興味とは全てに優先する。人は知りたいという欲望に勝てないからだ。きっと皆そう。
知識を得ることこそがこの世で最も快楽を得る行為であり、残りは全てそれに準ずる。
興味を持ったその刹那、その瞬間の感情を大事にしていきたい。
それがいずれ思いもよらない、新たな経験に繋がるかもしれないのだし。
──────────
そういえば。
「ラディ。一つ聞いても良いですか?」
「いいよ。どうぞ」
今日も私はこの図書館に来ていた。
ちなみに朝の状況については割愛する。
どうせ昨日と変わらない問答をして、図書館に入っただけだ。
変わったことと言えば、私が髪の整え方を変えたことにラディが気づいたことぐらい。
彼は意外とよく見ている。
そんなことはどうでもいい。
作業中、ふと思いついたことがあって、私は勉強中の手を一旦止めた。
「この図書館には未来についての書物は無いのですよね?」
「そうだよ。君が来たときは結構びっくりしたね。誰がいつ来るとかも分からないからね」
へえ。
言われてみればそうか。私の来訪はラディにとって完全に予想外の出来事だったのか。
ふうん。
じゃあタイミングが悪ければ、入室の儀式が行えなくなるのでは?
「貴方が席を外していると、私が扉の前にいても返事が返ってこないということですか?」
「そうだね。今日は昨日と同じ時間に来るって言ってたからちゃんと待ってたけど。そのこと?」
「違います。脱線しました」
話している最中に他のことに興味が行って、そのまま疑問が口に出てしまう。
悪い癖だ。
「貴方はラプラスの悪魔をご存じですか?」
「あー知ってるよ。あのー、あれでしょ。この世の全ての情報を知っていれば、過去も未来も完全に予測できる……みたいなやつ」
「概ねその通りです。主に量子力学における不確定性原理、計算量の膨大さや観測者効果故に、成立しないとは言われていますが。まあこれからの話において詳細な内容は省略し、十分な知識があればラプラスの悪魔は存在するという仮定で話をしましょう」
「うん……うん? うん」
説明の手間が省けた。
普段から色々本を読んでいるらしいし、結構博識なのだろう。
「『能力学の理論』を読んでいて思ったのですが、あの本は未知の図書館にしかない情報、まだ世には発表されていない情報を前提に大部分が書かれています」
「そうだね。分からない単語がいっぱいあるって言ってたからね」
「つまり、未知の図書館にある本は、また別の本の情報を参照しているのです。未知の図書館にはこの世の全ての知識が存在している、ですね?」
「だね。何でもあるよ」
この世の全ての情報を知っていれば、ラプラスの悪魔は存在する。
未知の図書館にはこの世の全ての情報が記されている。
図書館の本は図書館にある全ての情報を参照できる。
ここから導き出される結論はつまり。
「なら、未知の図書館の本は事実上この世の全ての知識を参照できるということ。ラプラスの悪魔が成立するのであれば、理論上は未来を予測できるはずです」
「確かにそうだね」
「なのに、なぜ未来についての書物がないのか。今までの話から『1年後の未来』という本があってもおかしくないはずです。と、なると逆説的にやはりラプラスの悪魔は存在し得ないのでしょうか」
「あー、なるほど」
ラディは少し考え込むように腕を組んだ。
腕を組んでしまったため、ラディの顔が隠れて見えなくなってしまった。
相変わらず大きいな。私はこの年齢の女子としては平均的な身長をしているのだが。
というか、考えるということは、知らないのか。
「僕もそこまで深く考えたことなかったよ。確かに気になるね。どうしてなんだろう」
「分からないのですか?」
「まあ、うん。ここのことは概ね把握してるつもりだけど、僕はこの図書館そのものじゃないからね。どうしても分からないことだってあるさ」
「そうですか」
「ちょっと待ってね。『どうして未来の本が無いのか』って本を探してくるよ」
そういってラディは未知の図書館に向かっていった。
何だ。やっぱり知らないのか。
となると本で読むしか無いのか。
ラディの発想は柔軟だ。
分からないことについて何度も悩んだりせず、そのまま『~について』の本を探すことで解決しようと考えることができる。
その発想と行動力は間違いなくこの特殊な空間に長くいることで培われてきたものだろう。
だが、私にとっては本当にふと湧いてきた疑問で、聞けばすぐ分かると思ったから聞いたのだ。
別に今の勉強を完全に中断してまでやる内容でも無い。
『能力学の理論』と違って内容を完全に理解したい訳じゃないし、本当にただふと気になって理由を知りたかっただけ。
