深淵を覗けるか   作:たぶん超新星

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生き残り

「おっ……と、生き残りか?」

「っ……ぁ……」

 

 焼け残った家をエドと手分けして漁っていたところ、なんと生存者を見つけてしまった。

 適当に民家を覗いてみたら、4、5歳くらいの明るい茶髪の幼女が藁の敷布団で寝ていた。

 すごい痩せているし、体調も悪そうだ。

 目を開いてこちらを凝視している。

 警戒されているな。

 

「エド! 来てくれ!」

 

 とりあえずエドを呼んだ。

 

「どうしたんですか? あ、この子は……」

「集落の生き残りってところだろ。弱ってるみたいだし、とりあえず何か食べさせよう」

「水と燻製肉しかないですけどね」

 

 道中、保存食としていくらかの肉を燻製肉にして保存している。

 あまり量を確保していないが、すぐに出せるものはこれぐらいしかない。

 

「おい、これ食べられるか?」

 

 そうやって燻製肉を食べさせようとしているときだった。

 

「ギッ!?」

「ヴェロ!?大丈夫!?」

 

 後頭部に強い衝撃を受けた。

 痛い、とんでもなく痛い。

 思わず頭を押さえてうずくまる。

 

「クソ、いてぇ……」

「誰だ! 出てこい!」

 

 エドが叫ぶと、焼けた民家の入り口から黒髪の少年が現れた。

 

「テメェら、何しにきやがった!」

「僕らは、たまたま通りがかっただけだ」

「嘘つけ! どうせまたここを滅茶苦茶しに来たんだろ!」

「違う! そんなことはしない!」

「もうここには何にも残ってねぇよ! 出てけ!」

 

 エドは必死に否定するが、相手は全く耳を傾けず、強い敵意を向けてくる。

 

(だめだな、冷静じゃない。まともに話し合うのは難しそうだ)

 

 またここを滅茶苦茶しにきた、と言っているし、最近何者かがこの集落を焼き払って行ったのだろう。

 一度そんなことがあったのだから、知らない人間を信じるのも難しいのかもしれない。

 仕方ない。

 俺は寝台に寝ていた女の子を腕をつかんで引っ張り上げ、少年に見えるように晒した。

 

「おい、お前こいつの知り合いか?」

「ぅ、あ……」

「なっ、スーリャを離せ!」

「離してもいいが、その前に俺の質問に答えてもらおう。お前、名前は?」

「…………タロ」

 

 すごい葛藤しながら答えた。

 よし、それでいい。

 思い付きで人質にしてみたが効果はあったようだ。

 もともと女の子が一人でいるとは考えていなかったが、こいつが世話をしていたようだ。

 

「じゃあタロ、この集落の家が一軒残らず焼けてるのはなんでだ」

「鎧とか着たやつらが大勢押し寄せて来て、燃やしていったんだ。確か、盗賊のねぐらにならないようにとか言ってた」

 

 なに? 鎧を着てたって、軍か何かが来たのか?こんな場所にわざわざ?

 そんなにやばい盗賊団がいて、それを討伐しに来たのだろうか。

 

「ここには盗賊がいたのか?」

「ちょっと前にここを盗賊が襲ってきたんだ。しばらくそいつらの縄張りにされてたけど、そいつらも鎧を着たやつらに全員殺された。……盗賊以外のやつも一緒にな」

 

 この集落にもともと住んでた人たちと盗賊を区別せずに皆殺しにしたのか。

 確かに判別するのは難しいかもしれないが、ひどい話だ。

 

「それ、どれぐらい前の話だ。盗賊に襲われたのと軍隊が来たのは」

「……盗賊が来たのは、30日くらい前……だったはずだ。鎧を着た奴らが来たのは10日前だ」

 

 なるほど。

 この不自然な無人集落の理由もわかった。

 

「じゃあそのへんで見かけた死体は盗賊ともともと住んでた住民のものか」

「放置してあるのは盗賊の死体だけだ。他の死体は埋めた」

「お前はどうして無事だったんだ?」

「森の中に逃げ込んだんだ」

「お前のほかには? 盗賊も逃げ込んだのか?」

「……俺と、スーリャだけだ」

「家を燃やされてからずいぶん経ってるだろ。食いもんとかはどうしてたんだ」

「キノコとか山菜を食ってた。あと虫とか鳥も食ってたぞ」

「うえ、昆虫食か」

 

 こいつ、結構根性あるやつなのかもしれない。

 まだ子供なのに、俺より生存能力がありそうだ。

 

「じゃあ、もう聞きたいことも聞けたし、俺達は行くよ。じゃあな」

「え……?」

 

