私はお金のためにダンジョンに潜っています…。って配信?いやいや、根暗女には無理ですよ…   作:しらいうつほ

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2話

 後日、私はあいりちゃんと約束した「配信でのコラボ」をする日を迎えた。

 

 ……とは言っても、私は配信者じゃないし、「コラボ」と言っていいのかも分からない。

 

 そんなわけで、私はあいりちゃんに指定された喫茶店で待ち合わせをしていた。

 

 まずは、どんな配信内容にするか、最終的なすり合わせを行う予定らしい。

 

 あの日、連絡先を交換してから、メッセージアプリに箇条書きで送られてきたのは――

 

『先輩冒険者に教えてもらいながら、ダンジョンを攻略してみた!』←これが一番やりたいです!

 

 このメッセージに、特に強い熱意を感じた。

 

 まあ、私も初めてのことで喋れるか分からないし、「教える体」なら会話も持つだろうと思って承諾することにした。

 

 ……急に訳の分からない女が配信に現れて、先輩ヅラしてるとか、心ないコメントが来ないことを祈るばかりだ。

 

 ⸻

 

「あっ! ひかりさん! お待たせしました!」

 

「あ、ううん、待ってないよ。私も今来たところだから」

 

 ――うおお……私服のあいりちゃんだ……可愛い……。

 

 配信の時はツインテールだったけど、今日はおさげ。

 ……よく似合っている。

 

 私は髪が長いと戦闘の邪魔になるので、短くボブに切り揃えている。

 ……いいなぁ、私も髪伸ばしてみようかな?

 

 ――と思ったけど、自分があいりちゃんみたいなツインテールをしてる姿を想像して、吐きそうになった。

 

 ……うん、似合わないな。

 

 あいりちゃんの私服は、フリル多めの可愛い系ファッションで統一されていた。

 甘ロリ系が好きなのかもしれない。

 

「というわけで、今日はありがとうございます! 配信、楽しみです!」

 

「う、うん。うまく喋れるか分からないけど……頑張ってみるね」

 

「はい! ダンジョンではひかりさんが先輩ですけど、配信では私が先輩なので、ドーンと任せてください!」

 

 そう言って、あいりちゃんはウィンクしながらガッツポーズをした。

 

 ――うおお、キラキラしてる。

 

 これが……インフルエンサーの輝きってやつか。

 

 ⸻

 

 こうして、私たちは夕方から行われる配信の打ち合わせを行い、おおよその方向性を決めた。

 

 そして、配信のためにダンジョンへ向かう。

 

 受付を済ませ、1階層の入り口で準備を整える。

 

 あいりちゃんは持参した小型のドローンカメラを浮かせて、スマホで設定を始めた。

 

 なるほど……追尾型のドローンって、こうやって操作してるのか。

 

 なんだか、いろいろ応用できそうだな。

 セーフティゾーン以外で休憩するとき、背後からの奇襲に備えるのに使えるかもしれない。

 

 ……まあ、私はこれまでソロでやってきたから、感覚は鋭い方なんだけどね! 見なくても対応できちゃうし!

 

「よし……! ちゃんと映ってる!」

 

「終わった?」

 

「はい! これから配信を始めますね! ひかりさんは、打ち合わせ通りでお願いします!」

 

「う、うん、分かった!」

 

 私はとりあえず、カメラの画角に入らない位置で待機する。

 あいりちゃんに呼ばれたら入っていく段取りだ。

 

 ――や、やばい……緊張してきた。

 

 え? これから私が、あいりちゃんの配信に出演するの?

 推しの配信に? 私みたいな仏頂面の強面女が!?

 

 あいりちゃんの熱量に流されてここまで来てしまったけど……今になって急に実感が湧いてきて、動悸と汗が止まらない。

 

 ど、どうしよう……! 

 

 私の顔が出るのはまずい! と、とにかく顔を隠せるものは――

 

 あっ! さっき喫茶店で買ったドーナツの紙袋!

 あれで……なんとか!

 

 ⸻

 

「こんにちはー! 今日も『あいりチャンネル』を見てくれてありがとー!」

 

 ・こんにちは!

 ・あいりちゃーん!

 ・待ってた!

 ・今日もかわいい……へへ

 

「さてっ! 今回は、このチャンネル初のゲストをお呼びしました!」

 

 ・ゲスト!?

 ・事前告知してたやつか

 ・誰だ誰だ!?

 ・男か!?

 ・ガタッ

 ・コ、コロス……!

