深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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ストックが切れたのでしばらく休みます。


ミラデイル

 リケリアの骨折もある程度治り、動けるようになったので移動を再開。

 歩くこと3日、俺たちはようやく最後の宿場街、ミラデイルに到着した。

 

「街へは俺とエド、リケリアだけで入る」

 

 以前の傭兵のような面倒な連中を警戒して、他の皆には待機してもらうことにした。

 また傭兵か何かに追いかけられた時に備えるためだ。

 あと単純に、街に入るときに徴収される金も節約できる。大した金額ではないけどな。

 ……いや、よく考えたら、旅を始めた当初は銅貨が十数枚くらいしかなくて、それが俺の全財産だったわ。

 今はリケリアと一緒に毛皮とか干し肉で稼いだ金があるし、この前襲ってきた傭兵の持っていた金も手に入ったので、多少は金に余裕があるが、それでも節約はできるところでやっていった方がいいだろう。

 ……そもそも、これまでの旅はほとんど自給自足して銅貨一枚も使っていないので、十分節約できているような気もするな。 

 

「もし、前みたいに傭兵に追っかけられたら、お前らで奇襲してくれ。あと、先に罠を張っといてくれ」

「すごい警戒してるわね……」

「当然だろ。同じ轍は踏まん」

 

 正直に言えば、これでも警戒は足りないと思っているくらいだ。

 だが、全ての事態を想定することは不可能だし、出来ることは可能な限り事前に準備を整え、今できる最善を考えることだけだ。

 

「リケリアはフードをしっかりかぶっとけよ。美人だから目を付けられるかもしれん」

 

 リケリアには、モロが新たに新調した外套を着てもらっていた。

 これで顔を隠せるはずだ。

 美人は狙われやすいからな。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 リケリアは小さくそう言って、外套のフードの端をつまんで顔を隠した。

 うん、ばっちりだな。

 

「……そういうことさらっというのよね」

「ん? 何か言ったか?」

「なんでもないわよ。ほら、さっさと行ってきなさい」

 

 リリカは俺の背中をバシッとたたいた。

 何なんだ一体。

 

「なんだよもう、わかってるって」

 

 こうして、俺とエド、リケリアの三人は街へ入っていった。

 

 

 ミラデイルに入った後、俺たちは空いていた酒場に入って店主と話していた。

 

「こんにちは。盛況ですか?」

「いらっしゃい。見ての通りさ、客がめっきり減っちまった」

 

 ミラデイルはロベルカーナに比べて、明らかに人が少なかった。

 人通りも少ないし、酒場も人入りが少ないようだ。

 ロベルカーナでは傭兵が大量にたむろしていて盛況だったが、それと比べるとずいぶん寂しく見えるな。

 

「なんだか盗賊が増えてるみたいでな。傭兵も増えてるはずなのに、おかしいと思わんか?」

「さぁ、私には何とも。でも、ロベルカーナには傭兵がたくさん滞在していましたから、彼らが活躍するのを期待したいですけどね」

「ああ、こっちでも噂になってるぜ。なんかもめてるらしいな」

 

 ミラデイルの方にももめていることが伝わっているらしい。

 俺たちは傭兵に襲われているし、リケリアなんて傭兵に二度も襲われているので正直傭兵にいい印象はないんだよなぁ。

 

「それより、こちらの干し肉はいかがですか? パンにはさんでもおいしいですし、山菜で風味付けしてるんです」

「へぇ、そんなことを。ま、もらえるってんならありがてぇ。最近は行商人の数も減っていてな。客も少ないから何とかなってるが、食材の供給も安定しねぇんだ」

「やはり、盗賊の影響なんでしょうか」

「そうなんじゃねぇか? おかげで猟師ギルドの収獲にまで影響が出てるって話だぜ? 罠や獲物が盗まれたりな。まぁこういうことはたまにあるし、しばらくすれば元に戻るだろう」

 

 持ち込んだ干し肉はすべて買い取ってもらえた。

 

 

 立ち寄ったミラデイルの街は、大した用事もなかったので金だけ稼いですぐに出た。

 余計な寄り道もしなかったので、滞在時間は非常に短い。

 

「追手は来ていないみたいだな」

「傭兵もそんなにいなかったし、大丈夫みたいだね」

 

 どうやら街からこの前の傭兵みたいな連中は来ていないらしい。

 

「おい、こっちだ」

 

 山の方からタロの声が聞こえる。

 街道からそれて声の聞こえた方向に向かうと、タロ達が集まっていた。

 

「よし、無事に合流出来たな」

「早かったわね」

「まぁ、大した用事もなかったしな」

「追っても着てないと思うけど、タロ、大丈夫かな」

「……誰も来てないと思うぞ」

 

 それなら、一旦安心していいかな。

 タロは周囲の索敵がうまいから、追手がいればすぐにわかるだろうし。

 

「……次が、いよいよロズカルなんだね」

 

 ふと、エドが次の行先のことを話題に出す。

 確かに、シルヴァ―ナから三つの宿場街を通り、当初目的としていたロズカルがいつの間にか目前に迫っていた。

 

「あ、そういえばそうね。ねぇヴェロ、ロズカルに着いたらどうするの?」

「実はな……これを聞いたら、多分みんな驚くと思うんだが……」

「もったいぶってないで早く言いなさいよ」

 

 リリカがせかすように言ってくる。

 ふふふ、聞いて驚け。

 

「まだ何も考えてません」

「そんなことだろうと思ったわよ」

 

 リリカは特に驚いた様子もなくいった。

 どうやら予想通りだったらしい。

 ……なんか悔しいな。

 

「そういえば、ロズカルに行くとは聞いていましたけど、その後どうするかは聞いたことありませんでしたね」

「あはは、実は僕も、ずっと気になってたんだよね。いつかヴェロが自分から話すんじゃないかって、あえて聞かなかったんだけど」

 

 正直、ロズカルに行くことさえできればあとはどうとでもなると考えていた。

 日雇いの肉体労働でもするのか、それとも適当な職人系ギルドにでも入って見習いとして働くのか……。

 しかし、こうして旅の仲間が増えた以上、一度しっかり話し合う必要があるだろう。

 俺たちの今後のことを。

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