深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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鍛錬

 スーリャの用意してくれた、山菜のスープ干し肉入りをすすりながら、全員がいることを確認して、ちょうどいい機会なので話を切り出すことにした。

 

「リケリア、全員の傷が癒えたら移動を再開することになるんだが、どうするか決めたのか?」

 

 エドとリケリアが傭兵たちとの戦闘で負った傷の回復を待っているとき、リケリアに今後どうするか聞いてみた。

 現状、リケリアは俺たちに同行してくれているが、今後も行動を共にするのか、それとも別の道を行くのかは、傭兵に襲われたことでことでごたごたしてしまったが、返答を待っている状態だった。

 これからどうするかはリケリア次第だ。

 

「ふふん。リケリアの答えならもう決まってるわよ」

 

 なぜかリリカが得意げな表情をする。

 何でお前が答えるんだよ。

 いや、女同士だし、俺よりもリケリアと接触する機会も多かっただろうし、いつも同じ天幕で寝ているから、何か話を聞いているのかもしれない。

 

「何か話でも聞いているのか?寝るときとか」

「そんなの乙女の秘密に決まってるじゃない」

「……あ、そう」

 

 何やら適当なことを言っていたのでスルーする。

 

「だったら、答えを聞かせてくれ。あ、シルヴァ―ナに戻るにしてもちゃんと送っていくから、そこは安心してくれ」

「は、はい……いえ、シルヴァ―ナに戻るつもりはありませんよ」

「そうなのか? じゃあ」

「私は皆さんと一緒に旅がしたいです……ご迷惑でなければ、ですが」

 

 リケリアはそう宣言した。

 

「リケリアが一緒に来てくれるなんて、うれしいよ」

「ぼ、ぼくも、うれしいです」

 

 エドとモロも歓迎のようだ。

 もちろん俺だって文句はない。

 ただ。

 

「どうして俺たちについてくる気になったのか、聞いてもいいか?」

 

 俺たちについて来ようと思った、その理由が知りたい。

 俺たちと行動して、危険な目にも合ったはずなのに、どうしてその決断をしたのか。

 リケリアは俺の目を見て、話し始めた。

 

「皆さんのことが、好きになったからですよ。皆さんは優しいですし、一緒にいて居心地がいいんです」

 

 嬉しいことを言ってくれる。

 でも、それが住み慣れた街から離れて、あって数日の俺たちと一緒に来る理由としては少し弱い気もする。

 

「それだけか?」

「はい……まぁ、あったときにも少し話しましたが、シルヴァ―ナでの居心地が悪くなってしまったという理由もなくはないんですけどね」

「居心地の悪さが解消できれば、戻りたいと思うのか?」

「いいえ、シルヴァ―ナから出たのは、キッカケでしかありません。皆さんと一緒にいたいのは本当ですから」

 

 真剣な表情で語る。

 その意志は固そうに見えた。

 もうすでにいろいろ考えた後なのだろうし、俺が今更どうこういうことじゃないか。

 

「わかった、俺もリケリアを歓迎する」

「ありがとうございます」

 

 そんなわけで、リケリアが正式に仲間になった。

 

 

 傭兵との戦いから一月ほどが経過した。

 思いのほかリケリアの骨折が治るのに時間がかかり、俺たちはいまだに動けていなかった。

 骨折はスーリャの奇跡ではなかなか治らず、より重症だったはずのエドの方が先に直ってしまったくらいだ。

 

「すみません、私のせいで足止めすることになってしまって……」

「大丈夫だ、無理はしなくていい」

「はい。でも、動いたときの痛みも収まってきました。ゆっくり歩く分には問題なさそうです」

「そうなのか? だったら、ちょっとずつでも移動を再開していくか」

 

 こんな長時間一か所にとどまったのは初めてだが、意外に何とかなっている。

 食料も今のところ尽きる心配安はない。

 山の恵みに感謝だ。

 だが、そろそろ移動を再開したいというのも事実だ。

 リケリアに無理のない範囲で少しづつ次の宿場町に向かおう。

 

「ヴェロ、リケリアと話してたの?」

 

 リケリアと反していると、エドが話しかけてきた。

 手には木の棒を削って作った木刀を持っている。

 

「ああ、リケリアもまだ完治してないみたいだが、少し歩くくらいなら大丈夫らしいからな。そろそろ移動を再開しようかと話していたところだ」

「本当かい? それなら、いろいろ移動する準備をしておかないとね」

「そこまで急がなくてもいいだろう。それよりも、今日もやるぞ」

「わかった、付き合うよ」

 

 俺は傍らに置いてあった木刀を手に取る。

 エドの持っているものと同じようなものだ。

 

「頑張ってくださいね」

「ああ」

 

 リケリアに返事をすると、エドの方に向かう。

 そしてお互いに距離を取り、持っている剣を構えた。

 

「それじゃあ、行かせてもらう!」

「いいよ、打ち込んできて」

 

 踏み込み、勢いのまま木刀を振るう。

 対するエドは、一歩っ下がって回避。

 俺は図具様次の攻撃を仕掛けようとする。

 

「遅いよ!」

「くっ!」

 

 しかし、エドは一歩下がったときにはすでに反撃の準備をしており、その反撃に対応するために俺は攻撃から防御へと行動を変えた。

 エドの手元に剣先を向かわせ、そのまま強引にエドの剣を弾く。

 

「どりゃ!」

「おっと、やっぱりヴェロは力が強いね」

「成長期なんでね。でも、身体強化したお前には負けるよ」

 