 ・落ち着け

 

「あはは! 男の人じゃないよー! 先日、私を助けてくれた女の人で、すっごく綺麗な人なんだよ!」

 

 ・ふう……危なかった……

 ・危うく理性のタガが外れるとこだった……

 ・もう外れてるぞ定期

 ・大丈夫?ケガは?

 

「ケガは大丈夫です! この通りピンピンしてます! そして今日は、その人に来てもらってます! 先輩なので、いろいろ教えてもらうね! ひかりさーん! ……え?」

 

 はっ! 名前呼ばれた!

 

 私は、ドーナツの紙袋を頭から被り、カメラの前へと姿を現す。

 

 あいりちゃんは、口を大きく開けて困惑していた。

 

 ・え?

 ・何……これ……何?

 ・誰!? 怖いよ

 ・変態じゃねーか!

 ・綺麗な女の人……?

 

 追尾型ドローンに搭載されたモニターには、どこからどう見ても変態な姿をした私が映っていた。

 

 コメントも混乱。私も混乱。

 

「え、えーっと……ひかりさん?」

 

「あの……ごめん……恥ずかしくなっちゃって……」

 

「あ、あはは……えーい! そんなんで配信できるかーっ!!」

 

 あいりちゃんが叫びながら、紙袋を上から剥ぎ取ろうとする。

 

 私はそれを下から押さえて抵抗する。

 

「ま、待って!? 心の準備が!!」

 

「打ち合わせしたじゃないですか! 散々練習したでしょ!」

 

「いやっ! なんか実際にやるとなると恥ずかしくなって……」

 

「ウブな乙女ですか!」

 

「ウブな乙女ですけど!?」

 

 ・漫才かよ

 ・草

 ・なんだこれ……

 ・これはこれでアリ

 

 ギャーギャー騒ぎながら、紙袋を引っ張り合う私たち。

 

 ひ、ひぃ〜! あいりちゃん、意外と力強い!

 

 あれ? 今、ビリッて音しなかった?

 

 ――あ、やばい。破れた。

 

 両側から引っ張ったせいで、紙袋が真ん中から破けてしまい、私の素顔がカメラに映ってしまった。

 

 や、やっちゃった……!

 

 絶対コメントで「期待外れ」とか言われるやつだ……!

 あいりちゃんが持ち上げすぎて、ハードルが上がってるのに……!

 

 ……と思った、その瞬間。

 

 ・うおおおおおお!!!

 ・美女きた──────!!!

 ・ほう……クール系ポンコツ美女……大したものですね

 ・綺麗すぎる!

 ・でも初登場で紙袋被ってた変態だよね?

 

 な、なんだかコメント欄が盛り上がっている……。

 

 次々と「美女」「かっこいい」「クール系」などのコメントが溢れ返る。

 

 び、美女!? クール!? 綺麗!?

 わ、私が!?

 

「え? へへ……き、綺麗……へへへ……」

 

 ・ニヤけるなw

 ・笑うなw

 ・超美人からの謎のニヤケ面

 ・ギャップがすぎるwww

 

 調子に乗った瞬間、今度はボコスカに叩かれた。

 

 凹んで、その場で体育座りしていじける。

 

「あー! ちょっとみんなー! ひかりさんは配信初めてなんだから、お手柔らかに!」

 

 ・え、初心者?

 ・先輩って言ってたから、大物が出るのかと

 ・あれ? 俺、冒険者だけど見たことある

 ・俺も

 ・私も

 

「え? みんな、ひかりさんのこと知ってるの?」

 

 ・だってその人……誰も到達できなかった39階層をソロで攻略した人だし

 ・中堅冒険者ならみんな知ってると思う

 ・いや普通にすごい人だよ

 ・え!? ニュースになってたやつ!?

 ・攻略者って非公開じゃなかった?

 

「え、ひ、ひかりさん……そんなに凄い人だったんですか……?」

 

「あー、うん……39階層なら、ソロで攻略したよ」

 

 高校生から攻略が解禁されるダンジョン。

 

 私は中学生のときに年齢を偽って潜ってたから、学校にバレないように火消しに奔走して、理事長に土下座までした。

 

 でも一部の人にはバレちゃって、結局、停学になったんだよね。

 

 ……お金が必要だったんです……。

 

「あわわ……私、そんな凄い人を……」

 

「ああ、大丈夫。むしろ今日はすごく楽しみにしてたから」

 

「……ひかりさん……!」

 

 ・何この…何?

 ・てぇてぇってやつか……

 ・こんな愉快な人が……トップ冒険者とかwww

 ・クソおもろいwww

 

 こうして私たちは、めちゃくちゃな茶番を繰り広げた末に、ようやくダンジョンへと潜っていくのであった……。

 

 

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