なんだかどんどん興味が薄れてきた。
本で読んで分かるぐらいのことなら、別に後でもいいか。
読めば分かる程度のことなんて、いつだってできてしまうのだし。
「あったよ。『どうして未来の本が無いのか』って本。僕も興味あるから一緒に読まない?」
数分もしないうちにラディは戻ってきた。相変わらずの速度で。
せっかく探して貰って申し訳ないが。
「あとで読みます。ありがとう。そこら辺に置いといてください」
「えぇ……」
──────────
手を止めて一息ついた。
集中しきっていた思考が少しずつ落ち着いていく。
ページを捲り、出てきた用語の解説を読み込んで、必要な計算式を脳内で整理し、重要な内容はメモとして書き込む。これを繰り返すこと数千あまり。
これだけやってようやく、ページ数に換算して能力学の理論の10%を理解できたぐらいだろうか。
正直これぐらいであれば、内容を全部暗記してもいいのだが。
現状10%となるといずれ覚えきれなくなる部分が出てくる。そのためにもメモはしっかり残しておくべきだ。
まだまだ先は長いが、中身のない研究を続けていたあの頃と比べれば圧倒的なまでの前進と言えるだろう。
疲れてきた、なんてことはない。
例え疲れていたとしても、それが私の知識欲を止める原因にはならない。
他に用事があっても、直前まで楽しいことを止められないと一緒だ。
ただ、一切休憩を入れないのも逆に効率的ではないと分かっている。
過去に学んだ心理学や人間工学は私に休憩の必要性を教えてくれた。
なので、キリの良いところでちょっと一息。
あと5分ほどしたらまた作業に戻ろう。
「調子はどう?」
と思ったらラディが声をかけてきた。
私が手を休めた頃合いを見計らっていたのだろうか。
「私が手を休めた頃合いを見計らってました?」
「まあね。集中してる時に声かけて邪魔しちゃ悪いと思って」
「まあ」
なんて良い人だろう。
集中を乱されることは認知負荷や切り替えコストの観点から、間違いなく良くないと言えるものだ。
しかし、ラディは何も言わないでもそのあたりを配慮してくれている。
配慮ができる人は素敵だ。
後でちょっと優しくしてあげよう。
覚えていたら。
「私の進捗が気になるのですか?」
「うん。あと、図書館が役に立ってるのかなって思って。多分役に立ててるよね。昨日今日でもう何百冊運んだか分からないし」
「おかげさまで。順調に進んで今全体の10%といったところでしょうか」
「まだ10%かぁ……」
作業量とその結果が見合わないと思ったのだろうか。
若干引いたような声でラディは驚きを口にした。
なんだその言い方は。
これまでの歴史を振り返れば、今ここで起こっているのは歴史的な進捗なんだぞ?
「あくまでのあの本のページ数を参考にした進捗なので、実際にはあとどれぐらいの知識が必要になるかは分かりませんよ」
「先は長いんだなぁ……。1週間で読み切れるといいね」
「そうですね」
それぐらいで読み終わる想定だったのか。1週間では無理だと思うが。
そんなことが聞きたかったのだろうか。
「でもプラトンも『始まりは労働の最も重要な仕事の部分である』って言ってるからね。君は一番重要な10%を終えたんだよ。その努力は称賛に値するべきだと思うな」
「労わってくれているのですか?」
「そうだね」
「そうですか」
なるほど。
ではついでに、配慮を見せてくれるラディに私もお返しをしてあげよう。
私はラディの隣に腰掛ける。
「前々から思っていたのですが、ラディは言葉の意味をよく間違えて使っていますよね」
「えっ」
「なんだか状況を見て、知っている言葉を無理に使おうとしているように見えます」
「うっ……そ、そうかな」
さっきのプラトンの言葉『The beginning is the most important part of the work』は始める時の慎重さ、基礎固めが一番大切という意味合いだ。
ラディが使っている「最初の10%を終えた=最も大事な部分が済んだ」というニュアンスは本来の意味からややズレている。
「……という意味なのですよ。誰かから教わったりはしなかったのですか?」
「いや……。しなかったね。間違った意味で覚えてたみたいだ」
「そうですか。別に他人が間違えた知識を使うのはどうでもいいですが。貴方は私に優しくしてくれたので、特別に教えてあげました」
「そうだったんだ。ありがとう。1つ賢くなれたよ」
「貴方の間違いは1つだけじゃなかったですけどね」
「えっ」
今までも思っていたが、ラディはよく諺・格言を引用したがる癖があるように見える。
どうしてだろうか。読んだ本にすぐ影響されるタイプ?
