魁霽紀   作:倖往はゆ

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序章 第拾亖話 盛火

 

 

 

 真っ昼間、ご飯を食べ終わってスマフォをみるとれのんちゃんからまたLINEがきていた。

 

『花火、したくない?』

 

 確かに今年は一回も花火をやっていないな、と思い出した。

 

『どういう?』

『昨日、ぱぱが何を思ったか昨日大量に花火を買い込んできて消費できそうにないから、どう〜?一緒にやらない?』

『いいけど、どこでやる?』

『うちの庭とか?』

『ありがと、いつ集合?』

『う〜ん、18時00分とかどうかな、その頃だったら日の入りに近いだろうし』

『わかった、親に訊いてみる』

 

 それから一階に降りて、母親に「友達の家で、今日花火してくるけどいい?」などと訊いて了承を得てくる。階段を登りながら『いいって、いける』と打つ。

 

『じゃあ今日よろしくね〜!』

『わかった』

 

 これだけ送って私はあと今日明日しかない夏休みを怠惰に還元していった。無駄なことにこそ愛が宿る、と自分を丸め込んでその浪費を正当化する。ああ、とても人間らしい。

 だいたい私は時間の使い方が下手だからしょうがない、などと思いたかった。でも結局はこの部屋から出ることが億劫なだけなんだ。だからこそ時間の無駄遣いだけは誰よりも上手い自信がある。なんの役にも立たないけれど、そういうものの1つや2つあるだろう。

 結局だらだらし続けて、いつの間にかスマフォの左上に17:50の文字を見つけてしまった。自分が早く身支度ができないことを見越して、あるいは急ぐのが面倒で出かける準備をし始めた。

 いざ準備をしてみると意外と早く終わってしまい、思ったより早く家を出た。

 彼女の家には夏休み中に何回かいったけれど、基本は曲づくりに関してだったから少し楽しみだった。5分くらい歩いて彼女の家に着く。インターフォンを押すと、知らない人の声がした。

 

『は〜い』

『えっと、朝月、です…』

 

 こういうときにキョドるのは私の悪いところだけれど、これは陰キャの性だからしょうがない。

 ちょっと待つと、れのんちゃんが出てきた。

 

『入ってはいって〜!』

『あ、お邪魔します…』

 

 もう花火は準備してあるらしく、庭に案内されるともうすぐにでも花火が始められそうな感じだった。

 

『どの花火がいい?』

『じゃあこれで、…』と言って一番手前にあったやつを選ぶ。

『じゃあ火つけるよ』

 

 火がつくと、花火からばちばち、という音がたちまち出て文字どうり綺麗な花のようになった。

 

『じゃあぼくもやろっかな〜』

『れのんちゃんの、きれい、』

『え〜、ぼくきれいだなんて…、照れちゃうな〜』

『いや、花火だよ、』

『ごめんごめん、わかっててやったよ〜』

『え、そうなの?』

『うん、』

『まあいいや、れのんちゃんもきれいだよ』

『え〜、うれしいがすぎるな〜!』

『そう』

『そうそう』

 

『今度はさ、2本持ちしてみよっかな』

『私もやる』

『いいよいいよ、』

『意外といけるね〜』

『ね、』

 

 そういうと彼女は回り出した。

 

『わ、きれい、』

『でしょ?』

『うん』

 

 そんなことをやっているうちに、その大量に買い込んできた花火もほとんどそこをついて、あとは線香花火だけになってしまった。

 

『この線香花火を最後にやる風習っていつからあるんだろうね』

『え〜、いつからだろうね〜』

『まあいいや、早く火つけよ』

『うん、』

 

 そういって花火の先っぽに小さい火を灯してみた。

 

『なんか、人生みたいだね』

『たしかに』

 

 よくわからないで返事をしたが、言われてみると確かにそうだという気もしてくる。

 その火は、まるで私たちの夏のような、淡く細い色をしていた。「橙」の一言で片付けてしまうのが勿体無いような、そんな色。

 

『終わらないでほしいな、』

『夏もね』

『そうだね』

『ね、』

『ぼく、明日帰らなきゃいけないんだ、』

『そんなこと言ってたね』

『うん、』

『でもやだな、初めて帰りたくないって心底思ったかも』

『そう?』

『そうそう!』

『そうなんだね』

 

『あっ、』

『あ〜、落ちちゃった』

『そういう日もあるよ、』

『うん、』

 

『あした、投稿なんだよね』

『うん』

『少し、ふしぎ』

『まさか一夏で曲ができるなんてね、』

『ね、』

『付き合ってくれてありがとね』

『いいよ、私も楽しかったし、』

『そう?よかった〜!』

 

 そうやっていって、少しして帰路についた。

 

 こんなに明日が来てほしくないと思ったのは初めてだった。

 

 

凍りついた夜を駆ける音に散った光るあの花をいつか二人また見るまで




 読んで下さり、ありがとうございました。
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