ハーレム目的でダンジョンに潜ったら、実は幼馴染のことが好きだった件   作:松田駅

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プロローグ
嘘つきのぴえろ


時計の秒針が刻む音が耳に響く中、少女の前方に藍色のソファに座っている女性が笑みを浮かべながら言葉を発した。

 

その声が聞こえる度に私の世界が色褪せる。

 

ーーあぁ、私はどこで失敗したんだろう?

男だと認識していた時に友人を愛してしまったこと? 自暴自棄になりハーレムを作るなんて、思ってもないことをいい加減に掲げたこと? そんなふざけた理由で興味のないダンジョンを攻略しようとしたこと? 過去の様々な巫山戯た行為が頭の中を過ぎていく。

 

数分前まで少年だった少女は自身の愚かさに嘲笑った。

 

 

「……そっか」

 

 

ーー空太郎には知られたくなかったなぁ。

 

 

少女は全てを諦めたかの様に項垂れ絞り出す様に霞んだ声で呟いた。

 

 

ダンジョンの物語ではない。

これは1人の少女カナタ・ローグラントの物語だ。

 

 

***

 

 

 

突然だけど今日、俺は探索者になる。

理由なんて、そら童貞だしお金もないからだよ。一攫千金のハーレムウハウハ、ぼくのかんがえた、なんかすごくてすごいじんせい! の為だよ。

 

友人である空太郎に相談せず探索者の申請をしてしまったのは罪悪感はあるし、暫く会えないのは普通にしんどいし周りの奴らとも会話しにくいけど仕方ないよね。

 

だって絶対止められるし、空太郎は着いてくるもん。

怪我させたくないし、辛い思いをしてほしくない。

 

いや、普段一緒にいるのは良いけど、残念ながらハーレムに俺以外の男はいらない。

というか見たくない。空太郎だって困っちゃうよ。

 

あ、ちなみに探索者は申請して、数日研修受ければ誰でもなれるんだって!

 

研修中の会話内容雑音だらけで、中途半端にしかわからなかったけどなんとかなるよね。後なんか教科書みたいなの貰ったよ! 

 

軽くページ巡って飽きてから捨てたけど! それから数日すると自宅に探索者証明カードってのが送られてくるんだよ! 材質はプラスチックで、名前とーー。なんかめんどくさいからパス。

 

 

「うっし、行くか」

 

 

現在昼頃お風呂に入り、寝巻きからトンキーホーテで買った灰色のスウェットに着替える。俺の髪と同じ色だからお気に入り!

 

 

「………チッ」

 

 

ふと鏡に映る黒くノイズが走っている自分を見て、一瞬表情が曇る。でもすぐに笑顔に戻した。

 

リュックには携帯食料と水筒、そしてメイン武器のシャベル。

それらを背負ってボロアパートを出た。

 

ぜってぇ、タワマンに住んで女侍らせて高笑いしてやっからな。

 

 

「◼️◼️◼️◼️◾️◼️」

 

「どうもー」

 

油断していると周囲の声が雑音に変換されて耳に届くからワイヤレスイヤホンを両耳に装着し、徒歩で最寄りの駅へと向かう。

 

ブーブーとかで返事するとトラブルになっちゃうし、空太郎に叱られちゃうから笑顔を意識して挨拶しないとね! 

 

 

「◼️◼️◼️◼️◼️」

 

「………」

 

 

ぐちゃぐちゃ煩い奴らをぶん殴る衝動をグッと抑え、無言で階段をのぼる。この時、笑顔を作ると気が楽になるよ! それでも空太郎が横にいないのは本当に心がしんどい。

イマジナリー空太郎を生み出さないと大変なことになってしまう。

 

騒がしい方が良い時もあると、誰が熱弁していたが、今がまさにその時だった。

 

何故なら、時折顔を覗かせてくる俺の醜い醜い本音を誤魔化せるからね。

ホームで暫く待つと機械音が鳴り、暫くしてから電車が来た。

 

 

『◼️◼️◼️◼️◾️』

 

 

 

電車を乗り継ぎ2時間。

着いたのは「渋谷の108」と呼ばれていたショッピングモール跡地。

現在は木製の所々ヒビ割れた古びたドアがあるだけだ。

 