 今のエドは身体強化を使っていない。

 悔しいことに使われると普通に力負けして勝負にならないからだ。

 エドの反撃を弾いてから、一歩下がって仕切り治す。

 やはり、大ぶりの攻撃はそう簡単には当たらないか。

 動くなら、構えた状態から最小限の動きで、最短距離で攻撃を当てる。

 適当な場所に攻撃しても致命傷にはならないから、狙うのは致命傷を与えられる部位だ。

 後は武器を持つ手や移動する足にも有効だろうか。

 俺は剣を正中に構える。

 

「その構え、リケリアに教わったのかい? でも、剣先や視線で狙いがバレバレだよ」

「マジか……」

 

 思わぬ指摘を受けてしまった。

 相手にこちらの狙いを悟らせないのも重要か。

 そういえばアレイにもバレバレだといわれたな……嫌な思い出だ。

 でも行く。

 

「セイッ!」

「うおっ、早いね!」

 

 剣を構えた状態から、首を狙った突き。

 同じく剣を構えていたエドの攻撃をそらされる。

 そのまま間合いを詰めて鍔迫り合いのような状態になった。

 ……どうでもいいが俺とエドの使っている木刀には鍔はついていないので、単純に木刀で押し合っているだけだな。

 

「突きは次の攻撃につなげづらいよね」

「そうだな」

 

 確かに突きは威力が高い分隙も大きい。

 そもそも普通に剣を構えているだけで防げるので、多少訓練している相手には早々に有効打を与えられないだろう。

 だが、ここまで接近している状態なら体制を崩しに行ける。

 俺は剣を持つ手に力をこめてエドの剣に圧力をかけ……フッと力を抜く。

 

「うわっ」

 

 突然剣を押す力がなくなり、一瞬バランスを崩した隙に頭に一撃!

 

「もらった!」

「甘いよ!」

 

 しかし、すぐに体勢を立て直したエドにあっさり防がれてしまった。

 

「さすがに同じ手は二度は通用しないよ」

「クソ、まぁそりゃそうか」

 

 そう、この技は以前エドに試したことがあった。

 流石に二回目が通用するほど甘くはないらしい。

 傭兵たちと戦いからエドが回復した後、俺とエドは毎日こうして手合わせをしていた。

 強くなって自分の身と、仲間を守るためだ。

 そのためこうしてエドにも付き合ってもらっているのだが……いまだに身体強化したエドに勝てないのがマジで悔しい。

 

「それでっも、お互い結構強くなったんじゃないかな」

「そうか?そりゃ最初に比べればマシになったと思いたいが、全然強くなってる気がしないぞ」

「そんなことは無いと思うけど……」

 

 エドはそういうが、俺は全然納得していなかった。

 いまだに、あのアレイに勝てる想像が全くできないからだ。

 

「こんなんじゃ全然足りない。エド、もう一度だ」

「あはは、わかったよ。何度でも付き合うさ」

 

 こうしてしばらく、エドと木刀を打ち合った。

 

 

 ヒュンッ!

 コンッ。

 

「……また外れた」

 

 俺は一人、ナイフ投げの練習をしていた。

 目標は5m先、木を切って作った目印。

 どんな体制からでも正確に狙えるようにしたいが、現状、まともに当てられるのは5m先まで。

 それも、止まった状態で命中率6割といったところだ。

 目標から外れたり、柄の部分が当たったり、角度が悪く弾かれたりと、なかなか課題が多くてとても実戦で使えるレベルではない。

 こんなんじゃ牽制にもならないな。

 少しづつ命中率は上がってきているのだが、実戦で役に立つようになるのがいつになるかは全くわからない。

 

 前に一度、ナイフ投げで傭兵を倒したというタロにどうやっているのか聞いてみたことがあった。

 

「タロはナイフ投げで斬るんだろ?教えてくれよ」

「俺は投石紐でナイフを飛ばしただけだぞ」

「はぁ? そっちの方が難しいだろ。意味が分からん」

 

 全く参考にならなかった。

 なんだよ、投石紐でナイフを投げるって。

 曲芸にもほどがある。

 

 ヒュン!

 トスッ。

 

「お、命中」

 

 投げたナイツは、今度はうまく気に書いた目印に命中した。

 

 

 あるとき、もろに実戦で役に立ちそうな、人間相手の罠について聞いてみた。

 

「なぁモロ、人間相手に使える罠って、どんなのがあるんだ?」

「え?そ、そうですね……やっぱり木や枝をしならせて固定して、踏んだ時に吊り上げる罠が、一番簡単だと思いますけど……」

「盗賊を相手にした時に作ったやつだな、それ。でも、すぐには作れないだろ」

「ぼ、ぼくは体が小さいので、時間がかかります。ヴェロやエドなら、5分くらいで作れるかと……」

「5分か。でも、木とかがないと作れないし、戦ってる最中に即座に作れるってわけでもないしなぁ」

「た、戦っているとき、ですか?」

「ああ、この前傭兵に襲われたときは用意できなかったけど、今度襲われたときにはすぐに罠を張って迎撃出来たらなと思ってな」

 

 リケリアを襲った盗賊たちはうまくはめられたし、傭兵と戦ったときも、罠があれば時間稼ぎももっと楽になったはずだ。

 

「さ、さすがに、そんなにする罠を用意できないと思いますが」

「うーん、まぁそりゃそうか」

 

 流石に人間相手に有効な罠は一瞬ではできないらしい。

 突発的な戦闘で用意できるものじゃないか。

 

「そ、それでしたら、役に立ちそうな道具を作れば、いいんじゃないですか?」

「役に立つ道具か。いい考えだが、どんな道具がいいかな」

 

 俺はモロと、退陣を想定した戦闘で役立つ道具について話し合った。




共鳴
奇跡を習得しているものが使うことのできる技術。
奇跡を使用しているものに同調して奇跡の効力を上昇させることが出来る。
複数人で行うことが出来るが、人数が多いほど発動者の負担が上がっていく。
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