【完結】 Memoria   作:破れ綴じ

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Their secrets

【WPPO幹部職員以外の閲覧を禁ず】

【この書類にはLV4の閲覧制限がかけられています】

【閲覧後に機密保持のため精神汚染が発生します】

【単独または不用意な閲覧は行わないように】

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 WPPO機密文書

 特別能力者 対処要綱

 

 分類コード:Ω-SUPREME-007

 機密レベル:LV4

 制定   :██年█月█日

 最終改訂 :██年█月█日

 承認者  :WPPO最高司令官 ラナ・ヴァレンタイン

 

 

 

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第1章:特別能力者

1-1 特別能力者の法的定義

 本文書において「特別能力者」とは、以下の条件を全て満たす能力者を指す。

 

 必要条件A:破壊能力規模

 短期間(72時間以内)で世界中のあらゆる文明・国家を壊滅寸前まで追い込む、完全に壊滅させる、または世界そのものを物理的に破壊することが可能な能力を保有すること。

 

 必要条件B:阻止困難性

 本人が世界への攻撃に関する明確な意思を表明した場合、能力を用いない一切の手段では基本的に阻止することが不可能であり、かつ不可逆的に攻撃を進行させることが可能であること。

 

 必要条件C:即時性

 上記破壊行為の実行に要する時間が極めて短く、発動から完了まで既存の対処手段では対応が困難な速度を有すること。

 

 

 

1-2 危険度分類体系

 現行のWPPO能力者危険度分類は以下の通りである。

 

 分類I:

直接的な危険性が低く、他者を害することが不可能・不向きである能力。

 

 分類II:

 使用方法及び使用者の意図によっては他者を害する可能性を有する能力。

 

 分類III:

 使用することで確実に、または強く他者を害する能力。

 

 特別能力者は上記I~III分類に収まりきらない即時性及び絶大な破壊能力を保有しており、既存の危険度評価基準を大きく超越する存在として独立した分類を設ける。

 

 

 

1-3 情報統制

 特別能力者の存在に関する情報は、以下の理由により世界規模の混乱を招く可能性が極めて高い。

 

 ・大規模なパニック状態の誘発

 ・既存社会秩序及び経済システムの機能不全

 ・各国政府に対する信頼度の失墜・緊張感の加速

 ・当該能力者の暴走

 

 これらの理由により、本情報は世界平和維持協定第█条に則りLV4の準最高機密として取り扱い、WPPO上級司令官以上への開示に限定し、それ以外への開示を禁止する。

 特別能力者として既に認定されている能力者は、表向き分類IIまたはIIIの能力者として扱い、内部情報はWPPO上層部のみで秘密に記録・処理することで、本情報は秘匿する。

 

 

 

1-4 特別能力者の活用について

 現在WPPOでも複数名の特別能力者が職員として登録されている。

 

 

 

 ……

 

 

 

第3章:接触プロトコル

3-1 初期発見及び確認手順

 特別能力者の発見・攻撃イベントは基本的に、ラナ・ヴァレンタイン最高司令官の保有する『現在から2週間先までの未来を予知する能力』による事前察知を起点に発生する。

 予知により特別能力者が出現・確認された場合、以下の段階的手順を実行する。

 

 Step 1:詳細予知の実施

 ・対象の能力発動タイミング及び発現条件

 ・能力の具体的性質及び破壊規模の算定

 ・対象の性格、価値観、精神状態の詳細分析

 ・各種対処法の成功確率及びリスク評価

 

 Step 2:対策チーム編成

 ・接触班:心理学専門官、交渉専門官、医療班、武装班含む護衛

 ・監視班:遠隔監視専門官、現地潜入工作員

 ・武装班:WPPO能力部隊、重装備部隊

 ・支援班:情報処理班、医療班、技術班、後方支援班

 

 Step 3:事前準備の完了

 ・対象周辺地域への監視網構築

 ・緊急時避難計画の策定

 ・情報統制体制の確立

 ・各国政府首脳への限定的通達

 

