救済を願って   作:バレンシアオレンジ

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26 また逢える日まで

 

 トライアングルが前哨基地を襲撃してから数日が過ぎた。しかし私は変わらずコマンドセンターの前で日がな一日丸まっている。

 

「Doro」

 

 夜も更けた頃、またマリアンを狙った人間たちが近付いて来た。なので私はこれまでの襲撃者たちにしたのと同じ様に、彼等が此方に気付く前に昏倒させて前哨基地から叩き出す。あれから昼夜を問わず襲撃を受けているが、こう何度も続くと最早慣れてただの作業でしかない。特に今回の様な噂に踊らされただけの、戦力も連携もトライアングルとは比較にすらならないお粗末な連中であれば尚のこと。

 

 倒した彼等を片付けてから元の場所に戻り、改めてコマンドセンターを見上げると、普段は消えている筈の電気が今も点けられており、窓からは光が漏れていた。

 

「……」

 

 きっと皆で現実と向き合っているのだろう。

 

 元々、人類にとってラプチャーの中でも特殊個体であるヘレティックの研究は最優先事項だ。今は宇宙を漂うだけだが、現在に至るまでに齎されたあらゆる絶望の起源といえるクイーンの発生原因調査や、その戦力評価をする上でヘレティックは重要な情報源であると同時に、ヘレティック自体がアーク防衛における重大な脅威である以上、それは当然のことだと言える。

 

 そんな状況下で、破片でしかないにも関わらず近付くのも危険なマテリアルHと異なり、全身があり生きていてかつ研究対象としても危険の少ないヘレティックが見付かったとなれば、軍関係者は勿論のこと、多くの人々が徹底した調査解析を求めるだろう。

 

 その皮膚は何故銃弾・爆弾の破片や衝撃に対してニケよりも遥かに高い耐性を有するのか? 

 高い耐性を持つに至る機構が解明されたとして、どの様な銃弾・砲弾があればその皮膚を貫きヘレティックにダメージを与えられるのか?

 ニケも脳さえ無事なら物理的に損傷した箇所を交換して再利用可能だが、ヘレティックの異常な再生能力はどの様な原理によるものなのか?

 その原理が解明されたとして、再生に必要なエネルギーや資材の取得を阻害するのは可能なのか?

 ヘレティックは巨大化という明らかに物理法則を無視した事象を行うが、どの様にしてそれ程大きな質量を持つ物体を出現させているのか?

 それが解明されたとして、巨大化の最中にその作用を乱してヘレティックに損害を与えるもしくは巨大化を封じることは可能なのか?

 

 私でさえも少し考えるだけで幾つも調べるべきことが思い付くのだから、本職の研究者であればより多くの重要な事柄を思い付き調査しようとするだろう。そしてそれらの内、たった1つでさえも明らかになれば大きな技術革新に繋がるのは疑う余地が無い。

 

 だからこそ結末は変わらない。いや、変えられない。

 

 マリアンがアークに狙われ追われるのを防ぐためには、最初から情報封鎖しか方法が無かった。マリアンがラプチャーに同情したからラプチャー側のスパイだとかいう話もあったが、所詮は建前として丁度良かっただけに過ぎず、それ自体が本来の追われる理由ではないのだから。

 

 そのため、マリアンを守るには機密情報を漏洩した張本人であるバーニンガムを、情報漏洩する前に排除する必要があった。そしてそれが可能か不可能かの単純な二択で判断するなら、私が最善を尽くせばバーニンガムの排除自体は可能だっただろう。しかしながら、バーニンガムは副司令官としての職務に従事しているだけであり、また人類全体の利益という観点からすれば彼の行動は何も間違っていない。その上、アーク内で副司令官を暗殺するなんて馬鹿な真似をすれば中央政府のお偉方は勿論、エニックも黙っていないだろう。

 

 それ故、私は前哨基地を襲撃する人間を追い返すという中途半端な行動をしている。

 

「DoroDoro」

 

 しかし中途半端な行動でも、やる意味はあると私は思っていた。それが避けられない別れであっても、望まない悲しい別れであっても、最後に交わした言葉に後悔しない様に、最後に伝えた言葉が呪いにならない様に、皆で沢山話し合って沢山泣いて気持ちを整理して受け入れるための時間があるのと無いのとでは雲泥の差だから。例え今生の別れではなくとも、また逢える日が来ることを信じられる様に。