「あと、思ったのですが」
「うん?」
「そんなことが気になったのなら、未知の図書館に行って『オルテの学習進捗』みたいな本を探してくればいいのではないでしょうか」
そうすれば、私が休むまでの時間を待つ必要も無い。
無理に私に合わせず、自分の好きなタイミングで望む知識を得られると思うが。
彼に思いつかない訳でもあるまいし。
「まあ、それはそうだよね。それもできるんだけど」
「だけど?」
「知りたい情報を、ただ本で読んでおしまいだなんて素っ気ないし、寂しいよ。それを繰り返すと、いずれはどうせ本で読めるから他の手段は全部無くていいってなると思う」
「なるほど?」
「それに、こうやって人と話し合ったり教え合ったりする方が楽しいし、有意義だと僕は思うんだ。だからだね」
ふむ。
そうだろうか?
知識を手に入れる手法が異なる程度で、楽しいも有意義も無いと思うが。
この人との価値観の違いが少し垣間見えた気がする。
「なるほど。よく分かりませんでした」
「そっかぁ。よく分からなかったかぁ……」
よく分からなかった。
分からなかったが。
多分この人が間違ったことを言うはずも無いので。
もし機会があれば私も試してみようか。
まあ。覚えていれば、だが。
「ところで、今日は何か食べ物を持ってきてないの?」
「そう言うだろうと思って、一応購買でパンを買ってきましたが。さてはこっちが本命で声を掛けましたね?」
「バレた?」
──────────
「これは美味しいで合ってるよね。昨日よりすごく味がある気がする」
「合ってますよ。どうやら味覚まで死んでいる訳ではないようで。よかったです」
「えっ」
今日買ってきたクロワッサンをもしゃもしゃと口に含むラディ。
昨日のことで警戒しているのだろうか。
変に思わず、好きに食べればいいのに。
これは図書館を使わせてもらっているお礼なのだから。
しかし、食べにくそうだ。崩れやすいクロワッサンは止めるべきだったか。
何故だかそれしか売っていなかったので、致し方なく購入したのだが。
思えば私は2日連続でパサパサの食べ物を与えている。
次の日は別のタイプの食べ物を与えてみるべきだろう。
この空間には机や椅子は無いし、皿やナフキンも無い。
あるのは純白の床と壁。さっきまで読んでいた本とラディ。それだけ。
彼も頑張っているがパンくずがポロポロと零れてしまっている。
あーあー。こんなに散らかしちゃって。
「本にパンくずがかかってますよ」
「おっと? ごめんね。汚かったかな」
「汚かったですね」
「うっ……」
パンくずを払って本を返す。
タイトルは『Ficciones』。スペイン語、「フィクション」か。
「創作集ですか?」
「ん、これ? そうだよ。『伝奇集』っていうの」
「へえ」
「スペイン語が読めるの?」
「まあ、苦労しない程度には」
「へー。オルテもまだ若いだろうにマルチリンガルなんだね。偉いなぁ」
私はどちらかというとハイパーポリグロットと呼ばれる存在だと思うが。
大体マスターしたのは30ヶ国語ほどだろうか。
言語学は辞書を引いているときが一番楽しかった。
内容を覚えてしまってからはただの紙屑でしかないというのが残念な点だ。
にしても、作り話、か。
詳しい内容は知らないが、興味が湧いてこない。
「僕は物語が好きでね。普段暇な時間は既知の図書館で色々な物語を探し回ってるんだ」
「そうですか」
「あんまり興味ない? 面白いよ?」
「そうですね。全く」
「……そっかぁ。残念」
がっくり肩を落としている。
割と本気で残念そうだ。
しかし、架空の情報よりも私は現実の知識が欲しいので。
どうしても興味が湧かないことは容赦してほしい。
まあ、あの人が勧めるのだからきっと興味深い内容ではあるのだろう。
時間があれば読んでもいいかもしれない。
そういえばさっき払ったパンくずが見当たらない。
あれか?