 最高司令官による未来予知以外の方法により特別能力者が確認された場合は、即座にStep 2から手順を実行する。

 その際、能力者の具体的性質や破壊規模の算定を行うため、意図的に当該能力者を暴走させる緊急プロトコルを作成し、実行を予定する。これにより、最高司令官が最終的な結果を予知するため、問題なく予知が完了した場合、緊急プロトコルそのものを即時完全停止させ、資料として記録する。

 緊急プロトコルの実行より前の段階で大きな問題が発生する場合は、最高司令官の予知により事前に察知し、即時に完全停止が命令される。

 

 

 

3-2 監視体制の確立

 発見から接触まで、対象に対する24時間体制の監視を実施する。監視項目は以下の通り。

 

 ・交友関係及び社会的つながりの完全把握

 ・精神状態の変化に関する継続的観察

 ・能力使用の兆候に関する即座の検知

 ・能力に応じた対象周辺の完全監視

 

 

 

3-3 接触手順及び交渉プロトコル

3-3-1 友好的接触の実施

 対象が非敵対的である場合、以下の段階的手順により慎重な接触を実施する。

 

 Step 1:最適なタイミング及び場所において、専門の心理カウンセラー及び交渉専門官による接触を実施する。

 ・対象の人権及び尊厳の完全な尊重

 ・段階的な信頼関係の構築

 ・能力に関する情報の慎重な聞き取り

 ・WPPOの存在意義及び活動内容の丁寧な説明

 

 Step 2:初期接触において好意的な反応が確認された場合、以下の段階的アプローチを実施する。

 ・定期的な面談による精神状態の安定化

 ・能力制御に関する基礎的な指導の提供

 ・社会支援及び生活環境の整備

 ・家族及び友人関係の維持に関する支援

 

 Step 3:対象との信頼関係が十分に構築された段階において、以下の選択肢を提示する。

 ・WPPO保護施設での安全な生活の保障

 ・専門的な能力制御訓練の受講

 ・一般社会での生活継続に関する支援

 ・WPPO職員としてのスカウト及び採用

 

 

 

3-3-2 消極的対象への対処

 対象が接触に対して消極的である場合、以下の段階的措置を実施する。

 

 ……

 

 

 

 ──────────

 

 

 

第4章:敵対的対象に対する段階的対処プロトコル

4-1 非致死的制圧手段の実施

4-1-1 能力抑制措置

 対象が敵対的意図を明確に表明した場合、以下の非致死的手段による制圧を最優先で実施する。

 

 ・薬剤による意識レベルの調整

 ・特殊素材による身体拘束具の使用

 ・他の能力者による対象能力の中和

 ・精神汚染による記憶削除での無効化

 

 

 

4-1-2 交渉継続プロトコル

 制圧措置実施中においても、以下の交渉を並行して継続する。

 

 ・高位交渉専門官による説得の継続

 ・対象の要求及び条件に関する慎重な検討

 ・可能な限りの譲歩及び妥協案の提示

 ・人権侵害を最小限に抑えた解決策の模索

 

 

 

 ……

 

 

 

4-4 緊急事態対応プロトコル

4-4-1 終了処理

 対象が世界規模の破壊行為を実行する明確な兆候を示した場合、以下の緊急対応を実施する。

 

 即座の排除許可:

 現場最高指揮官の独断により、対象のあらゆる状態・権利・事情を一切考慮することなく、保有する全手段による即座の排除を許可する。

 この措置に関しては事前承認を要せず、事後報告制とする。

 

 使用可能手段には以下を含む。

 

 ・核兵器を含む大量破壊兵器の使用

 ・生物兵器及び化学兵器の無制限の使用

 ・他の能力者による対象への攻撃

 ・周辺地域の被害を度外視した無差別攻撃

 

 

 

4-4-2 排除実行後の処理

 排除実行後は以下の処理を緊急実施する。

 