 

 

 

 

 

 

 夜が明けた頃、コマンドセンターからカウンターズの皆が出てきた。

 

「いつもありがとう。君には本当に助けられてばかりだな」

 

 主人公は何かを言いながら玄関前にいた私の頭を撫でる。更に主人公が手を離した後、ラピが、アニスが、ネオンがそれぞれ順番に何かを告げて私を撫でた。

 

「ありがとう」

 

「ありがとね」

 

「ありがとうございます」

 

 私の思い上がりでなければ、恐らく感謝を伝えてくれているのだろう。そして最後にマリアンが私を抱え上げる。

 

「DORO、あなたがトーカティブから守ってくれたお陰で、私は指揮官とまた逢うことができました。そして今もあなたが守ってくれているお陰で、みんなとしっかりお話することができました。本当にありがとうございます。あなたが私のためにしてくれたことは絶対に忘れません」

 

 マリアンは私をぎゅっと抱き締めてから降ろし、カウンターズの皆と共に歩きだした。

 

「Doro!」

 

 その背に向かって私が一声鳴くと、彼等は皆笑顔で手を振ってから地上へと去って行く。

 

「……」

 

 マリアンがアークに戻るのはヘレティックである限り難しいだろう。更に彼女がクイーンとして覚醒した後であれば、例え主人公が副司令官と同じ位の権力を手にしたとしても、アークでの平穏な生活を守るのは不可能に近い。でも地上でなら、ほとぼりが冷めた頃には、また会うこともできるだろう。

 

 そう考えてから私は首を振る。

 

 その先は私が考える必要の無いことだ。

 彼等自身が考えて歩んだ先の物語なのだから。

 

 今の私が考えるべきことは、マリアンがいなくなったことがアークに知れ渡るまで、今少し此処に居座り続けて、彼等の帰る場所を守ることだ。それが終わったらどうしようか。教会に顔を出すのは当然として、マリアンがスノーホワイトたちと共にクラウン王国へ無事辿り着けるか見に行くのもいいだろうか。まあ、何にせよゆっくり考えればいい。

 

 朝日を浴びながら私は少しだけ目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

【Another Side】

 

 パイオニアのみなさんは、指揮官の頼みを聞いてヘレティックだった私を快く受け入れてくれた。そして私は、これから向かうラプチャーが興味を持たない安全な場所で、指揮官が迎えに来てくれるまで過ごすことになる。

 

 その道中もみんな気遣ってくれて、地上で生きるのに必要なことを色々教えてくれた。

 

「こういった土が泥濘む場所は、なるべく避けたまえ。沼があるかもしれぬ。私たちの重さでは、一度はまれば一巻の終わりだ」

 

 足元を示しながら紅蓮が言う。

 

「沼ですか……知識としては持っていますが、実際に見たことはなかったです。そこまで危険なんですね」

 

「まあ、重さで出られなくなるのは水と変わらないわ。でも沼は湖と違って地面との境界が分かり難いこともあるから、特別な理由が無いなら、レンの言う通り泥濘みは避けた方が無難ね」

 

「なるほど」

 

 薔花の補足に納得する。確かにそれなら近付かない方がいい。

 

 

 

 

 

 

「この様な民家には、役に立つものが沢山あります。毛布や燃料として使えるものも多いですよ」

 

 ラプンツェルが室内を見渡して言う。

 

「……必要な物資をアークで支給されてから出撃していた私が聞いていいことではないかもしれませんが、勝手に持ち出すことに何か思うことはありませんでしたか?」

 

「勿論、ありますよ。家の中を探すとそこで暮らしていた人の色んなことが分かりますから。でも彼等は帰って来られません。なので私は謝罪と感謝をして残されたものを使わせて頂いています」

 

 私の不躾な問いにもラプンツェルは穏やかに答える。

 

「辛くはないのですか?」

 

「最初は辛かったこともありました。でも生きていくためには必要なことですから」

 

 そう言ってラプンツェルは少し悲しそうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

「ラプチャーは見た瞬間に、倒さねばならない。そうしなければ、こちらが殺られる」

 