これがルール2の機能か?
時間経過で汚れや乱れを綺麗にする図書館の機能とやらか?
だとすると便利なものだ。
いくら汚れても問題にならないのだから。
もしかしたらそういう仕様であることを把握しているが故に、ラディはものを零すような食べ方が日常的になっていたり、いつのものか分からないキャンディを口にすることができたりしたのかもしれない。
よかった。
私が帰った後で腹を壊したラディはいなかったんだね。
──────────
パタンと音がして、ラディが立ち上がる。
本を読み終わったのか。ということは次に読む本を探しに行くのだろう。
物語が好きな彼は未知の図書館よりも既知の図書館をよく利用するらしい。
まあ、この世に存在しない物語など嘘の情報に等しいのだから、未知の図書館で探す必要性など無いのだろう。
私には関係ない。
今いいところなのだ。何か分かりそうな気がする。
メモを1つ書いて、隅に貼り付けて。また1つ書いて、逆側に貼り付けて。また1つ。
……おや。
足音が聞こえない。
見上げるとちょっと引いたような顔のラディが目に映った。
ちなみに結構見上げた。私は床に本を広げていて、ラディは立っている訳だから。
ただでさえ凄まじい高低差が今限界まで広がっている。
なんだなんだ。どうしたというのだ。
「……大丈夫? 片付けない?」
「え?」
「いや、ちょっと目を離した隙にすごくメモが増えてる気がして……」
辺りを見渡す。
それぞれ適切なページで開いたままにしてある本と大量のメモ用紙が、私の脳内を模倣した通りのルートで規則的に並べられている。
ちょっと場所は取っているが。
これぐらいよくあることだろう。
それもすごくだなんて。
すごくだなんて。失礼な。
「場所を取りすぎですか? もっと整理した方がいい?」
「場所を取る分には構わないんだけど、うん」
そうなのか。いやしかし。
今並べられたこの情報達は私にとって完璧な配置そのもので。幾何学的な構造に則った規則的な配置なのだ。それなりに整理されていると私は思う。
この状態が最も脳内を整理しやすい、簡単に言えば見やすい状況なので。
私は所謂、ものを一か所に集めたり向きや並べ方を揃えたりするタイプの「片付け」を好ましく思っていない。
だって、今この環境が私にとって一番活動しやすいからだ。
苦手ではないが。決して苦手という訳ではないと思うが。
どうせまたすぐに使うというのに。
色々模索した末に今の配置があるというのに。
場所を移したところで特に何か変わる訳でも無いのに。
わざわざ元あった場所に戻したり、一か所に集めるだなんて意味が分からない。
「勝手にものを片付ける図書館の機能については話してたでしょ?」
「ええ、聞きました。しかし散らかっていませんから。綺麗ですよね?」
「えっ」
「えっ?」
えっ散らかってるのか? これで? そんなことないだろう?
と、言おうとした瞬間少し風が吹いた気がした。
「あ、ほら」
「わっ」
周りを見れば。
適切に配置された図書館の本が光の粒子となって、その姿を消していき。
開いたノートは勝手に閉じてしまって、並べたメモが勝手に移動を始めていく。
えっ?
「えっ、これがそれですか」
「ごめんね」
手を合わせて彼が言う。
何を謝るというのか。今起こってるこの現象を先に止めてほしいのだが。
「これって全自動だから僕に制御できる感じのものじゃなくて……」
「そんな」
そういえば、これまで新しい本を探しに行く度に、元の部屋に戻れば用済みになった本が消えていた。そのときはラディが気を利かせて片付けてくれたのかと思い、深く考えなかったが。
思えばあの量の本を正確に元の場所へ戻すのは相当の労力が必要だろう。
本棚にルールや規則性があるのかどうかは知らないが、それを全て1人でやるというのは単純に考えて難しいというのが明白。
それも図書館の機能で片付いていたとするなら説明がつく。
パンくずがいつの間にか見えなくなっていたのもやはりそうか。
あれは『汚れ』として図書館に判断され、その姿を消されたのだ。
しかし、それは同時に。
この完璧な配置が、私の勉強風景が、苦労して並べた勉強の証が。
図書館に『乱れている』との判定を受けてしまったことを意味する。
そうこうしてる間にも山のような本の数々が消えていく。
ちょっと、そんな。
せっかく何か分かりそうなところだったのに。
冗談でしょう?