 ・周辺被害の完全な隠蔽及び復旧

 ・目撃者全員に対する記憶操作の実施

 ・関連証拠の完全な抹消

 ・各国政府及びメディアへの偽装情報の提供

 

 

 

 ……

 

 

 

4-5 最終措置プロトコル

4-5-1 最終措置実行条件

 以下の条件が複数の観点から確認された場合、最終措置の実行を検討する。

 

 排除不可能性の確認:

 ・物理的手段による排除が完全に不可能であることの確認

 ・能力的手段による排除が完全に不可能であることの確認

 ・時間的猶予が完全に存在しないことの確認

 ・他の一切の手段が無効であることの確認

 

 

 

4-5-2 最終措置の実行

 上記条件が満たされた場合、WPPOに所属する████の能力によって対象をこの世界から強制的に削除する。

 本措置の実行には最高司令官ラナ・ヴァレンタインの直接命令を要し、他の如何なる権限によっても代行することはできない。

 

※ 重要注意事項:████及びその能力に関する詳細情報は最高機密LV5に指定されており、当該情報へのアクセスには追加の機密アクセス権限及び最高司令官または副最高司令官の個別許可を要する。

 

 

 

 ……

 

 

 

第5章:事後処理及び情報管理体制

5-1 証拠隠滅及び現場復旧プロトコル

5-1-1 物理的証拠の処理

 特別能力者との接触事案において物理的被害が発生した場合、以下の処置を段階的に実施する。

 

 被害状況の完全把握:

 ・被害範囲及び被害程度の精密な測定

 ・復旧可能性及び復旧所要時間の算定

 ・目撃者数及び情報拡散可能性の評価

 ・各国政府への影響度及び対処必要性の判定

 

 偽装説明の構築:

 ・自然災害(地震、津波、火山噴火等)による被害

 ・工業事故(爆発、火災、化学物質漏洩等)による被害

 ・テロリスト攻撃による被害

 ・軍事演習における事故による被害

 

 

 

 ……

 

 

 

【警告】

 本文書は読了後即座に精神汚染を自動発動させる。

 アクセス権を所持している職員は既定の手順に従い、精神汚染の内容に対応した記憶修復システムを起動せよ。

 記憶修復後はデータベースから出力した本文書が自動的に消失することを確認してから退出せよ。

 

 ……

 

 

 

 ──────────

 

 

 

「あー、あったねこんなの。あの1週間の時のやつだっけ」

「そうです。色々漁ってたら偶然見つかったので、持ってきちゃいました」

 

 今日はオルテの提案でWPPOの機密文書を気になる奴から順に全部読んでいってやろうということになった。

 あんまりよろしくないんだろうけど、前に1度勝手に読んでいる手前、モラルがどうとかは中々言い出しにくい。

 

 だからとりあえず

 「あの脳がかき回されるような感覚はもう二度と味わいたくない」

 って相談してさりげなく反対したら、

 「読み上げて口頭での情報伝達が可能なのだから、機械に読ませればいいのでは?」

 って言って、彼女は文字認識と自動音声の機能を備えた機械を外から買ってきた。

 この機械に紙面を映すと自動的に書かれている文字を読み上げてくれるらしい。

 

 こうなったら、もう彼女は止められない。

 WPPOの皆さんごめんなさい。僕も何だかんだ言って中身が気になるし、彼女の説得は諦めます……。

 

 

 

 そうこうして、結果僕らの目の前に、かつて2人で精神汚染を乗り越えてまで読んだWPPOの機密文書が転がってるって訳だ。もちろん危ないから開いちゃいないよ! 