 スノーホワイトが地上での心構えを説く。

 

「スノーホワイト……」

 

「どうした?」

 

「その、私も以前はラプチャーと戦うことは、当然のことだと思っていました。でも今は、何故戦う必要があるのかなんてことを考えてしまうんです。どうすれば……」

 

 自意識を取り戻しても尚、継続している思考の変化について対処方法の意見を求める。

 

「簡単なことだ」

 

「それは?」

 

「戦うのは、ラプチャーが悪い奴らだからだ」

 

 スノーホワイトの答えは単純明快だった。

 

 

 

 

 

「この世のことは、すべからく気の持ちようさ。心を落ち着ければ、恐れるものなどないのだ」

 

「心を落ち着ける……」

 

 明鏡止水だろうか。

 

「そうとも」

 

「……今の私には少し難しいかもしれません」

 

 何時も指揮官や前哨基地でのことを考えてしまう。

 

「難しく考える必要はないわ。とっても簡単な方法があるもの」

 

「姉さんの言う通りだ。何も難しいことはない」

 

 しかし剣の姉妹はそんなことないと言う。

 

「えっと……それは?」

 

「酒を呑めばよい。そうすれば何もかも楽になる」

 

「そうね〜酔えば悲しいことは忘れられるし、楽しい未来を想像して元気になれるの」

 

「そう……ですか……」

 

 地上で酔っ払うのは危険に思えるけど、目の前の2人位強ければ問題ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

「民家を探すと、本が見付かることもあります。嵩張る上に重いので、持ち歩くのは大変ですが……読んでみれば、世界を見る目が変わりますよ」

 

「ラプンツェルは例えばどんな本を読んで見る目が変わりましたか?」

 

 本棚の前で、どんな本を読めば地上で生きるのに役立つのか分からず質問する。

 

「そうですね、ここにある本では……これは!」

 

 ラプンツェルは本棚を調べると驚きの声を上げた。

 

「熱くて盲目的なもの……第1巻……! そんな……名作中の名作が何故こんな場所に……!?」

 

「熱くて盲目的なもの……そんなに素晴らしい内容なのですか?」

 

 普段と違って上気している様に思えるラプンツェルに改めて尋ねる。

 

「も、勿論です! これを読めば見る目が変わるどころか、新しい世界が開きます!」

 

「新しい世界……?」

 

「ええ、わ、私が読み方をお教えしますね。はあ、はあ……!」

 

 ラプンツェルが鼻息荒く説明した内容は、とりあえず地上で生きるのには役に立たないものだった。

 

 

 

 

 

 

「よく覚えておけ。食べられる時に食べろ。食べられるものは何でも食べろ」

 

「何でも……? えっと、地上にはパーフェクトによる代替食品ではない本物の食べ物があるんですよね。例えば何が簡単に手に入りますか?」

 

 DOROが前哨基地に持ってきてくれていた野菜や果物を思い起こしながらスノーホワイトに聞く。

 

「虫だ」

 

「えっ?」

 

「虫だ」

 

「……それは食べ物ではないと思いますが」

 

 聞き間違いではない様なので、私自身の常識に従って意見を言う。

 

「あいつは食べていた」

 

「……指揮官がですか!」

 

 しかし予想外の事実により私の意見は否定された。

 

「そうだ。あいつも地上を理解し、蜘蛛でも幼虫でも何でも食べた。それにニケであるお前はあいつと違って食中毒の心配がない。何でも食べろ」

 

 そう言ってスノーホワイトは、近くの朽ちた壁に張り付いていた蜘蛛を捕まえて此方に差し出す。

 

「食べろ」

 

「……うぇ」

 

「吐き出すな。飲み込め」

 

 初めて食べた蜘蛛は、噛むとどろりとした汁が出てきて、苦く食感も悪かった。

 

 

 

 

 

「今日はここまでにして休みましょう」

 

 夜になるとラプンツェルが、また私に気を遣ってそう言ってくれる。

 

「姉さん、どうかしたのかい?」

 

 徐々に野営にも慣れてきていたので、準備していると突然紅蓮が薔花に問い掛けた。

 

「うん、エリカが近付いてきてる気がする……」

 

