深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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フレーベル

 リケリアを加えてから歩くこと2日。

 ようやく最初の宿場街、フレーベルが見えてきた。

 

「あれがそうか。背が低いけど城壁もあるな」

「ねぇ、検問してるみたいだけど、ちゃんと入れるのよね」

 

 街の入り口には衛兵が立っており、検問を行っていた。

 それを見たリリカが不安そうに聞いてくる。

 

「一応、盗賊から手に入れたお金があるから、通行料を払えば通してくれるはずだよ」

「私もギルド証を提示しますから、きっと通してくれますよ。通行料も安くなるはずです」

 

 そうこう言いながら検問所の前まで進む。

 

「止まれ。ここへ来た要件を伺おうか」

「食料の輸送依頼で来ました」

 

 リケリアが答える。

 

「行商人なのか? ずいぶん若いな……。だが、何も持っているようには見えないな?」

「道中で盗賊に襲われました。食料を乗せた荷車を壊されてしまって、やむなく置いてきてしまいました」

「そりゃかわいそうに。……他のやつらはどういう関係だ? 護衛には見えないが」

「同行者です。彼らに盗賊から助けてもらいました」

「ふむ、そこまで強いようには見えんが……それに子供まで連れているし……」

 

 衛兵はいぶかしむように俺たちを見る。

 

「お前たちはどうしてここまで? こんな場所まで観光か?」

「俺たちはただの旅人ですよ」

 

 俺は簡潔に答える。

 

「……ふん、まぁいい。商人のお嬢ちゃんにはギルド証と依頼書を見せてもらおうか」

「はい、こちらです」

 

 リケリアは言われた通り提示する。

 

「……確認した。通行料は一人銅貨10枚だ」

 

 ……ちょっと高いな?

 別に通行料の適正価格なんて知らないし、文句は言わないけどな。

 俺たちは衛兵に大銅貨7枚を渡してフレーベルに入っていった。

 

 

「はー! 初めて検問所を通ったけど、息が詰まるわね」

「そうですね、私も少し緊張してしまいました」

 

 リリカは肩の力を抜いて大きく息を吐いた。

 確かに、リリカの気持ちはわかる。

 俺もなんだか悪いことしてるときみたいな緊張感があったしな。

 

「ここが街の中なのか……建物が多いな」

「ひ、人もたくさんいますね」

 

 タロとモロは初めての街を見てあちこちに視線をさまよわせていた。

 スーリャはそこまで動揺した様子もなく落ち着いている。普段からおとなしい子だと思っていたが、実は結構大物なのかもしれない。

 この街も大した交通量でも人口でもないんだが、これでも新鮮に映っているらしい。

 

「こっから商人ギルドまで行くのか?」

「はい。皆さんはどうされますか?」

「俺たちもついて行っていいか? 始めてくる街だし、離れて行動したら危ない目に合うかもしれない」

 

 始めてくる街だし、なるべく全員で行動したほうがいいだろう。

 

「僕も賛成だよ。あまり離れて行動しない方がいいと思う」

「そうですか……わかりました。それでは行きましょうか」

 

 こうして、全員で商人ギルドに乗り込むことになった。

 ギルドの場所はすぐにわかった。

 街にいる他の商人も頻繁に出入りしているし、建物もでかいからな。

 中に入ると、入り口から正面に受付があり、ギルドの職員の女性がいた。

 

 ……そういえば、なにげに初めてギルドの中に入ったな。別に大した感慨もないが。

 そんなことをぼんやり考えながらギルドの内装を見物していると、リケリアが職員に話しかける。

 

「すいません」

「はい、ご用件は何でしょうか?」

「依頼の報告をしたいんですけど……」

「それでしたら、あちらの窓口にお願いいたします」

 

 どうやら窓口が違ったらしい。

 職員の案内に従ってギルドのやや置く側に移動すると、男性の職員がいた。

 

「すみません、こちらで依頼の報告をさせていただきたいんですけど……」

「はい、では依頼書の提出をお願いいたします」

 

 リケリアは言われた通り、依頼書を提出する。

 

「食料の輸送依頼ですね。荷物はどちらに?」

「……実は、盗賊に襲われてしまって、輸送できなかったんです」

「ああ、そうですか。最近は多いですね」

 

 職員は何でもないように報告を受ける。

 何でもない様子だ。

 こういう報告を受けるのも、本当に珍しくないんだろうな。

 

「一応、証拠となるようなものはありますか?」

「はい。実は護衛に傭兵を雇っていたんですが、道中で裏切り、盗賊と結託して襲ってきたんです」

「……ほう、裏切りですか。もう少し詳しい話を伺ってもよろしいですか?」

 

 リケリアは事のあらましを職員に話した。

 