 文書としてはあのとき消失したけれど、既知の図書館には現在・過去の全ての書物が所蔵されるシステムだから、これも自動的に再生成されたんだ。

 

 おかげでこうしてまた手元に戻ってきた、と。

 手元に戻って来て嬉しいものなのかなこれ。

 

「2人の素敵な思い出の品ですね」

「素敵かぁ。素敵かなぁこれ」

 

 そりゃずっと読みたかった中身を読めた時の感動は大きかった。

 おかげで今でも内容は断片的にだけど思い出せる。

 

 特別能力者の概要、接触プロトコル、緊急プロトコル、他にも色々。

 人的被害についての処理方法とか、情報統制とか、隠蔽工作の仕方とかも書いてあったかな。そこまでは完全に覚えきれてないけど。

 最後の方に【警告】ってあるんだよね、確か。

 

「素敵ですよ。あのときの興奮は忘れられません。今でも一字一句覚えています」

「えっ」

 

 

 

「一字一句はおかしくない? 僕も大好きな本はいっぱいあるけど、全部記憶なんて無理だよ」

「はて、普通にできると思いますが。というか私、今まで読んだ本はほぼ全て覚えていますし」

 

 えぇ……? 

 これって僕がおかしいのかな。流石にそんなことないと思うんだけど。

 

「まあラディは違うのかもしれませんね。普通はそういうものですよ、きっと」

「そっかぁ、僕がおかしいのかぁ……」

 

 そうなんだ、知らなかったな……。

 

 

 

「まあ既に中身を知っているこれはどうでもいいとして」

「ああ、素敵な思い出が」

 

 ぽいっと放り投げるオルテ。

 バラっと飛んで行った本は図書館の効果で光の粒子になって消えていく。

 

 相変わらずオルテは興味ないものを急にぶん投げるなぁ。

 WPPOの人達はこの図書館とオルテを知ったらどう思うんだろう。

 

「今回集めてきたやつだと気になるのはこれらですね」

 

 そう言って彼女は新しく3つの文書を並べた。

 

『ラナ・ヴァレンタイン最高司令官』

『████及びその能力』

『WPPO所属 特別能力者名簿』

 うわぁ。

 

「どれもLV5の閲覧制限がかけられていました。5が最高機密みたいです」

「うわぁ」

「LV4よりさらに複雑な精神汚染がかけられているようですが、私達は機械に読み込ませるので何も問題ありません」

「文書を許可とかパスワードなく自由に準備できるなんてWPPOは知らないからね。対処とかもできないよね……」

 

 

 

「なんだか悪の組織の内情を探るスパイみたいでワクワクしますね」

 

 ポジティブ。逆の立場だと思うけどなぁ僕たち。

 まあいいか。

 

「このことは他の人に秘密だからね?」

「勿論。私達だけの機密情報ですね」

 

 ああ確かに、そういう言い方をされると。

 なんだか、ワクワクしてきちゃうね。




【ラディ】
図書館に住む青年。本を丸ごと覚えられない自分は異常なのだと誤解している。
感受性豊かで、物語のミスリードにしっかりひっかかってくれるタイプ。
最近オルテに影響されてる気がする。悪い大人に憧れる子供みたいでよくないと思う。

【オルテ】
図書館に住む少女。本の内容ぐらい当然全て覚えられるものだと誤解している。
どんな些細な情報も覚えていて、物語のミスリードにまるでかからないタイプ。
他人の秘密は暴く癖に自分達の秘密は作ろうとするダブスタぶりは今日も健在です。

【ラディの図書館】
既知の書物と未知の書物の全てが所蔵されているありとあらゆる知識が手に入る図書館。
秘密保護の観点においてこれ以上ないほど凶悪な性能をしている。
二人が外部に漏らす気が無いことだけが救い。

【WPPO】
World Peace Preservation Organization (世界平和維持機構)。
能力者がいる世界で、世界の平和を守るため日々努力している組織。
にも拘わらず、どこぞの知識欲モンスターによって極秘情報を簡単に閲覧されている。
しかも気づくことすらできない。めげずに頑張ってほしい。

【特別能力者】
WPPOが定めた、非常に危険度の高い能力を保有する能力者を指す言葉。
簡単に言えば野良に突然POPする超強い能力者。
パニックを避けるため機密情報扱いになっている。
こんな世界だからそんな存在もきっといる。いるだけで、別に本編には関係しない。
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