「なら、私はラプンツェルとジャマーを設置して、使えるものがないか付近を捜索してくる」

 

「スノーホワイト、それは構いませんがよだれを拭いてください」

 

 薔花の言葉に、よだれを垂らしながら立ち上がったスノーホワイトを、ラプンツェルが窘める。

 

「えっと、誰が近付いてくるのですか?」

 

 みんな知っている人が近くまで来ている様なので、私は素直に誰なのか聞いた。

 

「ああ、君は知らないのだね。DOROと呼べば分かるかい?」

 

「どろ……ってDOROですか! 別の名前があったなんて知りませんでした」

 

「勿論名前はあるとも。彼女もまたニケだったのだから」

 

「!!」

 

 DOROがニケだったと聞き絶句する。それは形が違っても私と同じ……

 

「その話はまた後にして、今は私たちと釣りにでも行くとしよう」

 

「迎えに行かないのですか?」

 

「駄目」

 

 私が尋ねると薔花が直ぐに否定した。

 

「あの子は私たちが気付いていると知れば逃げちゃうから。気付いていない振りをしなきゃ」

 

「……何故ですか」

 

「まあ、私たちにも色々あるということさ。兎に角、荷物を置いて少しここから離れよう」

 

 

 

 

 紅蓮の言葉に従い魚を釣ってから戻ると、ラプンツェルとスノーホワイトはまだ戻っていないのに、荷物を置いた場所の側には石を積んだ竈が作られていて、鍋が火に掛けられていた。

 

「いい香りね〜」

 

「ほう、酒もあるではないか」

 

 薔花は鍋を確かめ、紅蓮は先程まで無かった袋の中を調べている。

 

「あの……」

 

「さっきの話の続きが気になるのかい?」

 

「はい、何故離れる必要があったのですか?」

 

「姉さん、いいかな?」

 

「……そうね、話しましょうか」

 

 そして2人は魚の下ごしらえをしながら教えてくれた。

 

 量産型ニケの友人の話。

 その人から送られた予言の話。

 仲間を庇って亡くなった話。

 DOROとスノーホワイトが会った時の話。

 ずっと食べ物を分けてくれる誰かの話。

 何度も会おうとして失敗している話。

 

「まあ、こんなところね。他に聞きたいことはある?」

 

「……何故、DOROはみなさんから逃げるのですか」

 

 パイオニアのみんなから何度もアプローチがあるのだから、逃げずに話を聞こうとしてもいい筈だと思った。

 

「怖いのよ」

 

「怖い……ですか?」

 

「マリアン、君なら私たちよりも気持ちが分かる筈だ。もしもの話だが、君が誰もいない場所で自分を取り戻したとして、ぼっちゃんに会いに行くとしよう。しかし再会したぼっちゃんに、ヘレティックとして敵意を向けられ、銃で撃たれたらどう思うかい?」

 

「それは……怖いです」

 

 怖くて悲しくて仕方がないと思う。

 

「そうであろう、彼女は怖がっているのだ。私たちが最初に間違えてしまったから」

 

「勿論、エリカも馬鹿じゃないから、私たちが気付いているかもしれないって考えているとは思う。でもね、あの子からすればそれはあくまでも"もしかしたら"の話なの。確実じゃないから、会う勇気が出ない。また気付いてもらえないかもしれないと思うと、心が痛くて苦し過ぎるから。あなたも坊やに敵意を向けられたとしたら、何度も会いに行く勇気は出せる?」

 

「……出せないと思います」

 

 指揮官に受け入れてもらえなかったとしたなら、私も耐えられる自信はなかった。その答えに2人は頷く。

 

「その上、言葉を話せず文字も読めないともなれば、神経質になって当然なのだよ」

 

「それなのに、あの子はこうして時々食べ物を持って来てくれる。だからね、いつか必ず直接逢って、怖がらなくていいよって伝えて、これまでのお礼を言うの。助けてくれてありがとう。ずっと支えてくれてありがとうってね」

 

 薔花の言葉には、強い想いが込められている様に思えた。

 

 

 

 

「戻りました」

 

「おかえり〜」

 

 少しすると、ラプンツェルとスノーホワイトが戻ってきた。手には毛布や細々とした雑貨を持っている。

 