これがダンジョンの入り口である。

初級ダンジョンで、この国が唯一管理を許されているダンジョンである。

 

教科書に載っていた情報によると、まずはここのボスに認められた者だけが野良ダンジョンを探索出来るらしい。

 

認められなくてもこのダンジョンは探索できるので、月30万くらい稼げるんだって! 優しいね。

 

でも俺の夢はそんな浅い所にはないから、ぱっぱとボスをボコボコにして次に行こうな。

そんな訳で探索者証明書を扉にかざして、開錠されたのを確認してからドアを開きその中に入って行く。

 

洞窟だった。

陽の光がないのに昼間くらい明るいし、なんか甘い匂いがするしで普通に不気味だった。

 

こわいなぁーこわいなあーとビビりながら入り口から少し離れた場所【魔石あります! と書かれた看板が目印】まで移動し、リュックを下ろした。

 

 

「誰もいないってこともあるのか……」

 

 

 

俺以外誰1人いないことに違和感感じつつも、シャベルで壁を掘り淡く様々な色に光る石数個をリュックに詰める。これの名前? 知らね。換金石って俺は呼んでるよ。

 

だってこのピンポン球サイズの石が千円で売れるんだよ? 換金石じゃん。とバンバン掘って、どんどん換金石をリュックに詰めていく。

 

 

「これは勝ち確だな!! ボスも楽勝だな!!」

 

 

数十分後俺はーー。

 

このダンジョンのボスに襲われ、冷や汗をかいていた。

ーーこのままじゃ死ぬかもしれない。でも...なんで死にたくないんだろう? ハーレムのため? 違う。

空太郎に会えなくなるからだ。それだけは嫌だった。

 

 

「……俺にチャンスをくれない?」

 

「……?」

 

 

惨めさのあまり下唇を噛みながらこうべを垂れていた。

なぜそうなったのか、それは数十分前に遡る。

 

当初、探索は順調であった。

壁を掘り、石をリュックに詰めてから掘る騒音を聞き付け、襲って来る下級ダンジョンに住む魔物であるゴブリンの頭部にショベルを振り下ろす。

それの繰り返しであった。

 

ゴブリンを最初に倒した時の心境は「無」。

吐き気も、命を終わらせた罪悪感も、命のやりとりをしたという高揚感も何もない。

 

あるのはそう、ずーと同じ作業していて、あー、そろそろ1時間くらいたったんじゃね? ……え? 5分しかたってない……。くらいの怠さと虚しさくらいだ、結構あんな。

 

なんかウガャウギャ雑音が聞こえたけど、気にせずシャベル振り下ろす。

 

なんかー面白いくらいにシャベルで頭カチ割れるんだよなぁ。

頭蓋骨クッキーかよ、生まれ変わったら牛乳飲もうな。

 

 

****

 

 

 

「…きも」

 

俺は横たわるそれを一瞥した後、吐き捨てる様に言った。

残骸に言った訳ではない、自分に対してだった。

 

 

「気持ち悪い」

 

 

俺は金持ちになり、ハーレムを築く為に潜った筈なのに。

そう、言い聞かせているのに、心が乱れる。

 

ザワザワとしてイライラとする。当たり前だ、これは所詮ただの嫉妬による八つ当たりなのだから。

ハーレムなんてのは唯の建前で。

あるのは俺の一方的で自分本位の同性の友人である空太郎への醜い感情だけだ。

顔を顰めながら立ち止まる。

 

あぁ。そうだ、笑えば良いんだ……。 笑顔でいればなんとかなる。

だって褒めてくれたから、かわいいって。その他がじゃない、空太郎がだ。……じゃあハーレム止める? 止めちゃう? なんでだっけ? あぁ、違う。ハーレムでタワマンだ、大丈夫笑顔だ笑え。

 

 

駄目だ心の声が止まってくれない。

無理矢理笑みを作ろうとするが吐き気先に来てしまい、しゃがみ込み数秒間目を瞑って自身に言い聞かせる。

 

 

「ハーレム万歳」

 

 

笑うことは出来たがショベルを持つ気力がないので引きずりながら数度襲ってくる吐き気を片方の手で押さえ前に進む。

 