「……なるほど、これが裏切った傭兵のギルド証ですか。アジトの場所もわかっていて、遺体もそこに放置してあるんですね?」

「はい」

「了解しました。貴重な情報をありがとうございます。このことはギルド長にも報告しますので、近いうちに調査が行われると思います」

「……そうですか」

「それでは違約金のお支払いをお願いいたします。ああ、情報提供していただいた分はきちんと割引させていただきますよ。銅貨10枚のところを、銅貨5枚です」

「……安いですね」

「確かにそうですね。まぁ、あまり高い金額を設定して、依頼を受ける人が減ってしまっても困りますから」

 

 リケリアは銅貨5枚を支払う。

 

「はい、確かに受け取りました。依頼についてはこれで終了となります。お疲れさまでした」

「……はい、ありがとうございます」

 

 こうして、リケリアの依頼の報告は終わった。

 そうして、ギルドを出ようとしたところで、リケリアが立ち止まる。

 

「ん、どうした?」

「あの、少し待っていてもらえますか? お父さんのことを聞いておきたくて」

「ああ、そうか。でも、親父さんが向かったのはもう1個先の街じゃなかったか?」

「はい。でも、何か足取りがつかめるかもしれませんから。戻ってこない理由も含めて聞いてみようと思いまして」

「そうか、わかった。ここで待ってるよ」

 

 リケリアはもう一度ギルドの受付のほうまで行って、父親の行方に関する情報がないかを聞きに行った。

 しばらくして、リケリアが戻って来た。

 表情はあまり明るくない。

 

「どうだった?」

「……いえ、確かな情報は何も。お父さんもここには来ていなかったみたいですから。ただ、少し前に大規模な盗賊団が討伐されたらしいです。お父さんと関係があるかはわかりませんけどね」

 

 どうやら父親に関する情報は得られなかったらしい。

 ……次の街でも行方をつかめなかったら、リケリアはどうするのだろうか……いや、今考えても仕方ないか。

 

「あまり気を落とすなよ」

「……はい、そうですね」

 

 適当に励ましてみたが、効果はいま一つだ。

 あーもう、雰囲気が暗くなっていけないな。

 話題を変えるか。

 

「なぁリケリア。俺たちが道中で作った干し肉とか毛皮、売れないかな」

 

 俺は思い付きでリケリアに提案してみる。

 実は道中考えていたことでもあった。

 保存食には余裕があるし、道中狩猟した動物の毛皮もいくつか用意がある。

 金が稼げるなら稼いでおきたいからな。

 

「え? そうですね……売れるんじゃないでしょうか。どちらも宿場街ではいくらでも需要がありそうですし」

「リケリアは行商人だから直接売買ができるだろ? ちょっと売ってくれないか?」

「あの、本当に私が売ってもいいんでしょうか? ギルド証は持っていますが、こういった経験は初めてなんですが……」

「そんなの、いいに決まってるだろ。頼む」

「……わかりました。微力を尽くさせていただきます」

 

 こうして俺たちはリケリアとともにフレーベルの街の宿屋を巡り、持っていた燻製肉、毛皮、干したキノコまでもすべて売却することに成功した。

 最終的な儲けは、銀貨1枚と銅貨38枚となった。

 ……今後はもっと積極的に動物を狩ったり、今まで捨てていた鳥の羽も回収するのもいいかもしれないな。

 金なんていくらあってもいいし。

 

 

「まさか、銀貨1枚以上も稼げるとは思わなかったな」

「すごいわ! 滅茶苦茶儲けたじゃない!」

「あはは、リケリアの交渉が上手かったからじゃないかな。全部売れたし」

 

 リケリアは宿の店主と交渉し食料や毛皮を売っていった。

 値段交渉するリケリアは、いっぱしの商人といった雰囲気があったな。

 あんなに商売上手とは思わなかったが。

 

「わ、私もこういったことは初めてだったんですが、なんだか楽しかったです」

 

 リケリアは照れたように笑う。

 少しは元気が戻ったようだ。よかったわマジで。

 

「おい、この後どうすんだ。宿にでも泊まるのか?」

 

 と、ここまで黙っていたタロが口を開いた。

 最初は物珍しそうにしていたが、1日行動に付き合わせてしまったので少し不満げだ。

 

「いや、宿に泊まるのもただじゃないからな。俺らは普通に街を出るぞ」

「えぇー? 止まっていかないの?」

 

 リリカが不満そうに言う。

 宿に泊まりたいみたいだが、正直安い宿とかだと壁とか薄くて隣の外の音とかも丸聞こ えだろうし、泥棒が入ってくる可能性もなくはない。

 そんなところで寝泊まりするのはごめんだ。

 

「馬鹿お前、下手な宿よりモロの作った天幕の方が寝心地いいに決まってるだろ」

「うーん……そうかしら……そうかも……」

「ほら、いいから行くぞ。あまり遅い時間に街を出たくない」

「なんだかあわただしいね」

 

 俺たちはフレーベルに入ったその日に早々に次の宿場街へと向かうため街を出た。




ヴェロ達の作る干し肉

狩猟した動物を解体した後、煙で燻してからヴェロの魔術で乾燥させているため一月ほどは保存できる。
たまに山菜で風味付けされている。
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