「食べたか?」

 

「君じゃないんだから、そんな真似はしないさ。戻るまで待っていたとも」

 

 スノーホワイトは目を輝かせながら竈を見て、紅蓮に尋ねる。

 

「それじゃ、みんな揃ったことだし食べよ〜」

 

 薔花の合図でみんな食べ始める。DOROのお陰で今夜の食事は豪勢だ。焼いたパンにチーズや魚などを挟んだサンドイッチにスープと果物がある。

 

「……!!」

 

「……」

 

 スノーホワイトが一心不乱に食べているのを見ていると、少し不思議に思えた。今食べている料理は、アークの基準でも美味しいと思えるし、この様子ならスノーホワイトにとっても同じなのだろう。しかしそれなら私と味覚に大きな差はない筈。なのに何故、虫を前にした時にもよだれを垂らして食べようとするのだろうか。

 

「マリアン、君もどうかね?」

 

「紅蓮……お酒、ですか?」

 

 そんなことを考えていると、薔花と共に紅蓮が杯を手に声を掛けてきた。

 

「うむ、エリカのお酒は中々に絶品だ」

 

「いえ、私は……」

 

 地上で酔うのは危ないし、ただでさえ迷惑を掛けているのだから、酔っ払って更に迷惑を掛けてはいけないと思い断ろうとする。

 

「難しく考えなくていいの。ずっと張り詰めていたら、いつか切れちゃうでしょ? だからたまには息抜きもしないとね〜」

 

「そうだとも。君の状況は察するに余りあるが、だからこそ溜め込み過ぎるのは良くない。ほら」

 

 しかし2人にそう言われ、杯を受け取ってしまった。

 

『かんぱ〜い!』

 

 掛け声に合わせて呑み干したお酒はとても美味しかった。

 

 

 

 

「紅蓮」

 

「何かね?」

 

「お酒、もっとください」

 

 私がそう言うと、紅蓮は困った顔をした。

 

「……ねぇ、マリアン。流石に呑み過ぎじゃない?」

 

「気持ちを緩めるのに必要なので、ください」

 

「……1杯だけだよ」

 

 見兼ねて薔花も心配するけど、私はまだ平気なのでお酒の追加をお願いする。すると紅蓮は薔花と顔を見合わせた後、困った顔のまま注いでくれた。

 

「ふあ〜最高です〜」

 

 なるほどお酒が体に悪いと分かっても尚、完全に禁止されない訳だ。2人の言う通り気分が良くなる。しかし……

 

「……うえぇーん」

 

「情緒不安定ねー」

 

 指揮官のことを考えると、悲しくなるのは変わらない。

 

「指揮官、地上は怖いところですー! 虫は食べ物じゃないですー!」

 

「そんなことはない、貴重な栄養源だ」

 

「でも、美味しくありませんー!!」

 

 スノーホワイトの言葉は間違っていないのだろう。でもせめて調理くらいはして欲しい。虫を生で食べていると自分が文明人なのか分からなくなる。

 

「それに私がいない間に、ラピと何があったんですか、指揮官ー! 初対面の時は難癖付けられていたのにー! アニスも絶対に指揮官のことを異性として意識してますー!」

 

「こ、これはまさか、伝説のNTR! 先に親密になったのは私なのに! 他の誰かとなんて悔しい、でもこの胸の高鳴りは一体、なんて……はあ、はあ……!!」

 

「私は純愛派ですー!!」

 

 ラプンツェルが鼻息荒く言うそれを否定したくて叫んだ。

 

「……」

 

「姉さん?」

 

「う〜ん、ヘレティックでも簡単に酔うんだな〜と思って」

 

「……流石にマリアンが特別なだけか、或いは気の持ちようが影響しているのではないか? 他のヘレティックにもアルコールが効果的という訳ではなかろう」

 

「そうよね、うん……」

 

 紅蓮と薔花が私を見ながら何か話していたけど、そんなことどうでもよくなっていた。いや、後から思えば酔って正常な思考が出来なくなっていただけなのだけれども。

 

 兎も角、地上での時間はこうして何事も無く?平和に過ぎ去っていった。

 

【End】





 遅れましたが続きます。
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