少し前、れのんから折角だしMVも作ってみないかといわれた。何がどう「折角」なのか分からないが、彼女は私にイラストを描いて欲しいといった。
私は中学校で美術部に入っている。というと聞こえがいいが、実態は幽霊部員ばかりで週一で出席すればよく、まして顧問もこないような部活であった。これでよく存続しているものだと思うし、自分もほぼ幽霊部員だから絵なんてほとんど描いたことがない。私は
でも頼まれてしまったものは今更断れないし、そんな勇気もない。それにれのんが動画を作ってくれるというし、私だけ何もしないのでは面目ない。
そんなこと言っていても進まないので、父親の部屋から画用紙を一枚と自分の部屋の片隅から水彩絵の具を取り出してくる。
夏休みに美術部は登校日が1日たりともないので絵の具に触れるのは久し振り(?)だった。
さて、ここで私がなぜデジタルで描かないのか説明しよう(誰も求めてない)。理由は簡単、機械音痴でスマフォの容量も足りないからだ。というのも私は馬鹿みたいににアプリを入れるからスマフォの容量は常に瀕死、しかもそもそも指で描くのとか難しそうだし、なんだったらタブレットと付属のペンも欲しいところだがそんなお金はないので諦めている。だいたい月々1500円の小遣いでは、いつタブレットを買うだけの金が貯まるか知れない。それなら大人しく紙に書いた方がいいだろうと思うのだ。結局、スマフォで絵を描いている人だっているだろうし私が苦手意識を持っているだけなのだろうが。
そんなことをうだうだ考えているうちに着々と下絵を描き進め、満足したられのんに写真を撮って送ってみる。すぐに既読がつき、お礼のメッセージが届いて少し天狗になる。だいたい下絵は死ぬ気で(こんなことで死にたくはないが)描けば意外となんとかなるが、自惚れていられるのもいつもそこまでだった。というのも、色をつけ始めた段階から、あれ、想像と違うな、という気がしてくる。これは私の技術力のもないなのだろうが、やはり納得がいかない。いつもだったら、ここで別の紙を引っ張り出してきてそれで良いのだが、今回は貴重な画用紙を使ってしまったから、ここで後戻りはできない。裏に書けば良い気がするが気がついたら裏にもいつのまにか絵の具がついている。しょうがないからこのまま進めていく。薄い色から順に塗っていって空の色まで塗りかけた時、外から祭りの音が聞こえてきた。そういえば小学校くらいまではよく遊びにいった気がするが花火が予算不足で打ち上がらなくなってからか興味を失っていかなくなった記憶がある。
祭りの花形といえば、やはり屋台か花火かだと私は勝手に思っているが、私は祭りで買うご飯より(確かにおいしいけれど)ドンと打ち上がる花火の方がなんとなく好きだ。
いろいろ色を乗せてみてわかったけれど、このままいくとなんとなく味気ない、何かが致命的に足りない。それは多分色の問題ではなく、対象物が少ないということだと思う。確かに色は美しく差せたと思うが(自分で言うか)、何かアクセントというか、少し物足りない感じがする。少し考えてすぐ煮詰まって筆を放してスマフォを見る。特に何をするでもなく電源を入れては消してみる。
しょうがないから今日はもう寝よう、明日になればいい考えが浮かぶかもしれないと、昔読んだ絵本に書いてあった気がする。
布団に転がってしばらくごろごろしているとメッセージが届いた音がする。私にLINEを送ってくるのはれのんくらいしかいないと思い、スマフォを手に取る。
『どお?元気?』
『あんまし。』
煮詰まった時には他のことをして気分転換でもするのが一番なのだろうが、どうも眠くて何をする気にもなれない。どこか行きたいけどそんなお金も気力もない。睡眠欲だけに従順なこの体が憎い。
『じゃあさ、海行かない?』
雨がないなら
読んでくださり、ありがとうございました。
次回、二人には海に行ってもらおうと思います。