普段だったらこの擦れる音に不快感を覚えていたが、今は心地良かった。

数分進んだ時、巨大な門が目に入った。

 

 

「ほぇ〜大っきいねぇ〜」

 

 

見上げ、気分の悪さを誤魔化すようにわざとらしく感嘆しながら周りを観察する。

ただただ広くそして、ポツンと見慣れない紋様が刻まれた流線形の門が佇み、その少し横に古びた古屋があった。

なんか意味わかんないばしょだなぁと呆けているとーー。

 

 

「ーー◼️◼️◼️よ、良くぞ此処まで辿りついた。試練を課すに値する者だと認めよう」

 

「え? いや、なんて? うにぁあぴぃじゃないよ? いや、話し聞いてよ」

 

 

気づいた時には目の前にそいつはいた。

俺のことを少女とほざき、木製の鍛錬とかで使いそうな斧を振り下ろしてくる。

 

早すぎぃ!

瞬時に横にとぶが石に躓く。

足挫いちゃったっ!

……というか、普通に会話出来るし、こいつ下等生物じゃないな?

 

四つん這いになりながら前方のそいつを見据える。

視線の先には猪の被り物にジャージを紫色のジャージを着た2メートルくらいの女が肩に木製の斧を担ぎながら佇んでいた。

 

 

 

「……なにを言っている? 卿は◼️◼️◼️という名の少女であろう?」

「……」

 

……この猪頭おれの神経逆撫でするなぁ。

でもまだ俺にこいつを狩る技術も力もない。

ぶん回す斧をギリギリ這いずりながら必死に転がりながら避け、その間に挫いた足の痛みがなくなり素早く立ち上がる。

が、この一瞬で自分の非力さが良くわかった。まず勝てない。ならばどうするか? 

 

 

「……俺は死にたくない。だからチャンスをくれない?」

 

 

ーー無様にこうべを垂らすだけだ。

 

 

「……元より卿を鍛える為に私はここにいる」

 

「えっ? どういうこと?」

 

 

色々なことが起きすぎて混乱しているし、目の前の猪頭はそれっきり黙るしで意味が分からないけど助かったみたいだった。

 

 

****

 

 

「…‥踏み込みが浅い。卿は剣術の才能がない」

 

「うぃす」

 

あれから二ヶ月がたち、現在修行中だぜ!

俺には剣術の才能がないみたいだぜ!! 格技武術を教わっているぜ!

サクッと紹介をするぜ!!

 

ステップ1実戦

 

 

「卿には筋力が常人よりもないが、しなやかさと無自覚での魔力操作がある。まずは自身の魔力を認識しろ。長所を把握し、伸ばすことだ」

 

「しにそうなんだけど?」

 

 

初日、猪頭になす術なくぶん投げられる。

 

ステップ2実戦

 

 

「……そうだ、魔力を全身に巡らせろ。表皮だけではない、筋肉、血管、骨全てに魔力を流すイメージを常に意識するのだ」

 

「つ、つかれた、お腹空いた」

 

「……そうだな、少し早いが昼食にしよう。2日前に食料が届いたから少し豪華にしてやろう」

 

「やったぜ」

 

一カ月間正拳突きと魔力の使い方を岩盤殴りながら覚えろと無茶振りされてキレる一歩手前。

 

ステップ3実戦

 

 

 

「……ここまでだな。幾分かマシになっている、。魔力な巡りも滑らかだ。ある程度教えた。明日試練を始めよう」

 

「もしもしー♡空太郎〜? 今日の修行終わったから、大丈夫だよ〜♡ん〜? もしかしたら悩みが解決するかも知れないからさ〜♡……ん? それは駄目だよ。空太郎は普通に過ごさなきゃ」

 

「はぁ……。食事中は通話禁止だからな」

 

「……あ、やばいかも、なんかテンション上がり過ぎてハイになってたけど……冷静に考えたら凄くやばいことしちゃったかも。あ、やばい頭がグワーってなっとる……」

 

 

空太郎に会えてない反動で気づくと空太郎に電話していた。

通話後に自己嫌悪で頭を抱えた。




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