだ?」

「街では銅貨50枚くらいで売っているのを見たことがあります」

「キノコに50枚か。高いな」

 

 ちなみに、俺のいた街では安いパンなら銅貨2、3枚、肉なら端肉で銅貨10枚前後で売られていた。

 ちょっと高めの肉なら銅貨30枚くらいだ。

 加工もされていないただのキノコに銅貨50枚はかなり高いだろう。

 

「このキノコ、そんなに高級だったんだな。確かにうまいけど」

「食べたことあるんですか? 滅多にとれないと聞いたことがあるんですが」

「月に2、3こくらいはタロが拾ってくるぞ」

「それが多いか少ないかは、ちょっとよくわからないね」

 

俺たちはリケリアから売れそうなものとか商売の話を聞きながら進んでいった。

 

 

「はぁ……はぁ……」

「リケリア、大丈夫?」

 

 山を歩くのは初めてだろうリケリアは、1日歩きどおしだった結果、かなり足が痛くなっていた。

 今はスーリャに奇跡で足を癒してもらっているところだ。

 

「ああ……スーリャさん、ありがとうございます」

「ん、どういたしまして?」

 

 スーリャは大したことなさそうな顔をしているが、俺も世話になったこともあるし、正直かなり助かっている。

 

「ほんとにスーリャがいると助かるわよね。私も最初は毎日足が痛くて大変だったんだから」

「そうなんですね。もう、慣れたんですか?」

「まぁね。山歩きももう2か月以上続けてるし、さすがに慣れたわ」

「そ、そんなに長くですか」

 

 リケリアはそれほど長く山にいることが信じられないといった表情をしていた。

 まぁ街で暮らしていると山での生活とかあまり想像できないだろうな。

 

「本当に皆さん、旅慣れているんですね」

 

 リケリアは感心したようにしていた。

 

 

 リケリアが運んでいた食料の中には、なんと塩も入っていた。

 小さめの小壺が数個だけだが、塩は貴重だ。

 場所によっては硬貨の代わりに取引で使われることもあるぐらいだからな。

 貴重品故、俺自身塩を使った飯を食べる機会なんて、滅多になかったし。

 俺はウキウキしながら塩を取り出し、焼いた鶏肉に塩を軽く振りかけて食った。

 

「……うっまぁ」

 

 塩を掛けただけなのに、どうしてこんなうまく感じるんだろうか。

 

「あ、ずるい! 何勝手に使ってるのよ、私にもよこしなさいよ!」

「ああ、食え食え。クソうまいぞ」

 

 リリカも鶏肉に塩をかけて食う。

 

「……うっまぁ。鶏肉なんて毎日食べてるのに、塩をかけただけでなんでこんなに美味しくなるのかしら」

「僕も頂こうかな。……ああ、おいしい。塩気のある食事は久しぶりだね」

 

 リリカは体をくねらせながら頬を緩ませた。

 いい反応するやつだな。

 

「……なぁ、そんなにうまいのかよ」

 

 タロがリリカの様子を見て気になったのか聞いてくる。

 

「ああ、食ってみろ。飛ぶぞ」

「飛ぶってなんだよ……」

 

 タロも鶏肉に塩をかけて口に入れる。

 

「……」

「どうだ? うまいか?」

「……うまいな」

 

 タロにしては珍しく、屈託なく笑いながら感想を言った。

 ……そういう顔もできるんじゃないか。かわいいところもあるもんだな。

 

「モロ、スーリャ、お前らも食ってみろ」

「う、うん」

「ありがとう」

 

 モロとスーリャも塩で味付けした肉を食べると、そのおいしさに目を丸くしていた。

 

「みなさん、喜んでくれてよかったです」

 

 リケリアもその光景を見ながら微笑んでる。

 ……これを運んできたリケリアには感謝だな。

 

 

「エド、少しいいか」

「え、うん。何かな」

 

 休憩していたエドに声をかける。

 

「お前、足がどっかおかしいんじゃないか?」

「歩いているとき、右足をかばっているように見えてな」

 

 今日のエドは、歩き方に少し違和感を覚えた。

 ほんの少しの違和感だったので、気のせいかとも思ったが一応聞いておきたい。

 

「あはは、隠すつもりはなかったんだけどね。……右足に、少し力が入りにくいみたいだ」

「スーリャに治してもらったんだろ?」

「うん。でも、どこか違和感があってね。痛みもないし、大したことは無いんだけど」

 

 スーリャの【ライトヒール】は欠損などの負傷は完治できない。

 全ての傷を完全に治せるわけではないので、そのせいかもしれないな。

 

「ヤバくなったらすぐに言えよ。お前が動けなくなったら困る」

「うん。ありがとう」

 

 エドは軽い調子で礼を言った。

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