ハーレム目的でダンジョンに潜ったら、実は幼馴染のことが好きだった件 作:松田駅
私の目の前には白を基調としたシンプルでこれといって特徴のない二階建ての建物があり、出入り口の側には等身大の帽子を被った『探索者募集中!』と書かれた看板を持った男の子の人形が鎮座していた。
また、ジャージ着てる奴や黒いなんかピチっとした体のラインがでるユニフォームみたいなの着てる奴らが事務所に出入りしている。
「というか、ダンジョン事務所ってなに? 初耳なんだけど」
「え? 最初のダンジョンは隣接している事務所で立ち入る申請するんじゃねーの? なんか、研修で習ったと思うんだけど」
「えっ? ……あぁ、多分俺の場合例外だったのかも」
空太郎を首を傾げなら私に問い掛け、そこでハッとした。
私は最初に行ったダンジョンは擬似的に生み出した物で、私ことも警戒してたしであの研修自体嘘だったのかもしれない。
まあ、どうでも良いかと切り替え、周りの視線とか無視して空太郎の手を引き自動ドアへ向かう。
自動ドアが開くと、中は拍子抜けするくらい普通だった。
白い壁にカウンター、番号札の機械。役所の出張所と何も変わらない。
申請は誰でも出来る。
受付で書類を貰い、そこに名前を記入したり『無理しないで危なくなる前にすぐ戻ってね』みたいな注意事項にレ点つけたりして再度受付に向かい書類を渡すーー。
たったこれだけ。
別に変な奴に喧嘩売られてたりとかのイベントとかはない。強いて言うなら遠巻きから視線を向けられるぐらいだ。
「ダンジョン入ったら手取り足取り教えてあげるね?」
「ありがとな…。でもすっごい緊張する」
待合スペースに移動し呼ばれるまでは休憩しようと、灰色の長椅子に並んで腰を下ろす。
空太郎は緊張のあまり背筋をピンと伸ばし、視線があちらこちら泳いでいた。
こいつは私の出番だな?
私はそっと空太郎の腕に自分の腕を絡める。
「……ねぇ、そんなに緊張しなくていいよ」
微笑みながら囁くと、泳いでいた視線が私に向いた。
「ごめん……。こんな情けない姿見せちまって」
「ん? そんなことないよ? 空太郎はいつでもかっこいいんだから!……それでね? まだ後20分くらい待ち時間あるみたいなんだけど、お手洗いとか大丈夫? ダンジョン内ないみたいだから一緒に行こっか」
「え? トイレないんだ……。いや、ないのが当たり前なのか。ごめんありがとう」
空太郎はそう苦笑しながらまだ緊張しているのかぎこちなく立ち上がり、手を離さずトイレへ向かった。
それからは大したことはない。
トイレを済ませ、手を洗って戻ると長椅子に2人で腰を下ろす。
頭上の壁際に掛けられたテレビではニュース番組が流れていた。
「昨夜、市内の住宅街で妻と子ども二人を殺害した疑いで、夫の宮川一容疑者が逃亡しています――」
アナウンサーの声が待合室に淡々と響く。
空太郎は眉をひそめかけたが、すぐに視線を逸らした。私も大して気に留めず、彼の手をぎゅっと握る。
それからすぐに受付の人に呼ばれた。
案内された地下2階の一部屋の先に鎮座している扉を目視し、ダンジョンの入り口だと実感する。
「それではお気をつけて」
受付の言葉を背に、2人でダンジョンへと足を踏み入れた。
私の視線の先には一面の森が広がっていた。
木々の葉がゆらゆらと揺れ、枝葉は厚く広がり、陽を遮っているはずなのに、ところどころ裂け目のように光が差し込み、細い筋となって地面に伸びている
鳥の囀りや虫の羽音が周辺に密かに響いていた。
「これがダンジョン? 思ってたのと違うな…」
「俺の時は洞窟だったんだよねぇ」
空太郎と私は周りを見渡しながら呆けながら呟き、森の中を進んでいく。
「なんか全然モンスターも人もいな……いた」
雑草やら石やらが散らばる獣道のその先、広くなった場所で探索者らしき数名がモンスターと戦いを繰り広げていた。
私は真横にいる空太郎にサインしお互いしゃがみ込み、生い茂った草木に身を隠しながら戦いを観察する。
加勢しないのかって? する訳ないじゃん、勿体無い。
「空太郎、あいつらは確かこぼるとって呼ばれてる奴らで爪とか牙とかで襲ってくるから良く見て冷静に対処すれば平気だよ。魔力使える様になるまではあいつらを練習台にしよう」
「カナタ……俺たちは助けにいかないのか?」
空太郎は表情を強張らせながら私に聞いてくる。
向こうで緊張を取りきれなかったか……。
此処では敵もいるし流石に難しいな。
「んー、モンスター倒せばお金になるし苦戦してる様子もないから、ありがた迷惑だと思う。あ、あそこの紺ジャージの奴魔力纏ってるよ! まずはあれくらいを目指そうか」