 そういって俺は引っ張り上げていた女の子を再び寝かせた。

 どうしてこんな場所に集落があるのかとか、なぜ集落の家屋が原始的なつくりなのか……気になりはしたが、聞きたいことは聞いたし、もうかかわることもないだろう。

 

「エド、行くぞ」

「あ、うん……いいの?」

「こんなところにとどまっていても、どうにもならないだろ」

「……そうだね」

 

 エドはタロと名乗った少年と寝ている女の子に思うところがあるようだが、俺たちにだって余裕があるわけじゃない。

 子守なんてしてられないからな。

 結局この集落では大した収穫もなかったし、長居する理由もない。

 さっさと立ち去るとしよう。

 

「お、おい、待てよ!」

 

 立ち去ろうとすると、後ろから声がかかった。

 

「あ? なんだよ」

「お前ら、一体何なんだ? 盗賊じゃないのか?」

「盗賊じゃない。今は旅人みたいなもんだ」

「これからどうするんだ? どこに行くんだ?」

「直近の目標は適当な村でも見つけて冬を越すことだが……なんでそんなことを聞くんだ?」

「……なぁ、俺も連れて行ってくれないか?」

 

 タロは突然そのようなことを言い出した。

 

「一応理由を聞いておこう。なんでだ?」

「このままじゃ遠くないうちに死ぬからだ。寒くなってくれば食えるもんも減ってくるし、俺はともかくスーリャ……そこに寝ている子は体力が持たないかもしれない。それに、いつまでもここにいるわけにもいかない」

 

 確かに、俺たちも冬の間はどこかの村に身を寄せるつもりだし、こいつがそう判断するのもわかる話だ。

 

「頼む、助けてくれ! 何でもするから!」

「ん? 今何でもするって言ったか?」

「い、言った、けど……」

「……どうする、エド」

「……出来れば、連れて行ってあげたい。山菜の知識とか持ってるみたいだし、役立つかもしれないよ」

「そりゃこいつだけならな。でもあのスーリャとかいうのも一緒についてくるだろ。なぁ?」

「……ああ、スーリャのことも、助けてくれ」

 

 タロは必死な表情で懇願してくる。

 ずいぶんとスーリャのことが大切らしい。

 だが、こんな幼い少女を連れていくのもなぁ。

 移動も遅くなるかもしれないし、食料も今より多く確保しなくてはいけなくなる。

 それに、当たり前だが道中は危険だ。

 こんな幼い子をしっかり守れるかといわれると、自信は全くない。

 

「ヴェロも最初はスーリャって子のこと、助けようとしてたでしょ」

「たしかに……まあいいか。俺たちの邪魔しない限りは連れてってやるよ」

「本当か!? あ、あと、実はさっき嘘ついたんだ。生き残り、もう一人いるんだ」

「何?」

 

 まだ生存者がいたらしい。

 というか嘘ついてやがったのか。

 まぁ、警戒するのは間違っていないが。

 

「役立つなら連れて行ってもいいが……とりあえず連れてこい」

「わかった」

 

 そう言い残してタロは森の中に入っていく。

 しばらく待っていると、タロはもう一人少年を連れて戻ってきた。

 

「こいつはモロ。スーリャの兄貴だ」

「ど、どうも。モロ、です」

 

 現れたのは茶髪てボサボサの頭をした子供だった。

 タロと同じくらいの年に見える。

 

「一人で森の中にいたのか?」

「わ、罠を仕掛けてたんです。そ、その、動物を狩るのために……」

「へぇ、お前、罠なんて作れるのか」

「は、はい」

 

 なかなか使えそうじゃないか?

 もしかしたら、食料確保が楽になるかもしれない。

 

「モロはすごい器用なんだ。罠だけじゃなくて、他にもいろいろ作れる」

「それはいいな。モロ、お前も俺たちと一緒に来るか?」

「つ、連れてってくれるんですか?」

「ああ、役に立つならな」

「は、はい。あ、ありがとう、ございます」

 

 受け答えはしっかりできているな。

 

「とりあえず、このスーリャって子の体調を何とかしなきゃな。エド」

「うん。タロとモロって言ったね。とりあえず、スーリャに何か食べさせよう。すごい衰弱していたし」

「わかった」

「ぼ、ぼくたちはどうすれば……」

「お前らも食うか? 燻製肉」

 

 こうして旅の仲間に子供3人が加わった。

 まさか子連れになるとは思わなかったな。




呪術
使用するのに触媒となるものが必要であり、呪術使用後触媒は消失する。
射程圏内なら基本的に必中する。
強力な呪術ほど大量の触媒が必要となる。
定型的な習得方法が確立されていないためあまり広まっていない。
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