私はお金のためにダンジョンに潜っています…。って配信?いやいや、根暗女には無理ですよ…   作:しらいうつほ

5 / 7
4話

 次から次へと流れてくる情報に、私は軽く目眩を感じていた。

 

 どれもこれも、昨日の配信に関するものばかり。切り抜き動画や、ニュース配信系のストリーマーが、私たちの話題をあれこれと語っている。

 

 冷や汗をかきながら、私は誰とも絡んでいない、推し活専用のSNSアカウントを開いた。

 

 ──その瞬間、目が点になる。

 

「……は?」

 

 トレンドの上位、1位から10位のうち、7つが昨日の配信に関連するワードで埋め尽くされていた。

 

 

#ひかりさん神

#あいりちゃん無事で良かった

#岩を斬る女

#女主人公ってこういうのだよね

#ダンジョン配信伝説回

#百合ですか?

#最推し確定

 

 

 などなど、言葉を失うラインナップがずらり。

 

「な、なんで百合……?」

 

 思わず声が漏れた。というか、全部なんで!?

 昨日はただ配信して、ちょっと落ちて、無事に帰ってきただけじゃないか……!

 

「お姉ちゃーん、ごはんできたよー。……って、なにその顔」

 

 部屋に入ってきた妹が、私の様子を見て怪訝な顔をしたあと、スマホの画面を覗き込むなり、吹き出した。

 

「すごっ! バズってるじゃんお姉ちゃん! めっちゃ話題になってるよ!? “岩スパーン女”って呼ばれてる〜!」

 

「や、やめて!? その呼び方だけはやめてぇ……!」

 

 まさかの全国区デビュー。

 朝から私は、頭を抱える羽目になった。

 

 

 

 ―――

 

 

 

 そんなこんなで、学校が終わり、午後。

 

 今日一日、学校でも私の話題で持ちきりだった。

 

 普段まったく絡みのないクラスメイトにまで冷やかされて、教室では「岩スパーン女」とあだ名が定着しそうな勢い。もう無理、耐えられない。

 

(な、なんでこうなったんだ……!)

 

 そして今、私は冒険者の管理所に呼び出され、応接室に座っている。

 

「いや〜、昨日の配信、ほんっとうにすごかったですね!」

 

 そう声をかけてきたのは、いつも鉱石の換金でお世話になっている、金髪で胸の大きいお姉さん──望月さん。

 

 満面の笑みで、両手を合わせて話しかけてくる。

 

 私が苦笑いを浮かべると、すかさず続けてきた。

 

「一部始終は記録済みです。報告書にも使わせてもらいますが、それとは別に……できれば今後も配信を続けてほしい、との要請が上層から来ておりまして」

 

「……え?」

 

「正式に“配信者・ひかり”として、ダンジョン管理部からお願いです。“あのレベルの冒険者が新人指導している姿は非常に貴重”とのことでして」

 

 ありがたいのか、面倒なのか、よく分からない提案に、私は内心でため息をつく。

 

(……目立つの、苦手なんだけどなあ)

 

「もちろん、あくまでお願いですので、配信をやるかやらないかは、ひかりさんにお任せしますよ」

 

 そう言って、望月さんはいつもの営業スマイルで話を締めくくった。

 

 

 

 ―――

 

 

 

 管理所のロビーを歩いていると、すれ違う冒険者たちが軽い歓声を上げてきた。

 

「ひかりさーん! 昨日の配信、めっちゃかっこよかったです!」

 

「切り抜き、何回も見ました!」

 

「岩切れるなんてすごいっすね! 今度俺のスパーンもお願いしまーす!」

 

「しません」

 

(なんなんだコイツら。いたいけな女子高生をからかって楽しいのか……!?)

 

 ちょっとした有名人扱いに、心がまったく休まらない。

 

 そんな時──。

 

 ロビーの向こうから歩いてきた、見慣れた人影に私は思わず足を止めた。

 

「あいりちゃん……!」

 

「ひかりさん……!」

 

 彼女は手を振って、少し照れたような笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。

 

「昨日は、本当にありがとうございました……あの、動画、すごいことになってて……」

 

「うん、私も朝から妹とクラスメイトにからかわれたよ。ほんと、すごいことになってるね」

 

 二人で顔を見合わせて、自然と笑ってしまう。

 

「その……もしよかったらなんですけど……また、一緒にダンジョンに潜ってくれませんか……?」

 

 あいりちゃんが、少し不安そうに、けれど期待に満ちた目でそう尋ねてきた。

 

「あ、あの! 配信とか関係なくて……昨日、一緒に戦って……その……すごく楽しかったから……」

 

 慌てながら言葉を繋ぐその姿に、私は思わず目を細める。

 

「……うん。考えとく」

 

「……はいっ!」

 

 彼女の笑顔が、思った以上にまぶしかった。

 

 

 

 ロビーのベンチに座っている間にも、SNSでは「ひかり×あいり」のファンアートや、動画サイトでは切り抜き動画が続々と投稿されているらしい。

 

 ついには、妹からメッセージアプリに通知が届く。

 

「お姉ちゃん、今“あいりの騎士”って呼ばれてるよ」

 

「……誰が騎士だ。誰が……」

 

 私はため息をつきながら、スマホの通知をオフにした。

 

 

 

 ──でもまあ。

 

 あいりちゃんがまた、あんなふうに笑ってくれるなら……

 もう一回くらい、付き合ってあげてもいいかな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。