1分もしないうちにエントランスは元の姿を取り戻した。
私が初めてここに入ったときと何も変わらないように。
一つ違うのは、並べられているのが本ではなく私のノートだということ。
ラディと初めて出会ったときに本が綺麗に並べられていたのは、図書館の能力で勝手に片付けられないためか。
あのレベルで丁寧に配置しなくては乱れている判定を受けてしまうのか。
「……で、僕もこんなに散らかってるなんて気づいてなかったんだけど。放っておくととこうなるから片付けた方がいいよっていうのを言おうと……。その、大丈夫……?」
……いや。大丈夫だ。
ノートに書いた内容まで消えていた訳では無かった。
少し無駄足を踏んだだけということ。
最悪配置も中身も全て記憶すればいい。少し時間がかかるだけで別に難しいことではない。
ただ、せめてもう少し先に教えてくれればと思う。
まあ、彼はそもそもこの機能が習慣化してしまっていて普段意識すらしておらず、それに加えて読書に集中していたために気づかなかったのだろう。
だから伝えるのが遅れてしまった、と。
「その」
「その?」
「これからは、もっと。きちんと、片付けようと思います」
「……うん、そうした方がいいよ」
なんだか母親に起こられている幼い子供のようだ。
別にいいが。私はそんなこと全く気にはしないが。
能力とは人が自由に内容を決めたり、基準を設けたりできるものではない。
能力が引き起こす結果というものは、ラディ自身の個人的判断によるものではないので。
そんな存在から客観的に指摘を受けてるとなると自覚せざるをえない。
そうか、私は自分が思っていただけで。
本当は片付けが下手だったのか。
そうだったのか。
そうだったのか……。
──────────
せめて少しでもさっきの感覚を思い出せないかとノートを振り返る。
すると少し前にした会話のメモが残されているのを発見した。
【ラディが持ってきてくれた『どうして未来の本は無いのか』の本を読む ←(時間があれば)】
あっ。
そういえばそうだった。確かそんな話をしていた。
ラディが読み終わった後、あの本を貰って、それで何処に置いたんだったか。
無いな。
これはさてはあれか。
「ラディ」
「ん? はい」
「結局どうしてこの図書館には未来の本が無いのですか?」
頭に「?」を浮かべた後、思い出したように手をたたき、そしてもう一度「?」を浮かべるラディ。
「あれ? 僕が読んだ後、あの本渡さなかったっけ。渡したよね」
「渡されました。ですが、おそらくさっきの自動片付けに巻き込まれ、他の本と一緒に元の場所へ片付けられてしまったかと」
「ありゃー」
「やっちゃったね」と呟くラディ。
「もう1回探してこようか?」と彼が提案するが、その必要はない。
あのときと違って、わざわざまた本を探しに行くよりよっぽど効率的な選択肢が、今目の前にある。
「でも別にいいですよね」
「?」
そう、貴方が言っていた。
本であっさり知識を手に入れてしまうのは素っ気ないと。
誰かと話し合い、教え合う方が有意義だと。
私はそうは思わないが、それを証明する準備が丁度今できてしまった。
「だって、本で読むより、既に知ってる貴方に教えて貰う方が早いですから」
【オルテ】
片付けができない主人公。本人はしないだけだと思っている。できない。
事実とは異なるフィクションに興味を持てないタイプ。
都合さえよければ反対意見でもすぐ取り入れるバイタリティの持ち主。
【ラディ】
なんか図書館にいる物語が好きな人。
読んだ本や見た映画にすぐ影響されるタイプ。
人との会話に飢えている気がある。彼にSNSを渡してはいけない。
【ラディの図書館】
既知の書物と未知の書物の全てが所蔵されている、ありとあらゆる知識が手に入る図書館。
なおラディによると、「理論上ラプラスの悪魔は存在するが、未来の本が存在しないのは図書館の仕様である」が本の内容だったらしい。